2025年リリース作品のレビューを随時掲載していきます。
レビュー内に記載されている時間は再生環境によって1~2秒ほどずれる場合がございますので、目安としてお読みください。
下記作品を追加しました。
- 4月24日:H.E.A.T『WELCOME TO THE FUTURE』
- 4月25日:GHOST『SKELETÁ』(単独記事へのリンク)
ここから下にスクロールしてレビューをご覧ください。
2025年1月
TREMONTI『THE END WILL SHOW US HOW』
マーク・トレモンティ<G/Vo:ALTER BRIDGE>率いるバンドの6作目。
ALTER BRIDGEでは何曲かマークがリードVoをとっている曲がありますが、TREMONTIでは全曲マークが歌っています。
静と動をバランスよく導入し、ヘヴィなパートはALTER BRIDGEよりもゴリゴリ。
マークの歌は低音域で響きがよく、メロディも高品質です。
アルバムは前作『MARCHING IN TIME』(2021年)のラスト「Marching In Time」の延長線上のような「The Mother, The Earth And I」で幕を開けるので、「Marching In Time」を聴いてから本作を聴くとより一層TREMONTIワールドに浸れます。
- The Mother, The Earth And I…「Marching In Time」を継承。ダークでメランコリックに進む中、02:50~でいったん引き伸ばして、マークの歌メロが強調される03:15~がいいアクセント
- One More Time…ジリジリしたギター・リフ(00:00~) → バスドラ連打(00:03~)がかなり刺激的。歪曲的なギター(00:47)→ エフェクト処理のVo → サビへの流れもかっこいい。「Now And Forever」(『MARCHING IN TIME』収録/こちらもアルバム2曲目)のような破壊力がある
- Just Too Much…スローでヘヴィ。脳天直撃系のサウンドがズシンズシンと響いてくる。警告音的ギター(00:50~) → ピタッと止まる → サビ(00:57~)にハッとさせられる
- Nails…遅く重く進行。「Just Too Much」系統かと思っていたら、02:23からいい感じに暴れ始める
- The End Will Show Us How…始まりがALTER BRIDGE「Waters Rising」(2013年『FORTRESS』収録/マークがリードVo)っぽい。01:12~の冷たく不吉なギターが特徴的。03:23からはエモーショナルなギター・ソロで魅せる
- I’ll Take My Chances…ハードで勢いがある。語りと歌の境界線をふわふわするような00:13~がツボ。00:23~がALTER BRIDGE「Ties That Bind」(2007年『BLACKBIRD』収録)の00:23~に通じる。響きが良くなる01:53~がまた快感
- The Bottom…慌ただしい始まり。00:11~がいい突っつき具合で気分を高めてくれる。光線のような02:34~も面白い
- Live In Fear…バイオレントな演奏とマークの歌を交互に配置するアプローチが効いている。曲の雰囲気から浮かせた音質で攻めるギター・ソロ(02:54~)も新鮮
- All The Wicked Things…ミステリアスかつ斬新な音像でスタートし、本編はハードになる。01:50~のメロディアスなフレーズがたまらなく、02:05~の歌メロはALTER BRIDGE「Godspeed」(2019年『WALK THE SKY』収録/マイルス・ケネディ<Vo/G>の歌をマークがバックVoで支える)の00:31~のよう。そしてマークのVoの音域が下がる02:13~が刺さる。03:04からヘヴィさが増し、よりアグレッシヴに展開。ギターにエフェクト(04:04~) → ドラム → ハード演奏に戻す構成もうまい
THE HALO EFFECT『MARCH OF THE UNHEARD』
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GRAVE DIGGER『BONE COLLECTOR』
クリス・ボルテンダール<Vo>率いるドイツのパワー・メタル・バンドの22作目。
2023年に元ORDEN OGANのトビアス・カースティン<G:2008年『VALE』から2017年『GUNMEN』までプレイし、2020年までORDEN OGANに在籍>がGRAVE DIGGERに加入しました。
トビアス加入後は、
- The Grave Is Yours
- Back To The Roots
- Hell Is My Purgatory (Hellfire 2024)…オリジナルは2022年『SYMBOL OF ETERNITY』収録
の3曲をリリースしていますが、アルバムは初となります。
2025年はバンド結成45周年。
拳を振り上げる系のワイルドなパワー・メタルが本作でも貫かれており、冒頭のタイトル曲「Bone Collector」から快調に飛ばします。
クリスの野性的なヴォーカルも健在。
クリスの次にバンド在籍期間が長いイェンス・ベッカー<B>もエキサイティングなプレイでサウンドを支えます。
「Bone Collector」から「Killing Is My Pleasure」までの構成が特にすばらしいです。
- Bone Collector…不気味なSE → スネアの連打(00:21~) → 疾走。ガッツあるVoで曲名を区切りながらのサビが特徴的。「collector」1語も「co」「llector」と切り離す
- The Rich, The Poor, The Dying…引き続き疾走。曲に宿る荒っぽさが気分を盛り上げてくれる。サビは「Bone Collector」同様、力強い
- Kingdom Of Skulls…イェンスのベースがガキガキしていてエキサイティング。クリスの歌メロも勇ましく、サビの後にいったん止まる01:21~に引き寄せられる
- The Devil’s Serenade…00:06~がRAGE「The Crawling Chaos」(1995年『BLACK IN MIND』収録)の00:05~のよう。MICHAEL SCHENKER GROUP「Into The Arena」(1980年『THE MICHAEL SCHENKER GROUP』収録)が大好きなので、00:57~の歌詞が耳に残る
- Killing Is My Pleasure…迫りくる00:19~がかっこいい。そして00:19~にクリスのVoが乗る00:40~に燃える。その後のサビでメロディックになる構成もいい
- Riders Of Doom…01:04からのVoが勇壮で魅力的。どっしりと進んでいくが、03:12からはそれまでの曲調からは考えにくい展開。トビアスがちょっと泣きの入ったフレーズを放つ
- Made Of Madness…メランコリックで切なく始まるバラード…かと思ったら00:27から疾走。00:52~のイェンスのベースもグリグリしていて心地良い。サビ(01:27~)はメロディよりも力強さとブルータルさに重点を置く
- Forever Evil And Buried Alive…ドカンと始まりメタリックに展開。低音域で程良くメロディックな00:39~が曲調にハマっている
THE FERRYMEN『IRON WILL』
- マグナス・カールソン<G/B/Key>
- ロニー・ロメロ<Vo>
- マイク・テラーナ<Ds>
によるプロジェクトの4作目。
アートワークの基調色が前作『ONE MORE RIVER TO CROSS』(2022年)と似ています。
『ONE MORE RIVER TO CROSS』の延長線上となる劇的メタルで、琴線に触れるメロディを要所要所に配置。
マグナスのソングライティングのセンスが光ります。
タイトル曲「Iron Will」のようにサビの前にアクセントをつける手法もうまいですし、バラード「Dreams And Destiny」も感動的。
儀式を取り入れた「The Darkness That Divides」も面白いです。
音作りはこれまでの作品とは異なっていて、ドラマティックさを維持しながらも硬質な音像となっています。
- Choke Hold…物悲しく劇的なイントロ → 回転力のあるメロディックなギター(00:33~)がたまらない。ここでKO。サビでは切ない極上メロディが進行する。最後のサビが終わって00:33~に戻る構成(05:29~)もすばらしい
