2024年リリース作品のレビューを随時掲載していきます。
レビュー内に記載されている時間は再生環境によって1秒ほどずれる場合がございますので、目安としてお読みください。
2024年1月
MAGNUM『HERE COMES THE RAIN』
2022年22作目『THE MONSTER ROARS』に続くオリジナル・アルバム。
2024年1月12日にリリースされました。
『THE MONSTER ROARS』のリリースが2022年1月14日なので、ほぼジャスト2年ぶりの発表。
ボブ・カトレイ<Vo>のナチュラルでメロディアスな歌唱、トニー・クラーキン<G>のエモーショナルなプレイ、リック・ベントン<Key>の躍動感あるフレーズなど、「こういった曲ではこういうパフォーマンスが映えるだろう」という各メンバーによる役割の熟知ぶりが音像から感じ取れます。
歌も演奏も安定感抜群。
さすがです。
おすすめ曲
- Run Into The Shadows…きらびやかでグルーヴィ。低音域で歌い始めて、01:14~で高音域にシフトするボブのVoが冴える
- Here Comes The Rain…00:00~のトニーのギターにグッとくる。サビ(00:51~)からドラマティックに躍進。哀愁度が増す02:33~の歌メロがまたすばらしい
- Some Kind Of Treachery…「Here Comes The Rain」の感動を引き継ぐ。劇的で美しく、そして切ない…
- The Day He Lied…雄大で厳か。ボブの伸びやかな歌が見事。02:33~(ピアノ → サビの歌メロをなぞる演奏)に引き込まれる
- The Seventh Darkness…サックスとトランペットをフィーチュア。「No Steppin’ Stones」(『THE MOSTER ROARS』収録)を少しシリアスにした感じ。02:04~の演奏パート、適度に力強いエンディング(04:30~)がナイス
- I Wanna Live…透明感があってポジティヴ。01:11から演奏が厚くなり、高揚感が増す。01:38~のデニス・ワード<B>のベースラインも程良く刺激的。02:46~のトニーのギター・ソロは本作の中で最高の内容
- Borderline…神秘的なオープニング → ドッシリとした演奏。03:25からのトニーのフレーズが染みる。アルバム前半に登場しそうな曲調だが、05:18~でエンディング向きと納得
2024年1月7日、バンドの創設者でメインソングライターでもあるトニー・クラーキンが亡くなりました。
『HERE COMES THE RAIN』がトニー在籍時の最後のアルバムとなります。
トニー、今までたくさんの名曲を届けてくれてありがとう。
なかでも「Desperate Times」(2007年『PRINCESS ALICE AND THE BROKEN ARROWS』収録)は大好きな曲でリリース以降、何度も何度もリピートしています。
SCANNER『THE COSMIC RACE』
1986年結成のジャーマン・メタル・バンド、7作目。
歌っているのは前作『THE JUDGEMENT』(2015年)に引き続きエフティミオス・イオアニディス<Vo>で、エフティミオス加入後2作目となります。
唯一のオリジナル・メンバーであるアクセル・ジュリアス<G>が本作で全てのギターをプレイ。
突っ走る曲、そこそこ速い曲、ミドル、スローな曲がありますが、フックのあるメロディが満載で、スケールの大きい演奏が光ります。
エフティミオスの野性的なVoもプラスに作用。
「Face The Fight」での大げさな「Yeah」や「Space Battalion」でいきなり吠えるところなんかは最高です。
おすすめ曲
- The Earth Song…始まりのギターがエキサイティング。疾走。01:14~に気分が高まる。トライバルになる03:56~も面白い
- Face The Fight…ミディアム・テンポ。01:18~が頼もしくかっこいい。大げさな「Yeah」は01:46~
- Warriors Of The Light…01:33から歌メロがアツくなり劇的になる。01:47からエフティミオスの音域が上がり、早口気味に。03:13~はそれでの展開とは異なる雰囲気のアクセルのギター
- Dance Of The Dead…スローでヘヴィ。サビ(01:10~)が雄々しい。邪気をこめての「dea~~d」もナイス
- Scanner’s Law…バスドラ連打で疾走。00:15のコーラスが快感。サビ(01:25~)では勇ましく曲名を歌う。02:55~の泣き → エネルギッシュなギター・ソロもいい流れ
- A New Horizon…劇的バラード。切なく美しい。この曲でのエフティミオスのVoはロブ・ハルフォード<Vo:JUDAS PRIEST>のよう
- Farewell To The Sun…音域が上がり、分厚いコーラスが重なるサビ(01:35~)が最高(ここでは歌声がちょっとハンズィ・キアシュ<Vo:BLIND GUARDIAN>っぽい)
- Space Battalion…グルーヴィでドラマティックな出だしにKO。ヒステリックでモダンなアクセルのギター(00:24~)に気が引き締まる。エフティミオスがいきなり吠えるのは02:06~、そして伸ばす
STRIKER『ULTRAPOWER』
カナダのメタル・バンド、7作目。
2018年『PLAY TO WIN』以来のオリジナル・アルバムです。
2010年デビュー作『EYES IN THE NIGHT』以来、1~2年に1枚のペースでアルバムをリリースしていたので、今回が一番長いブランクを経ての発表となります。
重厚でダイナミックな演奏の中でフックのあるメロディが乱舞。
特にコーラスの充実度がハンパなく、ドキッとすることが何度もあります。
コンパクトな曲の長さでありながらも構成は濃密、そしてエネルギッシュ。
親しみやすく聴きごたえがあります。
おすすめ曲
- Circle Of Evil…不敵な笑い声…でもワクワク → アグレッシヴでメロディックに展開。火花のような02:15からエキサイティングな演奏パートへの流れも見事
- Blood Magic…土臭い夕日系のイントロ → 疾走。曲名を邪悪にコールする01:47~がいいアクセント。02:27からはピリピリした演奏パート
- Sucks To Suck…始まりのかっこよさにKO。ドコドコしながら元気よく進行
- Ready For Anything…ドラムの連打 → 「ウゥ~!」でエネルギッシュにスタート。00:57~のバスドラ連打+キャッチーなコーラスにテンションが上がる
- City Calling…リズミカルな曲調の中で極上コーラスが舞う。エフェクト処理のVoが刺激的
- Turn The Lights Out…バスドラ連打しながらダイナミックに展開するサビ(00:35~)がアツい。ライドシンバル1回 → ヘヴィな演奏でエンディングに向かう02:26~もかっこいい
- Live To Fight Another Day…02:21~のギター・ソロが快感(02:19からなかなかソロが始まらないところがまたいい)
SAXON『HELL, FIRE AND DAMNATION』
ニュー・ウェイヴ・オブ・ブリティッシュ・ヘヴィ・メタル(NWOBHM)の重鎮による24作目。
2024年1月19日(MAGNUM『HERE COMES THE RAIN』の1週間後)にリリースされました。
2週続けて英国のベテランが新譜を出すという素敵な流れです。
MAGNUM『HERE COMES THE RAIN』もそうでしたが、SAXONも各曲におけるメンバーのエネルギー配分が絶妙。
ビフ・バイフォード<Vo>はハイトーンを駆使しながらのナチュラルなパフォーマンスが見事で、演奏面でも全パートが印象的かつ等身大のプレイをみせます。
前作『CARPE DIEM』(2022年)にはドラマティックで感動的な「The Pilgrimage」がありましたが、今回はそういうタイプの曲はなし。
勢いあるナンバーが多くを占めます。
おすすめ曲
- The Prophecy…不穏な空気が漂う。語りが進行する中、割と唐突に「Hell, Fire And Damnation」がスタート
- Hell, Fire And Damnation…爆発力のある幕開け → ビフのハイトーン → 程良い速さで進行。スローダウンする勇壮なサビ(01:17~)にガッツポーズ
- Fire And Steel…ナイジェル・グロックラー<Ds>のパワフルなドラム連打 → 疾走。ギターが随所でエキサイティングなフレーズ。ビフも高音域を軸としたエネルギッシュなVo
- There’s Something In Roswell…SF風に始まるグルーヴ・ナンバー。00:48~が「Solid Ball Of Rock」(1991年『SOLID BALL OF ROCK』収録)の01:16~に通じるメロディ。02:03からは警戒感が強まる。エンディング付近の03:59~でギターとビフのVoが高音域に
- Kubla Khan And The Merchant Of Venice…段階的に良質メロディで攻める(00:32~ → 00:40~)。01:56~のドンドンしたナイジェルのドラムがいいアクセント。ギター・ソロは02:29~が◎
- Pirates Of The Airwaves…ビフの高音域Voがアツく、サビ(01:00~)では曲名を「Hell, Fire And Damnation」のように力強く歌う。02:02~が刺激的
- 1066…ACCEPT「Teutonic Terror」(2010年『BLOOD OF THE NATIONS』収録)のようなスタート。曲名の歌い方が特徴的。01:54からは哀愁ギターが染みる。再びギアを上げる02:22~もいい展開
- Super Charger…バスドラがドコドコ+「super」を切りながら歌う01:00~が快感。ビフがさらに音域を上げる → ギター・ソロの02:11~の流れにも拍手。そしてエンディング(04:33~)にスタンディング・オベーション
CALIGULA’S HORSE『CHARCOAL GRACE』
オーストラリアのプログレッシヴ・メタル・バンド、6作目。
- ジム・グレイのVo…マイルドな声。小声のパートもあり。浮遊感のあるメロディが素敵
- 演奏…透明感があってドラマティック、そしてヘヴィ。静と動の切り替えが頻繁
といったスタイルで、程よい刺激を伴いながらも耳に優しく響くテクニカル・サウンドです。
タイトル曲は4部構成で約25分。
「I」~「IV」の各パートにハイライトがあるので、聴きごたえのある大曲となっています。
ラストの「Mute」は12分。
こちらも高品質な曲でオープニングの「The World Breathes With Me」につなげるアプローチが見事です。
おすすめ曲
- The World Breathes With Me…再生した瞬間、ARCH ECHO「Measure Of A Life」(2020年『STORY I』収録)の03:32~のような空気。01:58~のフレーズ、03:56~の歌メロが心地良く浸透する。01:58~が繰り返されるかと思ったらVoが重なる04:30~、美しく切ないVo → 泣きのギター・ソロへ流れる05:58~も見事
- Golem…警戒度強めでシャープ。01:06~のアグレッシヴなVoが新鮮。01:33でいったん引っ込める → サビ(01:37~)への展開に引き込まれる
- Charcoal Grace I: Prey…メランコリックかつミステリアスな幕開け。02:25~、04:47~が刺激的。06:03~の高音域ギター・ソロも刺さる
- Charcoal Grace II: A World Without…メロディの切なさが強調される02:58~、Voに重なる形でエモーショナルなフレーズが始まる05:19~がすばらしい
- Charcoal Grace III: Vigil…静か。01:53を機に光が差し込むが03:12から不穏に
- Charcoal Grace IV: Give Me Hell…力強いスネア → Voが始まる01:04~に惹きつけられる。03:10で「I」の02:25~が再登場。その後に続く03:26~がまたスリリング。エンディング付近の05:20~も〇
- Mute…雄大な歌メロ(00:00~) → 重厚で耽美的な演奏(00:44~)にドキッとする。静(01:21~) → 動(03:13~)の流れも秀逸。魅力的な歌メロが続く中、演奏が一瞬止まる05:48~もいいアクセント。後半の静(06:45~) → 動(08:10~)も絶品。10:10から「The World Breathes With Me」へ向かい始める
LUCIFER『LUCIFER V』
カリスマ女性シンガー、ヨハナ・サドニスを中心とするハード・ロック・バンドの5作目。
THE HELLACOPTERSのニッケ・アンダーソン(ヨハナの夫)が加入してからは4作目となります。
レトロでヘヴィなサウンドの中でヨハナの謎めいた美声が響き渡り、ニッケも要所要所でかっこいいドラミングを披露しています。
オカルトな音像を放出しながらも曲の速さのコントロールが絶妙。
「Fallen Angel」~「Maculate Heart」までを前半、「A Coffin Has No Silver Lining」~「Nothing Left To Lose But My Life」を後半ととらえると、ドライヴ感のある曲とスローな曲が交互にくる構成になります。
- ALICE COOPER「School’s Out」(1972年『SCHOOL’S OUT』収録)のようなギターでスタートする「Fallen Angel」
- 00:14~がBLACK SABBATH「Iron Man」(1970年『PARANOID』収録)っぽい「At The Mortuary」
- メロディアスなギターと00:36~の不気味で涼しいバックVoが心地良い「Riding Reaper」
- ミステリアスで美しい「Slow Dance In A Crypt」
- ドコドコするニッケのドラムが心地良い「Maculate Heart」
前半は全曲おすすめ。
後半は「The Dead Don’t Speak」のギター・ソロ(02:33~)と魔女的なささやき(02:56~)、「Strange Sister」の怪奇的キーボード(02:12~)が耳に残ります。
2024年2月
IHSAHN『IHSAHN』
EMPERORのフロントマン、イーサーンのソロ8作目。
イーサーンはヴォーカルに加え、ギター、ベース、キーボードもプレイ。
絶望に満ちた暗黒サウンドの中でイーサンの苦悶グロウルと悲哀クリーンVoが響き渡ります。
狂気と美が絶妙にブレンドされていて、楽曲の中にインパクトのあるフレーズを配置して惹きつけるアプローチが本当にうまい。
力作です。
おすすめ曲
- Cervus Venator…壮大な序曲。意外にも暗くない
- The Promethean Spark…00:02~が「Arcana Imperii」(2018年『ÁMR』収録)の00:01~のようにクセになる。硬質でグルーヴィ。02:26~の演奏パートもエキサイティング
- Pilgrimage To Oblivion…始まった瞬間吹き飛ばされる。以降、シンフォニックな音像で暴虐的に突進。02:52~のクリーンVoが冴える(03:06からグロウルを重ねる攻めがまた見事)
- Twice Born…段階的に迫ってくる00:18~がスリリング。サビ(01:17~)では劇的サウンドとグロウルの相性が抜群。エンディングでは00:18~が少しだけ
- A Taste Of The Ambrosia…メランコリックな音像の中で苦悶Voが映える。02:05からドン! → 03:02からカオス
- Anima Extraneae…壮麗な小曲。闇空間に光が差し込む
- Blood Trails To Love…クリーンVoによるサビ(01:50~)が絶品。刺激的な03:00~に「何?何?」となる
- The Distance Between Us…クリーンVoがメイン。薄暗い歌メロにうっとり
- At The Heart Of All Things Broken…9分台の大作。前半は美しく包容力があるクリーンVo。02:47からグロウルが重なり、重厚な演奏。04:53からドン!ドン!となり、スリリングさが増す。が、05:48から優しくメロディアスに
- Sonata Profana…不穏なラスト。「Cervus Venator」「Anima Extraneae」とは対照的な小曲でアルバムを締めくくる
THE OBSESSED『GILDED SORROW』
スコット“ワイノ”ワインリック<Vo/G>率いる米ドゥーム・メタル・バンドの5thフル。
『SACRED』(2017年)以来、7年ぶりのアルバムとなります。
- 黒煙が立ち込めるようなヘヴィ・サウンド
- 威風堂々とした語り風のVo
を軸に展開していき、要所要所で印象的なギター・フレーズが放たれます。
ヴォーカル、ギター・リフ、リード・ギター…ワイノの存在感がハンパない。
『THE CHURCH WITHIN』(1994年)の「Streamlined」のようなアップ・テンポもかっこよくキメるTHE OBSESSEDですが、今回はそういったナンバーはなし。
スローとミドルの曲で攻めます。
おすすめ曲
- Daughter Of An Echo…寒い。暗い。でも適度にリズミカル。03:46から劇的になりホラー要素が強まる
- It’s Not OK…00:09~のギターがグイグイしていてかっこいい。サビ(01:02~)が説得力抜群。ワイノ様が「It’s Not OK」と歌う(語る)のだから「OKじゃないんだ」と納得。再び00:09~で締めくくる
- Realize A Dream…メランコリックで美しいスタート。この曲でのVoは比較的メロディアス。「Reali~~ze」と伸ばしながら歌うところがツボ。サビの後に続く02:36~のギターも刺さる
- Gilded Sorrow…ミステリアスな音像を引き継ぎ、どんより。01:08~のゆがんだVoが心地良い。03:35からは冷風が吹いてきてさらに不気味に…
- Stoned Back To The Stoned Age…引き続きゆっくり。許容範囲内の音域スレスレの01:43~がたまらない。04:29~の笑い気味のVo(語り)も最高
- Yen Sleep…不気味なSE(00:00~) → ピリピリしたギター(00:19~)の流れにハマる。03:45~のギター・ソロとキンキンしたサウンドも快感
- Lucky Free Nice Machine…割とメロディックな1分のインスト。続きがありそうな曲調だが、これがアルバムのエンディング
AMARANTHE『THE CATALYST』
通算7作目。
シンガーは以下の3人でグロウル担当のミカエル・セーリン加入後初のアルバムとなります。
- エリーゼ・リード<Vo>
- ニルス・モーリン<Vo:DYNAZTY>…クリーン
- ミカエル・セーリン<Vo>…グロウル
ミカエルの声質は前任者のヘンリク“GG6”エングルンドと似たタイプ。
バンドのサウンドにピッタリとハマっていて、活躍する場面も多めです。
楽曲そのものも高品質で、過去の代表曲の数々を思わせるアプローチと共にダイナミックなナンバーで畳みかけます。
オープニングの「The Catalyst」は、デジタルでドラマティック → ミカエルのグロウルと共に本編スタートという展開。
新ラインナップでの再始動にふさわしいアプローチです。
バラード「Stay A Little While」も収録。
こちらはエリーゼとニルスのクリーンVoになりますが、過去最高のスケールで感動的なメロディが進行します。
おすすめ曲
- The Catalyst…上述の本編は00:44~。その後のエリーゼ → ささやきにもドキドキ。サビ(01:23~)では高揚感が増し、曲名/アルバム・タイトルを切り捨て気味に歌う01:38~にシャキッとさせられる。02:52~のミカエルの畳みかけもエキサイティング
- Insatiable…「Drop Dead Cynical」(2014年『MASSIVE ADDICTIVE』収録)のようにダンサブル。00:17からのエリーゼ → ミカエル → ニルスへの細かい切り替えが秀逸
- Damnation Flame…「Archangel」(2020年『MANIFEST』収録)を想起。02:05から唐突にメルヘンチックになり、02:39からはVoがヒートアップ。03:17~の笑いもナイス
- Re-Vision…00:12~が不思議で快感。サビ(00:54~)は「Digital World」(『MASSIVE ADDICTIVE』収録)のサビ(00:44~)をゆっくりにした感じでとてもいいメロディ。02:15から割と突然入るギターにワクワク
- Stay A Little While…きれいなピアノで始まるバラード。エリーゼとニルスが交互に素敵なメロディを歌い上げる。ニルスが曲名を伸ばし、ギター・ソロに流れる01:56~、ソロの後のソフトなエリーゼのVo(02:28~)が絶品。2人のVoが高音域で伸びて壮大さが増す02:45~にも鳥肌
- Breaking The Waves…重厚で劇的。00:38からエリーゼが曲名を熱唱。そして00:57~にホッとする。ニルスによる曲名 → キラキラ → ギター・ソロ → ミカエルの流れを踏む01:45~もすばらしい
- Outer Dimensions…いったんフワフワ(00:37~) → サビが素敵。00:54~はABBA「SOS」の00:58~のように気分が高まる
- Resistance…始まりのVoからエキサイティング。サビ(00:47~)は「Fearless」(『MANIFEST』収録)のサビ(01:10~)に通じる。キリキリ食い込んでくる01:06~も面白い
MICK MARS『THE OTHER SIDE OF MARS』
ミック・マーズ<G>のキャリア初となるソロ・アルバム。
ミック以外のメンバーは以下となっています。
- ジェイコブ・バントン<Vo>…ADLER『BACK FORM THE DEAD』(スティーヴン・アドラー<Ds:元GUNS N’ ROSES>のバンド)でもリードVoを務める
- ブライオン・ガンボア<Vo>
- Chris Collier<B>
- レイ・ルジアー<Ds:KORN>
- ポール・テイラー<Key:WINGER>
ジェイコブとポールはミックとの共作でも大きく貢献。
「Killing Breed」「Undone」でブライオン、それ以外の曲でジェイコブが歌っています。
ミックのギターは、
- ダイナミックでヘヴィ
- ギター・ソロは短時間で魅力的なフレーズ
- トリッキーな音も絡める
というスタイルで「おお」と思わせるプレイがあちこちに満載。
豊富なアイディア、アレンジのうまさに脱帽です。
おすすめ曲
- Loyal To The Lie…演奏がフェードインしてガッツある本編がスタート。ジェイコブはエフェクト → ノーマルのVo。滑らかな歌メロが心地良い。03:14~はMEGADETH「Dread And The Fugitive Mind」(2001年『THE WORLD NEEDS A HERO』収録)の03:56~を彷彿。ラウドでノイジーなギターを伸ばす03:20~もミックならでは
- Broken On The Inside…AC/DC「Back In Black」(1980年『BACK IN BLACK』収録)っぽいリフがクール。00:11~のジェイコブのゆがんだVoが新鮮。00:31からはミックがゆがむ。そして00:37から目が覚めるようなスクリーム → アップテンポに。予測不可でかっこいい。03:05から視界不良
- Alone…ミックがゲスト参加したCRASHDÏET「Alone」(2007年『THE UNATTRACTIVE REVOLUTIONS』収録)とは同名異曲。ミックの泣きのギター(00:26~) → ジェイコブの切ないVo → 悲哀度が増すサビ(01:07~)の流れにKO
- Killing Breed…ダークでミステリアス。00:18からドカン!となり00:33から強靭なギターが切り込む。ブライオンの低音域Voも説得力抜群。03:40からのギター・ソロは曲調に逆らうかのよう。04:26~の連打がまたエキサイティング
- Right Side Of Wrong…威厳があって警告的なオープニング(ミックの雰囲気にピッタリ) → ダイナミックな演奏(00:15~)が抜群のかっこよさ。伸びやかなジェイコブの熱唱も光る
- Ready To Roll…ジリジリとヘヴィに迫る中、ジェイコブの低音域Voが心地良く響く。00:56~では一緒に拳を振り上げよう。得体の知れない02:58~の音像がまたツボ
