スイスの国民的バンド、GOTTHARDの通算14作目『STEREO CRUSH』が2024年3月21日にリリースされました。
ニック・メーダー<Vo>加入後では5作目。
GOTTHARDの象徴の1つともいえるトーキング・モジュレーターを駆使した曲や切ないメロディアス・ナンバー「Burning Bridges」もあり、高品質な作品に仕上がっています。
「AI And I」やレオ・レオーニ<G>の息子の誕生について歌った「Boom Boom」など、歌詞の内容も気になったので、日本盤CDを購入。
その紹介記事になります。
【メンバー】
ニック・メーダー<Vo>
レオ・レオーニ<G>
フレディ・シェラー<G>
マーク・リン<B>
フラヴィオ・メッツォディ<Ds>
レビュー
ヘヴィな「AI And I」「Shake Shake」、王道メロディアス・ハード・ロックの「Thunder & Lightning」「Liverpool」をそれぞれ前半と後半に配置。
バランスのとれた曲順となっています。
バラード調の「Burning Bridges」を含めれば、バラードは「Burning Bridges」「Life」「These Are The Days」の3曲になりますが、メロディが一番染みるのは「Burning Bridges」です。
- AI And I
- Thunder & Lightning
- Rusty Rose
- Burning Bridges
- Drive My Car
- Boom Boom
- Life
- Liverpool
- Shake Shake
- Devil In The Moonlight
- Dig A Little Deeper
- These Are The Days
※CDのみのボーナス・トラックはありません。
「AI And I」
ニックの低音による歌い出しがなかなかのインパクト。
「A」と「I」を離すところが独特です。
ダークな歌メロがヘヴィでドライヴ感のある音像にハマっています。
「Thunder & Lightning」
軽快なメロディアス・チューン。
サビはキャッチーで優しさが感じられる歌メロです。
「Rusty Rose」
「Right On」(2012年『FIREBIRTH』収録)のようにトーキング・モジュレーターを駆使。
骨太サウンドの中でニックのシリアスかつミステリアスなVoがキマッています。
「Burning Bridges」
ニックが1人で書いた曲。
切なく美しいピアノとニックの歌による始まり方がすばらしいです。
バンド演奏になってからはセンチメンタルな極上メロディが展開。
ピアノ+Voのパートを挟む02:26~も素敵なアレンジです。
「Boom Boom」
超音波検査時のレオの息子さんの鼓動で始まり、喜びと希望に満ちたメロディが進行していきます。
この曲もトーキング・モジュレーターが使われていて、一切ブレることなく前進していく曲調はレオの父親としての決意を象徴しているかのようです。
「Life」
レオの息子さんに捧げた「Boom Boom」の後に人生を曲名にしたバラードが続きます。
静 → 動の流れをみせ、バンド演奏に入った後は劇的度が増します。
徐々に感動の度合いを強めていく歌メロの組み立て方もさすが…なのですが、ギター・ソロがあると尚良かったかも。
「Liverpool」
BON JOVI「Blood On Blood」(1988年『NEW JERSEY』収録)をソフトにした感じ。
00:22~なんかは「Blood On Blood」00:21~を思わせ、サビでも「Blood On Blood」がちらつきます。
2回目のサビの終盤で高音域ギターを重ねてソロに移行する02:21~もいい構成です。
「Shake Shake」
どんよりする中、ニックが低音で歌い始め、本編は「AI And I」を加速させたような曲調。
演奏パートでエネルギッシュさが増す02:47~もエキサイティングで、最後はドドンと力強く締めくくります。
「Devil In The Moonlight」
マークの骨太ベースとハードなギターの相性が抜群。
リズミカルなVoが進行していき、サビに向けてゴージャスさが増していきます。
徐々にエキサイトさせる構成が秀逸です。
「Dig A Little Deeper」
00:01~のギターがQUEENSRŸCHE「Last Time In Paris」(1990年)00:02~のようで、ストリングスが組み込まれる00:55~に高揚感が増します。
02:02~の哀愁ギターも絶品です。
「These Are The Days」
ハーモニカを取り入れたバラード。
「Burning Bridges」「Life」よりも明るく穏やかなメロディが展開していきます。
最後はアコースティック・ギター&ハーモニカがゆっくりとフェードアウトします。
歌詞が印象的な曲
「AI And I」はAIとの共存が歌われているのかなと思っていたのですが、テーマは「AIと人間の対立」(AI vs. I)。
AIに頼りすぎることへの警鐘ともとれる内容です。
「Boom Boom」はレオの息子さん誕生を喜ぶ気持ちにあふれていて、歌詞を読んで笑顔になること間違いなし。
レオの息子さん → レオ → そして私たちファンにポジティヴな感情が伝染します。
他に印象に残ったのは「Burning Bridges」「Life」「Dig A Little Deeper」「These Are The Days」。
「Life」はDGM『ENDLESS』(2024年)のコンセプトにも通じると思いました。
以下が個人的考察になります。
- Burning Bridges…背水の陣を敷き(burn bridges)、自分を追い込む。後戻りできない状況を好み、そこに自分の居場所を見つけ、自分のやり方で成し遂げ時の達成感は何にも代えがたいはず
- Life…一人ひとりに歩む道があり、その歩んできた道を戻ることはできない。これからの人生がどうなるか、またその人生をどう感じるかは自分次第だ
- Dig A Little Deeper…一度に大きな成果を得られなくてもいい。回り道をしても構わない。寛大さを忘れずに「少しづつ」の積み重ねと「もう少し」の探求心を持つことが大事
- These Are The Days…昨日は過去。明日は何が起こるか分からない。今を大切にしよう。そうすれば後で振り返った時、精一杯生きた日々が「最高の日だった」と思える
BLACK STONE CHERRY『BETWEEN THE DEVIL & THE DEEP BLUE SEA』(2011年)
「Boom Boom」つながりで6曲目「Blame It On The Boom Boom」も楽しみましょう。
GOTTHARDより少しどっしりとしながらクリス・ロバートソン<Vo/G>が「boom boom」と歌います。
『BETWEEN THE DEVIL & THE DEEP BLUE SEA』はアルバム自体もすばらしく、いい曲がたくさん。
「White Trash Millionaire」「Killing Floor」なんかは抜群のかっこよさで、この2曲ではトーキング・モジュレーターも使われています。