トビアス・サメットが主宰するメタル・オペラ・プロジェクトの10作目。
日本盤CD限定盤の紹介記事です。
『HERE BE DRAGONS』には以下のゲスト・シンガーたちが参加。
3名がAVANTASIA作品初参加になります。
- ボブ・カトレイ<MAGNUM>
- ジェフ・テイト
- マイケル・キスク<HELLOWEEN>
- ロニー・アトキンス<PRETTY MAIDS>
- トミー・カレヴィック<KAMELOT>…ツアーで共演。アルバム参加は初
- ロイ・カーン<CONCEPTION>
- ケニー・レクレモ<H.E.A.T>…ツアーで共演。アルバム参加は初
- エイドリアン・コーワン<SEVEN SPIRES>…ツアーで共演。アルバム参加は初
<Disc 1>
- Creepshow
- Here Be Dragons
- The Moorland At Twilight
- The Witch
- Phantasmagoria
- Bring On The Night
- Unleash The Kraken
- Avalon
- Against The Wind
- Everybody’s Here Until The End
<Disc 2>
- Return To The Opera
- Against The Wind (Piano Version)
- Bring On The Night (80s Version)
- Creepshow (Extended Version)
- Reach Out For The Light (Live 2024)
- Lost In Space (Live 2024)
- Promised Land (Live 2024)
- Farewell (Live 2024)
※CDのみのボーナス・トラックはありません。
日本盤CD限定盤の仕様
- 見開き紙ジャケット(アートワークのデザインはロドニー・マシューズ)
- 帯なし
- ブックレット(48ページ)
- 歌詞・対訳に加え、トビアスによる楽曲解説もあり
- Disc 1はSHM-CD
となっていて、紙ジャケとは別にブックレットが付いています。
ブックレットには、
- 歌詞
- トビアスの楽曲コメント原文
- トビアス、共演者の写真(スタジオ、ライヴ)
が載っています。
楽曲解説はトビアスがたくさんコメントしてくれていて、充実の内容です。
DISC 1のレビュー
- Creepshow
- Here Be Dragons
- The Moorland At Twilight
- The Witch
- Phantasmagoria
- Bring On The Night
- Unleash The Kraken
- Avalon
- Against The Wind
- Everybody’s Here Until The End
「Creepshow」と「Unleash The Kraken」がトビアスのみのVoで、あとはトビアス+ゲスト・シンガー1名というスタイルをとっています。
これまでの作品よりもポジティヴな雰囲気が前面に出ていて、マイケル・キスク<HELLOWEEN>参加の「The Moorland At Twilight」以降はスピード感が増します。
- Creepshow…『A PARANORMAL EVENING WITH THE MOONFLOWER SOCIETY』(2022年)同様、1曲目はトビアスのみのVo。サビでは『A PARANORMAL EVENING WITH THE MOONFLOWER SOCIETY』のラスト「Arabesque」(ゲスト:マイケル・キスク、ヨルン・ランデ)の06:35~にもあった「Welcome to the creepshow」。トビアスに「Welcome to ~」と言われるとワクワクする
- Here Be Dragons…約9分。『THE SCARECROW』(2008年)のように長尺のタイトル曲を2曲目に配置。ゲストはジェフ・テイト。切なさを漂わせる歌メロが進んでいき、サビでダイナミックさが増す。06:19~は「Misplaced Among The Angels」(ゲスト:フローア・ヤンセン<NIGITWISH>/『A PARANORMAL EVENING WITH THE MOONFLOWER SOCIETY』収録)に通じる雰囲気
- The Moorland At Twilight…マイケル・キスク<HELLOWEEN>が参加。メルヘンチックなパートを挟みながら疾走するメロディック・メタル。これまでキスクが参加した曲の中で一番明るい
- The Witch…トミー・カレヴィック<KAMELOT>との共演。トミーのムードある歌唱がすばらしい。テンポは異なるが01:00からはKAMELOT「New Babylon」(2023年『THE AWAKENING』収録)のような神聖なオーラに包まれ、サビは「Spectres」(ゲスト:ジョー・リン・ターナー/2013年『THE MYSTERY OF TIME』収録)のように展開する
- Phantasmagoria…ロニー・アトキンス<PRETTY MAIDS>が参加。エリック・マーティン<Vo:MR. BIG>と共演した「Rhyme And Reason」(『A PARANORMAL EVENING WITH THE MOONFLOWER SOCIETY』収録)のようなオーラが漂う。力強いサビにガッツポーズ
- Bring On The Night…ボブ・カトレイ<MAGNUM>が参加。神聖な雰囲気に包まれながらのボブのVo(00:00~) → 躍動感のある本編(00:38~)への流れが絶品。サビは「Welcome To The Shadows」をノスタルジックにした感じ