- Undone…緩急をつけながらのブライオンのVoが見事。切ない歌メロ(00:45~) → ミックの哀愁ギター(01:12~)がたまらない。02:37~のギター・ソロもいい感じに涙腺を刺激
- Ain’t Going Back…ライドシンバルによるスタートがかっこいい。ジェイコブは「Loyal To The Lie」のようにエフェクトVoも絡める。01:45からはミックがそれまでの歌メロより音域を下げてギター・ソロ。非日常的な01:58~、つまずくような02:45~にも引き込まれる
- LA Noir…インストゥルメンタル。MOTLEY CRUE時代(ジョン・コラビ期)にミックが1人で書いた「Bittersuite」のような渋いフレーズをヘヴィな音像で包み込む
一緒にCRASHDÏET『THE UNATTRACTIVE REVOLUTIONS』も楽しみましょう。
ミックは「I Don’t Care」「Alone」で共作/リード・ギターで参加しています。
特に「I Don’t Care」がおすすめ。
02:21~のギターなんかは「ああ、ミックだなあ」とうれしくなります。
DARKEST HOUR『PERPETUAL | TERMINAL』
2023年の来日公演では2005年4th『UNDOING RAIN』と2007年5th『DELIVER US』の全曲演奏を行ったDARKEST HOUR。
10枚目のアルバムとなる本作は『UNDOING RAIN』に通じる幕開けです(下の「おすすめ曲」で詳述)。
ジョン・ヘンリー<Vo>のもだえ苦しむようなグロウルが特徴的で、その唱法を本作でも維持しているのですが、とても聴きやすくなりました。
耳にすんなり入ってきます。
猛々しく突き進みながら、キャッチーな歌メロやメロディックなフレーズを噴霧。
グイグイ押しながらも、所々で安堵させる攻めが効いてます。
おすすめ曲
- Societal Bile…ウィ~ン!としながら突進する00:06~に気合いが入る。苦しみながらキャッチーに展開するサビ(01:18~)が独特。01:53からはジョンの声に処理がかかり、その後ドッシリ
- A Prayer To The Holy Death…サビ(00:48~)の重厚でキャッチーなVo+メロディックかつ耽美的な演奏に惹きつけられる
- The Nihilist Undone…悲哀に満ちたジョンの「アーーー!」(00:18~、01:08~)が疾走にピッタリで最高。01:41~のギターも染みる。02:15からはギターのメロディック度が増し、厚みのあるアグレッシヴなVoが重なる
- One With The Void…適度に緩いクリーンVoがいい感じ。02:26からはギターが約50秒泣く。そして03:17~の劇的な歌メロに胸が熱くなる
- Amor Fati…小曲インスト。エモーショナルな高音域フレーズが体内に浸透する
- Love Is Fear…シャープでメロディックなスタートを切る(00:00~)。アグレッシヴになってまた00:00~が再登場する構成がまたナイス(00:55~)
- Goddess Of War, Give Me Something To Die For…00:21~がIRON MAIDEN「Hell On Earth」(2021年『SENJUTSU』収録)の01:06~っぽい。静 → 動(01:09~)→ 疾走(02:39~)の流れを踏む。03:14から「The Nihilist Undone」での悲哀スクリームが再び。最後の曲でこれをやられるとかなり効く
2024年3月
BRUCE DICKINSON『THE MANDRAKE PROJECT』
IRON MAIDENのブルース・ディッキンソン<Vo>によるソロ7作目。
『TYRANNY OF SOULS』(2005年)以来、19年ぶりのソロ作品となります。
4作目『ACCIDENT OF BIRTH』(1997年)から制作に関わってるロイ・Zが引き続き本作のプロデュースを担当し、ギターとベースもプレイ。
アルバムはIRON MAIDEN『SENJUTSU』(2021年)をミステリアスにしたような「Afterglow Of Ragnarok」で幕を開けるのですが、これがかっこいいのなんの。
ここでもう虜になります。
この「Afterglow Of Ragnarok」だけでも『THE MANDRAKE PROJECT』は聴く価値ありですが、ドラマティックで感動的な「Fingers In The Wounds」やモダンな「Mistress Of Mercy」など、IRON MAIDENとは異なる魅力を備えたナンバーをちゃんと配置。
さすがのソロ・アルバムです。
ブルースが1人で書いたIRON MAIDEN「If Eternity Should Fail」(2015年『THE BOOK OF SOULS』収録)も曲名を変えて登場します。
おすすめ曲
- Afterglow Of Ragnarok…いきなりキラー・チューン。ダークで厳かに始まり、00:20からヘヴィなギターが被さる。ブルースは歌い出しから圧倒的なオーラを放つ。01:11から高音域になり、唐突に01:27からサビ。劇的な音像と伸びやかな歌メロがすばらしい。03:49~の呪術的音像 → 混沌としたギター・ソロ、05:08~の躍動感あるキーボード → 邪悪なVoがまたスリリング
- Resurrection Men…曲調の変化が楽しめる。不穏(00:00~) → 神秘的(00:08~) → リズミカルかつ民族的(00:37~)。軽快に進行する…が、02:36からはBLACK SABBATHのようにスローでヘヴィ。ベースが強調される03:24~も心地良い。04:24からどんより。そして05:00で00:37~に戻る
- Fingers In The Wounds…00:00~にやられる。00:19~のブルースのVoとバックのピアノが美しく切ない。00:39からはドラマティックかつハードに展開し、ブルースが高音を絡めながら熱唱。キーボードが乱舞し民族的に進行する01:47~がまたスリリング。収録曲の中で一番短いのに濃い
- Mistress Of Mercy…ややモダンでグルーヴィな演奏+ブルースのノリが良い高音域Vo。サビ(00:55~)ではスーッとする歌メロに心が洗われる。ドンドンしながらメロディックなギターが被さる02:12~、暴れる04:37~も◎
FIREWIND『STAND UNITED』
ガス・G.<G/Key>率いるギリシャのメロディック・メタル・バンドの10作目。
『FIREWIND』(2020年)以来4年ぶりのアルバムで、引き続きハービー・ランガンス<Vo>が歌っています。
ハービーは声が骨太かつ野性的で、言葉を短く切る唱法が特徴的。
ガス・G.もツボを押さえたプレイで攻めます。
名曲「Mercenary Man」(2008年『THE PREMMONITION』収録)のように、始まりで心をつかむ「Come Undone」があるのもうれしい。
「Salvation Day」から「Chains」までが特に充実しています。
おすすめ曲
- Salvation Day…歌声がぼやけながらフェードイン → デジタルなオープニングがスリリング。サビ(01:22~)でハービーが歌詞をスパッと切る。02:55からガス・G.のギター・ソロ。メロディックなフレーズが胸に迫り、03:17からよりエネルギッシュになる
- Stand United…シャープなギターを軸に突進。濁声&低音域 → 徐々に濁りが薄まるハービーのVoが印象的。02:31からの曲名/アルバム・タイトルの勇壮なかけ声 → ブルータルな 「ウヮァ~」がかっこいい
- Destiny Is Calling…ドドン!とメロディックにスタート。サビ(01:00~)に躍動感があり、ここでも歌詞の間隔の空け方が効果的。サビの後ろでガス・G.が弾きまくる03:26~もエキサイティング
- The Power Lies Within…モダンでグルーヴィ。ミステリアスな空間でペトロス・クリスト<B>が骨太ベースを響かせる(00:02~)。ワイルドで堂々としたハービーのVoがクールでガス・G.のギターも刺激的。01:58からのハービーとガス・G.の交互のパフォーマンスも面白い。「Destiny Is Calling」と「Come Undone」の間にこうった異質な曲を挟む構成に拍手
- Come Undone…期待感を抱かせるキーボード → 00:08~にKO。「Mercenary Man」のような即効性。歌を伸ばす → サビ(01:27~)の流れが絶品で01:34~の透明感あるバックVoがさらに質を高める。メロディをちょこっと変える03:58~も見事な変化球
- Fallen Angel…00:00~が80年代のゲーム(イメージ的にはバイクか車が高速ではなく適度な速さで走る)のような雰囲気。00:48~、01:04~には体が自然と動く。02:39~のかけ声もポップな感覚で全体的にリラックスした感じのメロディック・メタル
- Chains…00:00~の程良くエネルギッシュなギターにワクワクし、00:13からのキーボードにちょっとほっこりする。サビ(01:09~)が極上で01:15からは「Come Undone」系の高品質なバックVo。02:49から湿り気のあるギターが展開し、03:18からテンションが上がる。03:41~のピアノ+コーラスも素敵
JUDAS PRIEST『INVINCIBLE SHIELD』
通算19作目。
2018年の『FIREPOWER』以来、6年ぶりのアルバムとなりますが、ロブ・ハルフォード<Vo>の復帰作『ANGEL OF RETRIBUTION』(2005年)以降では一番パワフルです。
「Panic Attack」は「Painkiller」(1990年『PAINKILLER』収録)を思わせる場面があちこちにあり、さらにはHALFORD「Made In Hell」(2000年『RESURRECTION』収録)もちらつくのでガッツポーズ&笑顔になること間違いなし。
続く「The Serpent And The King」もハイトーンで攻めます。
「Bloodstone」(1982年『SCREAMING FOR VENGEANCE』収録』)を中音域で展開したような「Crown Of Horns」も見事ですし、「screaming」と「vengeance」の歌詞が登場する曲もあります。
過去の名盤/名曲を思い浮かべながら楽しめるナンバーが満載。
本編ラストの「Giants In The Sky」が、リッチー・フォークナー<G>率いるELEGANT WEAPONSの「Downfall Rising」(2023年『HORNS FOR A HALO』収録/こちらもアルバム最後の曲)に通じるというのも興味深いです。
おすすめ曲
- Panic Attack…「Painkiller」がたくさん。00:44~が「Painkiller」のリフ(00:17~)っぽく、02:20~は同曲の「Faster than a laser bullet~」(01:41~)のよう。HALFORD「Made In Hell」っぽいのは02:48~(「Made In Hell」の02:17~が高音域にシフトした感じ)。ロブのハイトーンが伸びてエキサイティングなギターに流れる04:52~は「Painkiller」の05:08~を想起
- The Serpent And The King…2曲目もロブはハイトーン。「Screaming For Vengeance」(『SCREAMING FOR VENGEANCE』収録)のように進んでいき、サビではキャッチーでリズミカルになる。歌い出しからサビに向けて高音域をキープしつつも音域を少し下げていくメロディ展開が印象的
- Invincible Shield…引き続き疾走。でもロブの音域は「The Serpent And The King」より低め。01:15から勇壮なメロディが伸びて 、サビ(01:23~)で「invincible」を前面に出すスタイルが効いている。03:16からはハモりながら曲名を伸ばして、その後絶品のギター・ソロ。05:27~も似たアプローチでここではロブのVoのみ → 哀愁ギター
- Gates Of Hell…00:42~の高音域での悲哀ギターが心に残る。名盤のタイトルに含まれる単語ということもあり、サビ(01:35~)では「screaming」がすぐ耳に入ってくる(ロブの歌い方もかっこいい)
- Crown Of Horns…円熟味が増した「Bloodstone」(『SCREAMING FOR VENGEANCE』収録)。ロブが歌う全パートがハイライトで、切ないメロディにグッとくる。曲の出だしを踏襲しながら程良くエキサイティングに展開するギター・ソロ(03:41~)も見事
- As God Is My Witness…「Leather Rebel」(『PAINKILLER』収録)のようにギターがザクザクしていて心地良い。ロブのVoは中音域中心で、00:47からよりメロディアスになる。02:30から音量高めのギターが鳴り、ロブもヒートアップ(高音を被せるスタイルがまたいい)
- Escape From Reality…Voにエフェクトがかかる02:22~が特に面白く、オジー・オズボーンも一緒に歌っているかのよう(1995年『OZZMOSIS』の「Deinal」での01:31~と似てる)。ノーマル声での02:27~もオジーっぽい
- Sons Of Thunder…「Escape From Reality」とは対照的。00:46から高揚感が増し、サビで曲名を勇ましくコール。「Breaking The Law」(1980年『BRITISH STEEL』収録)のようなオーラの中にダイナミズムが宿る
- Fight Of Your Life…ハイトーン → 中音域で哀愁メロディ(00:56~)のロブのパフォーマンスが映える。ギター・ソロに入る02:20~は「Never The Heroes」(2018年『FIREPOWER』)の03:00~をドライにした印象
- The Lodger…ドラマティックな音像の中でギターが泣く。サビ(00:57~)ではこれまた名盤の単語「vegeance」が。高音域で美しい歌メロが胸に響く。音量小さめのロブが左右交互の02:16~も面白い(エンディングでも再登場)
SONATA ARCTICA『CLEAR COLD BEYOND』
『TALVIYÖ』以来約4年半ぶりのアルバム。
後半は減速気味なのですが、前半が充実しているので満足度は高いです。
1曲目「First In Line」から疾走し、次の「California」でさらに加速。
そして3曲目「Shah Mat」も疾走。
聴いててうれしくなります。
同じ速さで攻めるのではなく2曲目でスピードを上げるというのがいいですね。
「Dark Empath」は「The End Of This Chapter」(2001年『SILENCE』収録)から始まった「Caleb Saga」の曲。
上記の中では「The End Of This Chapter」「Don’t Say A Word」が特にクオリティが高いですが、「Dark Empath」は過去最高レベル。
ミドル・テンポを基本としつつ、疾走パートも組み込ませながら極上メロディで展開します。
おすすめ曲
- First In Line…キラキラと快走する中、哀愁ある声質のトニー・カッコ<Vo>の歌唱が映える。サビ(01:29~)では良質メロディが長時間続くからうれしい。音域が下がる02:58~がまた絶品。トニーの力強い「black hole!」と共にきらびやかになる03:25~もかっこいい。03:37~のヘンリク・クリンゲンベリ<Key>の音像に少しほのぼの
- California…さらにスピードアップ。トミー・ポルティーモ<Ds>はバスドラ連打。若々しくてエネルギッシュな曲調にワクワクする。サビ(01:08~)での透明感のあるメロディ → 01:14で音域を下げるという展開に心を打たれる。子供の声が絡む02:55~も素敵。03:15~のつかみどころのないキーボード+始まったと思ったらすぐ終わるコーラスも個性的
- Shah Mat…シリアスで耽美的に始まり00:25からエレクトリックな演奏と共にミステリアスな女性コーラス。ここだけですばらしい。そして00:55から疾走し、01:22からは清涼コーラスが被さる高品質メロディ。暗雲が垂れ込み始める(01:54~) → キラキラ/シャカシャカ(02:06~) → 女性コーラス再びという流れがまた見事。さらに02:39からはトニーの最高級のVo。04:03で曲の出だしに戻り次の「Dark Empath」へつながる
- Dark Empath…「Caleb Saga」の曲。00:06~にハッとさせられる。「The End Of This Chapter」の00:28~でも笑っていたが、今回は00:11で笑い声。00:14からのメロディが早くも最高でしかも長時間続く。トニーの「So,」(00:55~)→ ムードのある歌唱もすばらしく、ここでもメロディにうっとり。エフェクトがかかった声ではじまるサビ(01:52~)もにもドキドキ。神聖さが加わる03:14~や、「Perfect I!」(04:06~) → 演奏パート → コーラス(04:26~)もいい構成。トニーのVo1本 → コーラスが加わる04:59~にもやられる
- Cure For Everything…クールダウン…かと思いきや00:11から疾走。勢いある曲調の中でトニーの堂々かつ伸びやかなVoが光る。01:33からはジリジリし始め刺激的に。02:07~はキーボードと一緒に歌おう。名曲「The Last Amazing Grays」(『THE DAYS OF GRAYS』収録)の05:04~っぽくなる03:16~もうれしい
- Angel Defiled…ダークでメルヘンチックな00:00~がインパクト大。トニーはやや挑戦的な歌い方で「ハッ!」(00:46~)や「ハッハッハ~」(01:36~)もハマってる。サビ(01:08~)や03:20~の演奏パートなど、00:00~を軸に曲を発展させる攻めがうまい。全体的に「X Marks The Spot」(2014年『PARIAH’S CHILD』収録)のような雰囲気が漂う
MYRATH『KARMA』
チュニジアのドラマティック・メタル・バンド、6thフル。
KAMELOTのような劇的サウンドの中に異国情緒あふれる演奏を絶妙に組み込ませています。
KAMELOTのナンバーを1曲挙げるなら「One More Flag In The Ground」(2023年『THE AWAKENING』収録)。
このようなタイプのナンバーをエキゾチックかつテクニカルにした感じです。
「Words Are Failing」(← キラー・チューン!)のように想定外の展開をみせるナンバーもあり。
濃密な曲構成がすばらしいです。
「Heroes」にはKAMELOT「Karma」(2001年『KARMA』収録)に通じるアプローチが少々。
今回のMYRATHのアルバム・タイトルと一緒というのがまた面白いです。
バンドのツアー・メンバーでもあり、アルバム制作にも携わってきたケヴィン・コドフェール<Key:ADAGIO>が今作から全曲でキーボードをプレイしています。
おすすめ曲
- To The Stars…シャカシャカする中、アニス・ジュイニ<B>のベースがかっこよく響く。力強い「Hey!」もいい。02:17からはケヴィンのエキサイティングなキーボード・ソロ。音もユニーク
- Into The Light…THE FERRYMEN「One More River To Cross」(2022年『ONE MORE RIVER TO CROSS』収録)のようなスタート。ザヘル・ゾルガティ<Vo>がいい感じに間隔をあけながら熱唱を繰り広げる。02:34~の演奏パートでは悲壮感 → ピアノの流れがすばらしい。特に03:25~のケヴィンのピアノは圧巻。モルガン・ベルテット<Ds>のドラムもいい感じに暴れる
- Candles Cry…グルーヴ感を強めた「Believer」(2016年『LEGACY』収録)といった雰囲気。言葉数多めでリズミカルに進行するサビ(01:10~)が心地良く、01:19からトーンを変えて響かせる声にもドキッとする。03:39からエンディングに向けてテンションを上げていくマレク・ベン・アルビア<G>のプレイも見事
- Words Are Failing…「Into The Light」に似た感じで始まるキラー・チューン。00:22でケヴィンのキーボードがきらめいてザヘルがムードあるVoを聴かせる。歌メロ全てがすばらしく、サビ前(01:20~)で少し引っ張るところがまたいい。そしてサビ(01:24~)ではダイナミックかつ気を引き締めるような絶品のメロディ。上述の想定外は03:09~。混沌としていて見事な変化球
- The Wheel Of Time…飛び跳ねるようなリズム隊が独特。ザヘルはプカプカした歌い方(00:12~) → メロディックなサビ(01:02~)でカチッとハマるというスタイル。マレクのヘヴィなギターが被さってスリリングさが増す02:29~、03:21~の浮遊感ある哀愁フレーズもさすがのアレンジ
- Temple Walls…ノリの良さを維持しながらもドッシリと進行し、サビ(00:47~)では突き上げるVoが間隔をおいて展開。02:23からの演奏パートではケヴィンのコロコロしたピアノとマレクのエモーショナルなギター・ソロが光る
- The Empire…劇的でありながら不吉なキーボード(00:27~)が印象的。サビ(01:21~)では00:27~とは対照的なドラマティックな演奏をバックに切ない歌メロが進行する。そしてサビの直後に再度00:27~。現実に引き戻される感じがいい。エンディングも00:27~
- Heroes…00:00~のドラムの連打にキリッとなる。00:32~、01:16~のキーボードがKAMELOT「Karma」の世界観に通じる。「ここから演奏パート。用意はいいか」的な02:30~ → マレクのギターがゴリゴリ(02:37~) → メロディックなギター・ソロ(02:52~)の段階的な攻めも最高。最後はザヘルが歌い出しのVoで力強く締めくくる
MOKOMA『MYRSKY』
『LOUD PARK 13』出演も含め来日経験が豊富なフィンランドのMOKOMA。
12作目のアルバムとなります。
- 歌詞はフィンランド語
- ゴリゴリした厚みのあるサウンドを基調
- 時にはスラッシーに、ブルータルに、あるいはメロディアスに
といった緩急のあるスタイルで攻めます。
「シュダンカユラ」は途中でCALIGULA’S HORSE『CHARCOAL GRACE』(本記事の2024年1月でレビュー)の「The World Breathes With Me」っぽくなるという意外な展開をみせるので、「The World Breathes With Me」が好きな方は要チェックです。
おすすめ曲
- ヨッコトホアセ…マルコ・アンナラ<Vo>のブルータルな歌声を伸ばすスタイルが特徴的。スラッシーな突進を絡めながら勢いよく進む。01:54~の負のオーラ的なギターが快感
- ハルアマニライネン…グルーヴィな演奏と野性的なVoを軸に進行。不敵さが増す00:42からかっこよさが増す…がサビ(00:51~)で唐突にメロディアス。ハキハキと歌うマルコが独特
- タイヴァーン・トゥーリーン…アタマ2曲がアグレッシヴだったので、メロディ強調の演奏(00:02~) → 叙情的(00:28~)が新鮮。サビ(01:47~)での「ア~~」に心がスーッとする
- ピュハ・ヴィトゥトゥス…00:18~がKREATOR「Phobia」(1997年『OUTCAST』収録)の00:19~っぽい。サビ(00:57~)では清涼感が増し、マルコの歌が打楽器のように響いてくる
- トゥリシコ・イカヴァ?…ドシンとスタートしたと思ったら、00:09からポップな歌メロ。でもバックのギターは控えめにザクザク。このギャップが心地良い
- ヨス・トゥレヴァイスース・オン…マルコの荒々しいVoがマックス・カヴァレラ<Vo/G:SOULFLY>っぽくて迫力満点。01:41~の安堵感もいいスパイスでワイルドなVoとの対照的アプローチがうまく生きる
- マリヤ・シッレ!…スラッシュ・メタル。速い。鋭いリフが刻まれる。要所要所で力強いかけ声。減速(01:43~) → 再加速 → エネルギッシュなギター・ソロの流れも燃える
- シュダンカユラ…CALIGULA’S HORSEみたいになるのは01:56~。「The World Breathes With Me」の00:03~の旋律に似てる。あらためて聴き返すと00:03~もそうであることに気付く。ワイルドな声が伸びる(03:22~) → 止まる → 演奏再開の流れもいい