- Iron Will…00:15~やサビ(01:17~)が「No Matter How Hard We Fall」(2019年『A NEW EVIL』収録)のサビ(01:11~)に通じる。00:15~は始まった瞬間刺さるし、サビは01:01~でいったん引いてからの展開が秀逸
- Adrenaline…シャープでメロディックに進む中、00:11~、01:13~、03:44~の躍動感あるキーボードがいいアクセント。エネルギーをチャージ気味で中音域中心のロニーの歌唱がハマっている
- Darkest Storm…00:12~が後半強調される。00:37~の弾力性のあるベースが心地良い。サビ(01:14~)ではそれまでより厚みが増して、高品質な歌メロが展開する。03:05からは弾力ベース+哀愁ギター。03:55からは00:12~がより前面に出る
- Dreams And Destiny…静 → 動のバラード。美しい演奏 → 鼓動(00:03~)にドキッとする。ロニーのソフトかつ緩急をつけながらの歌唱が絶品で、音域を一瞬上げる00:20~なんかは本当にうまい。00:30~のキーボードも染みる。02:21~からはロニーが伸びやかなVoで魅了。ギター・ソロの始まり(03:02~)は名曲「Hunt Me To The End Of The Road」(『ONE MORE RIVER TO CROSS』収録)の03:32~に通じる
- The Darkness That Divides…儀式で始まるメロディック・メタル。00:40~のマイクのドラムがエキサイティングで随所で効果的な役割を果たす。01:05~で気分を高めて、サビで加速する構成もアツい。儀式再び(02:54~) → ギター・ソロ(03:14~) → ドラム連打も見事な攻め
- Mind Games…00:20~のシンフォニック+ザクザクな演奏に惹かれる。一瞬演奏が止まってサビに入る00:50~がかっこよく、ロニーの音域が上がりそうで上がらない歌メロが特徴的
LABYRINTH『IN THE VANISHING ECHOES OF GOODBYE』
オラフ・トーセン<G>率いるイタリアのパワー・メタル・バンドによる10作目。
『WELCOME TO THE ABSURD CIRCUS』(2021年)以来、4年ぶりのアルバムとなります。
『WELCOME TO THE ABSURD CIRCUS』はエネルギッシュな「The Absurd Circus」で幕を開け、「Live Today」でさらに加速しましたが、今回は1曲目の「Welcome Twilight」が「Live Today」系統。
爽快なスタートを切ります。
そして7分台の2曲目「Accept The Changes」もスローなパートを組み込ませながら疾走します。
演奏とロベルト・ティランティ<Vo>の歌の両方で哀愁メロディを炸裂させる「The Healing」のようなナンバーもうれしい。
「The Healing」は中盤のハイライトです。
あと驚かされたのが、BLUE MURDER「Out Of Love」(1989年『BLUE MURDER』収録)を思わせる「To The Son I Never Had」。
もちろん偶然に違いないのですが、ジョン・サイクスの訃報が伝わった2025年1月20日(この日はジョンを偲んで『BLUE MURDER』も聴いていました)の4日後に「Out Of Love」のような曲に出会うとは思いませんでした。
「To The Son I Never Had」を聴いていると、こみ上げてくるものがあります。
- Welcome Twilight…JUDAS PRIEST「Hell Bent For Leather」のライヴ・ヴァージョン(オリジナルは1978年『KILLING MACHINE』収録)のようなドラミングでスタート。そして01:16からバスドラを連打しながら「Live Today」のように疾走。01:44~のバックVoにテンションが上がる。メロディ、声の質共に最高。力強くて透明感がある。03:52~の演奏パートもエキサイティング
- Accept The Changes…01:10からバスドラ連打で疾走。スローになって楽園のような演奏+切ないVo(01:55~) → サビで疾走再開(02:21~)もいいアクセントのつけ方。歌メロそのものもすばらしく、ロベルトの音域が上がる02:43~がまたアツい。06:54からはロベルトの圧巻のハイトーン。始まりが乱れ気味だが荒っぽさがあって逆にいい
- Out Of Place…泣きの演奏 → ロベルトの切ないVoでスタートし、本編はミドルで進行。02:59からはさらに加速する。短時間ながらも03:44~の哀愁ギターにやられる。終わり間際の04:27~も染みる
- At The Rainbow’s End…ガツンとしたスタートを切り、00:17~から疾走。スリリングな演奏をピタッと止めてサビに移行する01:15~がかっこよく、ロベルトの張り上げなしの歌が伸びる。とてもいいメロディで01:18~のハーモニーの加え方もうまい
- The Healing…00:28~の哀愁ギターがやばすぎる。00:47~のロベルトの歌い出しも絶妙で、サビでは共感性の高い極上メロディが進行。02:48からは雰囲気が変わり、スリリングさが増す。光線(04:08~) → ギター・ソロも絶品で、ソロは始まった瞬間刺さる。04:50~でアコースティックを挟んで哀メロを再開させる構成も◎
- To The Son I Never Had…BLUE MURDER「Out Of Love」のような始まりが涙腺を刺激する。00:16~のギターも泣けるし、ロベルトの歌が入ってからも「Out Of Love」っぽさが続く。00:36~のロベルトの歌い出しがジョン・サイクスのようにも聞こえる。3:29から徐々にエキサイティングさが増ていき、03:49からは上質な高音域ギター・ソロ。そして04:20からまた「Out Of Love」のような雰囲気に戻る
BONFIRE『HIGHER GROUND』
ハンス・ツィラー<G>を中心とするドイツのハード・ロック・バンド、通算18作目。
ディアン・メア<Vo>が2022年に加入し、以下の初期3作品新録を2023年にリリースしましたが、ディアン加入後のオリジナル・アルバムは初となります。
『DON’T TOUCH THE LIGHT』のように序曲で幕を開けます。
『DON’T TOUCH THE LIGHT』は「The Rising」 → ミディアム・テンポの「Starin’ Eyes」という流れでしたが、本作『HIGHER GROUND』は「I Will Rise」から疾走します。
新録3作品でもそうでしたが、ディアンのヴォーカルが情熱的でかっこいい。
「I Will Rise」に加え、「I Died Tonight」など、曲によって歌メロに切なさが伴う場面があるのも魅力の1つで、分厚いバックVoと見事に融合しています。
疾走しながらパワフルさを優先させる「Lost All Control」もかっこいい。
疾走曲でも歌メロの質を変えて曲配置する手法が見事です。
「Rock’N’Roll Survivor (2024 Version)」は『FISTFUL OF FIRE』(2020年)収録曲の再録。
ヘヴィなアレンジになっていて、オリジナルにはなかった歌メロも登場します。
- Nostradamus…雷雨 → 切ないピアノで始まる序曲。00:29から劇的さが増し、気分が高まる
- I Will Rise…疾走曲①。エネルギッシュでありながら切なさも感じるサビは01:11~。ギター・ソロは音域が下がる02:36~がいいアクセント
- Higher Ground…ACCEPT「Balls To The Wall」(1983年『BALLS TO THE WALL』収録)のような始まりにガッツポーズ。グルーヴィな演奏+中音域Voを軸に進んでいき、サビでは音域が上がって伸びやかになる。02:19~のギター・ソロは予想外の音質。湿っぽい
- I Died Tonight…ゴージャスなサビがかっこよく、「I Will Rise」のサビのような切なさもある。ハーモニーに続くディアンの高音域での歌唱(01:21~)もすばらしい
- Lost All Control…疾走曲②。サビで力強く曲名を歌う。2番に入る前のギター(01:25~)に緊張感がある。演奏パートの後にダダン!ダン!ダン!となってサビを再開する03:19~もうまい