- Unleash The Kraken…トビアスのみのVo。アルバム収録曲の中では一番激しい。ミステリアスな音を響かせながら、アグレッシヴに疾走する。エネルギッシュなギター(01:07~) → 高音が伸びるサビがいい構成。攻撃性が増す03:30~や不敵な04:55~もいいアクセント
- Avalon…エイドリアン・コーワン<SEVEN SPIRES>が参加。リズミカルでドラマティックな中、要所要所で登場する分厚いコーラスが魅力的。演奏パートではシンフォニック度が増す。静かになる04:16~がいい引き具合
- Against The Wind…ケニー・レクレモ<H.E.A.T>が参加。00:00~でKOされる疾走曲。00:28~の連打が「I Tame The Storm」(ゲスト:ヨルン・ランデ/『A PARANORMAL EVENING WITH THE MOONFLOWER SOCIETY』収録)の00:25~のようで気が引き締まる。全体的には「Wastelands」(ゲスト:マイケル・キスク/2010年『WICKED SYMPHONY』収録)に近い
- Everybody’s Here Until The End…ラストはバラードでゲストはロイ・カーン<CONCEPTION>。ロイのAVANTASIA参加は「Twisted Mind」(2008年『THE SCARECROW』収録)以来。『THE SCARECROW』ではオープニング曲だったが、『HERE BE DRAGONS』ではエンディング。静 → 動の展開と歌メロがとても感動的。所々でロイの歌を前面に出すアプローチが生きていて、最後もロイで締める
DISC 2のレビュー
- Return To The Opera
- Against The Wind (Piano Version)
- Bring On The Night (80s Version)
- Creepshow (Extended Version)
- Reach Out For The Light (Live 2024)
- Lost In Space (Live 2024)
- Promised Land (Live 2024)
- Farewell (Live 2024)
新録1曲、本編収録曲のヴァージョン違い3曲、ライヴ音源4曲で構成されます。
「Return To The Opera」は疾走曲で「Shelter From The Rain」(ゲスト:マイケル・キスク、ボブ・カトレイ/『THE SCARECROW』収録)のような雰囲気。
ベースもグリグリ主張していてエキサイティングです。
ヴァージョン違いのおすすめは「Bring On The Night (80s Version)」。
トビアスが解説で1986年のロバート・テッパーに触れているのが興味深いです。
ロバートは1986年に『NO EASY WAY OUT』をリリース。
「No Easy Way Out」はシルヴェスター・スタローン主演の映画『ロッキー4』、「Angel Of The City」は同じくスタローン主演の『コブラ』で使われています。
トビアスもこの2作品を観てエキサイトしたのかもしれません。
ライヴ音源はトビアスがオーディエンスに向かって「Masters Of Rock!」と言っているので、おそらくこちらの公演。
「Reach Out For The Light」では、本編「Avalon」で共演しているエイドリアン・コーワンがトビアスと一緒に歌っています。
「Lost In Space」はライヴ映えしますね。
アルバム・ヴァージョンよりもキーボードを前面に出しながら、ノリ良く進行するスタイルがかっこいいです。
「Bring On The Night」
- AVANTASIAの2025年作品のタイトルが『HERE BE DRAGONS』
- アートワークのデザインはロドニー・マシューズ
これを聞いた時、MAGNUMの『CHASE THE DRAGON』(1982年)が思い浮かびました。
- 両作品のタイトルに「DRAGON」
- 『CHASE THE DRAGON』のアートワーク・デザインもロドニー
- トビアスはMAGNUMのファン
- MAGNUMのシンガーであるボブ・カトレイはこれまで多くのAVANTASIAの曲に参加
上記の事実もあるので、「故トニー・クラーキンへのトリビュート・ソングをボブと一緒に歌ってくれないだろうか」と思っていました。
ですので、「Bring On The Night」についてのトビアスの解説を読んだ時は胸がいっぱいになりました。
歌詞はアルバムのコンセプトに合わせていますが、音楽的にはトニーとMAGNUMへのトリビュート・ソングとのこと。
MAGNUMの作品の中からは、
- 『ON A STORYTELLER’S NIGHT』(1985年)…こちらもロドニーがデザインしたアートワーク
- 『VIGILANTE』(1986年)
- 『WINGS OF HEAVEN』(1988年)
が引き合いに出されていて「もし”Bring On The Night”が『ON A STORYTELLER’S NIGHT』『VIGILANTE』『WINGS OF HEAVEN』に収録されるとしたら、トニーやボブはどうしただろう」と自問したことも解説に書かれています。
『HERE BE DRAGONS』はMAGNUMの世界を冒険するきっかけも与えてくれます。
MAGNUM「Lost On The Road To Eternity」(2018年)
トビアスが書いた曲をボブが歌うAVANTASIAも最高ですが、トニーが書いた曲をボブとトビアスが歌うこちらも絶品。
歌メロも高品質で、よりドラマティックになる演奏パートにもフックがあります。
この『LOST ON THE ROAD TO ETERNITY』のアートワークもロドニー・マシューズによるデザインです。