- ユンピュラ・スルケウトゥー…シャープでリズミカル。サビではクッキリと曲名が前面に出る。激しさが増す02:01~(ヤンネ・ヒュルカス<Ds>のバスドラ連打、エキサイティングなギター・ソロ、ブルータルなマルコのVo)にもテンションが上がる
- ウラッパ…00:00~の骨太で哀愁ある演奏に即効性あり。1人2役のような00:20~、慰めモード的な00:52~のマルコが印象的。00:00がソフトになる02:12~、吠えて00:00~になる02:41~もいい
- ライティマイネン・ケルタ…ボディーブローをもらったかのような「ウ~」と共にザクザクする00:27~に力が入る。演奏を無視しがちな00:40~や01:37~の「ん~」もツボ。突然曲調が変わる02:02~もいいフェイント
WHOM GODS DESTROY『INSANIUM』
デレク・シェリニアン<Key>とロン“バンブルフット”サール<G>が結成したプログレッシヴ・メタル・バンドのデビュー作。
ヴォーカルはマイケル・ロメオ<G:SYMPHONY X>の3rdソロ『WAR OF THE WORLDS//PT. 2』(2022年)でもすばらしい歌唱を披露していたディノ・ジェルーシック、リズム隊はヤス・ノムラ/野村康貴<B>、ブルーノ・ヴァルヴェルデ<Ds:ANGRA>というラインナップです。
ディノの堂々とした風格のあるヴォーカルと電流のようなフレーズを放つ演奏。
メンバー全員、やること全てがかっこよく、スリリングで迫力満点のテクニカル・サウンドが繰り広げられます。
1曲目「In The Name Of War」の破壊力がすごいので、ここでもうハマること間違いなし。
以降も予測不可の要素が満載で、ラストの「Insanium」までドキドキしっぱなしです。
おすすめ曲
- In The Name Of War…デレクの切なくミステリアスなピアノ(00:00~) → ヘヴィな演奏(00:23~) → ディノのパワフルなVo(00:45~)の流れが抜群のかっこよさ。サビ(01:06~)では威厳たっぷりな歌声が伸びる。ディノが気合いを入れて、デレクのエキサイティングなキーボード・ソロに入る04:56~にもしびれる。サビのメロディを一瞬イジる05:28~もニクいアレンジ
- Over Again…変則的な曲調の中でのディノ(00:21~)がなかなかカオス。曲中多めに繰り返される「Over Again」に中毒性あり。02:37からはいい感じにヒヤヒヤ。その後のロン(02:51~) → デレク(03:14~)で段階的に興奮度が増す
- The Decision…リズム隊のパフォーマンスが光るナンバー。00:05~のヤスの弾力性のあるベースとブルーノのバスドラがマッチしていて超心地良い。ディノは緩急をつけながら歌声を伸ばすスタイル。04:04からはヤスとブルーノの刺激的な演奏を土台にキリキリするようなフレーズが展開する。05:32で一瞬、ディノが曲の中で一番高い音域に突入
- Crawl…ピロピロ/ピリピリ(00:00~) → ゴリゴリ(00:10~) → フワフワ(00:33~)がいい流れ。01:15~ではディノのVoとメロディックな演奏が絶妙のコンビネーション。脅威が迫るような03:10~も最高で03:16からは00:00~をうまく組み込む。03:33~のディノの適度なズレ具合もツボ
- Find My Way Back…ドラマティックで感動的なバラード。神聖かつ包容力のあるデレクのキーボード(00:00~) → ディノの響きのあるVoがすばらしい。00:52ではディノの音域が上がるのかと思ったら逆に下がる(とてもいいひねり)。音域が上がるのは01:42からで、ここから高揚感が増す。ミステリアスさが加味(02:33~) → それまでの曲調とは対照的なロンのギター・ソロ(03:02~)もさすがの構成
- Crucifier…ボコボコ(00:00~) → ドコドコ → ディノが吠えて本編スタートの流れに燃える。00:34~のディノもかなりアグレッシヴでやっぱり燃える。00:50からはデレクがいい感じにキラキラ。一定間隔を置いてつまずき気味になる02:07~も面白い。03:02からはロンがピリピリ。「Find My Way Back」でのソロとのギャップがまたいい
- Keeper Of The Gate…ヘヴィでズレてる。01:07から軌道に乗るが、やはりそれまでの演奏がツボ。まるで不安を煽って楽しんでいるかのよう。02:37~のデレクのヒラヒラしたキーボードがまた快感
- Hypernova 158…インストゥルメンタル。デレク、ロン、ヤス、ブルーノがハイエナジーなプレイをみせる。00:48~はRAGE「Unity」(2002年『UNITY』収録/これもインスト)の00:25~を彷彿。02:18からヘヴィになり、02:34からエモーショナルなフレーズが重なる
- Insanium…ジリジリ&躍動感のある演奏にディノのリズミカルなVoが乗る。サビ(00:59~)はアルバム最後にピッタリなメロディ。デレクがウィーン!とする02:17~、ヘヴィに迫って不気味さが増す02:45~(サビ前の00:58~の延長)にも引き寄せられる。03:32からメランコリックになり、ディノも曲調に呼応するがデレクは速弾き(04:24~)。05:42からのロンのギターもエネルギッシュなので、最後は盛り上がって終わるのかなと思っていたら、02:45~が繰り返されながらフェードアウト。意外
RAGE『AFTERLIFELINES』
通算26作目。
本作は結成40周年記念作で二部構成(前編:バンド演奏/後編:オーケストラをフィーチュア)となっています。
前作『RESURRECTION DAY』(2021年)は『GHOSTS』(1999年)以来の4人編成での作品でしたが、ステファン・ウェーバー<G>休養のため、バンドは再びトリオ編成となりました。
前編も後編もどちらも充実していて、期待を上回る仕上がり。
出だしで一撃KOの曲が多いのも特徴の1つです。
前編の始まりが「In The Beginning」で後編の終わりが「In The End」ということからも作品のスケールの大きさと統一感が感じられますね。
「Interlude」には過去の曲がいくつか登場。
あとECLIPSEのファンは「Justice Will Be Mine」に注目です。
前編のおすすめ曲
- In The Beginning…「Beginning Of The End」(『GHOSTS』収録)の00:00~に通じるピアノが鳴ってスタート。00:31から劇的要素が強まる。「オーケストラ編のオープニング?」と錯覚してしまう
- End Of Illusions…「In The Beginning」のドラマティックな音像をピロピロしたギターがかき消す。00:23からピーター“ピーヴィー”ワグナー<Vo/B>が合図 → 疾走。サビ(00:57~)では高音域の歌メロが展開(やや荒っぽいところがピーヴィーらしい)。そして01:21からは低音で吠える(それまでの音域とのギャップがまたナイス)
- Under A Black Crown…強引なとらえ方をすれば00:00~のギターが「Refuge」(1993年『THE MISSING LINK』収録)の00:00~に通じる。曲名を歌う音域が上下するサビ(01:00~)が印象的。ブルータルな01:29~や連打の02:48~もかっこいいアクセント
- Dead Man’s Eyes…ドドン!とする00:00~にKO。00:42~はスピードは異なるものの「The Crawling Chaos」(1995年『BLACK IN MIND』収録)の00:47~を想起させ、ピーヴィーが声を伸ばしながら歌うサビ(00:53~) → 疾走(01:14~)の流れがアツい。減速してヘヴィになる02:18~も効果的
- Mortal…SLAYER「Death’s Head」(1998年『DIABOLUS IN MUSICA』収録)のように始まる。ピーヴィーのベースがかっこいい。歌はワイルドでゴロゴロした感じで、サビ(01:20~)では低音域を維持しながらメロディックになる。02:46~のギターも染みる
- Toxic Waves…「Dead Man’s Eyes」より軽めのドドン&メロディックな00:00~に即効性あり。00:19からピーヴィーが吐き出しながら歌い始める。本編は刺激的なバスドラ連打を絡めながら進行。02:36~のギター・ソロも浸透度が高いフレーズ(速弾きから入るところがまたいい)
- Waterwar…シリアスでメロディックな00:00~がかっこいい。ピーヴィーの高音域のVo(00:40~) → ザクザクしながらの突進演奏が特徴的。エンディングの03:17~で00:00~を再び体験できるのがうれしい
- Justice Will Be Mine…この曲も00:00から期待感を煽ってくる。サビ(01:11~)はメロディがECLIPSE「Battlegrounds」(2012年『BLEED & SCREAM』収録)のサビ(00:50~)のよう。01:27からは一緒に歌おう。03:11でヘヴィになって03:42からエキサイティングなギターが重なる流れもすばらしい
- Shadow World…混沌としていて刺激的。ピーヴィーも00:17からカオスな感じで歌い始める。不穏な空気を放ちながらもメロディックなギター(00:38~)がいい味を出している。02:02~のソロもスリリング
後編のおすすめ曲
- Cold Desire…「Overture」(1998年『XIII』収録)のように始まり、00:45から疾走。EDU FALASCHI「Sea Of Uncertainties」(2021年『VERA CRUZ』収録)の00:14~をよりスリリングにした感じでかなりかっこいい。吠える(01:40~) → 音域を上げてのサビのアプローチはピーヴィーならでは。サビの歌メロを継承するギター・ソロ(02:53~)も最高
- Root Of Our Evil…00:00~にグッとくる。サビ(01:18~)ではそれまでより音域を下げて00:00~のメロディをピーヴィーが歌う。なかなか心地良い。03:20からのエフェクト処理もいいスパイス
- Curse The Night…ストリングスの組み込み方が効果的。切なくもあり高揚感のある歌メロ(00:48~) → 曲名をコール(01:02~) → サビの流れがすばらしい。01:57~のギターとピアノ、加速する02:46~も聴きごたえ十分
- It’s All Too Much…00:00~のヘヴィな音像に圧倒される。ピーヴィーは声の太さを前面に出した歌唱。鬱屈する02:17~、02:49~のエモーショナルなギター、悲壮感のあるエンディング(04:32~)など、魅せる場面が多数
- Dying To Live…「Black Room」(『RESURRECTION DAY』収録)を思わせるバラード。物悲しいメロディにジーンとくる。ピーヴィーが曲名を歌う → 泣きのギターのアプローチ(01:48~、03:06~)も光る
- The Flood…躍動感のある00:17~にドキドキ。ピーヴィーは中音域をゆらゆらしながらの歌唱で、音域が上がりそうで上がらない00:56なんかは面白い。吠えて00:17~が再登場する01:28~がとてもナイス。いい感じに引っ張ってドンドンドンとなる03:40~も耳に残る
- Lifelines…約10分の大作。ピーヴィーのVoは中音域中心。スローで力強い00:46~、01:02~の哀愁ギター、緊迫感が増す04:37~、06:09~の連打、より壮大になる07:57~、シャープでリズミカルになる09:14~など、魅力的な演奏があちこちにある
- In The End…静かな曲調の中でピーヴィーが渋い歌声を響かせる。エレクトリックな演奏(01:15~)とピーヴィーの高音域Vo(01:41~)を挟む構成がすばらしい
WHILE SHE SLEEPS『SELF HELL』
英国のメタルコア・バンドの6作目です。
スクリームとクリーンVoをうまく活用。
スクリームそのものも聴きやすく、クリーンVoはメロディに加え、響き具合も心地良いというのが大きな魅力です。
スクリームの音量を小さめにしている場面もあるのですが、この力加減がまた絶妙。
トリッキーな音を曲の中に組み込ませる奏法も見事です。
おすすめ曲
- PEACE OF MIND…00:23~の低音ヴォイスにハッとさせられる。ドドドドドドドン!がこれからの展開への期待を高めてくれる
- LEAVE ME ALONE…アグレッシヴなスクリーム(00:30~) → 低音ヴォイスでのラップ(00:47~) → 低音域クリーンVo(01:04~) → 再度ラップ(01:18~)の流れがかっこいい。ドラムが暴れる02:05~/02:21~、差し迫った感じの02:39~、光線銃のような03:03~にも気分が高まる
- RAINBOWS…控えめなスクリーム(00:22~) → メロディアスなクリーン(00:35~)へと展開。01:04~のフェイント、一時停止の01:11~がなかなか面白い。01:53~のドドドドンと02:06~のヘヴィなパートは強烈なアクセント。03:52~のドラムの連打もかっこいい
- SELF HELL…やや緩めのクリーンVo(00:00~) → 切迫感のある演奏 → スクリームで曲のタイトル(00:18~) → 本編へ。00:38~は音域、メロディ、響き、どれも最高。そして00:56~のスクリームに燃える。クリーンVoをいったん引っ込める01:13~、「bad I wanna die」が前面に出る01:50~、手拍子を挟む02:44~もうまい。キュルキュルし始める02:56~、ドラムが暴れ続ける03:14にもテンションが上がる
- WILDFIRE…早くも00:05から良質メロディが舞う。02:00ではヘヴィさが強調され、02:21からは極上の哀愁フレーズ(02:27でエフェクト声を入れるアレンジもさすが)
- DOPESICK…ひっかくような00:17~がツボ。サビ(00:56~)では歌い出しにドキッとなり、物悲しさと力強さが同居した絶品のメロディが展開する。ドラムの暴れ&シュルシュル(02:17) → エモーショナルな演奏パートへと流れる構成もナイス
- DOWN…00:00~は工場で警報が鳴っているようなイメージ。スクリーム(00:23~) → 「do~~~~wn」と伸ばす唱法がキマッてる。ゲップのような00:34~も面白い。02:08~の突進、03:43~の畳みかけも燃える
- TO THE FLOWERS…浮遊感のある曲名のメロディ(00:49~)が素敵。01:31からピロピロ/フワフワしながら突き進み、01:39からは音量小さめのスクリームが加わる。02:39から「Down, down down」と前の曲名を繰り返す(メロディと響きが心地良い)。ちょっと泣きの入ったギター・ソロ(04:13~)もいい
- RADICAL HATRED / RADICAL LOVE…より切なく劇的になる00:51~に感極まる。ここでもVoの響きがいい感じ
2024年4月
ERRA『CURE』
アメリカのプログレッシヴ・メタルコア・バンドの6作目。
「Rumor Of Light」のすばらしさにやられます。
こんないい曲を2曲目に配置されたら、その後の展開が気になって仕方ない。
以降も
- テクニカルでダイナミックな演奏…要所要所での刻みと連打も効果的
- 激情型グロウル&高品質なクリーンVo
といったスタイルで魅せます。
クリーンVoにグロウルを重ねるアプローチがまた見事で、WHILE SHE SLEEPS『SELF HELL』のように、場面によってグロウルの音量をコントロールする手法が秀逸です。
おすすめ曲
- Cure…ため込んだ闘気を徐々に解放していくかのよう。01:12~のメロディがスーッと入ってくる。01:44~のエコーもいいアレンジ。後半は変則的な02:51~に引き込まれる
- Rumor Of Light…00:05~がなかなかいい間隔での連打。Voはグロウル → 浮遊感のある音像の中でうっとりするクリーン(00:49~) → 重厚な演奏の中での極上メロディ(01:12~)という最高の流れを踏む。01:29~でのグロウルとの相性も抜群。02:33~のギター・ソロも体を温めてくれる
- Idle Wild…グロウルがリズミカルな演奏(00:16~/ここでも刻みと連打のパターンが効果的)にピッタリとハマっている。クリーンのサビが終わった後にポワ~ンとなる01:07~が印象的
- Blue Reverie…メランコリックでゆがんだクリーンVoが響き渡る。01:45~のかなり控えめなグロウルがまたいいアレンジ。そして02:47からが転換点。キリキリしてヘヴィになる
- Glimpse…ヘヴィな演奏と野太いグロウルが支配する中、00:44~のギターが程良く刺激的。00:58からはきれいなクリーンVoに包まれる
- Past Life Persona…全体的にPERIPHERY「Flatline」(2016年『PERIPHERY III: SELECT DIFFICULTY』収録)の04:48~に通じる。00:29~のフレーズが心地良く浸透し、00:40~の歌い出しにグッとくる。01:09ではクリーンVoとメロディックなギターが絶妙に交錯。02:39からはグロウルが被さるが、やはり音量の調整がうまい
- End To Excess…00:18~のドドドン、01:05~の連打が光る。01:19からは高音域の切ないクリーンVo。03:24~のグロウルのパターンにも力が入る
- Pale Iris…グロウルとともに突進(00:06~) → クリーンVoとともにスロー・ダウン(00:39~)の攻めが効いている。どんよりする02:09~もいいアクセント
- Wave…心地良い刻みと連打を軸に進行。クリーンVo主体のサビ(00:55~)がすばらしく、01:07~のグロウルがここでも適度な音量。涼しい声の響き(01:10~)も最後の曲っぽい雰囲気が出ている
VANDEN PLAS『THE EMPYREAN EQUATION OF THE LONG LOST THINGS』
ドイツのプログレッシヴ・メタル・バンド、11作目。
『THE GHOST XPERIMENT – ILLUMINATION』以来、約3年半ぶりのリリースとなります。
歌も演奏も高品質で充実の内容。
重厚な音像の中で切ないメロディがあちこちでキラリと輝きます。
演奏中心でなかなかVoが始まらない「The Empyrean Equation Of The Long Lost Things」(Voが始まったら始まったで最高の歌メロ)、極上メロディを伴ってミドル・テンポで攻める「My Icarian Flight」のアタマ2曲が特にすばらしい。
「The Sacrilegious Mind Machine」では一瞬『北斗の拳』になります。
ラスト「March Of The Saints」は約16分の長尺曲。
「長さを感じさせない大作」とまではいきませんが、随所に魅力的なメロディを配置していて、最後の最後まで聴かせる構成が見事です。
アレッサンドロ・デル・ヴェッキオが今作からキーボードをプレイしています。
おすすめ曲
- The Empyrean Equation Of The Long Lost Things…ヴェッキオの物悲しいピアノ(00:00~) → ステファン・リル<G>の泣きのギター(00:44~) → スリリングな演奏(01:25~)の流れを踏んで、02:54からちょっとゆがんでダークでミステリアスになる。歌が入るのは04:07からで聞こえてきた瞬間ドキッとする。歌い終わった後のギター(05:04~)がまたすばらしい
- My Icarian Flight…00:14~の哀愁ギターにやられる。そして00:35~のヴェッキオの耽美的なキーボードの+アンディ・クンツ<Vo>の切ない歌が絶品(アンディの歌は全パートが最高)。グリグリする01:38~やゴロゴロ/モヤモヤする02:41~もうまいアレンジ。刺激的な演奏(03:10~) → ギター・ソロ(03:26~) → 高音域のVo(03:46~)では気分が最高潮になる(ヴェッキオのキーボードが通り過ぎる04:07~がまた◎)
- The Sacrilegious Mind Machine…05:10~がクリスタルキング「愛をとりもどせ!!」(『北斗の拳』のオープニング曲)の00:01~
- They Call Me God…静 → 動(03:33~)の展開を持つ。曲調の許容範囲内で速弾きを絡めながらのステファンのプレイがすばらしい。アンディのVo(04:33~) → エフェクトVo(04:57~)の展開や曲名を歌う05:23~も見事なメロディ
- March Of The Saints…約16分。JUDAS PRIESTのような演奏 → 哀愁メロディ(00:45~/アンディのVoとヴェッキオのキーボードが見事)。そして01:31~に気分が高まる。03:24~は潤いがあって音質も旋律も素敵。歌の音域が下がる09:13~は想定外の極上メロディ。10:47から歌声にエフェクトが入り、「The Empyrean Equation Of The Long Lost Things」の04:07~が再び訪れる。演奏がフェードアウトしながらエンディング…かと思っていたら、14:25からヴェッキオのピアノが入る。切なく美しい…
PRAYING MANTIS『DEFIANCE』
英国のPRAYING MANTIS。
ジョン“ジェイシー”カイペルス<Vo>が歌う作品としては『LEGACY』(2015年)、『GRAVITY』(2018年)、『KATHARSIS』(2022年)、に続き4作目となります。
4曲目はRAINBOWでおなじみの「I Surrender」(ラス・バラード作曲)。
PRAYING MANTISは、
- デビュー作『TIME TELLS NO LIES』(1981年)制作時に「I Surrender」をレコーディングしたものの未発表
- 代わりに「Cheated」をシングルでリリース
といった経緯がありますが、今回ジョンのVoで収録されることとなりました。
アルバムは、この「I Surrender」以降が特に充実しています。
おすすめ曲
- Defiance…センチメンタルな00:00~にやられる。そして00:10からティノ・トロイ<G>が泣きながら追いかけるというヤバい展開。ジョンの歌に重なって始まる01:23~のプレイもエモーショナルで見事。ジョンの太い声による優しい歌メロが光る
- I Surrender…ジョー・リン・ターナーが歌うRAINBOW版(1981年『DIFFICULT TO CURE』収録)もすばらしいが、こちらも高品質。ジョンの野太い声がカチッとハマっていて、ティノのギター(00:55~)はRAINBOW版より湿り気が増した感じ。RAINBOW版はフェードアウトして終わるが、PRAYING MANTIS版は03:31からのジョンの「I surrender」と共に躍動感が増す。かっこいい締め方
- Forever In My Heart…00:05~の哀愁ギター+ピアノが染みる。00:21~のクリス・トロイ<B>のベース・ラインもいい。そして00:35からジョンが「Clo~se to me~」と感動的なメロディを歌う。以降、この「Clo~se to me~」がいい感じに繰り返される。02:39からは歌より音域を上げてのティノのギター・ソロ。エモーショナルなフレーズが刺さる
- Give It Up…サビでの「Give it up」が最高にかっこいい。適度にガッツがあって安堵感を伴ったアレンジが絶品。一緒に軽く拳を振り上げよう
- Nightswim…「さすがトロイ兄弟」のインストゥルメンタル。ティノが浸透度の高いメロディックなギターを奏で、クリスは随所で魅力的なベースを響かせる。少しミステリアスになる02:04~もいいアクセント
- Standing Tall…リズミカルでノスタルジック。00:20~のポコポコが新鮮で、00:36~のフレーズがまたたまらない。ジョンも曲調に合ったメロディをかなりかっこよく歌う。歌声が伸びる(03:53~)→ ギター・ソロもアツい流れ。エンディング付近(04:43~)での「Hey!」に気が引き締まる
- Let’s See…ガツンとキラキラ → ウェットな感覚で快走。ジョンの「Le~~t’s see」(00:52~)がいいメロディ。ティノのギター・ソロは02:52から始まるが、特に03:05~が充実。03:29~のクリスのベースもクールでトロイ兄弟の段階的な攻めが効いている
MELVINS『TARANTULA HEART』
アメリカのヘヴィ・ロックの大御所による27作目。
ハマり度の高さがハンパなく、浴びれば浴びるほど心地良いサウンドです。
