『THE REVENGE OF ALICE COOPER』日本盤CDのレビューです。
ALICE COOPERは以下のラインナップでバンドとしてスタートし、『PRETTIES FOR YOU』(1969年)から『MUSCLE OF LOVE』(1973年)まで計7枚のアルバムを発表しています。
- アリス・クーパー<Vo>
- グレン・バクストン<G>
- マイケル・ブルース<G>
- デニス・ダナウェイ<B>
- ニール・スミス<Ds>
その後、アリスはソロに転向しますが、今回バンドとしての52年ぶりの作品『THE REVENGE OF ALICE COOPER』をリリースしてくれました。
グレンは1997年10月19日に他界してしまっていますが(享年49歳)、生前の彼の音源もアルバムに使われています。
ソロ作品を含めれば通算30作目となり、これまで数多くの傑作を手掛けてきたボブ・エズリンによるプロデュース。
記事ではバンドのメンバーが関わった旧譜もレビューしています。
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『PRETTIES FOR YOU』(1969年)
1969年6月25日にリリースされたデビュー作。
全曲メンバー5人による作曲です。
音はこもり気味ですが、楽曲そのものはスリリングで濃密。
幻想的なオーラも醸し出し、1分台の曲が多く配置されているのも特徴として挙げられます。
アリスのヴォーカルはソフトですが、声そのものはこの頃から個性的でした。
あとはリズム隊がなかなかの存在感。
デニスのベース・ラインが前面に出る場面が多いですし、ニールのドラミングも爆発力があります。
本作から「Reflected」がシングル・カット。
この曲は再構築されて後に「Elected」として『BILLION DOLLAR BABIES』(1973年)に収録されます。
また「Titanic Overunture」が「Titanic Overunderture」(アリスのヴォーカルを加えたヴァージョン)として『THE REVENGE OF ALICE COOPER』のボーナス・トラックとして収録されています。
『EASY ACTION』(1970年)
1970年3月27日にリリースされた2nd。
『PRETTIES FOR YOU』から9カ月ぶりの発表ですが、これ以降『MUSCLE OF LOVE』(1973年)まで早いペースでのアルバム・リリースを維持することになります。
『PRETTIES FOR YOU』同様、全曲がメンバー5人による作曲。
アリスのVoは依然ソフトで「Return Of The Spiders」だけ骨太ですが、この「Return Of The Spiders」の新録が『THE REVENGE OF ALICE COOPER』のボーナス・トラックとして追加収録されています。
「Mr. And Misdemeanor」の歌詞には前作のタイトルが歌詞に登場します。
本作からは「Shoe Salesman」がシングル・カット。
アコースティックを基調としたナンバーで、デニスのベース・ラインがかっこいいです。
怪しい「Still No Air」、ヘヴィでスリリングな「Below Your Means」もなかなかで、その「Below Your Means」とピアノが美しい8曲目「Beautiful Flyaway」ではマイケルがリード・ヴォーカルを担当。
アリス以外が歌う曲は後の作品も含めてこの2曲のみですが、歌声自体はアリスに似ています。
『LOVE IT TO DEATH』(1971年)
1971年3月9日リリースの3rd。
『EASY ACTION』から約1年ぶりです。
ボブ・エズリンとジャック・リチャードソンによる共同プロデュース。
初めてボブが関わった作品です。
マイケルが書いたノリのいい「Caught In A Dream」「Long Way To Go」をはじめ、デニスが書いた9分のトライバルな「Black Juju」、ニールが書いた怪しい「Hallowed Be My Name」、アリスが書いたミステリアスで美しい「Second Coming」とメンバーが1人で書いた曲が『MUSCLE OF LOVE』までの中で一番多く収録されています。
メンバー5人が書いたのは「I’m Eighteen」と「Is It My Body」。
「I’m Eighteen」はキャッチーなサビがキマッていて、「Is It My Body」は堂々としたアリスの歌いっぷりがかっこよく、歌声を伸ばすパートも存在感があります。
「Ballad Of Dwight Fry」は初期の名バラード。
切ないサビが最高で、「Second Coming」からつながる構成がまたすばらしいです。
ボブは「Caught In A Dream」「Long Way To Go」「Hallowed Be My Name」「Second Coming」「Ballad Of Dwight Fry」でキーボードをプレイ。
作曲に関わるのは次作『KILLER』からとなります。
『KILLER』(1971年)
1971年11月9日リリースの4作目。
『LOVE IT TO DEATH』から8カ月ぶりです。
