トビアス・フォージが主宰するスウェーデンのハード・ロック・バンドによる6作目。
傑作『IMPERA』(2022年)から3年ぶりのフル・アルバムですが、今回も最高級の作品です。
トビアスは自身のキャラクター名を、
- Papa Emeritus I(パパ・エメリトゥス1世)…2010年『OPUS EPONYMOUS』
- Papa Emeritus II(パパ・エメリトゥス2世)…2013年『INFESTISSUMAM』
- Papa Emeritus III(パパ・エメリトゥス3世)…2015年『MELIORA』
- Cardinal Copia(コピア枢機卿)…2018年『PREQUELLE』
- Papa Emeritus IV(パパ・エメリトゥス4世)…2022年『IMPERA』
と、アルバムごとに変えてきていて、今回は「Papa V Perpetua(パパ5世パーペチュア)」名義となっています。
『IMPERA』はアルバムの内容だけでなく、プロモーションも秀逸でした。
本記事は『IMPERA』のプロモーションと比較しながらのレビューとなります。
『IMPERA』(2022年)
奇抜なプロモーション
『IMPERA』は2022年3月11日にリリースされていますが、以下の順に先行曲を公開しています。
- 2021年9月30日:「Hunter’s Moon」
- 2022年1月20日:「Call Me Little Sunshine」
- 2022年3月2日:「Twenties」
「Hunter’s Moon」「Call Me Little Sunshine」を聴いた時は「これまでの音楽性を継承していて高品質。ある意味想定内」と思っていたのですが、好奇心を刺激されたのは3rdシングル「Twenties」でした。
これまでのGHOSTにないタイプの曲で、つかみどころもなくとにかく変(もちろんいい意味で)。
アルバム・リリース9日前にこういった不思議ソングを公開するところに斬新さ感じました。
さらに「Twenties」公開前か後かどちらかは覚えていませんが、トビアスが「『IMPERA』はこれまでとは違う作品だ」と発言。
『IMPERA』に対する期待がどんどん膨らんでいきました。
想定外の「Kaisarion」「Spillways」
変則的な「Twenties」、トビアスの上述の発言で『IMPERA』への期待がさらに高まる中、2022年3月11日に『IMPERA』がリリース。
アルバムを再生し、初めて「Kaisarion」「Spillways」を聴いた時は本当に驚きました。
「Kaisarion」は、これまでのGHOSTのイメージを覆すかのようなメロディックなギターに始まり、まさかのハイトーン「ハアアーーーーーー!」。
爽快メロディアスHRの本編を聴きながら「トビアスの発言どおり、これまでとは違うなあ」と思い、同時に次の曲への関心が高まっていきました。
「Kaisarion」だけでも十分びっくりなのですが、「Spillways」が始まった時は本当に声に出して「えーー!?」と言ってしまったのをはっきりと覚えています。
まるでBON JOVI「Runaway」(1984年『BON JOVI』収録)、あるいはABBA「Money, Money, Money」(1976年『ARRIVAL』収録)ではないか!
2曲目と3曲目にこういったナンバーを持ってくる変化球攻撃がすごいと思いました。
この後、先行公開曲の「Call Me Little Sunshine」「Hunter’s Moon」が続き、8曲目には不思議ソング「Twenties」。
あらためてアルバムを聴くと先行公開曲の配置もすばらしく、『IMPERA』は私の2022年ベスト・アルバムとなったのでした。
『SKELETÁ』(2025年)
プロモーション
『SKELETÁ』リリースの2025年4月25日に向けて、以下のようなプロモーションが展開されました。
- 2025年2月5日:新キャラ「Papa V Perpetua(パパ5世パーペチュア)」告知
- 2025年3月5日:『SKELETÁ』発売をアナウンスし、同日に「Satanized」公開
- 2025年4月11日:「Lachryma」公開…「Rats」(『PREQUELLE』収録)のよう
- 2025年4月22日:「Peacefield」公開…「Griftwood」(『IMPERA』収録)を想起
『IMPERA』の時と同様、先行公開曲数は3曲。
アルバムの曲順を遡ってのリリースとなっています。
『IMPERA』の時の「Twenties」のような想定外の曲はありませんが、先行公開曲はどれもハイクオリティ。
アルバムへの期待が高まっていくと同時に「アルバム後半で意表を突いてくる?」という好奇心もありました。
『SKELETÁ』のレビュー
そして2025年4月25日に『SKELETÁ』がリリース。
アルバムのトータル時間が『IMPERA』同様、約46分となっていて、
- 「Peacefield」~「De Profundis Borealis」…前半