- Come Hell Or High Water…ドンドンしていてヘヴィ。00:18からの不気味な笑い声や00:32~のトーキング・モジュレーターもいいスパイス。00:56からはミドル・テンポ&メロディアスになるものの、01:12~で再度スロー&ヘヴィ。ダークなオーラに包まれながらの加速・減速が秀逸。02:49~のファビオ・アレッサンドリーニ<Ds:ANNIHILATOR>によるドラム連打もエキサイティングでホラー要素が強くなる02:52~、奇妙な03:23~も聴きどころ
- Rock’N’Roll Survivor (2024 Version)…オリジナルは『FISTFUL OF FIRE』(2020年)収録。トーキング・モジュレーターでスタートし、ギターがよりモダンでヘヴィになっている。サビに行くまでの歌メロにも変化球があり、特に01:15~がなかなか(オリジナルの00:51~が上書きされている)。03:26~もいい追加要素
ALL THAT REMAINS『ANTIFRAGILE』
米メタルコア・バンドの10作目。
『VICTIM OF THE NEW DISEASE』(2018年)以来のオリジナル・アルバムで、一番長い間隔を経てのリリースとなります。
アグレッシヴな演奏と共にフィリップ・ラボンテ<Vo>の破壊力のあるグロウルと美しいクリーンVoで攻めるサウンド。
ゴリゴリしたグロウルをメインとしながらも残虐的に伸ばすパートもあり、その使い分けが効いています。
クリーンVoもかなり充実。
「Devine」「No Tomorrow」「Forever Cold」ではスロー・ダウンさせて極上メロディで魅了する手法が見事ですし、「Let You Go」では歌と泣きのギターのコンビネーションが絶妙です。
- クリーンVoのみの「No Tomorrow」 → 3曲目
- グロウルのみの「Cut Their Tongues Out」→ 9曲目
という曲配置にもバランスの考慮が感じられます。
ラストの「Blood & Stone」もすばらしい。
アグレッシヴに攻めた後、美しく締めくくる構成に拍手です。
- Divine…要所要所での機関銃のような連打がエキサイティング。サビで曲名をきれいに伸ばす00:44~に浄化作用がある。グロウルに続く02:29~のギターも心地良く浸透
- Kerosene…連打をベースに進む中、00:09~で独特な足踏みをする。グロウル+少しふわふわしたクリーンVo(00:41~) → クリーンVoのみのサビ(01:00~)への流れが特徴的。クリーンVoの音域が下がってスロー&ヘヴィ(02:31~) → グロウル(02:52~) → 連打も力強く、狂気さが増す03:03~も迫力満点
- No Tomorrow…全編クリーンVo。メロディックに突っつく00:00~がなかなか快感。静かになってキラキラ(01:04~) → ドラムがストン(01:07~) → サビの流れがすばらしく、サビは歌メロの美しさにうっとりする。02:49~、04:12~の衝撃音もいい効果
- The Piper…美しく包容力があるイントロからシャープな演奏へ。心地良いメロディックなフレーズ(00:46~)を挟んで、00:50から疾走する。02:25からは狂気グロウル。宇宙空間のような02:42~に引き込まれ、03:13からは貫通力のあるギターが放たれる
- Forever Cold…グロウルで攻めて、01:13~でドカンとなってスロー・ダウン。その後クリーンVoによる美メロが展開していく。間隔を置きながら連打する02:45~がエキサイティング
- Let You Go…ノリが良くて鋭角的。クリーンVoのサビでは泣きのギターも主張してくる。悲鳴のような02:16~や高音域ギター・ソロ(02:39~)も刺激的
- Cut Their Tongues Out…全編グロウル。重戦車のようにドシンドシンと進んでいき、01:38から疾走する。疾走してからも01:55~のようにスロー&ヘヴィなパートは維持。爆発力のある音像に圧倒される
- Blood & Stone…ドラマティックでキラキラする中、00:54~の高音域の泣きのギターにやられる。そして01:27から疾走し、グロウル → クリーン → 残虐グロウル。短時間での三種の唱法が生きる。01:55からはクリーンVoメインでアグレッシヴに攻める。03:06~はWINGER「Junkyard Dog (Tears On Stone)」(1993年『PULL』収録)の00:27~を加速させたようなかっこいいリフ。04:43からは再び美しい演奏に。キラリとするエンディングが素敵
THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA『GIVE US THE MOON』
ビョーン“スピード”ストリッド<Vo:SOILWORK>とシャーリー・ダンジェロ<B:ARCH ENEMY, SPIRITUAL BEGGARS>を中心とするバンドの7作目。
80年代型サウンドの中で透明感のある美しいメロディが進行していきます。
時代を遡る音楽性でありながらも、新鮮であり前向きなエネルギーに満ちているのがすばらしい。
これも楽曲のレベルの高さと濃密さなのでしょう。
女性バックVo2名によるハーモニーが見事で、曲が展開していくにつれて女性Voを前面に出す手法が徐々に気分を盛り上げてくれます。
歌だけでなく演奏でも魅了する「Like The Beating Of A Heart」「Melbourne, May I?」、ノスタルジックな「Paloma」「Give Us The Moon」もたまらない。
「Give Us The Moon」では宇宙空間に導いてからの展開が絶品です。
- Stratus…軽快な曲調にワクワク。サビで女性バックVoを強調させる手法が生きる。歌メロそのものも最高。2番以降はサビ前も女性Voの存在感が増す。女性バックVo+ビョーン (03:21~) → ギター・ソロ(03:32~)もすばらしい流れ。04:34からはシャーリーのベースがちょっと前面に出る
- Shooting Velvet…陽気で透明感のあるフレーズ(00:00~)が印象的。その後00:27から入るビョーンの中音域Voとのギャップがまたいい。サビは01:20~が特に心地良い
- Like The Beating Of A Heart…リズミカルでありながらも少しシリアス。ビョーンの中音域Voがハマる。ちょっとEUROPE「The Final Countdown」(1986年『THE FINAL COUNTDOWN』収録)っぽいキーボード(03:16~) → ギター・ソロ(03:37~)もいい構成。3回目のサビではメロディックなギターが絡みつく
- Melbourne, May I?…躍動感が増すサビ(01:24~)が心地良い。ちょっと声を太くする01:53~、02:07~もさすがの表現力。キーボード(03:02~) → 高音Vo、ゆがんだギター・ソロ(03:31~) → ヒラヒラしたキーボード(03:44~)も聴きごたえがある
- Paloma…郷愁的な曲調の中での中音域を軸としたVoが絶品。サビ(01:19~)ではさらに歌メロの魅力が増し、01:40~が特に胸に響く。要所要所でハモる女性Voも魅力的。02:33からはキーボードが徐々に気分を高めてくれる
- Give Us The Moon…スペーシーなキーボードに始まり、00:34からは極上の懐古的メロディが舞う。歌い出しでグッとくる。少し浮かせて癒してくれる01:12~やサビの前にアクセントを入れる01:30~がまたすばらしい
- A Paris Point Of View…シャーリーのベースが活躍するダンサブルなナンバー。ヒゲダンスの「ヒゲのテーマ」にも通じる。ちょっとズレ気味の00:31~にジワるが、その後は平常運転
- Way To Spend The Night…軽快な曲調の中、メロディが下がってくる01:18~が心地良く浸透。そして01:23から女性Voの音域が上がっていく。すばらしい緩急
2025年2月
MARKO HIETALA『ROSES FROM THE DEEP』
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OBSCURA『A SONICATION』
ドイツのテクニカル・デス・メタル・バンド、7作目。
シュテフェン・クンメラー<Vo/G>以外のメンバーを一新してのアルバム・リリースとなります。
苦悶グロウルと共に突進しながらメロディックなフレーズを散布させるスタイルをメインとしながらも、スローでミステリアスな「Evenfall」や静 → 動 → 静のインスト「Beyond The Seventh Sun」を挟んでアルバム全体にうまく緩急をつけています。
要所要所でゴロンと主張してくるロビン・ズィールホルスト<B>のベースも特徴的です。
激推しは2曲目の「Evenfall」。