ボブ・エズリンによるプロデュースで『LOVE IT TO DEATH』同様、本作でもキーボードをプレイ。
「Under My Wheels」「You Drive Me Nervous」の作曲にも関わっています。
アルバムは「Under My Wheels」~「Desperado」の前半が特に充実しています。
「Under My Wheels」はエキサイティングなイントロ → アリスの「The telephone is ringing」の流れにKO。
最高級のオープニング・ソングです。
「Be My Lover」はマイケルが1人で書いた曲。
優しくポップな曲調の中での神秘的なメロディが素敵です。
8分の「Halo Of Flies」はメンバー5人が作曲。
01:40~なんかは面白い音で、アリスの歌が入ってからもジワジワさせつつ、曲がスリリングに展開していきます。
「Desperado」は切ない演奏の中でアリスの語り風Voが冴えます。
キーボードが前面に出る中盤の演奏パート(01:54~)もいいですね。
後半は霊的で物悲しい「Dead Babies」が秀逸。
このナンバーもメンバー5人による作曲です。
『SCHOOL’S OUT』(1972年)
1972年6月13日リリースの5作目。
『KILLER』から約7カ月ぶりのアルバムです。
ボブ・エズリンによるプロデュースで、ボブは本作でもキーボードと作曲で貢献。
「My Stars」とインスト「Grande Finale」で共作しています。
アルバムは名曲「School’s Out」でスタート。
アリスは歌い出しから過去作とは比べ物にならないほどオーラがすごく、キャッチーなサビにもテンションが上がります。
同じようなノリのいい曲が続くのかと思っていたら、そうではなく2曲目「Luney Tune」では早くもドラマティックなテイストを組み込みます。
01:55~の泣きのギター・ソロがまたいいですね。
ボブが関わった2曲は後半に登場。
「My Stars」はアリスとボブの共作で、ピアノをうまく取り入れながらスリリングに展開します。
「Grande Finale」はアルバムのラストにふさわしいシンフォニックなインスト。
02:19~がEUROPE「The Final Countdown」(1986年『THE FINAL COUNTDOWN』収録)みたいです。
『BILLION DOLLAR BABIES』(1973年)
1973年2月27日リリースの6作目。
『SCHOOL’S OUT』から約8カ月ぶりのアルバムです。
プロデューサーは引き続きボブ・エズリン。
ジュディ・コリンズのカヴァー「Hello Hooray」(オリジナルは1968年『WHO KNOWS WHERE THE TIME GOES』収録)で幕を開けます。
代表曲「Elected」「Billion Dollar Babies」「No More Mr. Nice Guy」を収録。
「Elected」は「Reflected」(『PRETTIES FOR YOU』収録)をメンバー5人で再構築したナンバーでアリスのVoが歌い出しからかっこいいです。
01:16~のような音声の組み込み方もうまい。
ヘヴィな「Billion Dollar Babies」は、ドラム → ギター → ベースの出だしとアリスの曲を区切った歌い方がキリッとしていて、ギター・ソロもエキサイティング。
「No More Mr. Nice Guy」はシャープなギターとキャッチーなサビが心地良いです。
※この曲はMEGADETHもカヴァーしていて、デイヴ・ムステイン<Vo/G>の個性的な声がハマっています。
ボブが曲作りに関わった「Sick Things」「I Love The Dead」も高品質。
「Sick Things」は不気味なメロディがスケールの大きい演奏で描かれ、「I Love The Dead」は「Ballad Of Dwight Fry」(『LOVE IT TO DEATH』収録)のように怪しいながらも切ないメロディが響き渡ります。
ボブがプロデュースしたバンド時代の作品は本作が最後。
次にボブがプロデュースするのはアリスのソロ1作目『WELCOME TO MY NIGHTMARE』(1975年)となります。
『MUSCLE OF LOVE』(1973年)
1973年11月20日リリースの7作目。
『BILLION DOLLAR BABIES』から約9カ月ぶりのアルバムです。
ボブ・エズリンは関わっておらず、全曲バンドのメンバーによる作曲です。
メンバー5人で書いた曲が「Big Apple Dreamin’ (Hippo)」「Never Been Sold Before」「Man With The Golden Gun」「Woman Machine」。
『LOVE IT TO DEATH』以降では一番多いです。
ボブがプロデュースした作品に比べると印象に残るメロディが少ないのですが、「Big Apple Dreamin’ (Hippo)」「Muscle Of Love」「Teenage Lament ’74」がなかなか。