前作『BAD MOON RISING』(2022年)に引き続き長尺曲による幕開け。
『BAD MOON RISING』の1曲目「Mister Dog Is Totally Right」は14分でしたが、今回の「Pain Equals Funny」は19分。
さらに長くなっています。
「Mister Dog Is Totally Right」はドコドコしながら遅く重く展開しましたが、「Pain Equals Funny」は、
- ハードではあるが湿っぽさとポップ感覚を伴いながら進行 → 05:16からジリジリし、05:33からグルーヴ感が増す。バズ・オズボーン<Vo/G>の歌は音量控えめ
- 08:54から要警戒な音像がフェードイン。以降、不気味な10分間
という感じで、2曲が1曲にまとまったような構成です。
「Working The Ditch」は耳元での蚊の音を大きくしたような00:10~がツボ。
そして00:51からヘヴィにかっこよく進行し、バズのシャキッとした歌い方がキマッてます。
オカルトっぽくなる05:16~も面白い(エコーのかかり具合も◎)。
「She’s Got Weird Arms」は00:27~の音と00:41~のバズのVoが摩訶不思議。
これがしつこすぎない感じで繰り返されます。
「Allergic To Food」はノリが良くカオスで、窓をふいている時に出る音みたいな00:13~が独特。
しかもこの窓ふき音が頻繁に登場するのでジワジワきます。
「Allergic To Food」のエネルギーはラストの「Smiler」に引き継がれ、00:03~の畳みかけを軸に展開。
このパートはAEROSMITH「Falling In Love (Is Hard On The Knees)」(1997年『NINE LIVES』収録)の00:03~に通じるものがあります。
HIGH ON FIRE『COMETH THE STORM』
SLEEPのギタリストでもあるマット・パイク<Vo/G>率いるHIGH ON FIREの9作目。
元MELVINSのコーディー・ウィリス<Ds>加入後初の作品でもあります。
『ELECTRIC MESSIAH』(2018年)以来、約5年半ぶりのアルバム。
ヘヴィなサウンドとマット・パイク<Vo/G>の野性的なガラガラ声によるワイルドなVoが迫力満点で、コーディーの爆発力のあるパフォーマンスにも引き込まれます。
ラストの「Darker Fleece」は10分。
聴いていて「長いなあ」となるものの退屈さを感じさせない魔力があります。
おすすめ曲
- Lambsbread…コーディーのスネアの叩きつけがエキサイティング。03:23~でいったん引っ込み、04:08からギター・ソロ。高音域の04:19~、05:14~にテンションが上がる
- Burning Down…ドッシリと攻めるナンバー。放出エネルギー多めのマットのVoに胸がアツくなる
- Trismegistus…00:17~がGAMMA RAY「Land Of The Free」の00:00~。これまた意外な曲がリンクしてきて面白い
- Cometh The Storm…ドコドコしたコーディのドラムとジェフ・マッツ<B>のベース(00:08~)が心地良い。マットは00:57~の声を伸ばす唱法が印象的。アブノーマル度が増す04:16~のギターもインパクトがある
- Karanlık Yol…尊くて幻想的。00:26~では一緒に手を叩こう
- The Beating…疾走。荒っぽく進行する中、マットの声を伸ばすパフォーマンスが光る(00:27~、01:07~、01:20~)。01:36~のギター・ソロも切れ味抜群
- Tough Guy…「The Beating」からつながって、今度はスローに進行。「Burning Down」のようにかっこよくキメる
- Lightning Beard…ガツンとした始まりに気合いが入る。コーディのドコドコ・ドラムも刺激的。00:36からはひそかにジェフのベースがグリグリ。01:59~のギター vs. ベースも好勝負
- Hunting Shadows…マットの歌メロがつかみにくいのだが、これが逆にツボ。割と唐突に始まる03:51~では、メロディックなギター → ベース(03:58~)の流れがいい
- Darker Fleece…「Hunting Shadows」からつながり、不気味なギターが鳴り響く。01:40からコーディのドラムが入りスローでヘヴィに進行。途中で曲のテンポが変わることはなく、ある意味平和な10分間
THE GHOST INSIDE『SEARCHING FOR SOLACE』
アメリカのメタルコア・バンドの6作目。
セルフ・タイトルの前作から約4年ぶりのアルバムとなります。
グロウルは骨太で迫力があり、クリーンVoでは高品質メロディを連発。
「Secret」「Cityscapes」なんかは歌い出しに即効性がありますし、「Wash It Away」では、場面によって声質を変える攻めが効いています。
グロウル中心に展開しつつもサビでセンチメンタルになる「Reckoning」もすばらしい。
そしてラストの「Breathless」。
これは泣ける…。
エネルギッシュに攻めながら涙腺を刺激してきます。
おすすめ曲
- Going Under…00:31でクリーンVoが入った瞬間、気持ちがスッとする。サビ(00:42~)では極上メロディが進行。00:50から適度なエコーとともに曲名をかっこよく歌い、01:01ではグロウルでアグレッシヴにキメる。02:42~も素敵な歌声
- Secret…低音クリーンVo(00:14~) → グロウル(00:31~) → クリーンVoでのサビ(00:46~)が絶品。01:28~の疾走 → サビも見事なひねり具合
- Wash It Away…00:13~のギターがメロディックで快感。低音Vo(00:22~)→ ソフトな歌(00:42~/とても魅力的!) → 声にエフェクト(00:48)→ 躍動感のあるサビへと緩急をつけながら攻める
- Cityscapes…空間的できれいな演奏 → 歌い出し(01:00~)にドキッとする。01:35からバンド演奏。02:16~のメロディがまた美しい
- Earn It…グロウル(00:14~) → 控えめなクリーンVoを絡める(00:30~/とてもいい塩梅) → クリーンVoのサビ(00:38~)の流れが◎
- Reckoning…グロウル主体で進む。サビ(00:41~)で哀愁テイストを加えるアプローチが秀逸。02:39~もいい引き具合
- Breathless…疾走+グロウルで展開する中、00:39から極上のサビ。アルバム最後だから余計ジーンとくる…
ACCEPT『HUMANOID』
通算17作目。
マーク・トーニロ<Vo>加入以降では6枚目のアルバムです。
勇壮な歌メロを伴った硬質な演奏を展開。
独特な唱法を軸としながら要所要所でヒステリックな高音域を繰り広げるマークのヴォーカルも見事です。
曲名を歌うサビにインパクトのあるナンバーが多く、アグレッシヴであると同時にベテランならではの落ち着きが感じられるのも特徴の1つ。
各曲での等身大によるパフォーマンスが光るという点では、MAGNUM『HERE COMES THE RAIN』やSAXON『HELL, FIRE AND DAMNATION』に通じるものがあります。
おすすめ曲
- Diving Into Sin…マークの「Di~ving」(01:26~)→ 悪魔的な「Diving into sin」にドキッとする。ヒステリックさが強調される02:16~もACCEPTならでは。ギター・ソロは泡みたいになる02:53~が面白い。ソロの後はマークの狂気度が増す
- Humanoid…高音ギター&叩きつけに少しビックリする。勇ましく不気味でもあるバックVo(00:47~)、その後の「Humanoid!」(01:12~)が個性的。ドン!ドン!となる02:45~もいいアクセント
- Frankenstein…00:00~がDEGREED「Who Are You (To Say)」(2023年『PUBLIC ADDRESS』収録)のよう。「Hey!」(01:10~)→「Fran」「knen」「ste~in」が程良い力強さ。ギター・ソロ①(02:42~) → マークのVo(03:17~がアツい) → ギター・ソロ②もいい流れ
- Man Up…「Wanna Be Free」(2014年『BLIND RAGE』収録)のような感じで進む。01:07からはキーボードが加わり、サビ(01:25~)での「Ma~n up」がやはり独特
- The Reckoning…サビの「This is the reckoning」が耳に残る。マークがサビ前にちゃんとヒステリックになってくれるのがうれしい
- Unbreakable…00:22~のマークのVo → もじもじしたギターがいい感じにツボ。サビ(01:19~)ではマークの声1本 → バックVoを重ねての「Unbreakable」。勇ましい
- Mind Games…迫ってくる00:43~にワクワクし、潤いがあってゴージャスな「Mind Games」(00:58~)に爽快さを感じる。雄々しさが加わる02:27~がまたいいアレンジ
- Straight Up Jack…歌い出しの「No sugar」(00:27~)が印象的。サビ(01:11~)では「Unbreakable」同様、マークの歌1本 → バックVo込みの曲名。シャープに「Straight Up Jack」とキメる
- Southside Of Hell…00:00~がエネルギッシュで、00:43~がスリリング。03:01~のギター・ソロがまたすばらしく、03:32でドン! → ソロ再開&勇壮なコーラスという抜群の攻めをみせる
2024年5月
FM『OLD HABITS DIE HARD』
スティーヴ・オーヴァーランド<Vo/G>を中心とする英国メロディック・ロック・バンドの14作目。
バンド結成40周年記念作品でもあります。
歌と演奏に円熟味があり、高品質メロディがたくさん。
充実の内容です。
曲名を魅力的に歌い上げるナンバーが多いのも特徴の1つ。
「Out Of The Blue」では早口気味、「California」では歌声を伸ばしたりと緩急のつけ方が見事ですし、「Cut Me Loose」ではサビの中で力を抜く唱法が光ります。
シリアスでハードな「Black Water」も聴きごたえがあります。
おすすめ曲
- Out Of The Blue…骨太で落ち着きのある演奏の中に都会の夜っぽい雰囲気もにじませる。早口気味のVoは01:09から。上質のメロディがするりと通り過ぎる
- Don’t Need Another Heartache…清涼感のあるサビが心地良い。2回目のサビでの02:17~もいい変化球。03:25からは絶品のハーモニーが押し寄せる
- No Easy Way Out…00:00~のギターがゆっくり染みてくる。サビ(00:51~)が「Killed By Love」(2018年『ATOMIC GENERATION』収録)の00:00~のよう。哀愁が加味される01:08~やそれなりに突き上げる02:15~も見事
- Whatever It Takes…歌声を伸ばす(00:57~) → サビ(01:13~)がいい流れで「Whatever it takes」のハーモニーが分厚くさわやか。02:58~のギター・ソロも程良く湿っていて魅力的なフレーズ
- Black Water…「I’m coming home」(01:31~) → ドン!ドン!が耳に残る。要所要所で前面に出るベースや03:09からの高音域ギター・ソロもいい。04:14~の「Black Water」は控えめな不気味さが〇
- Cut Me Loose…程良くハードな演奏にスティーヴの味わい深いVoが乗る。01:03~にワクワク(メロディもハーモニーも一級品)。サビでは音域を下げて緩める01:33~が光る
- California…スリムで爽快感がある。サビでの「Ca~~~lifornia」がいいメロディで曲名の伸ばし方も絶妙。01:19~のブレイクもいい感じ
- Blue Sky Mind…サビからポジティヴなエネルギーがあふれ出る。03:24~のギター・ソロもサビのオーラを継承。前向きな気持ちを後押しする
CROWNSHIFT『CROWNSHIFT』
- トミー・トゥオヴィネン<Vo:MYGRAIN>
- ダニエル・フレイベリ<G:ex-NORTHER>
- ユッカ・コスキネン<B:NIGHTWISH, WINTERSUN, ex-NORTHER>
- へイッキ・サーリ<Ds:FINNTROLL, ex-NORTHER>
による新バンドのデビュー作。
すばらしいアルバムです。
トミーが歌うMYGRAINは地球外の要素があってSOILWORKに通じる部分がありますが、本作もそんな感じ。
奥行きのある音像の中に配置される歌と演奏のメロディの充実ぶりがすごく、場面によっては切なかったり、清涼感を出したりとメロディの質にもこだわります。
ラストの「To The Other Side」は10分の長編。
緩急を持たせながらもアグレッシヴさを維持していて、力強く締めくくります。
おすすめ曲
- Stellar Halo…冷酷なカウントダウン(00:31~)にドキドキする。01:21~でのグロウルからクリーンへの浄化が印象的。01:45~のかけ声はCHILDREN OF BODOMを彷彿させる。03:49~のギター・ソロもエキサイティング
- Rule The Show…00:00~がRAGE「Cold Desire」(『AFTERLIFELINES』収録)の00:43~に通じる。突進力があって迫力満点。いったん速度を落としてのパート(00:17~)はVoに力が入る00:59~が特にアツい。そして01:36からまたかっ飛ばす。02:54~の少しゆがんだVo → キーンとしたギターも刺激的
- A World Beyond Reach…00:09~がいい感じに浸透してきて、00:16~で泣きの度合いが強まる(二段階攻撃が効いている)。サビ(01:08~)では00:16~をバックに極上のクリーンVo。02:16からは音域が上がりながら物悲しさもにじみませる
- If You Dare…クリーンVoによるサビ(01:33~)が引き続き絶品。ハーモニーが魅力的で安堵感を得られる透明性の高いメロディが展開する(サビに行くまで少し待たせる01:23~がまたいい)。テンション高くメロディックに進む03:08~のギター・ソロも見事
- My Prison…静 → 動の展開を持つ。00:28~が寒くて少し不気味。01:31からクリーンVoによるハーモニーと共に加速。ここでも高品質できれいなメロディが伴う。切なく突き上げる(02:42~) → 悲哀のギター・ソロ(02:50~) → 神聖なバックVo(03:19~)も抜群の構成
- The Devil’s Drug…地球外生命体による接触のように始まり、本編は鋭くアグレッシヴに展開する。00:35のライドシンバルがいいアクセント。サイレンのように迫る02:16~ → 高音域でピリピリした02:22~もスリリング
- Mirage…インスト。渋く美しい01:19~ → 哀愁フレーズが被さる01:45~の流れがたまらない。02:45~も琴線に触れる
- To The Other Side…00:32~のバスドラ連打に燃える。01:05からは「Stellar Halo」のカウントダウンのような機械的な声。Voの高揚感が増す(06:30~) → ダークな空間が広がる(06:51~) → 陽が差し込む(07:24~) → メロディックなギター(08:05~)が絶品の流れ。最後はバスドラ連打でパワフルに終わる
THE TREATMENT『WAKE UP THE NEIGHBOURHOOD』
英国ハード・ロック・バンドの通算6作目。
本作で歌っているトム・ランプトン<Vo>は三代目のシンガーでトム加入以降では3作目となります。
AC/DC系のエッジの効いたギターを主軸としたサウンドの中で親しみのあるメロディが展開。
ノリの良さを維持しながらもガツガツしすぎていないところにとても好感が持てます(「Don’t Make No Difference」「Fire Me Up」はテンション高めですが…)。
3曲目なんかはタイトルからハードな展開を想定しますが、歌メロは意外と緩め。
こういったギャップも面白いです。
おすすめ曲
- Let’s Wake Up This Town…KIX「Same Jane」(1991年『HOT WIRE』収録)のような幕開け。トムがアルバム・タイトルをコールし、ノリ良く進行。サビ(00:37~)では一歩引いて曲名を歌うパフォーマンスがキマッてる。アルバムやライヴのオープニングはもちろん、コンサート開演直前のBGMにも最適(曲が終わると同時に会場が暗転したら興奮しそう)
- Back To The 1970’s…程よくガッツのある演奏と和やかで前向きな歌メロ(特に00:19~が◎)が見事にマッチ。ギター・ソロは、高音域(01:39~/これがいい感じに刺さる)→ 中音域 → 01:39~より高い音域(01:59~)の奏法が光る
- When Thunder And Lightning Strikes…キャッチーで優しい00:11~がいいメロディ。脱力感のある「ア~イ」(00:41~)も印象的で、サビではソフトに曲名を歌う。2回目のサビが終わると同時に始まる渋いギター・ソロ(02:03~)、ヒートアップする02:38~、引っ張るエンディングも◎
- I Can’t Wait No Longer…00:03~にやられる。トムのVoは音域を下げて伸ばす00:53~が特にいい。歌メロが軸になりそうでなっていないギター・ソロ(02:51~)も面白い。03:53からはVoの音域が上がる。アツい
- Don’t Make No Difference…エネルギッシュに進む中、トムの音域の微妙な下げ(00:06~、00:19~)が光る。00:28~はハイライト。どんどんボルテージが上がっていく…と同時に「休みながらでいいのに」と少し心配になる
- Fire Me Up…トムのVoがシャキッとしている。00:42からは「Don’t Make No Difference」のように高音域。Voと対照的な音域で展開するギター・ソロ(02:07~)がまたいい
- Free Yourself…00:38~の歌メロが軽快で温かい。その後にギターを続けるアプローチもさすが。01:51からドンドンするドラムもいいテイストで、02:17からのギター・ソロにもこのドンドンを絡める(02:22~)。ギター・ソロ自体もキンキンしていて最高
- Kick You Around…ヒゲダンスっぽいスタート。サビ(00:38~)が自然と頭が上下する心地良さ。ドラムがここでもいいアクセントで01:31から軽くドンドンする。ギター・ソロは02:02~が特に染みる(軽めのドンドンも絡める)
- I’ve Got My Mind Made Up…リラックスしながらリズミカルに曲名を歌うサビ(00:28~)が素敵。ドラムのドドドド(00:40~)もいい感じ。01:32~のギター・ソロは透明感があって懐かしさも感じられる
PAIN『I AM』
HYPOCRYSYのピーター・テクレンによるプロジェクトの9作目。
HYPOCRYSYではヴォーカル/ギターのピーターですが、PAINでは全てのパートをこなしています。
PAINのアルバムは『COMING HOME』(2016年)以来、約7年半ぶり。
リズミカルで混沌とした中、エフェクト処理されたピーターのクリーンVoを主体としたキャッチーなメロディが舞います。
「Party In My Head」「Push The Pusher」なんかはハマり度が高いですね。
本編はクリーンVo中心であるにもかかわらず、1曲目「Just Stopped By (To Say Goodbye)」のVoの始まりがグロウルというのも面白いです。
おすすめ曲
- Just Stopped By (To Say Goodbye)…スネアの叩きつけが心地良い。ピーターのVoは00:13からグロウルでスタート(程よいブルータルさが曲調に合っていて「俺、HYPOCRYSYもやってるんで」というメッセージにもとれる)。01:06から躍動感が増す。02:39からは00:13~のグロウルが控えめに再登場
- Go With The Flow…前半は低空飛行。00:10~なんかはレトロゲームっぽい。重厚になる00:22からは一緒に歌おう。01:36~のメロディも魅力的
- Not For Sale…いきなりジワる…が、00:22からダイナミックに進行する。01:47からは劇的度が増し、02:03からの歌メロにも切なさが加味。02:17~も刺激的
- Party In My Head…ピーターは純度高めのクリーンVoで、サビ(00:56~)では「There’s a party in my head」→ 「ウォ~オ」。キャッチーなメロディを続ける流れがいい
- I Am…物悲しくドラマティック。サビでの「I a~m」が胸に染みる。02:19からは音域が上がりそうで上がらない
- Push The Pusher…「プ」が2回続くからなのか、曲中での「Push the pusher」がツボ。サビ(01:16~)ではかっこよく「Hey! Why so serious?」とキメる。02:39からは少し歌声が伸びて良質メロディが展開
- The New Norm…00:00~にまずワクワクする(特にキーボードが◎)。Voは、リズミカル(00:32~) → 伸びやかなサビ(01:05~)の移り変わりが見事で02:34~もいいメロディ。そして02:50から狂気度が増し、02:57からは予想外のフェイントを仕掛ける。エンディングはそのフェイント+久々のグロウル(「Just Stopped By (To Say Goodbye)」以来)
- Revolution…ヒステリックなスクリーム、テンポ良くメロディアスに進行するサビ(00:36~)がエキサイティングで両方の対照的なアプローチが光る。スローで劇的な02:09~も抜群のかっこよさ
DEMON『INVINCIBLE』
2024年で結成45年目となる英国のDEMON。
本作は通算14作目で『CEMETERY JUNCTION』(2016年)以来、約7年半ぶりのアルバムとなります。
円熟味のあるメロディック・メタルの中で、エネルギーを溜めこみながら歌うデイヴ・ヒル<Vo>のパフォーマンスと魅力的なハーモニー、フレーズがいい感じにマジックを起こします。
歌も演奏も適度にダイナミック。
テンションが高くなり過ぎないような力加減が絶妙です。
本編に入ると同時にKOの「Face The Master」なんかは見事ですし、始まりが『プリティ・ウーマン』な「Rise Up」、エンディングでクスッとさせる「Cradle To The Grave」も面白い。
攻めが多彩です。
おすすめ曲
- In My Blood…魅力的なハーモニーによる「It’s in my blo~od」(サビ)でスタート。01:03からちょこっと前面に出始めるキーボードがいいスパイス。03:14からのギター・ソロはちょっと切ないフレーズが染みる
- Face The Master…ダイナミックでスリリングな00:29~がハンパなくかっこいい(前兆的な00:15~がまた◎)。サビではリズミカルかつパワフルに曲名を歌う。03:06からはエモーショナルかつエネルギッシュなギター・ソロ
- Beyond The Darkside…00:21~の「ウォ~ホ~ホ~」が心地良い。デイヴのVoは音域が上がる00:56からがいい感じ。エフェクト声(02:35~) → 通常の歌声 → ギター・ソロの流れも見事でソロそのものも最高
- Break The Spell…ミステリアスなスタートを切るが、00:48から優しく素敵なメロディに包まれ、01:04からは気持ちが上向く。哀愁の歌メロが伸びる(03:00~) → Voに被せてギター・ソロ → ささやき+ピアノ(03:17~)が絶品。04:40からは高音域の泣きのフレーズでじらす
- Rise Up…Roy Orbison「Oh, Pretty Woman」(1964年)っぽい始まり。高品質なハーモニーによる「All round the wor~ld」(00:57~)と「Ri~se up」(01:11~)に魅了される。それまでの雰囲気と異なる02:50からのギター・ソロもエキサイティング
- Invincible…不思議な音+行進でスタートし、厳かな雰囲気に包まれながらシャープに進む。01:26~が勇ましく、ハーモニーを伴って音域が上がる01:43~もアツい。ドカンとなる02:08~もいいアレンジ