猛進する「Silver Linings」本編終了後の04:02~でホッとさせ、ドッシリとした曲調で攻める構成がすばらしいです。
夜の港のように始まり、00:18からかっこよくバンド演奏に入ります。
00:38~のギターも浸透性が高く、01:20からは涼風的なバックVo。
01:38~もいい染み具合ですし、01:55からはVoの厚みが増します。
03:11~も刺さりますね。
HYPOCRISY「Chemical Wore」(2021年『WORSHIP』収録)のようなキラー・チューンです。
LACUNA COIL『SLEEPLESS EMPIRE』
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BLEEDING THROUGH『NINE』
紅一点のキーボード奏者、Marta Demmelを含む米メタルコア・バンドの通算9作目。
再結成第1弾となる『LOVE WILL KILL ALL』(2018年)から約7年ぶりにリリースされるアルバムです。
劇的キーボードに包み込まれる中、Brandan Schieppatiの獰猛なVoにクリーンVoを織り交ぜながら楽曲が進行。
特にクリーンVoが充実していて、メロディと声質に魔力があります。
Martaも一緒に歌っていて、所々で彼女の声が前面に出るのも魅力の1つです。
『LOVE WILL KILL ALL』はアグレッシヴでドラマティック。
作品全体にも勢いがありましたが、『NINE』はスピード感を維持しながらもドッシリとしたスタイルで攻めています。
- Gallows…残虐的に疾走し、サビではスローに。美しいハーモニーが絶品で、それまでの展開とのギャップにやられる。要所要所で響くMartaのキーボードも効果的
- Dead But So Alive…異次元的音像の中でフワフワするサビが魅力的。02:33からは高音ギターが脳を刺激する。MartaのVoが前面に出る03:08~も胸に響く
- Lost In Isolation…ドック・コイル<G:GOD FORBID>が参加。連打 → シンフォニックな00:02~がかっこいい。サビはMarta中心に展開。『NINE』収録曲の中でも一番前面に出ている。重量感が増す02:34~が心地良く、ギター・ソロは始まった瞬間刺さる(02:56~/ここで弾いているのがドックかも)
- Path Of Our Disease…00:17~のMartaに虜になる。サビは拳を振り上げる系。01:37からはキーボードが前面に出て耽美的になる
- I Am Resistance…Andrew Neufeld<Vo:COMEBACK KID>が参加。00:29~がおそらくAndrew。00:38~は「On Wings Of Lead」(2003年『THIS IS LOVE, THIS IS MURDEROUS』収録)の01:13~のような雰囲気。サビは切ないメロディが絶品でAndrewのVoを前面に出したハーモニーがまた最高
- War Time…ブライアン・フェア<Vo:SHADOWS FALL>が参加。サビ(01:26~) → ピアノ(01:36~) → 泣きのギター(01:46~)がいい流れ。01:46~はJUDAS PRIEST「Invincible Shield」(2024年『INVINCIBLE SHIELD』収録)の05:30~のよう
CRAZY LIXX『THRILL OF THE BITE』
スウェーデンのハード・ロック・バンドによる8作目。
2024年にコンピレーション・アルバム『TWO SHOTS AT GLORY』がリリースされていますが、スタジオ・アルバムは2021年の『STREET LETHAL』以来となります。
80年代~90年代前半に通じるアプローチがかっこよく、
- DEF LEPPARD『PYROMANIA』(1983年)
- DANGER DANGER『DANGER DANGER』(1989年)
- FIREHOUSE『FIREHOUSE』(1990年)
あたりがうまくブレンドされたサウンドです。
華やかでありながらノスタルジックかつ哀愁あるコーラスが魅力で、メロディ、分厚さ、声質、あらゆる点において最高です。
ギター・ソロが充実しているのもうれしい。
前作は「Rise Above」の02:52~がJUDAS PRIEST「Between The Hammer & The Anvil」(1990年『PAINKILLER』収録)の02:49~に通じるかっこよさでしたが、今回は「Call Of The Wild」の03:05~が特にエキサイティングです。
「Midnight Rebels」で「Thank you good night」と締めくくるので、
- 「Midnight Rebels」までが本編
- 「Hunt For Danger」以降がアンコール
とライヴのような構成としても楽しめます。
実際「Hunt For Danger」を聴いた時は、KISSIN’ DYNAMITE日本公演のアンコール1曲目に演奏された「You’re Not Alone」(2018年『ECSTASY』収録)を思い出しました。
H.E.R.O.『GHOST OF YOU』
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TOBIAS SAMMET’S AVANTASIA『HERE BE DRAGONS』
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2025年3月
DESTRUCTION『BIRTH OF MALICE』
ジャーマン・スラッシュ・メタルの大御所による16作目。
『DIABOLICAL』(2022年)と同じ下記4人編成で制作されています。
- シュミーア<Vo/B>
- ダミール・エスキッチ<G>
- マーティン・フュリア<G>
- ランディ・ブラック<Ds>
『DIABOLICAL』がリリースされた2022年はバンド結成40周年でしたが、『BIRTH OF MALICE』発表の2025年は1985年1stフル『INFERNAL OVERKILL』40周年になります。
バンド名が曲名の「Destruction」を収録。
デビュー作にバンド・テーマ曲が収録されるのはよくあることですが、長い活動期間を経てのバンド曲発表は珍しいですね。
そしてこの「Destruction」が最高にかっこいい。
冒頭からテンションが上がります。
サイバー・パワー・スラッシュともいえる「Cyber Warfare」も斬新。
『DIABOLICAL』はアグレッシヴかつヒステリックで要所要所でのメロディックなギターが魅力的でしたが、『BIRTH OF MALICE』でもその手法が冴えます。
- Birth Of Malice…不穏な音像+アコースティック・ギターによるイントロ。不気味な声も重なり「Destruction」へと続く
- Destruction…ノイジーなギターと邪悪な声で密度が高くなる00:31~に火が付く。00:46からは「Diabolical」(2022年『DIABOLICAL』収録)の00:10~のようにシュミーアのハイトーン。サビではパワフルに「We’re DESTRUCTION!」
- Cyber Warfare…映画『トランスフォーマー』を思わせる幕開け。エキサイティングなギター+近未来的音声 → シュミーアのかけ声 → 疾走という想定外のかっこよさに痺れる。サビは「Destruction」同様、曲名を力強くコール。メロディックで緊張感のあるギター・ソロが2回あるのもうれしい(02:16~、02:54~)
- No Kings – No Masters…バイオレントに疾走。00:26~が「No Faith In Humanity」(『DIABOLICAL』収録)の00:40~のよう。02:47~のかけ声 → ギター・ソロはKREATOR「Hate Über Alles」(2022年『HATE ÜBER ALLES』収録)の02:12~を想起させる
- Scumbag Human Race…メロディックなギター(02:15~) → ランディのドラム → シュミーアの吐き捨て → エモーショナルなギター・ソロの流れがエキサイティング。03:27~のサタニックなシュミーアもかっこいい
- God Of Gore…00:51~で一瞬「The Last Of A Dying Breed」(『DIABOLICAL』収録)の01:01~がちらつく。シュミーアのハイトーン → 笑い → ベースを強調させる02:24~がいい緩急
- Evil Never Sleeps…メロディックなギターが前面に出て勇壮になる01:12~が胸アツ。02:30~のギター・ソロもぐいぐい食い込んでくる。03:38~がいいアクセント
