PARADISE LOST『ASCENSION』

英国ゴシック・メタル・バンドの通算17作目。

オリジナル・アルバムとしては『OBSIDIAN』(2020年)以来、5年ぶりです。

『MEDUSA』(2017年)と『OBSIDIAN』でドラムを叩いていたワルテリ・ヴァイリネン<Ds>はバンドを離れOPETHに加入。

ワルテリの後任にグイード・モンタナリーニ<Ds>を迎えて、『ICON』(1993年)の再録『ICON 30』(2023年)に引き続き、以下のラインナップで制作されました。

  • ニック・ホルムズ<Vo>
  • グレッグ・マッキントッシュ<G>
  • アーロン・エイディ<G>
  • スティーヴ・エドモンドソン<B>
  • グイード・モンタナリーニ<Ds>

ですが、グイードがアルバム・リリース前にバンドを離脱。
『PARADISE LOST』(2005年)と『IN REQUIEM』(2007年)でプレイしていたジェフ・シンガー<Ds>が再度バンドに加わっています。

グレッグによると『ICON 30』の制作が『ASCENSION』のソングライティングに影響したとのことですが、「Serpent On The Cross」「Silence Like The Grave」の始まりは「Embers Fire」に通じます。

また、ジェフが合流したのは本作完成後ですが、ジェフ在籍時の『PARADISE LOST』や『IN REQUIEM』を思わせる曲があるのもうれしい。

過去の名曲をあちこちで思い出させてくれる良作です。

「The Precipice」までがアルバム本編となっています。

「Serpent On The Cross」

「Embers Fire」(1993年『ICON』/2023年『ICON 30』収録)のように夜の港を連想させるスタートです。

そして00:41からはニックのデス声。
風格はもちろん切なさも漂わせるところがさすがです。

本編はメタリックに進行。
ダークで邪悪でアグレッシヴなオープニング曲です。

03:48~のギター・ソロもいい泣き具合で高音域フレーズが刺さります。

「Tyrants Serenade」

『PARADISE LOST』の冒頭2曲がブレンドされています。

00:17~の悲哀なギターは「Close Your Eyes」00:06~のようで、ニックはクリーンな低音Voによるパフォーマンス。

サビでは「Don’t Belong」のようなメロディが展開し、デスVoも加わります。

邪悪な『PARADISE LOST』といった感じです。

「Salvation」

アルバム収録曲の中では最長の7分のナンバー。

スローでヘヴィな暗黒サウンドの中、ドンドンしたドラムがかっこよく響きわたります。 

ニックはデスVoが主体ですが、03:22からクリーンVo。
心が浄化されるような歌メロに魅了されます。

「Silence Like The Grave」

これも「Embers Fire」のような始まり。

00:57~のドラミングがかっこいいです。

本編はミドルテンポ。
ニックが歌い始める01:19~が「Ash & Debris」(『IN REQUIEM』収録)00:14~のようです。

サビでは邪悪なVoとメロディックなギターが絶妙のコンビネーションで、その後の悲哀ギター(02:02~)がまたすばらしいです。

ちなみに「Ash & Debris」は01:53~のサビが絶品。
スローで劇的に展開する中での哀愁Vo → 泣きのギターの流れがたまりません。

「Diluvium」

切なさと不気味さが交錯する中、ドンドンしたドラム(00:16~)がかっこいい。

前半はかなり力の入ったニックの歌いっぷりが印象的です。

02:16~が転換点。
一瞬RATT「I’m Insane」(1984年『OUT OF THE CELLAR』収録)あるいはMEGADETH「Tornado Of Souls」(1990年『RUST IN PEACE』収録)のオープニングがちらつき、ザクザクするギターにワクワクさせられ、攻撃性が増していきます。

「Sirens」

00:33~のドコドコしたドラムがかっこいい。

その後00:44~で「Diluvium」02:16~のようにアクセントをつけてからグルーヴィに展開します。

サビではニックの魂の叫び的なVo → エフェクト処理された声。
押しと引きが見事です。

「Deceivers」

「Red Shift」(『PARADISE LOST』収録)っぽいスタートで、00:16~のギターも「Red Shift」02:51~に通じます。

本編は「Red Shift」とは異なる曲調。
メタリックでドラマティックです。

ニックのVoはサビで邪悪さが倍増し、同時に泣きのギターが加わるという最高の展開。
サビに突入した瞬間はドキッとします。

「The Precipice」

本編ラスト。

切ないピアノとニックのクリーンVoを軸に進み、01:28からデス声が登場します。

ドラマティックなKeyに包まれながらの03:38~(01:54~のギター再び)も程良く刺激的です。

そしてすばらしいのが04:31~。
「これを最後にやられたらたまらない」という泣きのフレーズです。

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