- Cradle To The Grave…00:06~のオルゴールが00:40~に発展。この「オ~オオ~オオ~オオ」が最高。サビでは「From the cradle」「to the grave」とリズミカルに区切る。03:39~は音質が独特。終わったかと思ったら再開する05:41~にジワる
ROTTING CHRIST『PRO XRISTOU』
サキス・トリス<Vo/G/B>とテミス・トリス<Ds>の兄弟によるギリシャのROTTING CHRIST。
2019年13作目『THE HERETICS』以来のスタジオ・アルバムとなります。
儀式的な暗黒サウンドの中で高品質なメロディが展開。
そしてそのメロディが多めに繰り返されます(飽きさせないところがまた見事)。
印象的な語りで始まる曲が多く、Voとギターがマジックを起こしているというのも大きな特徴。
サキスの声も独特で、邪悪なんだけどとっつきやすい。
そんな魅力があります。
おすすめ曲
- Pro Xristou…始まりの「Pro Xristou」にドキッとする。暗黒世界の中で一体感のある力強い呼応が繰り広げられ、00:50から不気味さが増す
- The Apostate…「Pro Xristou」同様、語りでスタート。00:18~のメロディとサキスの低音の語りにゾクゾクする。02:53~からは信仰的なVoをバックにテミスが力強くドラムを叩きつける
- Like Father, Like Son…00:00~のギターを軸に進行。かなり多めに繰り返されるがしつこさが全くない。要所要所でのバスドラ連打や力強い曲名のコール(01:24~)も効果的。02:52からのギター・ソロはゆっくりじっくりメロディアスに迫る
- The Sixth Day…語り → ちょっとポップな00:04~が新鮮。でも暗さをちゃんと維持しているのでホッとする。00:49~のギターもいいフレーズでサキスの邪悪なVoと見事にマッチ。01:04から劇的さが加味。雰囲気が変わる02:19~では、サキスの力を込め気味のVoとテミスのドラミングがかっこいい
- The Farewell…「The Sixth Day」同様、Voとギターがケミストリーを起こす。ここでは01:16~がそれ。01:20~も程良く刺激的。03:47から儀式が本格的に執り行われる
- Pretty World, Pretty Dies…不気味な音像&語り → 00:43からダイナミックに。00:55~のフレーズと01:26~の歌メロが心地良く浸透(01:45~の伸び具合がまたいい)。演奏が薄くなる(03:01~) → 再び厚みが増しギター・ソロ(03:21~)もいい流れ
- Saoirse…ドドドドン(00:23~) → 「Hail freedom」がアツい。01:17からはVoとギターが化学反応。パワフルな04:22~が多く繰り返されるのもうれしい
BRING ME THE HORIZON『POST HUMAN: NeX GEn』
『POST HUMAN: SURVIVAL』(2020年)に続くシリーズ2作目。
- 当初のリリース予定日は2023年9月15日 → 延期未定
- 2024年5月23日に翌日配信開始の案内
という流れを踏み、サプライズ的に5月24日リリースとなりました。
2016年のAVENGED SEVENFOLD『THE STAGE』(発売日当日に告知解禁)の時を思わせるプロモーションです。
先行公開されていた6曲はどれもすばらしかったですが(特に「Kool-Aid」「sTraNgeRs」は◎)、アルバムでは下記のような配置。
- Kool-Aid(2024年1月5日リリース)
- DArkSide(2023年10月13日)
- LosT(2023年5月4日)
- sTraNgeRs(2022年7月6日)
- AmEN!(2023年6月1日)
- DiE4u(2021年9月16日)
公開が一番新しい「Kool-Aid」が前半、一番古い「DiE4u」が後半になっています。
シングルのタイムラインを行ったり来たりしながら遡れるのも『POST HUMAN: NeX GEn』の魅力です。
先行公開以外のナンバーでは以下がおすすめ。
濃密なサウンドと共に即効性のあるメロディが迫ってきます。
先行曲以外のおすすめ曲
- YOUtopia…ジリジリした中で強弱をつけたオリヴァー・サイクス<Vo>のパフォーマンスが光る。「Soul like a」(00:52~)からのメロディが特にすばらしい。ユニークな01:35~でツボにハマり、スクリーム(02:25~) → 演奏パートに胸が熱くなる
- Top 10 staTues tHat CriEd bloOd…キュートな「OK」(00:09~) → エネルギッシュな演奏の流れにニッコリ。「No one’s gonna come and」(00:48~/グ~ン!な音が◎) →「Re~~scue me」がかっこよくて心地良い。02:20からは連打で激しくなる
- liMOusIne…オリヴァーのVoと共にヘヴィにスタートする00:00~にKO。静(00:15~) → 動(01:17~/00:00のパート)へと展開していき、01:58からノルウェーの女性シンガー、オーロラが歌う。ゆがんだ空間の中に妖しい声が響き渡る。よりカオスになる03:31~も刺激的
- n/A…和やかなだけど何かが起こりそう(00:00~) → スクリーム(01:00~) → 結束力のある歌メロが展開する。ピタッと止める01:06~、01:54~がまたいい攻め。02:51からホッとするような感じになり力が抜ける
RHAPSODY OF FIRE『CHALLENGE THE WIND』
通算12作目。
ジャコモ・ヴォーリ<Vo>加入後では3枚目となるアルバムで、
- 『THE EIGHTH MOUNTAIN』(2019年)
- 『GLORY FOR SALVATION』(2021年)
に続く作品となります。
『THE EIGHTH MOUNTAIN』から始まった三部作『THE NEPHILIM’S EMPIRE SAGA』の完結編です。
壮大なメロディック・メタルの中でパワフルかつエモーショナルなメロディが展開。
特にジャコモとロビー・デ・ミケーリ<G>のパフォーマンスがすばらしく、要所要所でパンチの効いた攻めを仕掛けてきます。
前作の「The Kingdom Of Ice」がチラつく「Whispers Of Doom」のようなアプローチもうれしいですね。
「Vanquished By Shadows」は16分の大作。
こういったナンバーの4曲目への配置にバンドの攻めの姿勢が感じられ、曲も全体的に悪くはないのですが、『THE NEPHILIM’S EMPIRE SAGA』の大作の中では『THE EIGHTH MOUNTAIN』の「March Against The Tyrant」や『GLORY FOR SALVATION』の「Abyss Of Pain II」に軍配が上がります。
おすすめ曲
- Challenge The Wind…壮大なサウンドを伴ってバスドラ連打を軸に進行。サビ(01:37~)は力強さと優しさが同居する高品質メロディで、ジャコモの「wi~~nd」が印象的。ロビーのギター・ソロ(03:07~)もエネルギッシュ
- Whispers Of Doom…「Challenge The Wind」より低い音域でのVoで進んでいき、シリアスな雰囲気が漂う。01:43~が「The Kingdom Of Ice」(『GLORY FOR SALVATION』収録)の01:40~(「The Kingdom Of Ice」で一番いいパート)。ギター・ソロ(02:45~)は高音域でのプレイが光る。曲のオープニングに回帰する04:23~も見事
- The Bloody Pariah…スネアの連打を絡める(01:12~) → 安堵(01:28~) → 徐々に突き上げるメロディ(01:38~)の流れが秀逸。02:59~のギター・ソロはVoに重ねての始まりにドキッとなり、ソロ自体も最高のフレーズ。「Whispers Of Doom」同様、曲の出だしを再登場させる攻め(04:15~)も効いている
- Kreel’s Magic Staff…00:00~が真夜中を連想させる。サビ(01:41~)では切ないメロディが上質なハーモニーと共に繰り広げられる。キュートでほのぼの(03:26~) → ギター・ソロ(03:43~)もいい流れ。そして04:05~、04:17~が最高
- Diamond Claws…ジャコモの声1本で伸びる01:04~がいいメロディ。突き上げながらもやっぱり切ない。ハーモニーを伴った02:09からは気分が高まる。02:51からのギターがまたすばらしく、01:04~同様、アッパー気味でありながらも哀愁がある
- A Brave New Hope…気分を盛り上げる01:03~ → 加速しての01:11~がすばらしい。ギター・ソロはピロピロ(02:23~) → 悲哀(02:37~)の流れを踏む。いったん音域を下げる03:43~もうまいアレンジ
- Mastered By The Dark…02:10からスケールの大きいメロディが約1分続く。ギター・ソロは中音域(02:54~) → 高音域(03:16~)の攻めが見事。ラストにふさわしい曲調ではあるものの、エンディングは意外にもあっさり(これはこれでいい締め方)
2024年6月
EVERGREY『THEORIES OF EMPTINESS』
スウェーデンのドラマティック・メタル・バンドの14作目。
前半と後半が特に充実しています。
EVERGREYは2曲目にキラー・チューンが多いのですが、
に引き続き本作の「Misfortune」も最高の出来。
しかも「Where August Mourns」を思い起こさせるというのがまたうれしいです。
「Cold Dreams」にはヨナス・レンスケ<Vo:KATATONIA>とSalina Englund(トム・S・イングランド<Vo/G>の娘)が参加。
こちらはKATATONIAワールドに「Eternal Nocturnal」(『ESCAPE OF THE PHOENIX』収録)を組み込ませたような構成がすばらしいです。
その後の「Our Way Through Silence」がまたヤバい。
歌も演奏も充実の涙腺刺激系メロディアス・ナンバーです。
おすすめ曲
- Falling From The Sun…ヘンリク・ダンハーゲ<G>が刻むシャープなリフがかっこいい。サビ(00:45~)では演奏が耽美的になりトムの歌声が程良く伸びる。ギター・ソロは02:50~が特に染みる。その後の02:57~がまた美しい
- Misfortune…始まった瞬間ドキッとする。「Where August Mourns」をスローにしたような感じで進み、サビ(00:50~)では「Save Us」(『A HEARTLESS PORTRAIT: THE ORPHEAN TESTAMENT』収録)のように勇ましく展開。02:09からはヘンリクがややドライな音質でエモーショナルに迫る。トムの歌メロに哀愁度が増す02:59~もたまらない。やはり2曲目はキラー・チューン!さすが!
- To Become Someone Else…静(00:00~) → 動(00:58~) → 静(02:15~) → 動(03:31~)の切り替えが秀逸。00:58~はリフがかっこよく、02:15~はダークでありながらも神聖な空間を醸成するリカルド・ゼンダー<Key>のプレイが見事。衝撃音を加える05:25~もいいアレンジ
- The Night Within…ポワポワする00:00~が独特。トムは高音域付近も含めながらの緩急をつけたパフォーマンス。ダイナミックでリズミカルなメロディが心地良い。それまでとは異なるオーラでキリキリするギター・ソロ(02:26~)、トムのVoに絡まるヨハン・ニーマン<B>のベース(03:14~)も〇
- Cold Dreams…KATATONIA+EVERGREY。トム(00:18~) → ヨナス(00:26~)の順番を基本としながら進み(詳細はミュージック・ビデオで確認できる)、サビ(00:52~)ではメランコリックで美しい歌が繰り広げられる。ここで聞こえてくるのがおそらくSalinaの声。02:16からは「Eternal Nocturnal」っぽくなり、ブルータルなVoも加わる
- Our Way Through Silence…極上メロディアス・ハード・ロック。厚みのある演奏の中で最高級のメロディが舞う。共感性が高く、そして切ない…。リカルドのキーボード(02:44~/トムのVoももちろん最高) → ヘンリクのギター・ソロ(03:09~)は泣きそうになる(初めて聴いた時は本当にそうなった)
BLACK COUNTRY COMMUNION『V』
- グレン・ヒューズ<Vo/B>
- ジョー・ボナマッサ<G>
- ジェイソン・ボーナム<Ds>
- デレク・シェリニアン<Key:WHOM GODS DESTROY>
によるハード・ロック・バンドの5thフル。
『BCCIV』(2017年)以来7年ぶりのアルバムで、これまでで一番長いブランクを経てのリリースとなります。
渋くていい感じにアツい。
グレンのソウルフルなヴォーカルとエモーショナルな演奏がレトロな空間に響き渡ります。
過去の作品には7分台や8分台の曲がいくつかありましたが、本作の中で最長なのは6分半の「Red Sun」と「Love And Faith」。
前半と後半に配置されていますが、どちらもいい曲です。
3月リリースのWHOM GODS DESTROY『INSANIUM』でエキサイティングなプレイをみせていデレクが、わずか3か月後に別バンドで全く違うスタイルで魅了してくれるというのもうれしい。
『INSANIUM』でのデレクのパフォーマンスとの聴き比べも『V』の楽しみ方の1つです。
おすすめ曲
- Enlighten…デレクがゴワゴワさせてスタート。ドッシリとしたジェイソンのドラムとジョーの適度にハードなギター(00:00~)がかっこいい。サビ(01:34~)で「t」の発音を強調させながら歌うグレンが特徴的
- Stay Free…グレンがリズミカルに中音域で歌い、00:56から音域を上げていく。サビ(01:02~)では程良く分厚いハーモニーによる「Stay Free」にスーッとする。02:45からグルーヴ感が増し、ヒートアップ
- Red Sun…最高にイカしてる00:00~を軸としながらミステリアスかつヘヴィに進行。「Su~~~n」と伸びる歌メロがとっても魅力的。00:00~に戻って音を伸ばす終わり方も◎
- Restless…00:00からジョーが渋い。グレンも声を伸ばしながらじっくり渋いVoを聴かせる。01:51から音域が上がり熱量が増すが声を伸ばす唱法は維持。渋くていい感じにアツい
- Skyway…サビ(01:13~)が独特。はっきり歌い始めるものの01:15からはっきりしなくなる。注目パートは唐突な02:29~。温かいフレーズが想定外で素敵
- You’re Not Alone…ガッツがあって骨太。00:06~や00:25~など、途切れ途切れでのデレクがいい。声を太くして曲名を歌うグレンのパフォーマンス(01:49~)もさすが。アツい
- Love And Faith…「Red Sun」と同じ長さ。01:01~にドキッとなり、01:48~で安堵感を得られる。03:34からはジョーが高音域で魅せる。しばらくデレク・ワールド(05:50~) → 太い音が重なる(06:16~)エンディングがまたすばらしい
ALCEST『LES CHANTS DE L’AURORE』
ネージュ<Vo/G/B/Key>とヴィンターハルター<Ds>の2人によるフランスのALCEST。
『SPIRITUAL INSTINCT』(2019年6th)以来、5年ぶりのアルバムです。
これまでの作品は6~8曲、40~50分の構成でしたが、今回は全7曲で約44分。
同じようなボリュームでちょうどいい長さです。
1曲目が「Komorebi」(木漏れ日/04:09から「Ko」「mo」「re」「bi」の歌声)ですが、この曲名のとおり、緑の多い場所に太陽の光が差し込む光景がイメージできる音楽性。
『ÉCAILLES DE LUNE』(2010年2nd)、『LES VOYAGES DE L’ÂME』(2012年3rd)、『SHELTER』(2014年4th)など過去の作品と同様、アートワークを見ながら聴くと、作品が描き出す世界観に浸れます。
緑の中を歩いている感覚に包まれるので、今作でのクリーンVoやメロディックな演奏は、日光、水、あるいは水の流れる音のよう。
魅力的なフレーズが長時間響き渡るという特徴もあり、これは「しばらく陽の光に当たっていたい」「水を見ていたい」「水の流れる音を聞いていたい」「鳥を見ていたい」といった心情に適した長さです。
絶叫も聴きどころの1つ(「L’Envol」「Améthyste」「Flamme Jumelle」に登場)。
どこか遠くから聞こえてくるような音量とエコーのかかり具合が絶妙で、耳に入ってくるとホッとするという不思議さもあります。
日本語で始まる「L’Enfant De La Lune」にも注目です。
Crossfaith『AЯK』
国産メタル・コア・バンドの5th。
フル・アルバムでは2018年の『EX_MACHINA』以来、6年ぶりとなります。
まず際立つのが声の情報量の多さ。
Koie<Vo>のスクリーム、クリーンVoに加え、エフェクト声もうまく盛り込み、参加ゲストの特性を生かしながら様々な声で魅了します。
そしてTeru<Key>。
多種多様なサウンドでつっついてくるパフォーマンスが見事で、自然と注意を引かせる音作りが秀逸です。
- 「L.A.M.N」までアグレッシヴに進む
- 「Night Waves」で引く
- 美しい「Afterglow」からラストの「Canopus」につなげる
という構成もさすが。
特に「Canopus」は「最後にこれはヤバい」というすばらしさで、THE GHOST INSIDE『SEARCHING FOR SOLACE』(2024年)のラストを飾った「Breathless」のような充実感を味わえます。
おすすめ曲
- The Final Call…ミステリアスかつ近未来風に始まる序曲。00:43~の「Back To Zero」を機にダンサブルになりスリリングさが増す
- ZERO…「ア~ア~~アアア」(00:00~)が耳に残る。サビ(00:55~)での「BREAKAWAY」や「BACK TO ZE~RO」(01:08~) → 「WE RISE, WE RISE」もアツい。低音域での「BREAKAWAY」(02:22~)もいいアクセント
- My Own Salvation…DREAM THEATER「Bridges In The Sky」(2011年『A DRAMATIC TURN OF EVENTS』収録)の00:10~のようなスタート。00:02から刺激的な声が入り、00:26からはTeruがつっついてくる。01:12~のクリーンVo、異空間的になる01:48~もすばらしい
- Warriors…ジリジリとしたなかでの「War~~rio~rs」(00:01~)が勇ましい。この「War~~rio~rs」は音域が上がる00:45~でもかっこよさをキープ
- HEADSHOT!…00:46~に引き寄せられる。サビ(01:11~)のクリーンVoもいいメロディ。巻き舌を絡める02:17~も面白い
- DV;MM¥ SY5T3M… …狂気度高めに進行。00:50~、02:03~が挑発的(02:03~は「音源のエラー?」と思ってしまう)。そして02:29から意外な言葉
- L.A.M.N…00:00~が声でくすぐられているかのよう。リズミカルでダイナミックなナンバー。00:14~に気合いが入る(曲中繰り返されるので、その際あらためて鼓舞させられる)。01:41~もエキサイティング
- Afterglow…引き続き静かな曲。切なく美しい。01:07から素敵な歌メロが伸びる、伸びる。01:51からハードさが加わり「Canopus」へつながる
2024年7月
KISSIN’ DYNAMITE『BACK WITH A BANG!』
ドイツのハード・ロック・バンド、8作目。
前作『NOT THE END OF THE ROAD』(2022年)は高品質の曲が満載でしたが、今回も傑作です。
特にすばらしいのがハネス・ブラウン<Vo>。
低音域~中音域を主軸としつつ、高音域も要所要所に交えていて、これが見事にキマッっています。
自分のパフォーマンスが映える、あるいはチャレンジしがいのある音域を知り尽くしたうえでの熱唱で、堂々とした歌いっぷりが見事です。
アタマ3曲がエネルギッシュということもあり、作品全体にスピード感があるのも魅力の1つ。
楽曲そのものも濃密です。
あと面白いのが「Queen Of The Night」。
GHOSTのような曲調にワクワクします。
おすすめ曲
- Back With A Bang…「No One Dies A Virgin」(『NOT THE END OF THE ROAD』収録)のような勢いあるナンバー。徐々に音域が上がる「Oh」→ 高音域の「yeah」で本編がスタート。いったん止まる(00:45~) → サビに胸が高鳴る。ギター・ソロ(01:57~)もシャープでエキサイティング。音域低めの02:29~がまたすばらしい
- My Monster…「Only The Dead」(『NOT THE END OF THE ROAD』収録)系統の曲。00:42で気分が高まり始め、サビ(00:49~)でドライヴ感が増す。この構成が絶品で、サビではノリ良く魅力的なメロディが長い間続く。挑発的な声が迫る(02:56~) → ヘヴィな演奏(03:06~)も刺激的
- Raise Your Glass…ドコドコと心地良くスタート。高音域でのサビ(00:32~)がアツい。01:03~、ギター・ソロ(01:59~)ではノスタルジックさが加味される。低音Voによる02:43~は「Back With A Bang」の02:29~のような効果がある。最後のサビでちょこっと音域を上げる03:10~も見事な変化球
- Queen Of The Night…00:02~がGHOST「Spillways」(2022年『IMPERA』収録)のよう。しかも、このフレーズを軸として進行していくのだからうれしくてしょうがない。重厚な演奏とハネスの威厳のあるVoが最高にクールで、サビ(00:39~)では極上の歌メロが展開(00:51~の「Oh, Oh」も◎)。エモーショナルなギター・ソロ(01:49~)やドンドン(02:04~)もハマってる
- The Devil Is A Woman…ハードでドッシリとしたナンバー。00:21~が「Operation Supernova」(2012年『MONEY, SEX & POWER』収録)の声ヴァージョンといった感じで面白い。「Operation Supernova」ではトリッキーな演奏が特徴的だったが、この「The Devil Is A Woman」では声で引きつける。リズミカルさが増して力強く展開するサビ(01:03~)もかっこいい。ハネスの高音域が伸びる(02:26~) → ハイテンションなギター・ソロ → 00:21~の声+ドンドンも練られた構成
- The Best Is Yet To Come…00:12~のVoが切ない。サビ(00:47~)では音域を上げて「ye~~t」と伸ばす唱法が光り、00:51~のバックVoが郷愁感をかきたてる。ギター・ソロの後に00:12~のメロディを持ってくる02:46~も◎
- I Do It My Way…いったん休む00:58でサビへの期待を抱かずにはいられなくなる。そして、さらなる高みを目指す系のサビが展開。中音域のVoが伸びてギターが絡まる02:52~、少し音域が上がる03:09~、「The Best Is Yet To Come」の00:51に通じる03:17~も絶品
- More Is More…「Voodoo Spell」(『NOT THE END OF THE ROAD』収録)のような始まり。サビ(00:50~)では曲名 → マジカルなVoがキマッてる。アコースティック・ギター(02:19~) → トーキング・モジュレーター(02:31~)もいい流れ
- Iconic…「No One Dies A Virgin」の出だしを遅くしたようなスタート。9曲目で初めてスローなナンバー。歌い出しの00:16~は「What Goes Up」(『NOT THE END OF THE ROAD』収録)の00:33~のよう。サビ(00:54~)では堂々かつはっきりとエネルギッシュに「She is iconic」と歌う。01:11~はハネスが自分自身に挑戦しているような唱法
