アメリカのプログレッシヴ・メタル・バンド、11作目。
『COLORS II』(2021年)以来、4年ぶりのアルバムです。
『COLORS II』は人気作『COLORS』(2007年)の続編で78分の長編でしたが、『THE BLUE NOWHERE』は71分。
少し短めです。
BETWEEN THE BURIED AND MEは激しいパートを取り入れながら、曲調を変えて引き込ませますが、今回もその手法がすばらしいです。
しかも「Things We Tell Ourselves In The Dark」が『COLORS II』とは異なるスタイルの幕開けで新鮮。
歌もクリーンVoで始まるので、作品の世界にすんなり入れます。
音楽性は異なりますが、QUEENSRŸCHEはコンセプト・アルバムの名盤『OPERATION: MINDCRIME』(1988年)の後に多様性に満ちた傑作『EMPIRE』(1990年)をリリースしました。
『COLORS II』 → 『THE BLUE NOWHERE』の流れも『OPERATION: MINDCRIME』 → 『EMPIRE』に通じるものがあります。
【メンバー】
トミー・ロジャース<Vo/Key>
ポール・ワゴナー<G>
ダン・ブリッグス<B/Key>
ブレイク・リチャードソン<Ds>
「Things We Tell Ourselves In The Dark」
ファンキーで最高。
『EMPIRE』でいえば「Best I Can」「The Thin Line」のようなフレッシュさです。
伸びやかなクリーンVoのサビが心地良く、そのサビに行くまでのちょっとカオス気味のVo(00:34~、01:00~)もいいアクセントとなっています。
03:42~のポコポコも面白い音ですし、グロウル(05:47~) → ドラム連打 → テクニカルな演奏 → 最後のサビもいい構成です。
「God Terror」
00:36~の倍速的ポコポコがユニーク。
カオスな雰囲気でアグレッシヴに進み、サビではスローでヘヴィになります。
02:52からちょっと怪しくアジア的になり、03:04からは不思議さが倍増。
03:47からはミステリアスなkeyが加わり、03:55から耽美的になります。
トライバルかつ刺激的な空間が醸成される04:26~も見事。
終盤は浮遊感のある音を残し、次の「Absent Thereafter」へとつながります。
「Absent Thereafter」
10分半の曲です。
BULLET FOR MY VALENTINE「Knives」(2021年『BULLET FOR MY VALENTINE』収録)のような連打で畳みかけて疾走。
00:40~がいい感じに突き刺さります。
02:08からはミステリアスになり、02:53からは胸に響く歌メロ。
その後の泣きのギターもなかなかです。
04:46からはファンキーに。
「Things We Tell Ourselves In The Dark」に通じる雰囲気に胸が躍ります。
後半は07:08~がスリリング。
09:12~にも気分が上向き、ちょっとコミカルなエンディング(10:17~)がまた微笑ましいです。
10分以上の曲がこのあと後半に2曲ありますが、長尺曲ではこの曲が一番です。
「Pause」
「Absent Thereafter」終了と同時に劇的な音。
01:14からクリーンVoが入りますが、GHOST「Darkness At The Heart Of My Love」(2022年『IMPERA』収録)のようなメロディに驚き、うっとりします。
※同日リリースのTHE RASMUSの「Love Is A Bitch」では「Spillways」がリンクしましたので、GHOSTファンにとっては想定外のうれしさ。
02:31から怪しくなり「Door #3」へとつながります。
「Door #3」
光線 → ヘヴィでテクニカルな演奏。
トミーのVoは邪気に満ちていて、ちょっとアリス・クーパーっぽいです。
曲自体からもファンタジック・ホラーのようなオーラが漂い、アリスの世界観を混沌とさせた感じでもあります。
ちなみに『COLORS II』の「Prehistory」では01:21~のトミーがアリスっぽいです。
「Mirador Uncoil」
「Door #3」からホラー要素を引き継いだ小曲。
インストかと思ったら、00:44からグロウル。
そしてそのまま次の「Psychomanteum」へつながるのかと思ったら、そうではなく、曲間を空けてから「Psychomanteum」が始まります。
「Psychomanteum」
ここから11分台の曲が2曲続きます。
『COLORS』では中盤に大作を2曲配置しましたが、今回はアルバム後半です。
最初は00:14~や00:47~などの泡みたいなユニークな音を組み込みながら、激しく進行。
メルヘンチックな01:20~もいいアクセントです。
以降は、
- クリーンVoに新展開(03:55~)
- スリリングなピアノを取り入れながら攻撃再開(05:53~)
- 再びクリーンVo(08:49~)
という流れになりますが、「もう一息」といった感じ…。
この曲は前半がおすすめです。
「Slow Paranoia」
アルバム収録曲の中では最長の11分半の曲。
「Psychomanteum」から独立して始まります。
スローでヘヴィな曲調を軸にして変則的に進行。
01:16からさらに慌ただしくなります。
面白いのは02:49~。
「なんでこうなるかなあ」とニヤニヤしちゃいます。
03:41~の叩きつけの挿入もうまいですね。
04:12から攻撃再開。
02:49~がツボなので、またああいった展開を期待しながら聴いちゃいますが、05:44がなかなかの面白さ。
疾走しながらズレるかズレないかスレスレの歌メロが進行します。
この曲も前半が聴きどころです。
「The Blue Nowhere」
アルバム・タイトル曲は透明感のあるメロディアス・ナンバーです。
トミーのVoはクリーンのみ。
少しずつ高揚感が増すメロディ展開で、サビでは高音域の歌メロと哀愁ギターが見事に融合します。
サビは歌い始めのメロディの繰り返しが特にすばらしい。
ドラムが暴れ始める05:18~もエキサイティングです。
「Beautifully Human」
切なくミステリアスに始まり、01:36からエレクトリックに。
耽美的かつ劇的な演奏にドキッとします。
Voは「The Blue Nowhere」に引き続きクリーンのみ。
じっくりと聴かせるスタイルで、歌い出しの02:01~はエコーのかかり具合がなかなかいいです。
スリリングなパート(03:01~)を盛り込ませながらエキサイトさせる構成もさすがですね。
あとは05:32~。
それまでの歌メロを超越した音域でのギター・ソロが刺さります。
そしてエンディング。
バンド演奏が終了してからアルバムが終わるまで時間があります。
記事の冒頭でQUEENSRŸCHEの『EMPIRE』について触れましたが、『EMPIRE』の本編ラスト「Anybody Listening?」もそうでした。
「Anybody Listening?」同様、「Beautifully Human」も最後の最後まで惹きつけられます。