「Big Apple Dreamin’ (Hippo)」は始まりのドラムが「Billion Dollar Babies」(『BILLION DOLLAR BABIES』収録)を思わせ、ゴリゴリした演奏と哀愁あるリード・ギターがマッチしています。
「Muscle Of Love」はキャッチーなサビが魅力的。
ベース・ラインもいいですし、01:29からドコドコし始め、演奏がスリリングになります。
「Teenage Lament ’74」はソフトな曲調の中での歌メロが高品質でハーモニーもきれいです。
「Muscle Of Love」と「Teenage Lament ’74」はシングル・カットされました。
本作リリース後、バンドは解散。
アリスはソロとなります。
『WELCOME 2 MY NIGHTMARE』(2011年)
アリスのソロ19作目。
バンド時代を含めれば通算26作目になります。
ソロ1作目『WELCOME TO MY NIGHTMARE』(1975年)の続編で、ボブ・エズリンによるプロデュース。
マイケル、デニス、ニールが「A Runaway Train」「I’ll Bite Your Face Off」「When Hell Comes Home」でプレイしています。
作曲でも貢献しており、
- A Runaway Train…アリス、ボブ、デニス
- I’ll Bite Your Face Off…アリス、ボブ、トミー・ヘンリクセン、ニール
- When Hell Comes Home…アリス、ボブ、マイケル
というクレジット。
「A Runaway Train」は軽快で疾走感があり、適度に主張するデニスのベースが心地良いです。
「I’ll Bite Your Face Off」はドライなギター・サウンドを軸に進むグルーヴ・ナンバー。
02:38~のピアノがいいアクセントとなっています。
「When Hell Comes Home」はスローでヘヴィ。
70年代の雰囲気も出ていて、00:26~のゆがんだギターが怪しさを増幅させます。
マイケル、デニス、ニールは本作を含めて3作品に連続で参加することになります。
『PARANORMAL』(2017年)
ソロ20作目(バンド時代を含めると通算27作目)。
ボブ・エズリン、トミー・デナンダー、トミー・ヘンリクセンによるプロデュースで「The Sound Of A」までが本編となっています。
本編では、
- Fireball…デニスが作曲と演奏で参加。アリスとデニスによる作曲
- Rats…マイケル、デニス、ニールが演奏で参加
- The Sound Of A…デニスが作曲と演奏で参加。アリスとデニスによる作曲
とデニスの貢献度が高めです。
「Fireball」はダイナミックさと怪しさがうまくブレンドされていて、音量控えめのアリスのVoが曲調にハマっています。
「Rats」はガッツがあってキャッチー。
01:57~のギター・ソロも緊張感があります。
「The Sound Of A」は「Ballad Of Dwight Fry」(『LOVE IT TO DEATH』収録)をミステリアスなポップにシフトさせたような曲展開。
テンポは異なりますが、曲の始まりから「Ballad Of Dwight Fry」がちらつきます。
マイケル、デニス、ニールはボーナス・トラック2曲でもプレイしていて、
- Genuine American Girl…アリス、ニール、ボブ
- You And All Of Your Friends…アリス、デニス、ボブ
という作曲クレジットになっています。
どちらも高品質なナンバー。
「Genuine American Girl」は01:58~の歌メロ、02:27~のギターが特に染みます。
「You And All Of Your Friends」はアリスの歌い出しから引き込まれ、「Elected」(『BILLION DOLLAR BABIES』収録)に郷愁感を加えたような展開が素敵。
「The Sound Of A」同様、テンポは違いますが、昔の名曲を思い出させてくれます。
『DETROIT STORIES』(2021年)
ソロ21作目(バンド時代を含めると通算28作目)。
ボブ・エズリンによるプロデュースです。
マイケル、デニス、ニールは「Social Debris」と「I Hate You」でプレイしていて、作曲クレジットは、
- Social Debris…アリス、ボブ、ニール
- I Hate You…アリス、ボブ、デニス
となっています。
「Social Debris」は00:05~のデニスのベースが「Elected」(『BILLION DOLLAR BABIES』収録)の00:01~。
本編はミディアムテンポで進行し、アリスの音域がさらに下がる00:27~、歌詞を短く切りながらノリ良く展開するサビがかっこいいです。
「I Hate You」はデニスのベースがブイブイしていて、アリスの語り風Vo、不安定気味に進行するサビがツボです。
また、演奏では参加していませんが、デニスは「Drunk And In Love」でもアリス、ボブと共作。
こちらはGEORGE THOROGOOD AND THE DESTROYERS「Bad To The Bone」(1982年)をスローダウンさせたような曲調です。