- 「Cenotaph」~「Excelsis」…後半
と分けることができます。
『IMPERA』は、前半ラスト「Watcher In The Sky」と後半ラスト「Respite On The Spitalfields」がいずれもフェードアウトして終わりましたが、『SKELETÁ』は、
- 「De Profundis Borealis」…演奏がフェードアウト → 怪奇的な声を残す
- 「Excelsis」…静かな演奏+トビアスの歌声
となっていて、声質は違うものの、どちらも声を前面に出して終わっています。
「Peacefield」
神聖な歌声で幕を開け、00:55からは「Griftwood」(『IMPERA』収録)のようになります。
透明感のある歌メロがすばらしい。
ギター・ソロの03:36~が「Spillways」00:41~に通じます。
「Lachryma」
「Rats」(『PREQUELLE』収録)のようにザクザクする中、サビの「Cry~ing」が心地良く浸透。
中毒性も高く、聴けば聴くほどハマります。
「Satanized」
心地良いバスドラのリズム・パターンを軸に進行していきます。
唱える01:23~がいいアクセント。
02:27~の高音域フレーズもなかなか刺さります。
「Guiding Lights」
「Call Me Little Sunshine」(『IMPERA』収録)をバラード寄りにしたナンバー。
00:05~は「Call Me Little Sunshine」00:22~に通じます。
本編ではトビアスの切ない歌が絶品で、音域を上げる00:59~はこみあげてくるものがあります
泣きのギター(00:45~、02:25~)もたまりません。
「De Profundis Borealis」
物悲しいナンバーが続くのかと思っていたら、00:22~にドキッとさせられます。
00:51からは不気味なささやきも入り、アップテンポに。
「Hunter’s Moon」(『IMPERA』収録)を加速させたような感じで、サビ前に歌声を伸ばす01:37~は「Hunter’s Moon」のサビ前(01:11~)のようです。
演奏はフェードアウトしますが、不気味な声が残ります。
「Cenotaph」
耽美的かつ鋭角的。
そしてノリノリです。
トビアスが歌うメロディに気分が上向きます。
進行していくにつれてポジティヴさが増すギター・ソロもすばらしい。
ルンルン気分が増した「Kaisarion」(『IMPERA』収録)といった感じです。
「Missilia Amori」
爆発力のある00:04~に痺れます。
01:26~(「ウ~!」「ア~!」)がいいスパイスで、「Lachryma」の「Cry~ing」が来そうな雰囲気になる02:05~も興味深いです。
「Marks Of The Evil One」
「Witch Image」(『PREQUELLE』収録)のようなメロディアス・ナンバー。
00:02~の哀愁ギターが染みます。
00:02を再び(02:21~) → いったん引く(02:43~) → ギター・ソロ2回目(02:56~)もいい攻めです。
「Umbra」
展開が二転三転。
神聖なVAN HALEN「Jump」(『1984』収録)といった雰囲気で始まりますが、00:52~のギターがそれをかき消します。
カウベルが心地良く響く中、メランコリックな歌メロが流れていき、01:52からはテンポが上がります。
03:32~は「Twenties」(『IMPERA』収録)02:42~のよう。
神秘的かつカオスになります。
「Excelsis」
「Life Eternal」(『PREQUELLE』収録)のような歌い出しで始まるバラード。
OPETH「A Story Never Told」(2024年『THE LAST WILL AND TESTAMENT』収録)のようでもあります。
01:29~がちょっとしたフェイントになっていて、低音域Voで展開していく03:17~もすばらしい。
フェードアウトはせず、トビアスの歌声で終わります。
『PREQUELLE』+『IMPERA』
『IMPERA』の「Kaisarion」「Spillways」を聴いた時のような驚きはありませんが、
- 「Guiding Lights」「De Profundis Borealis」…『IMPERA』収録曲を思わせながらも速度が違う
- 「Kaisarion」のような「Cenotaph」が後半1発目
となっていて、『IMPERA』をちょっとひねった手法が特徴的です。
濃密な「Umbra」は『IMPERA』での「Twenties」のような位置付けですね。
そういった点ではアルバム後半に変化球を用意していたととらえることができます。
「Lachryma」「Marks Of The Evil One」「Excelsis」のように『PREQUELLE』収録曲がリンクするナンバーがあるのもうれしい。
『SKELETÁ』は『PREQUELLE』+『IMPERA』的な力作です。