- When The Lights Go Out…やや急ぎ気味の00:38~が印象的。サビでは、00:59~で力が入り、アンドロイドのような01:11~にビビッとくる。ギター・ソロ(02:21~)→ コーラス(02:36~)も胸に響く
MR. BIG『TEN』
通算10作目。
2023年開始の『The BIG Finish FAREWELL TOUR』から参加したニック・ディヴァージリオ<Ds>がドラムを叩いています。
ツアーでは『LEAN INTO IT』(1991年)全曲演奏がハイライトなので、本作でのソングライティングにもその影響が出るかどうかが気になっていたのですが、『LEAN INTO IT』に通じるアプローチは見られず、前作『DEFYING GRAVITY』(2017年)を踏襲した作風となっています。
特にエリック・マーティン<Vo>とポール・ギルバート<G>がすばらしい。
エリックは低音域~中音域による歌唱、ポールは楽曲の魅力をステップアップさせるプレイが見事です。
ビリー・シーン<B>は時折インパクトのある旋律を響かせながらも、基本的には一歩下がってニックと共にバンドのパフォーマンスを支えるスタイル。
これがまたうまくハマっています。
おすすめ曲
- Good Luck Trying…ブイブイ言わせた「Open Your Eyes」(『DEFYING GRAVITY』のオープニング)。ニックの手数が多いドラミングが際立つ。ラスト(04:02~)のエリックにキリッとさせられる
- I Am You…「Wind Me Up」(1989年『MR. BIG』収録)に叙情性を加味させたような曲調。00:43からのポールのギターが美しい。サビ(00:57~)ではエリックの素敵な歌メロがじわりじわりと染みこんでくる。異質な音像で迫る02:52~も見事(もう少し長く続くといいのだが…)
- Right Outta Here…渋くミステリアスに始まり、エリックのVoが入る00:25~も不思議なオーラに包まれる。01:07~ではエリックの歌い方がユニーク。非日常的に進むが、02:10~のポールのギター・ソロの時だけ平時モードになるのが面白い(もちろんソロそのものも最高)
- Sunday Morning Kinda Girl…「Everybody Needs A Little Trouble」(『DEFYING GRAVITY』収録)のようなスタイル。00:07~がいい感じにゆるくて心地良い。00:23~のヒューヒューした音にも引き寄せられる。サビでは「Sunday Morning」「Kinda Girl」と曲名を分かりやすく区切り、手拍子をうまく組み込む。02:35~のポールのギター・ソロはちょっとコミカルでキュート
- Courageous…サビ(00:57~)が「Lost In America」(2001年『ACTUAL SIZE』収録)の00:46~を想起。哀愁ある歌メロが光る。ニックが徐々に前面に出る(02:34~) → リズミカルになりシャカシャカ(02:39~) → ポールのソロ(02:52~)もいい流れで、適度に引っ張る03:17~もうまい
- Up On You…00:09~のギターがホットでエネルギッシュ。RATT「Best Of Me」(2010年『INFESTATION』収録)のよう。00:49からはエリックが徐々に気持ちを高めてくれて、01:44からはポールがエモーショナルに攻める。MR. BIGならではの火花(03:47~) → 01:44~に回帰(03:51~)もかっこいい締め方
SABLE HILLS『ODYSSEY』
日本のメタルコア・バンドの3rd。
ドイツのレーベル『Arising Empire』からのリリースとなります。
「Odyssey」のオープニングでの哀愁グロウルが最高なので、ここでもう傑作を確信できます。
アグレッシヴで分厚くスピード感のあるサウンドの中にグロウルとクリーンVoをバランス良く配置。
クリーンVoはメロディ、分厚さ、声質、どれも高品質で聴いていてうっとりしますし、グロウルはブルータルになったり狂気じみたりとタイプを分けた攻めがとても上手です。
「そろそろクリーン・パートが欲しい」「そろそろガツンと来てほしい」というタイミングでクリーン、グロウルがそれぞれ登場するので、まるで聴き手の心情を見抜いているかのよう。
随所で放たれるギター・フレーズも魅力的でどんどん刺さる。
見事です。
「Battle Cry」にはCrossfaithのKoie<Vo>、「No Turning Back」にはUNEARTHのトレヴァー・フィップス<Vo>がゲスト参加しています。
おすすめ曲
- The Eve…序曲。泣きのギター+声で進行し「Odyssey」へとつながる
- Odyssey…「The Eve」のフレーズの千切りでスタート。TRIVIUMのような雰囲気がある。上述の哀愁グロウルは00:32~。BULLET FOR MY VALENTINE「Death By A Thousand Cuts」(2021年『BULLET FOR MY VALENTINE』収録)の00:27~のようなすばらしさ。本編の01:00~も「Death By A Thousand Cuts」の01:10~に通じる。そしてサビでは美しいクリーンVo。ギター・ソロ(02:47~)は始まった瞬間KOされる
- Misfortune…ブルータルで厚みがある。00:09~のギターが刺激的。フレーズはもちろん音質もインパクトがあり、これが要所要所に登場。それまでより低めの音域で攻める01:46~もかっこいい
- Battle Cry…CrossfaithのKoie<Vo>が参加。引っ込みながらもメロディックなギター(00:53~) → サビがいい流れ。エフェクト声(00:08~、01:01~、01:07~)の組み込ませ方も見事で、様々な声で攻めるCrossfaithの魅力がこの曲にも詰まっている。03:02~は引っ込みながらもヘヴィなリフ
- A New Chapter…シャープなスタートを切り、00:23から加速。かと思ったら00:38からまた減速し、00:52から躍動感のある最高級のサビ。力強い「Defy, defy」も燃える。02:24からは極上のギター・ソロ。2回目のサビの前にエフェクト処理のスクリームを入れるアレンジ(02:39~)もうまい。エモーショナルなギター(03:28~) → ドーン!(03:45~)もいい終わり方
- Carry The Torch…「Misfortune」のようなトリッキーなギター(00:33~、00:39~)が効いている。サビ(01:02~)ではガッツのあるVoとメロディックなギターがいいコンビネーション。スクリーム(03:09~) → ギターの二段階攻撃(03:11~)も見事
- No Turning Back…UNEARTHのトレヴァー・フィップス<Vo>が参加。前半はスピーディーかつメロディックに展開(00:16~のギターが〇)。そして02:01から空気が変わる。警戒感を高めるギターで魅せるUNEARTHの音像に通じるような展開。重いリフと咆哮がキマッていて、ピタッと止める締め方がまたいい
- Bad King…勇壮であると同時に哀愁も感じられる00:09~がたまらない。00:58~のギターや01:15~のVoなど、メロディアスなアプローチをうまく混ぜながら勢いよく進む。そして最高なのが02:39~。TRIVIUM「Fall Into Your Hands」(2021年『IN THE COURT OF THE DRAGON』収録)のサビ(02:12~)のようなメロディに胸が熱くなる
- Forever…和風で切ないインスト。ラストの「Tokyo」とセットで楽しみたい
- Tokyo…「Forever」のオーラを引き継いだ悲哀フレーズ → 疾走。00:37からは悲哀フレーズを切り刻む。和風テイストが前面に出る01:58~も美しい。エンディングに近づく03:24からは一緒に拳を振り上げよう
DREAM EVIL『METAL GODS』
数多くの名作のプロデューサーでもあるフレドリック・ノルドストローム<G>率いるスウェーデンのHMバンドの7作目。
2017年の『SIX』以来、7年ぶりのアルバムとなります。
ストレートでガッツのある王道ヘヴィ・メタルが展開。
一方でニクラス・イスフェルド<Vo>は剛腕サウンドとは対照的にスリムな声質で魔力があります。
DREAM EVILには「Metal」がつく曲名が多いですが、今回の1曲目は「Metal Gods」。
JUDAS PRIEST、IRON MAIDEN、SAXON、MANOWARの作品が歌詞に含まれているので、聴き終えた後は曲中に登場する作品が聴きたくなります。
「Chosen Force」は以下の「Chosen」シリーズの4作目。
関連曲を古い順に聴いていくとメロディの類似点が感じられて面白いです。
おすすめ曲
- Chosen Force…上述の「Chosen」シリーズの4作目。躍動感のある「The Unchosen One」を引き締めたような感じ。伸びやかに堂々と歌うニクラスがすばらしい。低音が前面に出るハーモニー(03:01~) → エネルギッシュなギター・ソロもいい流れ。曲調からしてシリーズはまだ続いていきそう
- The Tyrant Dies At Dawn…低音が効いてハキハキしているVoでスタート。これがサビの歌メロで01:03からツーバス疾走で進行する。控えめに刻まれるメロディックなギターとも相性が抜群。勇壮な01:18~もアツい。02:33~はACCEPT「Balls To The Wall」(1983年『BALLS TO THE WALL』収録)の03:19~のようでうれしくなる
- Lightning Strikes…00:11~のギターが快感。一定の間隔を空けながら歌うサビ(01:12~)が印象的。02:32からは00:11を軸として展開し、02:53からよりエキサイティングになる。03:19~のドン!もいいアクセント
- Masters Of Arms…シリアスで劇的な音像に分厚くヘヴィなギターが被さる。00:49~のハーモニーとメロディがとても魅力的で、その後の「Hey!」で気合いを入れさせる構成がまたうまい。それまでの展開を無視したようなギター・ソロ(02:16~)も面白い
- Y.A.N.A.…ミステリアスで切ない。「オ~オオ~オオ~」(00:46~) → 歌メロの音域を下げる(00:49~) → 高揚感のあるサビ(00:54~)がすばらしい流れ。02:09からは想定外の中音域、02:31~からは音質もメロディも絶品のギター・ソロ
2024年8月
DEEP PURPLE『=1』
海外盤と日本盤の発売日が異なっていましたが(海外盤:7月19日、日本盤:8月7日)、日本盤のスケジュールに合わせて配信開始となりました。
風格があって随所に飽きさせない仕掛けがあります。
スタジオ作品初参加となるサイモン・マクブライド<G>のはつらつとしたプレイも見事にフィットしていますし、ドン・エイリー<Key>の変化に富んだ演奏も聴きごたえ満点。
さすがの内容です。
激推しは「Pictures Of You」。
演奏にイアン・ギラン<Vo>の歌、全てがすばらしい。
ちょうどアルバムのど真ん中にキラー・チューンが配置されているのがいいですね。
「Pictures Of You」だけでもこの『=1』は聴く価値ありです。
おすすめ曲
- Show Me…01:56~が染みる。メロディもハーモニーもすばらしく、ドンのキーボードがいい感じに気持ちを高めてくれる。02:21からは高音域による演奏パート。進むにつれてエキサイティングになっていく
- A Bit On The Side…グルーヴ感に満ちたナンバー。低音の効いたギランのVoがかっこいい。01:39~のドンのキーボードや02:00~のイアン・ペイス<Ds>のドラミングにも引き込まれる
- Sharp Shooter…ミステリアスな空気を漂わせながらドッシリと進行。高めの音域で緩急をつけながらのギランの唱法が個性的。01:43からは曲調とは対照的な演奏パート。なかなか燃える
- Portable Door…00:00~が滑らかで心地良い。口ずさみたくなるギターが魅力の1つでもあるDEEP PURPLEならでは。01:38からはサイモン → ドンの順番でエキサイトさせてくれる
- If I Were You…00:00~に涙腺がゆるむ。曲名の「I」を伸ばして歌うサビが印象的。02:16からは00:00~をアレンジした泣きのギター。03:44~もすばらしく、サイモンが00:00~や02:16~とは違ったオーラで魅せる。03:56~の歌声も素敵なアレンジ
- Pictures Of You…上述のキラー・チューン。00:00~のサイモンの哀愁フレーズにまずKO。ギランのVoは歌い始めからすばらしく、徐々に気持ちを上向かせて、サビ(00:44~)では一歩引いて極上メロディで引き寄せる。ハモる01:25~もいいアレンジ。02:38~でギランが不敵に笑って、サビをなぞるサイモンのギター・ソロに流れていくところも最高
- Lazy Sod…サビ(01:08~)で「Strange Kind Of Woman」(1971年)の本編(00:07~)のようになる。サイモンのギター(01:27~) → ドンのキーボード(01:57~)も聴きどころ。02:26~はゲームのステージをクリアした際に流れてきそうな個性的なメロディ
- Bleeding Obvious…GHOST「Kaisarion」(2022年『IMPERA』収録)のようなスタート。00:57~の歌メロは安心感を与えてくれる。キンキンする02:40~が個性的。03:11~はエンディングに向かっている感が出ていて04:00~のハーモニーもいい。が、すぐには終わらず、スリリングな演奏パート(特に04:36~が◎)へ流れる。エキサイティングなフレーズを割と引っ張って締めくくる構成(05:39~)もうまい
DARK TRANQUILLITY『ENDTIME SIGNALS』
2020年12作目『MOMENT』以来、約4年ぶりのアルバム。
切なく美しく神秘的な演奏とミカエル・スタンネ<Vo>のグロウルとクリーンVoを歌い分けるパフォーマンスが見事です。
疾走曲2曲「Unforgiveable」「Enforced Perspective」を前半と後半に配置するなど、曲順も練られていますし、濃密な「Our Disconnect」も聴きごたえ十分。
「Our Disconnect」は本作のハイライトです。
また、前作『MOMENT』には名バラード「Remain In The Unknown」がありました。
今回もバラードがあり、「One Of Us Is Gone」と「False Reflection」の2曲ですが、いずれもミカエルのVoはクリーンのみ。
悪くはないのですが、グロウルを絡めたメロディ展開が絶品だった「Remain In The Unknown」に比べると少し物足りない感じがしました(ミカエルはグロウルでも涙を誘いますからね)。
おすすめ曲
- Shivers And Voids…アルバムの最後の曲であるかのようなスタートを切るが、00:17で目が覚める。そしてミカエルのグロウルと共に本編へ。ブルータルでありながらも哀愁を漂わせるミカエルのパフォーマンスが光る。ミステリアスな音像に包まれながらメロディックなフレーズが刻まれる02:15~がいいアクセント
- Unforgiveable…アグレッシヴで疾走感満点。減速(00:34~) → 加速(00:50~) → 突進(01:02~)の段階的な攻めが効いている。メロディックさを維持しながら速度を上げるアプローチが見事。メロディを排除し無機質になる01:55~もそれまでと対照的で面白い
- Neuronal Fire…ミカエルのグロウルのバックで物悲しい音を響かせるマーティン・ブランドストローム<Key>のプレイ印象的(00:33~)。02:45からはヨハン・レインホルツ<G>が曲調にやや逆らう感じでエネルギッシュに攻める。03:47からはマーティンがこれまでより大きな音で魅了。音が出されるたびに体内にじわりと浸透してくる
- Not Nothing…クリーンVoのアプローチにひねりがあり(00:15~はやや引っ込み気味、01:38~はノーマル)、グロウルのパートはクリーン同様に悲哀に満ちている。切ない02:47~や加速してエネルギッシュさが増す03:12~など、演奏パートも充実
- Drowned Out Voices…00:42~のミカエルのグロウルとヨハンのメロディックなギターが見事なコンビネーション。02:25からはミカエルのクリーンVoにうっとり。「Remain In The Unknown」がちらつく。そして03:05から泣きのギターとグロウル… すばらしい
- The Last Imagination…00:27~のリフがかっこいい。「Imagination」の「tion」(ション)の発音を強調するミカエルの唱法が特徴的で、バックからはマーティンが耽美的な音を響かせる。02:15からは少しポワポワ。02:42からはヨハンが刺激的な音像でエモーショナルにキメる
- Enforced Perspective…スネアを2回叩いて疾走。「Through Smudged Lenses」(2005年『CHARACTER』収録)のよう。00:33~で気分が高まり、00:41からは80年代テイストが強調される。マーティンのノスタルジックなキーボードにうれしくなる。01:32~、02:05~もエキサイティング。ギター・ソロと共に再度疾走する02:21~もアツい
- Our Disconnect…ドラマティックな音像に包まれながらドコドコ(00:33~) → 分厚く鋭いリフが重なる(00:49~) → ミカエルのグロウルがフェードイン(01:04~)という見事な始まり。01:46~ではヨアキム・ストランベリ・ニルソン<Ds>のパワフルな叩きつけとミカエルのグロウルが絶妙にマッチ。02:03~のマーティンの音も面白い。03:09からはダークでシリアスになり、03:41でドドドン。その後、グロウルと共に重厚な演奏(03:43~)→ 哀愁ギター・ソロ(04:14~)という絶品の流れをみせる
- Wayward Eyes…悲壮感があってフワフワ。ミカエルはグロウル → サビ(00:45~)でクリーンVo主体というスタイル。歌メロが素敵で、01:06からのグロウルもタイミングが秀逸。マーティンのキーボードは「Enforced Perspective」のように郷愁感がある。02:25~のそれまで以上にソフトなクリーンVoも美しく、その後にグロウルが待ち受けているところがまたいい
- A Bleaker Sun…RAGE「Sign Of Heaven」(1998年『XIII』収録)のように始まる。おすすめパートはギター・ソロ。警戒感が高まる曲調で進んでいくが、02:25から唐突に透明感のある音で泣かせにかかり、徐々にテンションを上げてくる
2024年9月
THE DEAD DAISIES『LIGHT ‘EM UP』
投資会社のCEOでもあるデイヴィッド・ローウィー<G>を中心とするハード・ロック・バンド、THE DEAD DAISIES。
『HOLY GROUND』(2021年)と『RADIANCE』(2023年)でヴォーカルをとっていたグレン・ヒューズが脱退し、『REVOLUCIÓN』(2015年)、『MAKE SOME NOISE』(2016年)、『BUIN IT DOWN』(2018年)でリードVoを務めていたジョン・コラビが復帰しました。
グルーヴィでエネルギッシュな曲調にジョンの骨太な声がハマっています。
リード・ギターは『MAKE SOME NOISE』から参加しているダグ・アルドリッチ<G>。
特に「Back To Zero」と「Way Back Home」でのソロがすばらしいです。
また、THE DEAD DAISIESには、
のように、HM/HR代表曲のようなスタートを切る曲があります。
かなり強引なとらえ方をすれば、本作収録曲の中では「Way Back Home」が、2023年日本公演のラストで演奏されていたWHITESNAKE「Slide It In」(1984年『SLIDE IT IN』収録)のような始まりに感じられます。
おすすめ曲
- Light ‘Em Up…ノリの良いオープニング・ナンバー。00:58~がキャッチーでナイス。ジョンのかすれ声とは対照的でクリーンな歌声によるメロディが際立つ
- Times Are Changing…「Light ‘Em Up」の勢いを維持。サウンドは少し土臭い感じでこれがなかなか渋い。00:07~のメロディが心地良く、これが曲中繰り返される
- I Wanna Be Your Bitch…00:16~のジョンのVoが少し異なる雰囲気でこれをメインに進んでいく。テンション高めの声を被せてくる02:38~はジョンならではのかっこよさ
- I’m Gonna Ride…サビを伸ばして歌うアプローチが映えるナンバー。01:11~で「Ri~~de」と伸ばし、01:14~でシャウト気味に音域を上げる唱法がキマってる
- Back To Zero…ジョンの通常Vo(00:17~) → ゆがんだハーモニー(00:21~)の流れが特徴的。00:42からはさらに視界不良になるが、妙にワクワクする。00:42~のミステリアスな雰囲気を引き継いだダグのギター・ソロ(01:50~)も見事。02:50からはジョンが音域を上げてエキサイトさせてくれる
- Way Back Home…湿り気のあるギター(00:00~)で始まり、ブレイクを入れながら進む。キャッチーな歌メロ(00:29) → エフェクト声(00:40~)が刺激的。02:03からはダグが魅せる。とてもいいフレーズ
- Take My Soul…エフェクト声によるVo → 骨太演奏への流れを踏む。ちょっと切ないメロディを堂々と歌うジョンのパフォーマンスがすばらしい。スケールの大きい01:41~の歌メロに胸が熱くなる
BLITZKRIEG『BLITZKRIEG』
1980年結成の英国のBLITZKRIEG。
フラットな歌い方を基本としつつも突然ハイトーンを出すブライアン・ロス<Vo>が特徴的ですが、『JUDGE NOT!』(2018年)以来のフル・アルバムとなる本作はハイトーンで幕を開けます。
2012年にバンドに加入したブライアンの息子、アラン・ロス<G>も今作でプレイ。
アルバムは前半が特に充実しています。
おすすめ曲
- You Won’t Take Me Alive…シャープなスタートを切り、ドラムがドコドコ。00:11でギターが火花を散らし、ブライアンのハイトーンが入る。00:26~、01:03~の伸びる歌メロがまた魅力的。ブレイク(04:15~) → スネア → 再度演奏での締めくくりも緊張感がある
- The Spider…エッジの効いたギターとドラムの連打による始まりにシャキッとさせられる。00:58からメロディックなギター → Voの繰り返しが心地良い。01:01で曲名を歌い、01:07で曲名をささやく攻めも効いている
- If I Told You…スローでガッツがある。声を組み込みながらの00:00~が刺激的。ブライアンはエネルギーをかなりため込んで少しずつ放出するようなパフォーマンスで、言葉の間隔を空けながら歌うスタイルがキマッてる
このあと6分台の曲が2曲続きますが、この2曲は部分的に引き込まれます。
「Vertigo」は00:57~、02:21~のVoの処理が面白く、特に02:21~は摩訶不思議。
「Vertigo」がラジオでフェードインして始まる「Above The Law」は音声を絡めながらの04:01~、テクニカルな04:33~、メロディックな05:54~がエキサイティングです。
STRYPER『WHEN WE WERE KINGS』
『FINAL BATTLE』(2022年)以来、2年ぶりのアルバム。
マイケル・スウィート<Vo/G>の伸びがあるヴォーカル+ハイトーンのパフォーマンス、そして曲中に清涼感のあるコーラスを組み込ませるアプローチが光ります。
アルバムは『FINAL BATTLE』同様、勢いのある「End Of Days」でスタート。
その後はスロー・ナンバーが多くを占めます。
減速感は否めないのですが、「When We Were Kings」は歌も演奏もかなり充実していますし、後半にはキラー・チューン「Grateful」も登場。
ラストの「Imperfect World」もパンチが効いているので、いい気分でアルバムを聴き終えることができます。
おすすめ曲
- End Of Days…鋭いギターに被さる衝撃音(00:02~)がいいアレンジ(前面に出すのではなく控えめに加える力加減がまた〇)。02:44~のギター・ソロが特にすばらしく、ギラギラしていてエネルギッシュなプレイにエキサイトさせられる。分厚いハーモニー(03:56~) → 伸びるマイケルのハイトーン+衝撃音もアツい