- Fast As A Shark…ACCEPTのカヴァー。オリジナル同様、ちゃんとシャウトから演奏に入る。ACCEPTより荒々しく速く進行する
DESTRUCTIONは、
- 『INFERNAL OVERKILL』(1985年)に「Antichrist」を収録
- 2001年にアルバム『THE ANTICHRIST』をリリース
という事例があります。
2025年にバンド・テーマ曲「Destruction」を発表した彼ら。
もしかしたら将来、アルバム『DESTRUCTION』がリリースされるかもしれません。
DOROTHY『THE WAY』
女性シンガー、ドロシー・マーティン<Vo>が歌う米ハード・ロック・バンド。
『GIFTS FROM THE HOLY GHOST』(2022年)以来、約3年ぶりのアルバムです。
ドロシーのヴォーカルは、芯の強い美声を少しゆらゆらさせながら響かせるスタイル。
ミステリアスでハードな音像の中で彼女の個性的な唱法が生きます。
冒頭2曲が特にかっこいい。
「I Come Alive」は、00:00~のドロシーの伸びのあるVo → 本編への流れが最高。
「The Devil I Know」はサビの始まり(00:57~)でALTER BRIDGE「Rise Today」(2007年『BLACKBIRD』収録)のサビがちらつきます。
「Tombstone Town」にはスラッシュ<G:GUNS N’ ROSES, SLASH Featuring MYLES KENNEDY AND THE CONSPIRATORS>が参加。
ドロシーはスラッシュの「Key To The Highway」(2024年『ORGY OF THE DAMNED』収録)にゲスト参加していますが、「Tombstone Town」は「Key To The Highway」とは対照的な曲調で、『THE WAY』収録曲の中でも一番ノリがいいです。
映画『パルプ・フィクション』のオープニング曲「Misirlou」のような雰囲気も漂います。
あとドロシーはアリス・クーパー・バンドの女性ギタリスト、ニタ・ストラウスの「Victorious」(2023年『THE CALL OF THE VOID』収録)でもVoを務めていますが、この「Victorious」もおすすめ。
リズミカルな曲調の中で親しみのあるキャッチーなメロディが見事にハマっています。
DISARMONIA MUNDI『THE DORMANT STRANGER』
エットレ・リゴッティ<Clean Vo/G/B/Ds/Key>とクラウディオ・ラヴィナーレ<Growl>によるメロディック・デス・メタル・プロジェクトの6作目。
『COLD INFERNO』(2015年)から約10年ぶりとなるアルバムです。
『FRAGMENTS OF D-GENERATION』(2004年)からゲストとして貢献しているビョーン“スピード”ストリッド<Vo:SOILWORK, THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA>が今回も参加。
エットレの低音域Voとのコンビネーションも抜群です。
SOILWORKの傑作『FIGURE NUMBER FIVE』(2003年)を思わせる充実ぶりで、実際『FIGURE NUMBER FIVE』収録曲に通じるパートが何度か登場。
泣きのギターがあちこちで聴けるのもうれしいですし、日本盤ボーナス・トラック「Revenant」も充実しています。
- Adrift Among Insignificant Strangers…約7分。アルバム収録曲の中で一番長い。SOILWORK「Rejection Role」(『FIGURE NUMBER FIVE』収録)のようなスタート。あるいは「Resurrection Code」(2006年『MIND TRICKS』収録)の00:17~のよう。緩急はつけずにアグレッシヴに進む。気合を入れ直す04:45~にも燃える。「Stormghost」(『COLD INFERNO』収録)の03:13~のようでもあり、エンディングが近いかと思いきや、その後も約2分続く
- Oathbreaker…サビの低音域クリーンVoがいいメロディ。ハーモニーも上質で01:09~はSOILWORK「Strangler」(『FIGURE NUMBER FIVE』収録)のサビに通じる
- Shadows Of A World Painted Red…一瞬途切れてからサビに流れる01:13~がいいアレンジ。歌メロそのものも美しい。02:46~や03:30~のグロウル+エモーショナルなギターも見事。04:11からはキーボードが前面に出る
- Illusion Of Control…00:06~がSOILWORK「The Mindmaker」(『FIGURE NUMBER FIVE』収録)のよう。サビでは減速してクリーンVoをじっくりと聴かせる。静かになる02:15~もいいアクセント
- Outcast…00:00~が刺激的で00:13から重厚な演奏と共にダイナミックに進行。低音域クリーンVoが前面に出るサビがかなりかっこいい。01:57~のギター・ソロは泣きの要素を含ませながらもエネルギッシュなフレーズが秀逸
- Warhound…暴虐的に展開していく中、サビでのクリーンVoが安堵感を与えてくれる。ゴージャスかつノスタルジックなハーモニーがすばらしい。02:49~のアグレッシヴかつメロディックなギター・ソロもハマっている。04:01~の邪悪なテイストも異質でナイス
- Crossroads To Eternity…これもSOILWORK「Rejection Role」を想起。低いクリーンVoによるサビのメロディがいい。02:15~の泣きのギター(「Rejection Role」の02:34~のよう)がまた染みる。02:48~も琴線に触れる
- The Dormant Stranger…グルーヴィに進んでいく中、サビの低音域クリーンVoが心地良く響いてくる。02:42~、03:13~のささやき+悲哀ギターもいい組み込ませ方
- Revenant…日本盤ボーナス・トラック。グロウルと共に爆発力のある本編に突入する00:07~にドキッとし、厚めのクリーンVoが入り始める00:31~にワクワクする。ギター・ソロは01:45~からユニークなフレーズで攻めて、02:00からエネルギッシュになる。03:15から静かになってフェードアウトしていくが、アルバムの余韻に浸るのにとてもいい効果
BLOODYWOOD『NU DELHI』
インドのヘヴィ・メタル・バンドの3rdフル。
『RAKSHAK』(2022年)以来、約3年ぶりのアルバムとなります。
民族テイストを強めたSLIPKNOT+AMARANTHE風のサウンドが展開。
独特で濃密な演奏に加え、ラップの取り入れ方も絶妙で、早口、ソフト、低音を響かせるなど、曲調に合わせた攻めが効いています。
『RAKSHAK』では哀愁メロディアス・ナンバー「Jee Veerey」が絶品でした。
『NU DELHI』では「Tadka」で「Jee Veerey」に通じるメロディが聴けます。
- Halla Bol…儀式と夕日… そんなイメージの幕開け。ヘヴィなギターと躍動感のあるキーボードが絶妙にブレンドされ、サビはダイナミックかつメロディアスに進行する。早口Voも見事なハマり具合
- Hutt…拳を振り上げる系の00:10~にテンションが上がる。サビではアグレッシヴな語り気味のVoがかっこよく、キーボードに照らされながらのガッツあるサウンドと見事にマッチ。神秘的でありながらも展開が読みにくい03:20~にツボる
- Kismat…陽気でリズミカルなスタート。00:22~のキーボードに心が躍り、00:36からは伸びやかなVoと早口ラップの対照的なアプローチが光る。突進する02:46~もエキサイティング
- Daggebaaz…トロピカルかつヘヴィな演奏と共にノリ良く進行する。ソフトなラップもいいスパイスになっていてさすが。03:14~のバスドラ連打がまた燃える
- Tadka…00:31~がSLIPKNOT「The Negative One」(2015年『.5: THE GRAY CHAPTER』収録)のような雰囲気。上述の「Jee Veerey」(『RAKSHAK』収録)に通じるメロディは01:10~。その後、曲名を力強く歌うサビに移行する
- Nu Delhi…「Daggebaaz」のような音像の中でスリムなクリーンVoとアグレッシヴなVoが入り混じる。「dilli~~」と伸ばす00:48~がかっこいい。この曲も演奏パート00:59~がSLIPKNOT「The Negative One」