この後アリスは2023年に『ROAD』を発表(マイケル、デニス、ニールは不参加)。
そして2025年に52年ぶりのバンド作品『THE REVENGE OF ALICE COOPER』をリリースします。
『THE REVENGE OF ALICE COOPER』(2025年)
- Black Mamba
- Wild Ones
- Up All Night
- Kill The Flies
- One Night Stand
- Blood On The Sun
- Crap That Gets In The Way Of Your Dreams
- Famous Face
- Money Screams
- What A Syd
- Intergalactic Vagabond Blues
- What Happened To You
- I Ain’t Done Wrong (THE YARDBIRDS cover)
- See You On The Other Side
- Return Of The Spiders 2025…ボーナス・トラック
- Titanic Overunderture…ボーナス・トラック
バンドとしては8枚目のアルバム。
ソロ作品を含めれば通算30作目になります。
70年代のオーラを引き継ぎながらも音は骨太で重厚です。
「Black Mamba」
アリス、ボブ、デニスが作曲。
スローでミステリアスなナンバーで、始まりから引き込まれます。
不気味なスモークに包まれ、アリス・ワールドが広がっていくイメージですね。
怪しいオーラを放ちながらも、ワクワクさせる曲展開がさすがです。
「Wild Ones」
こちらもアリス、ボブ、デニスが書いた曲。
「Muscle Of Love」(『MUSCLE OF LOVE』収録)に哀愁度が加わった感じで、00:00~のリード・ギターにグッとくきます。
曲名を伸ばすサビが心地良く、ギターが伸びながら音域が上がる01:51~にもワクワク。
デニスのベースが前面に出る03:14~もいいですね。
こういうのを聴くと「ボブ・エズリンが『MUSCLE OF LOVE』をプロデュースしていたらどうなっていただろう?」という好奇心が湧きます。
「Up All Night」
アリス、ボブ、マイケルが作曲。
スローで骨太 → テンポが上がってポップでキャッチーなサビとうい展開が秀逸です。
アルバムの中ではこのアタマ3曲が特にいい流れです。
「Blood On The Sun」
デニスが1人で書いた6分のナンバー。
美しく神秘的に進行していきますが、01:06からシャープになります。
哀愁ギターを主体に劇的に展開する03:36~もすばらしい。
そして再度05:09から鋭角的になるという濃密な曲構成です。
「Famous Face」
マイケルが1人で書いた曲。
ゴリゴリしていてヘヴィで『DRAGONTOWN』(2001年)に通じるサウンドです。
泣きと怪しさが同居するギター・ソロもいいですね。
『DRAGONTOWN』の時はアリスはソロなのですが、マイケルがマイケル不在の時期に通じる曲を書くのが興味深いです。
「Intergalactic Vagabond Blues」
アリス、ボブ、マイケル、ニールが作曲。
渋くてノリが良く「Disgraceland」(『DRAGONTOWN』収録)を思わせます。
「What Happened To You」
グレンを含むメンバー5人とボブが書いた曲。
ここにグレンの音源が使われています。
シャープなギターがかっこよく、歌メロが「Johnny B. Goode」(1958年)みたいです。
「I Ain’t Done Wrong」
THE YARDBIRDSのカヴァー。
オリジナルは『FOR YOUR LOVE』(1965年)収録されています。
「Return Of The Spiders 2025」
「Return Of The Spiders」(『EASY ACTION』収録)の新録。
オリジナルとは異なるリズム・パターンで進行します。
「Titanic Overunderture」
「Titanic Overture」(『PRETTIES FOR YOU』収録)にアリスのVoを加えたもの。
00:22~の「deeper, deeper」が耳に残り、これを聴くと「Deeper」(『DRAGONTOWN』収録)も聴きたくなります。
アルバム本編にも『DRAGONTOWN』に通じる曲が2曲ありますしね。
ブックレットには歌詞、作曲クレジットに加え、各曲の楽器担当も記載。
日本語解説にはボーナス・トラックを含めた全曲の特徴が書かれています。
『HEY STOOPID』(1991年)
『THE REVENGE OF ALICE COOPER』リリース2日前の7月23日、オジー・オズボーンの訃報が報じられました。
オジーはアリスのソロ12作目のタイトル曲「Hey Stoopid」(ギターはスラッシュとジョー・サトリアーニ)にゲスト参加しています。
数多くの名曲を残し、HM/HRシーンに多大な貢献をしたオジーへの感謝の気持ちを込めながら、この曲も聴きましょう。
アリスとオジー…すごい共演ですね。
03:16~の「You know I Know」でオジーの声が前面に出ます。