- Unforgivable…00:21~がいい感じにゆがんでいて独特。サビ(01:01~)は00:21~の拡大版メロディをマイケルが伸びやかに歌う。02:11~もミステリアスで、02:18~は遠くでサイレンが鳴っているかのよう。いきなり高音ではじまる02:30~のギター・ソロにもドキッとする
- When We Were Kings…00:11~の哀愁フレーズにやられる。マイケルの歌い出し(00:22~)もかっこいい。そして00:42から極上のサビ。メロディもハーモニーも一級品で、その後に00:11~が続くという最高の展開
- Grateful…名曲「Always There For You」(1988年『IN GOD WE TRUST』収録)を思わせる。歌い出し(00:21~)なんかは特にそう。サビではマイケルが曲名を伸ばして魅力的なメロディを堂々と歌う。ノスタルジックさが強調される03:36~もいいテイスト
- Imperfect World…00:10~が「When We Were Kings」の00:11~に通じる。00:59~のハーモニーが高品質でその後に00:10~を持ってくる構成もうまい。マイケルのハイトーン(02:04~) → ギター・ソロの流れにもテンションが上がる。音域が下がっていく02:31~も最後の曲ならではのワクワク感。エンディング前の03:07~でもう一度マイケルがハイトーンを伸ばしてくれる
NIGHTWISH『YESTERWYNDE』
通算10作目。
フローア・ヤンセン<Vo>加入後3枚目の作品です。
マルコ・ヒエタラ<B/Vo>脱退後初のアルバムでもありますが、作品の中での男性Voはトロイ・ドノックレイ<イリアン・パイプ/ロー・ホイッスル/ブズーキ/バウロン>。
ソフトで響きのいい低音ヴォイスで魅了します。
『ENDLESS FORMS MOST BEAUTIFUL』(2015年)、『HUMAN. :II: NATURE.』(2020年)に続く三部作の完結編となる本作。
濃密で劇的です。
「The Antikythera Mechanism」では、曲の中間にそれまでとは違う展開を持ってきて引き込ませる手法が冴えますし、長尺曲2曲(9分半の「An Ocean Of Strange Islands」と8分の「Perfume Of The Timeless」)が高品質なのもうれしい。
特に「Perfume Of The Timeless」までは、フローア参加後の作品の中では一番の充実ぶり。
そしてラストの「Lanternlight」にジーンときます…。
おすすめ曲
- Yesterwynde…序曲。神聖な雰囲気で進んでいき、01:22から切なくなる。「The Greatest Show On Earth」(『ENDLESS FORMS MOST BEAUTIFUL』収録)の01:55~が少しちらつく。01:48からフローアがソフトな声で堂々と歌い始める
- The Antikythera Mechanism…ACCEPT「Metal Heart」(1985年『METAL HEART』収録)の00:27~に通じるフレーズでスタート。00:39~のトロイの歌にうっとりさせられる。が、00:59からは突き上げる系。03:08~の転換点は「Tribal」(『HUMAN. :II: NATURE.』収録)の02:57~を想起させる。04:04~の不気味な語りや、引っ張る04:36~もいいアプローチ
- Perfume Of The Timeless…民族的に始まり、01:18~で「Our Decades In The Sun」や「The Eyes Of Sharbat Gula」のようになる。02:24からは「Nemo」(『ONCE』収録)のように進行するが、サビ(03:25~)で躍動感が増す。05:33~の畳みかけは「Pan」(『HUMAN. :II: NATURE.』収録)の03:16~をより混沌させたような展開。スリリング
- Lanternlight…切ないバラードで三部作を締めくくる。00:07から静かに低音域で歌い始めるフローアがすばらしい。02:25からはトロイがそーっとハモる。03:22から壮大になり(03:59~は圧巻)、04:07から再びソフトに。トロイのVoが前面に出る04:41~も02:25~と対照的でいい効果
ECLIPSE『MEGALOMANIUM II』
2023年作『MEGALOMANIUM』の続編。
『MEGALOMANIUM』のオープニング「The Hardest Part Is Losing You」は哀愁メロディの曲でしたが、続編はガッツある「Apocalypse Blues」で幕を開けます。
以降も極上メロディのナンバー多数で、前作『MEGALOMANIUM』に通じる場面もあり。
さらに今回は高品質なバラードが2曲あります。
前作にはバラードがありませんでしたから、これはうれしいですね。
IもIIも傑作ですので、本作を聴き終えた後には『MEGALOMANIUM』が聴きたくなりますし、『MEGALOMANIUM』を聴いたらまた『MEGALOMANIUM II』が聴きたくなるというループ効果があります。
『MEGALOMANIUM』以前の名曲「Mary Leigh」「Black Rain」を思わせる「Falling To My Knees」「One In A Million」があるのも大きなプラスです。
おすすめ曲
- Apocalypse Blues…刺激的な音が迫ってきてスタート。00:06~のハイテンションなエリック・モーテンソン<Vo>に燃える。サビ前の00:44~が「I Don’t Get It」の00:48~に通じる。かけ声と共に注意を引く02:16~もうまい
- The Spark…アンドロイドっぽい日本語でスタート。重厚でリズミカル。サビ(00:48~)では安心感のある歌メロが堂々と繰り広げられる。02:08~でのエリックが荒々しくて新鮮
- Falling To My Knees…「1, 2, 3, 4」のカウント → 名曲「Mary Leigh」(2019年『PARADIGM』収録)を思わせる流れを踏む。00:46からテンションがグ~ンと上がり(すばらしい切り替え)、ガッツあるメロディがわりと唐突に展開。サビで曲名を歌い終わる前に「Mary Leigh」風に戻る01:04~もすばらしい
- All I Want…。前作のキラー・チューン「Got It!」に郷愁感を加えた曲調。伸びのあるサビ(00:43~)がかっこいい。00:17~、00:54~、02:05~、02:49~など、バックVoの加え方も見事
- Still My Hero…こちらは「One Step Closer To You」系。メロディそのものは「All I Want」同様、ノスタルジック。00:00~のエコーのかかり具合が心地良く、曲中の02:04~、02:45~でもこのアプローチが生きる
- Dive Into You…前作にはなかったバラード。01:12~が最高に感動的で、エリックのリードVoに続くバックVo(01:35~)も素敵。そして02:56からは泣きのギター・ソロ。すばらしい…
- Until The War Is Over…00:00~が「Run For Cover」(2021年『WIRED』収録)の00:15~を土臭くしたようなフレーズ。夕日に照らされた「Run For Cover」といった感じ。00:53で一瞬止まって、ドッシリとしたサビへ流れていくところがかっこいい
- To Say Goodbye…もう1つのバラード。前作の「So Long, Farewell, Goodbye」とタイトルが似ているが、対照的な曲調。01:09~が特にすばらしく、ハードな演奏と共に感動的なメロディが胸に響く。泣きの要素を抑えた02:34~がまたいい変化球。03:19~のバックVo、03:27~のエリックの熱唱も◎
- One In A Million…名曲「Black Rain」(2017年『MONUMENTUM』収録)をミドル・テンポにシフトしたようなラスト。歌メロ全体に「Black Rain」のオーラが漂っているのがたまらない。01:18~、01:27~なんかは「Black Rain」の01:31~に通じる。サビ(01:34~)も力強く、勇壮な02:59~、03:38~もエキサイティング。04:15から加速する
RICHIE KOTZEN『NOMAD』
リッチー・コッツェンの2024年ソロ作。
ソロ名義では、50歳の誕生日(2020年2月3日)にリリースされた50曲入りの『50 FOR 50』以来となります。
『50 FOR 50』は圧倒的なボリュームでしたが、今回は全8曲35分。
下記2曲のドラム以外はリッチーが全パートを演奏しているっぽいです。
- 「These Doors」…Kyle Hughes
- 「Nomad」…Dan Potruch
リッチーのソウルフルな歌と演奏が映えるナンバーがコンパクトな作風でまとめられています。
おすすめ曲
- Cheap Shots…音域を飛び越えてドッシリと展開するサビ(00:47~)に体が温まる。01:49~は「Go Faster」の01:46~のような火花。ラウドに始まる02:24~のギター・ソロもいいスパイス
- These Doors…一番の推しの曲。グルーヴィな曲調の中でリズミカルなリッチーのVoと躍動感のあるベースが映える。00:59から歌メロに哀愁度が強まる。切ない旋律にドライな音が重なる(02:44~) → エモーショナルになり緊張感が高まる(03:15~)という段階的な攻めも見事
- Insomnia…少し厳かな雰囲気の中でダークに進み、00:46~でグリグリ。そしてその後メロディアスになる。00:46~を境に展開を変える手法が秀逸。スリリングさが増す02:45~や軽く飛び跳ねるような03:05~も聴きどころ
- On The Table…ガツンとしたスタート。00:31から気分が高まっていき、00:48~でいったん引っ張って、サビ(01:02~)で軽快なメロディが広がる。その後01:36~に気分が引き締まる。03:16からは01:36~を軸としたスローな展開。これがまた力強い
- Nihilist…演奏も歌もいい感じにフワフワしている。浮遊感を維持しながらもダイナミックさが増す00:51~が心地良い
2024年10月
D-A-D『SPEED OF DARKNESS』
デンマークのハード・ロック・バンドによる13作目。
2019年の『A PRAYER FOR THE LOUD』以来、約5年ぶりのアルバムとなります。
ノリのいいナンバー、ヘヴィ・チューン、バラードなど、様々な曲を収録。
曲の雰囲気に応じてパフォーマンスを変えるイェスパー・ビンザー<Vo/G>がすばらしいです。
また、D-A-Dは「Sleeping My Day Away」や「Point Of View」(いずれも1989年『NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS』収録)のように音の響かせ方が特徴的な曲がありますが、今回は「The Ghost」「Crazy Wings」でそれがみられます。
KISSIN’ DYNAMITEがちらつく「1st, 2nd & 3rd」や始まりがAEROSMITHの「Keep That Mother Down」もうれしい。
あとは「Automatic Survival」。
極上メロディアス・チューンで後半のハイライトです。
おすすめ曲
- God Prays To Man…イェスパーのゆらゆらしたVoが生きる。ほろ酔いのよう。01:14~、01:20~のバックVoも適度にゆるくてナイス。「Oh~」(02:39~) → ギター・ソロがまたいい流れで03:03からはイェスパーがかっこよく「Oh, yeah」とキメる。ギターがラウドになってドラムが暴れるエンディング(04:13~)も◎
- The Ghost…悲哀ある旋律(00:00~)の響き具合が絶妙。サビ(00:46~)ではイェスパーの音域が上がり、切なさが増す。00:50~の哀愁ギターの刻みもたまらない
- Head Over Heels…しんみり。歌メロが伸びる00:39~が染みる。02:01~のギター・ソロもすばらしく、これを軸としたフレーズが以降のサビにも絡みつく
- Crazy Wings…陰鬱なオーラに包まれながらミドル・テンポで進行。イェスパーがうつむき気味に歌うが、00:43から音域が上がる。音を響かせるのは02:34~の演奏パート。やはり独特。D-A-Dならでは
- Keep That Mother Down…エネルギッシュな「Oh, yeah」(00:03~) → スティーヴン・タイラー<Vo:AEROSMITH>のような00:06~が最高。サビ(00:48~)ではキャッチーな歌メロが心地良く伸びる。ギター・ソロはドラムの連打を絡める02:18~がいいアクセント。ダダン、ダダン、ダ~ンとなる終わり方(03:23~)もいい
- Strange Terrain…スローでヘヴィ。イェスパーのVoが威風堂々としていて、バックVoが絡む00:30~は「Rim Of Hell」(『NO FUEL LEFT FOR THE PILGRIMS』収録)の01:45~に通じる。かっこいい
- In My Hands…00:00からユニークな音に突っつかれ、ちょっとジワる。イェスパーは力を抜いた歌い方だが、サビでボルテージが上がる。02:28から目を覚まさせられてエキサイティングな演奏パートへ。02:49~の音がまた刺激的
- Automatic Survival…後半の目玉。ハードで温かみのある00:03~、ハーモニーが加わって歌声に厚みが増すサビ(00:56~)にグッとくる。2回目のサビの後(02:42~)にギター・ソロに流れるが、入るタイミングもソロそのものも絶品
MYLES KENNEDY『THE ART OF LETTING GO』
ALTER BRIDGE、SLASH FEATURING MYLES KENNEDY AND THE CONSPIRATORSのフロントマンとして活躍するマイルス・ケネディの3rdソロ。
ソロ作品では『THE IDES OF MARCH』(2021年)以来、約3年半ぶりとなりますが、これまでで一番ハードな内容となっています。
アコースティックは少なめ。
ダイナミックでアグレッシヴです。
マイルスのスリムな声質による伸びやかな歌唱は胸が熱くなりますし、ソリッドな演奏にアクセントを加える手法もさすがです。
ALTER BRIDGE『PAWNS & KINGS』(2022年)を踏襲した作風でもあるので、
マーク・トレモンティ<G/Vo>、ブライアン・マーシャル<B>、スコット・フィリップス<Ds>は再結成CREEDでツアー
→ ALTER BRIDGEでの活動が止まる
ということがソングライティングに影響したのかなとも思えます。
これまでのパターンだと、マイルスのソロ作リリースの翌年にALTER BRIDGEが新作リリースという流れでした。
2025年はどうでしょうね。
2025年にリリースされたら、3年に1枚というペースも継続されたことになりますしね。
おすすめ曲
- The Art Of Letting Go…爆発力のある00:00~に吹き飛ばされる。00:20~は拳を振り上げよう。そして歌声を伸ばす00:27~が個性的。骨太な演奏の中でマイルスの中音域のVoが生きる。ドライな音質による哀愁ギター(02:42~) → 00:00~に戻る(03:23~)構成も見事
- Say What You Will…00:00~がのちのサビになる。00:14からヘヴィでリズミカルな演奏へ。カウベルがコンコンしていて気持ちがいい。00:48~のドン、ドン、ド~ンがいいアクセント。そして00:56からサビ。曲名を伸ばしながらの唱法が生きる。02:07~は蒸気機関車が迫ってくるような力強さ。ここでもカウベルがいい効果をもたらしている
- Mr. Downside…00:33~の刻みが特徴的。「Dead Among The Living」(『PAWNS & KINGS』収録)の00:27~や「Crows On A Fire」(2016年『THE LAST HERO』収録)の00:29~に通じる。歌声を伸ばす00:34~もマイルスならでは。本編では「The Art Of Letting Go」「Say What You Will」に比べて高音域の歌メロが展開する。燃えるしホッとする。そして心地良い。02:50~の高音域ギターも気分を上向かせる。引き締める03:01~もうまい
- Miss You When You’re Gone…「Stay」(『PAWNS & KINGS』収録)のように和やかな曲。「Stay」はマーク・トレモンティが先に歌い、マイルスが後から追いかけくるスタイルだったが、この「Miss You When You’re Gone」を聴くとマイルスが最初から歌う「Stay」も聴いてみたくなる
- Behind The Veil…『PAWNS & KINGS』の「Fable Of The Silent Son」のような位置付け。「Fable Of The Silent Son」をコンパクトにしてミステリアスさを取り除いた感じ。静 → 動 → 静の流れが秀逸
- Saving Face…「Holiday」(『PAWNS & KINGS』収録)のような不思議な雰囲気がある。00:17~が「Holiday」の00:13~のよう。00:32~も独特なノイジーさでサビ(01:15~)では「Say What You Will」のように曲名を伸ばす。02:40~の音がまたツボでいい突っつき具合
- Nothing More To Gain…00:12~のフレーズに自然と体が動く。00:58~のグリグリするギターが心地良く、サビではノリの良さを維持しながら曲名を伸ばす。03:00~ではよりヘヴィなリフにエキサイト。03:53~の低音Voもいい引き具合だし、00:12~を再度持ってきて引っ張りながら力強く締めくくるエンディング(04:39~)もさすが
- Dead To Rights…ノイジーなギターを鳴らして00:10から演奏に突入する流れが最高。マイルスのVoと交互にくる00:53~のギターが刺激的。サビでは高音域の魅力的な歌メロが進行する。マイルスの「ア~ア~ア~ア」が揺れる(02:24~)→ 演奏パート(02:34~)もいい流れで、一瞬ヘヴィになる03:01~もいいフェイント。00:53~のギターで刺激を強める03:59~も絶品のアレンジ
- How The Story Ends…平穏できらびやかな演奏+マイルスのソフトなVoで始まり、00:51からハードになる。最後の曲らしいメロディが展開されながらもハードさを堅持するサビ(01:01~)がすばらしい。ドドン!(02:32~) → 厳かなハーモニー(02:48~) → エモーショナルなギター・ソロ(03:03~)も聴きごたえがある
AD INFINITUM『ABYSS』
スイスの女性シンガー、メリッサ・ボニー<Vo>率いるバンドの4作目。
『CHAPTER III – DOWNFALL』から約1年半ぶりのオリジナル・アルバムで、アルバム・タイトルから「CHAPTER」が消えました。
「My Halo」「Outer Space」「Aftermath」「Surrender」「Anthem For The Broken」での異空間的な音像が特徴的で、AD INFINITUM新章突入とも解釈できます。
メリッサは過去にH.E.R.O.「Monster」(2022年『ALTERNATE REALITIES』収録)、KAMELOT「New Babylon」(2023年『THE AWAKENING』収録)に参加。
KAMELOTの2023年来日公演でもすばらしいパフォーマンスを披露してくれました。
この『ABYSS』でもクリーンVoとグロウルによる二刀流パフォーマンスが見事です。
クリーンは美声でグロウルは迫力満点。
両極端な唱法を切り替えながら魅了するので、メリッサは女性版トミ・ヨーツセン<Vo:AMORPHIS>ですね。
おすすめ曲
- My Halo…ミステリアスな空間でメリッサがきれいなクリーンVoを響かせる(00:10~)。そして00:49から声のみになってバンド演奏へ。かっこいい。音域が上がる01:29~ではさらに気分が高まり、02:03からメリッサが挑発的に「Are you ready?」。そして02:19からグロウル。すごい迫力。02:40~はグロウルの後ということもあり、かすれ気味の声がより一層生きる
- Follow Me Down…00:07~がEVERGREYの名曲「Eternal Nocturnal」(2021年『ESCAPE OF THE PHOENIX』収録)の00:00~に通じるからうれしい。00:23~のキーボードも程良くに刺激的。メリッサのリズミカルなクリーンVoが響きわたり、サビ(00:55~)では躍動感が増す。02:59~の畳みかけも適度にエキサイトさせてくれる
- Outer Space…メリッサのグロウル → 重厚な演奏への流れがアツい。00:31からは美しいクリーンVoが入り、00:55からはさらにうっとりする。1番になかったグロウル・パート(01:47~)もいい組み込ませ方
- Aftermath…00:07~グロウルにガッツポーズ。本編はクリーンVo中心で進んでいくがスパイス的にグロウルが重なる01:15~がまたかっこいい。02:03からはスリリングな演奏パート。警戒感を高める02:22~がうまい
- Surrender…クリーンVo → グロウルが絶品。00:48からは歌声を切りながら美メロを響かせる。そして01:08からはそれまでの空気を大迫力のグロウルで一変させる。すさまじい。ギターも刺激的でややズレ気味なところがまたいい
- Anthem For The Broken…メリッサの低音Voにドキドキ(00:22~)。そして00:44から厚みのある演奏になり、クールなバックVoを響かせる。とてもいいメロディ。ピロピロが霧に包まれる感じの02:01~も心地良い。ドンドンし始めてカオスになる02:45~もハイライト
CEMETERY SKYLINE『NORDIC GOTHIC』
- ミカエル・スタンネ<Vo:DARK TRANQUILLITY, THE HALO EFFECT>
- マルクス・ヴァンハラ<G:INSOMNIUM, OMNIUM GATHERUM>
- ヴィクター・ブラント<B:DIMMU BORGIR, WITCHERY>
- ヴェサ・ランタ<Ds:SENTENCED>
- サンテリ・カッリオ<Key:AMORPHIS>
で構成されるゴシック・ロック・バンドの1st。
DARK TRANQUILLITYやTHE HALO EFFECTではグロウルとクリーンVoを駆使したパフォーマンスがすばらしいミカエルですが、このCEMETERY SKYLINEでは低音域~中音域のクリーンVoのみとなっています。
「Torn Away」「Violent Storm」「Behind The Lie」など、似たナンバーが多いのですが、曲そのものは高品質。
ミカエルが声を出すたびに悲哀に満ちたメロディが心に響きます。
アルバムの中では「In Darkness」「The Darkest Night」「Never Look Back」「The Coldest Heart」が特に際立ちます。
「In Darkness」はリズミカルでシャープな曲調と物悲しく透明性のあるVoが見事にマッチ。
03:20~の哀愁フレーズもたまりません。
「The Darkest Night」はジリジリしたギターを軸に展開する躍動感のあるメロディが素敵。
特に01:05からは安堵感が強まりますし、カンカンする演奏パート(02:27~)への切り替えもうまいです。
「Never Look Back」はドライヴ感のある曲調の中での切ないサビ(00:51~) → 泣きのギター(01:21~)の流れが絶品で、さらに音域を下げての03:25~の歌メロがまたすばらしい。
「The Coldest Heart」(SENTENCEDを思わせる曲名)では耽美的な音像での厚みのある歌(01:25~)が特徴的です。
バンドは2024年7月18日の初ライヴでロス・オービンソン(代表曲に「Oh, Pretty Woman」)の「I Drove All Night」をカヴァーしていますが、確かにミカエルの声がハマりそうですね。
HOUSE OF LORDS『FULL TILT OVERDRIVE』
ジェイムズ・クリスチャン率いる米メロディアス・ハード・ロック・バンドの14作目。
ジェイムズの個性的なリード・ヴォーカルに即効性のあるメロディを加える手法が冴えます。
ジェイムズの高音が気になる場面がありますが、曲そのものは練られていますし、メロディもさすがのクオリティ。