GOTTHARD『STEREO CRUSH』
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THE DARKNESS『DREAMS ON TOAST』
ジャスティン・ホーキンス<Vo/G/Piano>のファルセットが特徴的な英国のTHE DARKNESS。
『MOTORHEART』(2021年)以来約3年半ぶりのアルバムです。
通算8作目。
『MOTORHEART』は爆発力のある「Welcome Tae Glasgae」で幕を開けました。
GUNS N’ ROSES「Welcome To The Jungle」(1987年『APPETITE FOR DESTRUCTION』収録)のようなインパクトを意識したとのことですが、「Welcome To The Jungle」とは曲調が異なるものの強烈でした。
『DREAMS ON TOAST』のオープニングはシャープな「Rock And Roll Party Cowboy」。
フランキー・ポーレイン<B>のベースが前面に出る場面もあり、ジャスティンのVoは低音域~中音域中心なので、「Welcome Tae Glasgae」が「Welcome To The Jungle」であるならば、「Rock And Roll Party Cowboy」は「It’s So Easy」と位置付けることもできます。
以降はRAMONES、CARPENTERS、AC/DC、QUEENを思わせる曲も登場。
「Walking Through Fire」ではGUNS N’ ROSES「Sweet Child O’ Mine」(『APPETITE FOR DESTRUCTION』収録)がちらつきます。
- Rock And Roll Party Cowboy…ジャスティンの不敵な吐き捨てVoがかっこいい。01:17~のメロディに中毒性がある。02:38~のピアノがいいアクセント
- I Hate Myself…RAMONES「Blitzkrieg Bop」(1976年)のよう。高音域によるサビが心地良い。曲中のサックスにもテンションが上がる
- Hot On My Tail…CARPENTERS「Top Of The World」(1972年)のような曲調。ソフトで優しいメロディに気持ちが温かくなる。02:01~のピアノ、02:21~のタップダンスも見事な組み込ませ方
- Mortal Dread…潤いがありながらもAC/DCのような切れ味も兼ね備えたギターを軸にAC/DC「Shot Of Love」(1990年『THE RAZORS EDGE』収録)のように進んでいく。サビはキャッチーで親しみのあるメロディ。02:10~でミステリアスになり、02:37~で少し陽気になる。テンションの移り変わりが面白い
- Don’t Need Sunshine…QUEENに通じる感動的なバラード。ジャスティンのムードある歌唱がすばらしく、サビでは最高級のメロディとハーモニーが聴ける。02:14~のギター・ソロも素敵。ソフトなオープニングとは対照的にエンディングは意外とあっさり
- The Longest Kiss…00:00~のメロディックなギターが魅力的。本編は陽気なオーラを伴ってリズミカルに進行していく。ジャスティンのかけ声(01:32~) → エネルギッシュなギター・ソロ → ジャスティンの声とともにギター・ソロにブレイク(02:00)もうまいアプローチ
- The Battle For Gadget Land…ノイジーなギターがアップテンポの曲調に見事にハマる。カオスさが適度に加味される02:06以降がまたすばらしい
- Walking Through Fire…「Givin’ Up」(2003年『PERMISSION TO LAND』収録)のような曲調。ジャスティンの高音域(00:22~/ここのギターがGUNS N’ ROSES「Sweet Child O’ Mine」の00:00~) → みんなで曲名(00:35~)がいい流れ
W.E.T.『APEX』
WORK OF ART、ECLIPSE、TALISMANのそれぞれの頭文字がプロジェクト名のメロディアス・ハード・ロック。
『RETRANSMISSION』(2021年)以来約4年ぶりとなる通算5作目で、以下のラインナップで制作されています。
- ジェフ・スコット・ソート<Vo:TALISMAN>
- エリック・モーテンソン<Vo/G/Key:ECLIPSE>
- マグナス・ヘンリクソン<G/Key:ECLIPSE>
- ロバート・サール<G:WORK OF ART>
- アンドレアス・パスマーク<B:ROYAL HUNT>…前作『RETRANSMISSION』から参加
- ジェイミー・ボーガー<Ds:TALISMAN>…今作から参加
『RETRANSMISSION』は楽曲が粒ぞろいの傑作でした。
本作でも高品質なメロディが展開されていきます。
ジェフの表現力豊かなVoはさすがの一言で「ジェフがゲスト参加したECLIPSE」とも表現できる「Where Are The Heroes Now」があるのもうれしい。
アルバムはエリックがプロデュースしています。
- Believer…ザクザクとしたオープニング曲。サビはTHE GHOST INSIDE「Secret」(2024年『SEARCHING FOR SOLACE』収録)のサビを想起。意外なバンドがリンクしてくる
- What Are We Fighting For…00:00~のエネルギッシュなギターがかっこよく、Voは伸びやか。「What」と「Are」を切り離してから曲名を歌うサビに気分が高まり、02:39~の高音域ギター・ソロにも胸が熱くなる
- Love Conquers All…音域を下げながら曲名を歌う00:47~が胸に響くパワー・バラード。01:09~のノスタルジックなコーラスもすばらしく、02:14~のギター・ソロがまた涙腺を刺激する
- Where Are The Heroes Now…ECLIPSE「Saturday Night (Hallelujah)」(2021年『WIRED』収録)のよう。歌い出しはエリックで00:38からジェフが追いかけてくる。サビも極上メロディでジェフ(01:09~) → エリック(01:23~)の順で魅了。両者を際立たせるアプローチが効いている
- Breaking Up…哀愁メロディがテンポ良く進行するサビが魅力的。02:38からはVoの音域と対照的に突き上げる系のギター・ソロが進行する。03:06~の中音域フレーズもすばらしい
- Pay Dirt…ゴージャスなコーラスと共に「How Far To Babylon」(『RETRANSMISSION』収録)のようなメロディが展開するサビが魅力的。01:55~や03:07~の加速パートもうまく取り入れる
- Stay Alive…ECLIPSE「One Step Closet To You」(2023年『MEGALOMANIUM』収録)のような始まり。00:51~のハーモニーが絶品で、優しく突っつく01:16~も魅力的。02:09からは泣きのギターがドライな音質で奏でられる
- Day By Day…サビが快感。テンポ良く曲名を歌い、その後共感性の高いメロディ展開していく。ギター・ソロもいい感じに体を温めてくれる
ARCH ENEMY『BLOOD DYNASTY』
アリッサ・ホワイト=グラズ<Vo>加入後4作目。
ジェフ・ルーミス<G:NEVERMORE>離脱 → ジョーイ・コンセプシオン<G>参加後初のアルバムでもあります。
アンジェラ・ゴソウ<Vo>在籍時の『KHAOS LEGIONS』(2011年)のオフィシャル告知からは「アグレッシヴ・へヴィ・メタル・バンド」と表現されていますが、今作はまさにその言葉がぴったり。
メロディと攻撃性のバランスを配慮しつつもこれまでよりブルータルさが抑えられた演奏の中で、アリッサのグロウルを中心としたVoが展開します。
「Deceiver, Deceiver」(2022年『DECEIVERS』収録)系統のキャッチーな「Dream Stealer」で幕を開け、続く「Illuminate The Path」ではクリーン・ヴォイスも登場。
『DECEIVERS』のオープニング曲「Handshake With Hell」のクリーン・パートを聴いた時は「メロディがちょっと弱いかな」と思ったのですが、「Illuminate The Path」では高音域のクリーンVoがノイジーかつグルーヴィな曲調に見事にハマっています。
「March Of The Miscreants」の03:15~や「Blood Dynasty」の02:42~のギターもすばらしい。
