日本盤CDを購入しました。
イタリアのプログレッシヴ・メタル・バンドによる通算12作目で、マーク・バジル<Vo>加入後では6作目。
元々2枚組の予定だった前作『LIFE』(2023年)から11か月ぶりのアルバム・リリースとなります。
『ENDLESS』は、人生を変えた決断を振り返るコンセプト・アルバム。
「もし違った道を歩んでいたら、どんな人生になっていただろう」
そういった思いにも触れています。
- Promises
- The Great Unknown
- The Wake
- Solitude
- From Ashes
- Final Call
- Blank Pages
- …Of Endless Echoes
- Blank Pages (Acoustic Version)
【メンバー】
マーク・バジル<Vo>
シモーネ・ムラローニ<G>
アンドレア・アルカンジェリ<B>
ファビオ・コスタンティーノ<Ds>
エマニュエル・カサリ<Key/Flute/Sax>
リリース日:2024年10月18日
レビュー
『LIFE』を継承した音楽性でありながらも、時を遡るようなサウンドとなっていて、その中から最高級のメロディが放たれます。
- 『LIFE』のラスト「Neuromancer」…アコースティック・ギターがフェードアウト
- 『ENDLESS』の1曲目「Promises」…アコースティック・ギターでスタート
となっていますので、「Neuromancer」あるいはアルバム『LIFE』を聴いた後に『ENDLESS』を聴くとより一層楽しめます。
アルバムを締めくくる「…Of Endless Echoes」は14分。
「Neuromancer」も最高でしたが、こちらも高品質。
特に劇的なエンディングは圧巻です。
「Promises」
アコースティック・ギター+マークのVo(とてもいいメロディ) → エレクトリックなインストゥルメンタルで進行します。
エマニュエル・カサーリ<Key/Flute>が70年代風懐古的なサウンドで引き付け、02:18からはシモーネ・ムラローニ<G>が哀愁フレーズで魅了。
すばらしいです。
80年代っぽくなる02:59~も興味深いアプローチ。
04:33からはシモーネが高音域。
これもたまりません。
「The Great Unknown」
「Unravel The Sorrow」(『LIFE』収録)をソフトにした感じ。
00:45~のエマニュエルに親近感を覚えます。
マークはナチュラルでメロディアスなVo。
グリグリする03:21~は「Unravel The Sorrow」の01:05~に通じます。
06:30からポカポカし始めますが…
「The Wake」
不穏な空気に包まれる中、01:14~にハッとさせられます。
その後、ミステリアスかつヘヴィに進行。
マークのヴォーカルには邪気がありますが、サビ(02:42~)で奇妙な安心感に包まれます。
ハーモニーと歌メロに不思議な魅力があります。
「Solitude」
フルートをうまく取り入れた劇的バラード。
サビ(01:10~)の歌メロも最高で感動的…なのですが、2回目のサビ以降はちょっとトーンダウン。
3回目のサビの後もやや冗長に感じてしまいます…。
「From Ashes」
レトロでキラキラ。
01:02から気分が高まっていき、シモーネのメロディックなギターも心地良く響きます。
サビ(01:14~)ではスローなって高品質な歌メロが展開。
緩急をつけながらメロディのクオリティの高さを維持する手法が見事です。
02:53~にもワクワクさせられ、シモーネ(03:43~) → エマニュエル(03:59~) → シモーネ(04:13~)の流れは特にアツいです。
「Final Call」
「Dominate」(『LIFE』収録)のような躍動感。
00:57からは魅力的なハーモニーによる歌メロが展開します。
メランコリックな中でヒロヒロする02:51~がいいアクセント。
03:31からダイナミックさが増し、シモーネ(03:51~) → エマニュエル(04:03~)の順に魅せます。
「Blank Pages」
00:00~のピアノが物悲しく、00:25~のマークにドキッとします。
抜群の歌い出し。
01:01からは徐々に高揚感が増していきますが、その後はちょっと盛り上がりに欠けてしまいます…。
03:05~のギター・ソロがすばらしいです。
「…Of Endless Echoes」
静と動を組み込ませた14分の大作です。
「The Wake」に通じるサビ(05:03~)が最高。
哀愁パートの08:16~もなかなか染みます。
終盤は10:42~のシモーネのエモーショナルなギター → 壮大さが増す12:42~が絶品で、特に12:42~は何度でも体験したくなります。
主人公の心情(個人的考察)
歌詞を読んで感じたことをまとめました。
主人公の気付きや思いは「」でくくっています。
- Promises…別の道を選択した人生に思いを巡らす
- The Great Unknown…どういう人生が繰り広げられるのだろうかという期待がある一方で、主人公は孤独や闇が待ち受けていることも想定している
- The Wake…「人生に降りかかる闇は予期しない形で現れる。闇に包まれても時期を待つことが重要だ。いずれ光が差し込む」
- Solitude…「悲しみに遭遇しても耐える。方法を模索して歩き続ける。そうすることで徐々に夜が明けていく」
- From Ashes…「逃げ隠れせずに、傷をいやし、進み続けよう。壁を乗り越えよう。克服した後に新たな希望が見えてくる」
- Final Call…今まで屈していたことを受け入れる主人公。「もうこれからは諦めない」と決意を新たにする
- Blank Pages…「自分がこれまでどういう決断を下したか。それを振り返りながら、これからの人生を築くことが大切なのだ」
- …Of Endless Echoes…「これから新たな人生が始まる。不安や恐怖にかられることもあるだろうが、それらと向き合いながら希望を持ち続けるつもりだ」
「Blank Pages」は、曲のタイトルが「pages」と複数形になっているのが興味深いと思いました。
「これからの人生の新たなページは1つではない。可能性は無限にある」というメッセージにもとれます。
ブックレットの中のメンバーの写真
途中のページと最後のページにメンバーの写真が載っているのですが、
- 途中のページ…メンバーがそれぞれ違う方向を向いている
- 最後のページ…メンバー全員がこちら(同じ方向)を向いている
というふうに異なる描写となっています。
主人公の心情の変化(葛藤 → 決意)を表しているのかもしれません。
前向きな気持ちで「…Of Endless Echoes」を聴こう
人生の分岐点で選択肢AとBがあった場合、
- Aを選択…Bを選んでいたらどんな人生になっていただろう
- Bを選択…Aを選んでいたらどんな人生になっていただろう
と考えることになるはず。
であるならば、自分が選択した人生の過去から現在を肯定し、これからの新たなページ(Blank Pages)に希望を持ち続けていくことが大切なのではないかと思えてきます。
こういった気持ちで「…Of Endless Echoes」を聴き、壮大な12:42~を迎えましょう。
これからのことに対してポジティヴな気持ちでいっぱいになります。
『ENDLESS』は人生をテーマにしたコンセプト・アルバムですが、
- 1年を振り返って来年に生かす
- 1日を振り返って明日に生かす
といったスパンにも当てはめることができるすばらしい作品です。