アメリカン・ハード・ロックの大御所による18作目。
下記7人編成での制作で、これまでどおり複数のメンバーがヴォーカルを担当しています。
- トミー・ショウ<G/Vo>
- ジェイムズ・ヤング<G/Vo>
- ウィル・エヴァンコヴィッチ<G/Vo>
- テリー・ガーワン<B>
- チャック・パノッツォ<B>
- トッド・ズッカーマン<Ds>
- ローレンス・ガーワン<Key/Vo>
STYXは2025年ツアーで『THE GRAND ILLUSION』(1977年)を完全再現していますので、『THE GRAND ILLUSION』のレビューも載せています。
『THE GRAND ILLUSION』(1977年)
1977年7月7日リリースの7作目。
7の数字が並びます。
これで収録曲数が7曲だったら面白かったのですが、アルバムは全8曲。
下記ラインナップでの制作です。
- デニス・デ・ヤング<Key/Vo>…「The Grand Illusion」「Come Sail Away」「Castle Walls」「The Grand Finale」でリードVo
- トミー・ショウ<G/Vo>…「Fooling Yourself (The Angry Young Man)」「Superstars」「Man In The Wilderness」でリードVo
- ジェイムズ・ヤング<G/Vo>…「Miss America」でリードVo
- チャック・パノッツォ<B>
- ジョン・パノッツォ<Ds>
2025年『CIRCLING FROM ABOVE』でもプレイしているメンバーはトミー、ジェイムズ、チャックの3名になります。
「The Grand Illusion」~「Come Sail Away」
「The Grand Illusion」の始まりからエキサイティング。
歌メロも出だしからスケールが大きくてワクワクさせられます。
「Fooling Yourself (The Angry Young Man)」はポカポカするハード・ロック。
サビのハーモニーに高揚感が増します。
「Superstars」は「You and I」のハーモニーとメロディが絶品。
このメロディは歌詞を変えてラスト「The Grand Finale」に登場します。
リードVoはトミーですが、02:43~はデニスが担当しています。
「Come Sail Away」は静 → 動の展開をもつドラマティックなナンバー。
00:12~の歌メロはジーンときますし、04:20~もいい盛り上がり具合です。
「Come Sail Away」00:12~のデニスの歌声はマイケル・スウィート<Vo/G:STRYPER>に似ています。
他のアルバムの曲では「The Best Of Times」(1981年『PARADISE THEATRE』収録)がそうで、こういうのを聴くとSTRYPERの名バラード「Honestly」(1986年『TO HELL WITH THE DEVIL』収録)や「I Believe In You」(1988年『IN GOD WE TRUST』収録)も聴きたくなります。
STRYPERに寄り道してから『GRAND ILLUSION』後半に行くのもありですね。
「Miss America」~「The Grand Finale」
ジェイムズが歌う後半1曲目「Miss America」はアルバムの中ではやや浮き気味ですが、02:30~のキーボードがエキサイティング。
「Man In The Wilderness」は適度に劇的な中でのソフトな歌メロ、要所要所のハーモニーがすばらしく、ハードなギターが前面に出る03:12~がいい転換点となっています。
「Castle Walls」は美しく切ないメロディが絶品で、02:32からはダイナミックなKeyが加わり、ここから徐々に盛り上がるかと思いきや、そうはならず。
この引っ張り具合がなかなかいいです。
04:22からはギターが泣き始めます。
そしてラストの「The Grand Finale」へ。
「Superstars」の歌メロが歌詞を変えて登場し、壮大なエンディングを迎えます。
『CIRCLING FROM ABOVE』(2025年)
『THE GRAND ILLUSION』のナンバーはラストの「The Grand Finale」を除き4~6分台でした。
本作で『THE GRAND ILLUSION』のオーラが漂うのは「The Things That You Said」の後半ぐらいで、前作『CRASH OF THE CRWON』(2021年)同様、2分台~3分台のナンバーが中心です。
※ちなみに『CRASH OF THE CRWON』では「To Those」の00:14~、00:55~で「Superstars」のサビがリンクしました。
「Forgive」までが前半となっていて、「Forgive」も後半ラストの「Only You Can Decide」もバラードとなっています。
「Circling From Above」~「Forgive」
おすすめは「Circling From Above」「Build And Destroy」「King Of Love」「Forgive」。
「Circling From Above」は00:31から哀愁ギターが響き、00:49からきれいな歌声が入ってきます。
こういう美しいハーモニーはSTYXの魅力の1つですね。
そのまま和やかで包容力のある「Build And Destroy」へとつながっていきます。
とてもナチュラルな流れ。
2025年ツアーではアルバム・リリース前から演奏されていたナンバーで、ゆがみ気味のギター・ソロ(02:03~) → キーボード(02:22~)がいい構成です。
「King Of Love」はノスタルジックかつ高揚感のある歌で始まり、その後はリズミカルに進行。
00:30~の低音Voにドキッとさせられ、00:49~の手拍子がまたいい感じです。
「Forgive」はアコースティック・ギターを基調として進みながら、徐々にドラマティックさを増していく展開が秀逸。
02:35~のヘリコプターもいい効果で、その後のエモーショナルなギター・ソロがまた最高です。
「Everyone Raise A Glass」~「Only You Can Decide」
「Everyone Raise A Glass」「Ease Your Mind」「The Things That You Said」「Only You Can Decide」がおすすめです。
「蛍の光」の後にメルヘンチックに進行する「Everyone Raise A Glass」は、いったんスローダウン(01:37~) → 愉快なギター・ソロ(02:04~)がいい流れ。
美しい歌声に包まれるエンディングにも気持ちが安らぎます。
「Ease Your Mind」は「The Things That You Said」への序曲。
「Circling From Above」~「Build And Destroy」に比べると、ちょっと途切れた感じですが、ピアノと歌がきれいで曲そのものは高品質です。
「The Things That You Said」は01:00~のハーモニーがすばらしく、01:16からストリングスが強調され、1:19からはユニークな音で魅了します。
『THE GRAND ILLUSION』に通じるのが02:11~。
ハードかつ劇的になり、スリリングさが増します。
「Only You Can Decide」は00:56~が美しく、01:47からさらに感動的になります。
そして02:05からは泣きのギター・ソロ。
「Forgive」と共にバラードのギター・ソロが充実しているというのがうれしいです。