「Blood Dynasty」の02:42~は、フレーズがじわりと浸透するという点では「In The Eye Of The Storm」(『DECEIVERS』収録)の02:08~に通じます。
「Blood Dynasty」は単独で先行公開されていましたが、アルバムでは物悲しいインスト「Presage」からつながる構成。
「Presage」とセットで聴くと、より一層曲の良さが際立ちますね。
「Paper Tiger」ではロブ・ハルフォード<Vo:JUDAS PRIEST>のような00:29~に燃えますし、曲の冒頭のフレーズをスロー・ダウンさせて壮大に締めくくる「Liars & Thieves」もエキサイティング。
アルバムを聴き終えた後は、旧譜を聴き返したくなり、バンドの今後への好奇心も強まります。
考察要素満載の作品です。
2025年4月
SMITH/KOTZEN『BLACK NIGHT/WHITE NOISE』
リッチー・コッツェン<G>とエイドリアン・スミス<G:IRON MAIDEN>によるハード・ロック・プロジェクトの2nd。
1st『SMITH/KOTZEN』(2021年)同様、リッチーとエイドリアンはヴォーカルも分担していて、骨太サウンドの中でエモーショナルなギターと味わい深い歌メロを響かせます。
ベースは前作ではリッチーとエイドリアンが弾いていました。
今回はリッチーの妻、ジュリア・ラージ<B:VIXEN>とリッチーがプレイしていて、ジュリアは「White Noise」「Black Light」「Outlow」で弾いています。
『SMITH/KOTZEN』は「Taking My Chances」「Running」「Scars」が特にすばらしかったですが、今回は「Muddy Water」~「Darkside」が「Taking My Chances」~「Scars」の拡大版と解釈できます。
- Muddy Water…グルーヴィ。01:45~の演奏パートはギターに加え、ベースラインも充実
- White Noise…サビで曲名を伸ばすところが心地良く、02:44~は「Taking My Chances」の02:54~(特にエキサイティングなパート)に通じる
- Black Light…シャープでリズミカル。Voに躍動感があり、サビに向けて徐々にボルテージを上げていく唱法が冴える
- Darkside…「Scars」直系でブルージー。03:25~のギター・ソロが染みる
続く「Life Unchained」は静 → 動のHRナンバーですが、泣きの00:00~が絶品。
BLUE MURDER「Out Of Love」(1989年『BLUE MURDER』収録)を思わせるところもあり、「Darkside」からの流れで聴くとグッときます。
「Blindsided」は00:00~が興味深い。
『SMITH/KOTZEN』リリース後のツアーではIRON MAIDEN「Wasted Years」(1986年『SOMEWHERE IN TIME』収録)がプレイされていたので、それを意識して聴くと「Wasted Years」っぽく聞こえます。
「Wraith」は00:08~がWINGER「Seventeen」(1988年『WINGER』収録)の幕開けのよう。
2曲続けての80年代の名曲を思わせるパートにうれしくなります。
ギターが歌メロに呼応する03:33~も魅力的ですね。
「Outlaw」は軽快な曲調の中で哀愁ギターを響かせるアプローチが秀逸。
サビ前にベースをグリグリさせるベースもいいアクセントですし、ギター・ソロもすばらしいです。
BLEED FROM WITHIN『ZENITH』
スコットランドのメタルコア・バンド、通算7作目。
クリーンVoも担当するスティーヴン・ジョーンズ<G>加入後では4作目になります。
クリーンVoは声質もメロディも高品質。
スコット・ケネディ<Vo>のグロウルとのバランスもすばらしいです。
あとクリーンVoで特筆すべきなのが響きの良さ。
クリーンVoが登場すると楽曲がより劇的かつ鮮やかになります。
コンパクトな楽曲の長さの中にいくつかの展開を持たせているのも魅力です。
「Immortal Desire」にはブラン・デイラー<Ds/Vo:MASTODON>、「Hands Of Sin」にはジョシュ・ミドルトン<Vo/G:SYLOSIS>がゲスト参加。
どちらもハイクオリティです。
- Violent Nature…ブルータルに突進する中、音量控えめのかけ声(00:59~)がいい感じにテンションを上げてくれる。より劇的になる01:33~、鋭角的さが増す02:54~もいい切り替えポイント
- In Place Of Your Halo…ドコドコしながら進行していき、サビではドラマティックな音像の中でキャッチーなグロウルがかっこよく響く。キュルッとさせながらの演奏パート(02:16~)も刺激的で02:36からはバグパイプも加わる
- God Complex…IN FLAMES「Everything’s Gone」(2014年『SIREN CHARMS』収録)のようなキリキリとしたスタート。「Violent Nature」の00:59~ようなかけ声がここでは前面に出る(00:35~)。00:54~のVoがなかなか胸アツ。02:38~のギター・ソロもエネルギッシュ
- A Hope In Hell…SOILWORK「Departure Plan」(2003年『FIGURE NUMBER FIVE』収録)のように始まり、モヤモヤしながら進んでいくが、サビでモヤモヤが解消。クリーンVo主体の高品質なメロディが広がっていく。よりアグレッシヴになる02:14~、ザクザク vs. エモーショナル的な02:45~も刺激的
- Immortal Desire…ブラン・デイラー<Ds/Vo:MASTODON>が参加。摩訶不思議な声が入り混じる始まりに引き込まれる。ブランとトロイ・サンダース<B/Vo>が歌う「Pain With An Anchor」(2021年『HUSHED AND GRIM』収録)のようなオーラも漂う。ドンドンし始める02:45~もいい突っつき具合
- Known By No Name…ポンポコする00:00~が面白い。ダークで冷酷な空間に包まれながらの00:47~も特徴的でサビは高音域クリーンVo。それまでの展開からは予想できない歌声の登場に「おお…」となる
- Hands Of Sin…ジョシュ・ミドルトン<Vo/G:SYLOSIS>が参加。グロウル主体で攻めていき、サビでは上質なクリーンVoによって楽曲が美しく照らされる。アグレッシヴな音像の中でうっとりさせる歌メロを放つ手法が見事。それだけに残虐性が強調される02:35~がより一層映える
EPICA『ASPIRAL』
オランダのシンフォニック・メタル・バンド、9作目。
これまでのすべての作品が序曲からの幕開けでしたが、『ASPIRAL』は序曲なし。
AMARANTHEのような「Cross The Divide」で始まります。
EPICAは『THE QUANTUM ENIGMA』(2014年)以降、サウンドと曲構成がより重厚になりました。
本作も濃密で壮大。
多くの展開を持つ曲調の中でシモーネ・シモンズ<Vo>のオペラティックなヴォーカル、マーク・ヤンセン<G/Vo>のブルータルなグロウルが繰り広げられます。
特にシモーネの歌は一級品ですね。
「A New Age Dawns」シリーズのPart VII ~ XIも収録。
- Prologue ~ Part III(2005年『CONSIGN TO OBLIVION』収録)
- Part IV ~ VI(2009年『DESIGN YOUR UNIVERSE』収録)
に引き続き、アルバム内に対象曲を散らしての配置となっていて、3曲とも高品質です。
- Cross The Divide…マークのグロウルはなしだが、シンフォニック度を強めたAMARANTHEといった感じ。ダイナミックな曲調の中でシモーネの高音Voが冴える
- Arcana…01:22~が「The Skeleton Key」(2021年『OMEGA』収録)の03:28~を思わせ、サビ前の配置が効果的。04:19からよりスリリングになり、04:30からマークのグロウル
- Darkness Dies In Light – A New Age Dawns, Part VII -…「Design Your Universe “A New Age Dawns, Part VI”」(『DESIGN YOUR UNIVERSE』収録)がシリーズ完結編のようなエンディングだったので、「A New Age Dawns」新章のようなオープニング。ドンドン(02:38~) → 疾走(03:16~)にドキドキ感が増し、よりドラマティックになる04:24~にも気分が高まる。05:00~のギターも心地良い