ハイレベルです。
傑作『WORLD UPSIDE DOWN』(2006年)からバンドに参加しているジミ・ベル<G>の貢献度もかなり高く、ヨハン・コレベリ<Ds >とマーク・マンゴールド<Key>もツボを押さえたプレイで魅了します。
おすすめ曲
- Crowded Room…声が入り始める00:02~にドキッとする。00:56から段階的に盛り上げて、サビ(01:11~)に移行する構成がすばらしい。01:35~のブルータルなバックVoがまた新鮮。02:44~のジミのギターもエキサイティングでメロディが強調される03:03~もいいプレイ。ブルータルなバックVoを再び絡めるエンディングも◎
- Bad Karma…00:02~のギターがSAXON「Madame Guillotine」(2024年『HELL, FIRE AND DAMNATION』)の00:30~のよう。ジェイムズのリードVoに続く00:13~がゴージャスでミステリアス。ホッとさせる歌メロ(00:39~)→ ジェイムズが足踏み(00:51~) → キャッチーなサビの流れが絶品。足踏みは随所にみられ、いいスパイスになっている。エンディング間近の04:02~ではブルータルなバックVo。「Crowded Room」に続いて登場するのがうれしい
- Cry Of The Wicked…00:39~や00:50~のジェイムズの高音が少し気になるが、サビ(00:55~)では極上メロディが展開する。01:01~のコーラスや01:20~の中音域によるメロディも絶品
- Full Tilt Overdrive…全体的にジェイムズの高音域が気になるが、曲は軽快でかっこいい。00:30~のジェイムズのVoがジョン・コラビ<Vo:THE DEAD DAISIES>っぽくてニッコリ。サビ(01:09~)もハイテンションで、02:33~のジミのギター、04:22~のマークのキーボードも燃える
- Taking The Fall…土臭くて渋い曲調の中でヨハンのドラムがドン!ドン!と心地良く響く。サビ(01:27~)はメロディもハーモニーも高品質。02:00~のエフェクト処理されたギターがまたいいアクセント。2回目のサビの後の03:07~からはジミが少し潤ったフレーズで引き付ける。派手さはないが始まった瞬間「おお…」となる
- You’re Cursed…ホラーの雰囲気の中でハードな音を響かせる手法がうまい(00:25~)。本編はホラーの要素が薄まり、グルーヴィに進行。ジェイムズの歌(01:48~) → ジミのギター(01:52~)の細かいテイストが生きる。一瞬ホラー要素を再び組み込む03:24~もいいアクセント。03:37からはマークが魅せる
- Not The Enemy…ミステリアスでヘヴィ。00:15~が超刺激的。スローで進みサビでミドル・テンポになるが、01:26からジェイムズのVoを絡めながら混沌とする。ヨハンのドラムの連打(02:41~) → マークのキーボード(02:56~)もエキサイティングで光が差し込む03:10~もいい変化球。ラストは再度ヨハンが連打(不気味な声の絡め方も◎)
- State Of Emergency…「All The Way To Heaven」(『WORLD UPSIDE DOWN』収録)の速度をちょっと落としたような感じ。ハードで哀愁のある00:42~がたまらない。気分を高める01:09からの歌メロがすばらしく、01:54からは曲名をきれいなハーモニーで歌う。02:07~も美しい。03:06からのジミの高音域ギター・ソロも胸に響く
DGM『ENDLESS』
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GRAND MAGUS『SUNRAVEN』
スウェーデンのヘヴィ・ロック・トリオの10作目。
『WOLF GOD』(2019年)以来、約5年半ぶりのアルバムです。
フロントマンはSPIRITUAL BEGGARSの『ON FIRE』(2002年)と『DEMONS』(2005年)でのパフォーマンスもすばらしかったヤンネ“JB”クリストファーソン(特に『ON FIRE』は名盤でボーナスの「Burden Of Dreams」を含めいい曲ばかりでした)。
JBはSPIRITUAL BEGGARSでは歌のみでしたが、このGRAND MAGUSではギターも弾いていて、ヘヴィなリフだけでなくリード・ギターでも魅了。
歌いっぷりも堂々としていて、黙って聴かざるを得ないような独特のオーラがあります。
「Skybound」や「The Wheel Of Pain」のように、ヘヴィな演奏の中でのルートヴィヒ<Ds>によるパワフルな叩きつけも特徴的です。
おすすめ曲
- Skybound…ドコドコしていてヘヴィ。00:51からは叩きつけながらいい具合に伸ばす。02:14~のギター・ソロもメロディックでかっこいい
- The Wheel Of Pain…00:00~に揺さぶられる。ズシンズシンしていてヘヴィ。00:41~にキリッとさせられ、ギター・ソロ前の02:08~でも効果的なアクセントとなっている。ギター・ソロ(02:18~)は最初ゆっくり聴かせて徐々にエキサイティングになっていく
- Sunraven…00:00~にやられる。ド~ンとしていてヘヴィ。ルートヴィヒのバスドラ連打が刺激的。02:06~のギター・ソロはつかみどころが難しいフレーズでこれがまたツボ
- Winter Storms…マッツ“フォックス”スキナー<B>が弾力性のあるベースを響かせる。ミドル・テンポでヘヴィ。JBの低音域Voが渋く、03:56~はベースを前面に出すアプローチが効いている。ピタッと止まる04:45~もいい仕掛け
- The Black Lake…引き続きJBは低音域Vo。歌い出し(00:22~)はちょっとザック・ワイルドっぽい。どんよりしていてヘヴィ。04:40~もうまい。「Winter Storms」の04:45~と同様の手法が効いている
- Hour Of The Wolf…ホラーの雰囲気で始まるが、疾走(00:35~)を効果的に絡める。JBのゆがんだ低音域Voが見事にハマっている。いびつでハード
- Grendel…シャープでヘヴィ。00:38~の刻みが印象的。01:51からはルートヴィヒがライドシンバルをいい感じに響かせる。不気味な声(02:06~) → ギター・ソロ(02:20~)もいい流れ
- To Heorot…ガツンとしたスタートを切る。ギターもメロディックでいいフレーズ。JBが歌い始めてからは適度にノリ良くヘヴィ。00:52~も見事で「Winter Storms」「The Black Lake」と同様、止める攻めが効いている
- The End Belongs To You…00:11~がかっこいい。重厚でヘヴィ。曲名を区切りながらのサビ(00:55~)も力強い。01:40~のドラミングもスリリングで長時間続くからうれしい。02:06~からのギター・ソロは、哀愁がありながらもヘヴィな曲調に配慮が感じられる
長すぎずの35分で流れもスムーズ。
「Skybound」から「The End Belongs To You」までスキップせずに聴けます。
DEVIN TOWNSEND『POWERNERD』
奇才デヴィン・タウンゼンドによる2024年ソロ。
2022年の『LIGHTWORK』以来となります。
本作は三部作の1作目。
『THE MOTH』『AXOLOTL』と次の2作もタイトルが決まっているようです。
様々なタイプの曲の中で極上のハーモニーを伴ったメロディが舞います。
1曲目の「PowerNerd」が疾走曲というのも大きな魅力ですし、予想外の展開をみせるラスト「Ruby Quaker」も最高。
楽曲もアルバム全体の構成も練られていてさすがです。
全曲をたった11日間で書いたらしく、こんな濃密な曲をよく短期間で作れるなあと感心しちゃいます。
もしかしたら次の2作品の曲もほとんど出来上がっていて、早いペースで次作がリリースされるかも。
おすすめ曲
- PowerNerd…ピッとして静止 → ガツンとした演奏の中、デヴィンが力強く曲をコールして攻撃開始。勢いよく進む中で01:09~のメロディが心地良く響く
- Falling Apart…スローでヘヴィ。ギンギンする00:04~が刺激的。女性Voによる00:41~が美しく、デヴィンが歌う00:48~に高揚感が増す。曲名を伸ばす01:16~もアツい
- Knuckledragger…ゲーム音でピコピコのスタートに笑顔になり、リズミカルでゴージャスな00:06~にワクワクする。サビ(01:04~)ではグルーヴィな演奏の中でダイナミックな歌メロが伸びる
- Gratitude…00:00~のハーモニーがとてもきれい(これがサビ)。幻想的で浮遊感があり、サビに行くまでのソフトなヴォーカルもすばらしい(特に低音が響く00:31~が◎)。「Spirits Will Collide」(2019年『EMPATH』収録)に通じる
- Jainism…00:57~のメロディが素敵で、熱量が上がる01:16~がまたいい。02:31~、03:50~、03:56~、04:06~にも力が入る。美しさと攻撃性を兼ね備えたデヴィンならではのナンバー。「Regulator」(1997年『OCEAN MACHINE: BIOMECH』収録)がフワフワした感じ
- Glacier…00:05~にドキッとする。00:07~のメロディも劇的で緊張感に満ちている。00:51からソフトになり、優しさあふれる01:06も素敵…と思っていたら、01:27からハードに。02:17~でスリリングさが増してシンフォニックになったか思ったら、02:38~でまた静かになる。静と動の切り替えが特徴的
- Ruby Quaker…別世界にワープしてきたかのようなラスト・ナンバー。明るく楽しく進行…ですが、02:48からは想定外の展開(前兆は02:07~)。デヴィンらしいし、STRAPPING YOUNG LADにも通じる。そして03:36から元に戻る。最後は「PowerNerd」のコール
FIT FOR AN AUTOPSY『THE NOTHING THAT IS』
通算7作目。
Joe Badolato<Vo>加入後では5枚目のアルバムになります。
ダイナミックかつブルータルに進行しながら、
- 要所要所でのエキサイティングなギター
- 2種のグロウル(骨太で野性的&スリムで暴虐的)
- 胸に染みるクリーンVo
- 美と狂気が入り混じった重厚なバックVo
で迫ります。
「Savior Of None / Ashes Of All」のように、疾走+暴虐グロウルがAT THE GATESに通じるのがうれしい(「Hellions」(2023年)の00:42~もそうでした)。
本作を聴いた後にはAT THE GATES『SLAUGHTER OF THE SOUL』も聴きたくなります。
おすすめ曲
- Hostage…獰猛なモンスターがどっしり歩く感じ。00:16~、00:48~など、キリキリしたギターの絡め方がうまい。00:51~、01:34~のクリーンVoが警戒心を和らげる。02:25~のギターに即効性あり
- Spoils Of The Horde…ドラマティックな音像に包まれながらアグレッシヴに展開。00:21~の連打+グロウルがかっこいい。00:47~のライドシンバルも〇
- Savior Of None / Ashes Of All…00:28~がAT THE GATES「Blinded By Fear」(1995年『SLAUGHTER OF THE SOUL』収録)の01:03~のよう。01:14~の高音域クリーンが絶品で、アグレッシヴな音像の中で切なさが強調されるメロディがすばらしい
- Weaker Wolves…AT THE GATES「World Of Lies」(『SLAUGHTER OF THE SOUL』収録)の00:02~に通じる00:00~にうれしくなる。00:28からはずっしり。00:57からは声が入ってスリリングさが増し、01:10からは刺激的なギターが絡まる。激しさが増して声が前面に出る01:23~にもテンションが上がる
- The Nothing That Is…00:41から疾走。グロウルは骨太で進行していき、00:48から暴虐スタイルになる。01:10~の曇り気味のクリーンVoがなかなかツボ。そして01:32からクリアになり、高品質のメロディが展開する。02:28からは唐突に高音域ギター・ソロ。始まった瞬間刺さる
2024年11月
SKILLET『REVOLUTION』
ジョン・クーパー<Vo/B>とコリー・クーパー<G/Key>の夫婦を中心とする米クリスチャン・ロック・バンドの通算12作目。
ジェン・レジャー<Ds/Vo>加入以降では6作目になります。
スタイリッシュな演奏の中で、ジョンはナチュラルかつエネルギッシュなVo、ジェンはキュートな歌声で魅了。
ジョンのみのリードVoの曲もあります。
ジョンとジェンが歌うナンバーの中では「Showtime」「Ash In The Wind」「Fire Inside Of Me」がおすすめですが、特にすごいのが「Fire Inside Of Me」。
「Ash In The Wind」からの流れも見事で、2人で交互に畳みかけるサビが最高です。
おすすめ曲
- Showtime…「Ready, set, showtime」にワクワク。「1曲目はスロー・ナンバーで攻めるのか」と思っていたら、00:44からテンポが上がる。ジェンのVoが入るタイミングが絶妙でメロディも声の伸びも見事(00:59~)。01:26からギターが火花を散らす
- Unpopular…程良くガッツがある00:23~、00:38~が魅力。体を揺らしながら手拍子でもいいし、拳を振り上げるのもありの曲調。02:11~がRATT「You Should Know By Now」(1985年『INVASION OF YOUR PRIVACY』収録)の02:01~にちょっと似ていてうれしい
- All That Matters…叙情的な演奏の中で切ない歌メロを響かせる(00:06~)。00:36からエレクトリックに移行した後も歌メロの上質さを維持。02:03からはギターが浸透し、その後に続く02:06~、02:14~のVoは哀愁を漂わせながらも気分を高めさせてくれる。すばらしい
- Ash In The Wind…00:05~の極上メロディがサビになる。00:23から本編が始まるとソフトになるが、サビで重厚さが増し、00:05~が進行していく。そして歌声が伸びる01:06~がまたいいメロディ。2番に入る前のスリリングな01:20~や耽美的な02:21~もいいアクセント。03:12からは浮遊感のある音像の中でエフェクト処理されたジェンの声がいい感じに響く
- Fire Inside Of Me…ミステリアスでヘヴィな始まりに虜となり、00:17~の低音寄りのジョンにドキッとする。サビ(00:44~)ではジョンとジェンによる圧巻のパフォーマンス。徐々にテンションを上げるメロディ構成が絶品。02:27~のジョンの歌い出しにもガッツポーズ
- Happy Wedding Day (Alex’s Song)…アコースティック・ギター+ジョンのVoを軸としながら、段階的にドラマティックさを加味するアプローチが光る(00:48~、02:10~)。そして02:44からはストリングスが前面に出る。感動的…
- Death Defier…刺激的なラスト。ギターがズシンズシンしていて心地良く、ジョンの歌は中音域ベースで風格を感じさせる。02:24~のギター・ソロはひん曲がっていて、これまたユニーク。視界不良になる02:48も面白いアレンジ
IMPELLITTERI『WAR MACHINE』
クリス・インぺリテリ<G>率いるHMバンドの12作目。
『THE NATURE OF THE BEAST』(2018年)以来、約6年ぶりのフル・アルバムです。
ヴォーカルはロブ・ロック、ベースは1992年からずっとバンドを支えているジェイムズ・プーリ、ドラムはSLAYERのポール・ボスタフというラインナップで制作されました。
アグレッシヴで勢いある曲調の中でロブがアツいヴォーカルを披露し、クリスは緊張感に満ちたギター・プレイで魅了します。
ジェイムズのベースも安定感抜群ですし、ポールのドラミングもパワフル。
スラッシーなかけ声が登場する「Wrathchild」なんかはポールにピッタリです。
おすすめ曲
- War Machine…クリスのギターがウィーン! → ポールのドラムがドコドコ → クリスの高速ギターでいう力強いスタート。曲名を区切りながらの00:54~に引き寄せられる。01:50からクリスのエキサイティングなソロに入り、02:31でいったんスローかつヘヴィになる。エネルギーをセーブ気味のオープニング
- Out Of My Mind (Heavy Metal)…00:00~のクリスのギターがDEEP PURPLE「Burn」(1974年『BURN』収録)。00:46~でロブの音域が上がるところがアツく、サビ(01:24~)ではロブのリードVo → バックVoがいい流れ。クリスのソロもスリリングで、それまでより早く刻む02:04~が特に刺激的。迫ってくるような02:38~もいいアプローチ
- Superkingdom…高速フレーズ → ウィーン!というクリスの象徴的パフォーマンスで始まる。00:10~は叫び声のよう。本編ではジェイムズのベースが前面に出る01:12~が特徴的でこれが何回か曲中に登場する。クリスがシャカシャカする01:30~もいい
- Wrathchild…00:03~のクリスがエキサイティング。上述のかけ声は00:32~。パワフルで気合いが入る。サビ(00:40~)も00:32~の力強さを踏襲。クリスのソロはエモーショナルな02:14~が特に染みる…が、02:37から突然疾走。このタイミングがまた絶妙
- What Lies Beneath…モダンかつグルーヴィに展開するサビ(00:50~)に中毒性がある。フワフワしながらミステリアスになる01:04~もいいアクセント。クリスのソロの時はバックの02:20~がいい突っつき具合。最後のサビでは03:57~でポールのドラムがドドドンと前面に出る。これもいいアレンジ
- Hell On Earth…シャープでスピード感がある。00:38ではロブがいきなりハイトーン。ポールのバスドラ連打を軸に進行していくサビ(00:51~)~が特にアツい
- Power Grab…「What Lies Beneath」のサビのモダンなアプローチがこの曲全体で進行。ポールのバスドラ連打 → クリスのウィーン! → 高速ギター → ロブの高音域Voの流れがすばらしい。サビでのハーモニーも魅力的。ジェイムズが02:23でベースを響かせて、クリスのハイテンションなソロに移っていく構成もかっこいい
- Beware The Hunter…00:05~のクリスがエキサイティング。高音域による速弾きにキリッとさせられる。サビではACCEPTのような「Hunter!」にガッツポーズ。勇ましい
- Gone Insane…ロブのパフォーマンスが光る。00:36~は狂気さをにじませる唱法がすばらしく、サビ(01:05~)ではダイナミズムに満ちたメロディが展開する。ジェイムズのベース(03:05~) → クリスの情緒的なギターもいいスパイス
SEVENTH CRYSTAL『ENTITY』
クリスティアン・フィール<Vo>率いるスウェーデンのバンドによる3rdフルです。
- 2023年3月:2nd『WONDERLAND』をリリース
- 2023年4月:クリスティアンがMAGNUS KARLSSON’S FREE FALL『HUNT THE FLAME』の「Break Of Dawn」に参加
- 2023年11月:EP『INFINITY』をリリース
『ENTITY』から約1年ぶりの作品発表となります。
2021年のデビュー作『DELIRIUM』からメロディのセンスが光っていましたが、この『ENTITY』もさすがのクオリティ。
これまでで一番ハードな音作りで、「Path Of The Absurd」「Blinded By The Light」のように『HUNT THE FLAME』の音楽性に近い曲があるというのも興味深いです。
おすすめ曲
- Oathbreaker…00:13~が力強い(これがサビになる)。00:33からかっこいい語りが入り、00:50からクリスティアンが透明感のある歌声で歌い始める。低音域が前面に出る01:00~が渋い。02:41~のギター・ソロもエキサイティング
- Thirteen To One…エッジが効いた曲調の中での静と動の切り替えが秀逸。音域が下がって哀愁度が強まる(00:56~) → ホワホワ(01:05~) → サビ(01:13~)でクリスティアンが突き上げる流れたまらない。バックVoもとてもいいメロディ
- Path Of The Absurd…メロディアスでザクザク。00:20~が名曲「Higher Ground」(2023年『WONDERLAND』収録)の00:25~に通じる。00:39から高揚感が増し、サビ(00:48~)でさらにテンションが上がる。歌声を伸ばしながらのクリスティアンのパフォーマンスが最高
- Interlude…近未来風の音像に包まれながら語りが進行し、「Blinded By The Light」へとつながる
- Blinded By The Light…「Path Of The Absurd」のようにメロディアスでザクザク。クリスティアンのVoがとてもパワフルで01:23~での音域を上げる唱法が光る。ギター・ソロに入りそうな雰囲気を漂わせつつ引っ張る(02:55~) → 疾走(03:04~) → やっとギター・ソロ(03:25~)という構成もニクい。ソロそのものもいいフレーズで始まった瞬間刺さる
- Mayflower…00:00~のメロディックなフレーズにやられる。00:26からは切なさとパワフルさを兼ね備えたクリスティアンのVoが見事。サビ(01:03~)ではベースがいい具合にはじけて、歌詞を区切る唱法が光る。ミステリアスさが増す(02:58~) → ギター・ソロ(03:06~)の構成もすばらしい
- Push Comes To Shove…静 → 動の流れをみせる。00:20~から低音域のつぶやきがいい感じに響く。01:20からバンド演奏になるが、すばらしいのは02:06~のサビ。極上ハーモニーを伴った歌メロがドラマティックに進行し、02:08から最高級のコーラスが加わる
- Song Of The Brave…こちらも静 → 動。浮遊感のあるサウンドの中でクリスティアンの歌声が響き、01:22から劇的かつハードになる。高音域で伸びる切ない歌メロがすばらしい。01:49~の泣きのギターも染みるし、03:21~の適度にエネルギッシュなソロも見事にハマっている。いったんバンド演奏を引っ込めてサビを再開させる03:35~もうまい
OPETH『THE LAST WILL AND TESTAMENT』
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SUNSTORM『RESTLESS FIGHT』
通算8作目。
元々はジョー・リン・ターナーが歌うAORプロジェクトとして2006年にスタートしましたが、2021年の6作目『AFTERLIFE』からはロニー・ロメロがリードVoを務めています。
演奏陣も何度か変わっていて、今作は下記ラインナップ。
- ロニー・ロメロ<Vo>
- アルド・ロノビレ<G:SECRET SPHERE>
- アンドレア・アルカンジェリ<B:DGM>
- アルフォンソ・モチェリーノ<Ds>
- アントニオ・アガテ<Key>
ロニーが加わってからは3作目で、ロニー以外のメンバーが一新されています。
アルドのプレイもすばらしく、「Love’s Not Gone」「Hope’s Last Stand」「Restless Fight」ではギター・ソロの始まりに即効性があります。
エッジの効いた「Hope’s Last Stand」では02:15~と03:03~に二度KOされ、シャープな「Restless Fight」では中音域(02:45~) → 高音域(02:58~)がなかなかいい。
バラード「Without You」も感動的で、00:45~のメロディは特に胸が熱くなります。
バックで広がるストリングスも素敵ですね。
後半にアツい曲が多いのもプラス要素。
「Against The Storm」はサビにガッツがありますし、「Dreams Aren’t Over」「Take It All」ではかっこいいメロディをエネルギッシュに堂々と歌うロニーのパフォーマンスが光ります。
4曲目「Shot In The Dark」はOZZY OSBOURNEのカヴァーです。