- Fight To Survive – The Overview Effect -…ドンドンドン&音声 → カウントダウン → 本編の流れに痺れる。一呼吸置く01:44~もいいアレンジ。連打が効果的な03:46~にも燃えるし、途切れる04:02~も面白い
- Metanoia – A New Age Dawns, Part VIII -…儀式のように始まり、00:27から悲壮感を漂わせる。01:08から壮大になり、01:18からブルータルなリフを軸に進行。サビ(03:11~)ではシモーネの伸びやかな歌声が披露され、きれいなバックVoも重なる
- Apparition…マークのグロウルと共にヘヴィな本編に入る。ミステリアスでかっこよく、曲とは異質のエネルギーを放つギター・ソロがまた面白い。最後のサビ以降、マークが再び前面に出る
- Eye Of The Storm…アグレッシヴに突き進む中、マークが吠え始め、サビではシモーネが曲名を絶品メロディで歌う。ギター・ソロも刺激的で「Apparition」のような緊張感
- The Grand Saga Of Existence – A New Age Dawns, Part IX -…間隔を置きながらのマークのグロウル(01:57~) → シモーネによるサビへの流れが秀逸。2回目のサビの後に中音域で展開する03:42~もすばらしい。04:18~にもゾクゾクするし、05:08~で残虐性MAXになってサビに戻る構成も見事。05:57からはギターが泣き、劇的かつ美しいエンディングに向かう
LAURENNE/LOUHIMO『FALLING THROUGH STARS』
ネッタ・ローレンネ<Vo:SMACKBOUND>とノーラ・ロウヒモ<Vo:BATTLE BEAST>のプロジェクトによる2ndフル。
1st『THE RECKONING』(2021年)は、パワフルでキャッチーな「The Reckoning」や感動的なバラード「Viper’s Kiss」など、すばらしい曲が満載でした。
「アルバム1枚だけで終わらせるのはもったいない」と思っていたので、これはうれしいリリースです。
『THE RECKONING』に引き続き、『FALLING THROUGH STARS』でもネッタとノーラが表現力豊かな歌を披露。
高音域Voも迫力満点です。
前作にはなかったアコースティック・ナンバー「All For Sale」や「Falling Through Stars」「Wait」のようにギターのフレーズが刺さる曲があるのも魅力ですね。
ネッタの夫のニノ・ローレンネ<G:THUNDERSTONE>も参加。
アルバムはネッタとニノによる共同プロデュースです。
『THE RECKONING』をあらためて聴くと、ラストの「Dancers Of Truth」が「Falling Through Stars」の冒頭につながっているようにも感じられます。
- Falling Through Stars…「Dancers Of Truth」(『THE RECKONING』収録)からの続きともとれる不穏なオープニング。本編ではゆっくりとエンジンを温めていくような歌メロ進行。03:16~のハイトーンも圧巻。上述のギターは04:02~。歌の直後というタイミングがたまらない
- Damned…「Bitch Fire」(『THE RECKONING』収録)のように展開していくが、00:45から柔らかくなっていく。00:55~のメロディが軽快で心地良い。03:47から高音域が見事に伸びる
- All For Sale…アコースティック・ギターを基調とした曲。『THE RECKONING』にはなかったナンバーでクリアな歌メロが新鮮。00:48~がHEART「Fallen From Grace」(1990年『BRIGADE』収録)の冒頭を思わせる。ストリングスが前面に出る02:31~もいいアプローチ
- The Cradle…00:48~が魅力的。包容力のあるメロディが徐々に肩を押してくれる
- Rotten Gold…ミステリアスでヘヴィ。高音域によるサビにテンションが上がる。独特な音質でのギター・ソロ(02:17~) → ひらひらしたキーボード(02:44~)にも引き込まれる
- Let The Light Be Free…どんよりする中、高音域のVoが響く。01:07~でフワッとなって、サビ(01:19~)でドカンとなる構成にドキッとする。ギター・ソロの後は劇的かつヘヴィに進行しながらのサビ。サビの攻め方が冴える
- Loud And Clear…切ないバラード。低音Voでの始まりが新鮮で00:52からはムードある歌メロが広がっていく。ピアノも美しく、ギター・ソロは期待どおり涙腺を刺激してくれる
- Wait…00:00~でKOされる必殺メロディアス・ナンバー。物悲しいオーラを放ちながらも、徐々にボルテージが上がる歌メロがすばらしく、サビでは躍動感が増す。高音域のサビの後に中音域の哀愁ギター・ソロ(02:25~) → 再び高音域のサビ(02:47~)もメリハリのある流れ
H.E.A.T『WELCOME TO THE FUTURE』
ケニー・レクレモ<Vo> → エリック・グロンウォール<Vo> → ケニー復帰
というシンガー変遷のH.E.A.T。
ケニー復帰後は、
- 『FORCE MAJEURE』(2022年)…6thフル。傑作
- 『EXTRA FORCE』(2023年)…EP
をリリースしていて、『EXTRA FORCE』にはエリック期の「One By One」「Rise」(いずれも2020年『H.E.A.T. II』収録)のリメイクもあり、エリックとケニーの違いも比較できます。
本作は通算7作目となるフル・アルバム。
エリック期は楽曲が洗練されていましたが、ケニーが歌うと楽曲にワイルドさが宿ります。
ケニーは初期2作(2008年『H.E.A.T』、2010年『FREEDOM ROCK』)の頃に比べると声が骨太になり野性的になりましたね。
『FORCE MAJEURE』はWIG WAM「Rock My Ride」(2006年『WIG WAMANIA』収録)に通じるキャッチーな「Hollywood」や感動的なバラード「One Of Us」があり、疾走曲「Demon Eyes」ではデイヴ・ダロン<G>がギターで魅了。
TREATのような切ないメロハー「Wings Of An Aeroplane」も最高でした。
『WELCOME TO THE FUTURE』もハイクオリティで歌も演奏も充実しています。
「Disaster」は80年代直系のオープニング。
H.E.A.Tはライヴ開演前に映画『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)の主題歌、GLENN FREY「The Heat Is On」(1984年)を流しているので、それを意識すると「Axel F」にも通じ、ザクザクした曲調の中でケニーの情熱的なVoが冴えます。
「Call My Name」では始まりのギターに泣きそうになり、サビでは極上の哀愁メロディが炸裂。
02:39~のデイヴのギター・ソロもたまりません。
「The End」はGHOSTの名曲2曲を想起。
「Spillways」(2022年『IMPERA』収録)のように始まり、ケニーが歌い始めると「Dance Macabre」(2018年『PREQUELLE』収録)のようなメロディが展開します。
同時期に新譜を出すアーティストの曲がリンクするという予想外のうれしさです。
どっしりとした「Bad Time For Love」「Rock Bottom」もキマッていますね。
「Bad Time For Love」は「Back To The Rythm」(2022年『FORCE MAJEURE』収録)をスローにしたようなメロディ展開。
「Rock Bottom」はサビにガッツがあり、02:35~では歌メロと乖離した音域で攻める悲哀フレーズが見事です。
ラスト2曲もすばらしい。
ミステリアス → ハードな流れを持つ「Tear It Down (R.N.R.R.)」は華麗なサビが最高で、ケニーのパワフルな唱法もハマっています。
「We Will Not Forget」は分厚いハーモニーによる哀愁あるサビが絶品。
最後の曲にふさわしい切ないフレーズ(00:03~、02:04~)も胸に響きます。
GHOST『SKELETÁ』
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