SOILWORKの12作目『OVERGIVENHETEN』が2022年8月19日にリリースされました。
劇的でダイナミックな音像の中で美メロが舞う傑作です。
2019年11作目『VERKLIGHETEN』をスケール・アップさせた作風で、ビョーン“スピード”ストリッド<Vo>のバリエーションに富んだ歌唱が見事。
さらに今回はビョーンのハード・ロック・プロジェクトでもあるTHE NIGHT FLIGHT ORCHESTRAのような曲もあります。
しかもそのうちの1曲はアルバムの2曲目に登場。
アルバム序盤から引き込まれます。
おすすめ曲を挙げながら『OVERGIVENHETEN』の聴きどころを紹介していきます。
『OVERGIVENHETEN』の収録曲とおすすめ曲
以下の太字の9曲がおすすめです。
■SOILWORK/OVERGIVENHETEN (2022年)
- Overgivenheten
- Nous Somme La Guerre
- Electric Again
- Valleys Of Gloam
- Is It In Your Darkness
- Vultures
- Morgongava/Stormfagel
- Death, I Hear You Calling
- This Godless Universe
- Dreams Of Nowhere
- The Everlasting Flame
- Golgata
- Harvest Spine
- On The Wings Of A Goddess Through Flaming Sheets Of Rain
メンバー
- ビョーン“スピード”ストリッド<Vo>
- デイヴィッド・アンダーソン<G>
- シルヴァン・コードレー<G>
- ラスムス・エーンボーン<B>
- バスティアン・トゥアスガールド<Ds>
- スヴェン・カールソン<Key>
おすすめ曲のレビュー
レビュー内に記載されている時間は、曲をフル再生した場合の表記です。
1. Overgivenheten
土臭くてミステリアスでドラマティック。
そんなイントロで幕を開けます。
そして01:28からビョーン“スピード”ストリッド<Vo>の「Yeah~!」と共に本編突入。
速度を落とした「Long Live The Misanthrope」(2013年9作目『THE LIVING INFINITE』収録)といった感じです。
以降はビョーンのパワフルなスクリームを軸に進行し、02:23からクリーンVo。
ビョーンの声が入った瞬間うっとりします。
きれいなメロディで染みますね。
02:49からアグレッシヴなシャウトを絡めてくるところもうまい。
美しさと激しさを兼ね備えた攻めが秀逸です。
03:43からの演奏パートではイントロの雰囲気を再度漂わせ、04:02からギター・ソロ。
このソロがまたメロディアスで絶品。
体内に浸透してきます。
04:55からビョーンがシャウトし、ギターがそれに呼応したヒステリックなプレイをみせるところもスリリング。
ただ、もう少しこのパートは伸ばしたほうが良かったかも。
2. Nous Somme La Guerre
冒頭に書いたTHE NIGHT FLIGHT ORCHESTRAを想起させる曲。
出だしのノスタルジックなギターが、もうTHE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA。
そしてこのギター・サウンドにささやき声が被さります。
なかなかいいじゃないですか!
00:14からTHE NIGHT FLIGHT ORCHESTRA的なミドル・テンポで進んだ後は、いったん静かになり徐々に熱量を上げていきます。
- 00:45~ 静かでほんわか
- 01:16~ ビョーンのクリーン・ヴォーカル
- 01:45~ スヴェン・カールソン<Key>のスペーシーな感じのキーボードがいい感じ
- 02:15~ 雰囲気がややハードに。ビョーンのスクリーム
- 02:21~ スクリームに重なる形でクリーンの歌メロ。低音域寄りで魅力的
03:52からの演奏パートでは、それまでとは少し雰囲気が変わり、グルーヴ感が前面に出ます。
これが自然な変化といった感じでかっこいい。
ギター・ソロもエモーショナルで見事です。
約7分のナンバーなのですが、聴き始めたらあっという間。
曲構成そのものに緩急があるからでしょうね。
包容力のあるサウンドの中でビョーンの低音域寄りの歌唱がキラリと輝きます。
3. Electric Again
「Late For The Kill, Early For The Slaughter」(2010年8作目『THE PANIC BROADCAST』収録)を思わせるような疾走でスタートし、速度を緩めてビョーンのヴォーカルが入ってきます。
最初はアグレッシヴに歌い、サビではクリーンVoという流れ。
特にサビ(00:49~)がいいです。
ビョーンが雄々しく歌います。
01:20から声を伸ばして01:24からシャウトするところもかっこいい。
徐々にサビ前のアグレッシヴさを戻していく唱法が秀逸です。
以下の演奏パートも面白い。
- 02:31~ ちょっとポップな感覚を漂わせる。ここでもほんわか
- 03:04~ 疾走。エネルギッシュなギター・ソロ
その後は再びサビ。
声伸ばし→シャウトも繰り返され、演奏も「Late For The Kill, Early For The Slaughter」な突っ走りで締めくくります。
4. Valleys Of Gloam
00:06からのギター・フレーズがとても心地良く響いてきます。
これもTHE NIGHT FLIGHT ORCHESTRAっぽいですね。
ビョーンは全編クリーン・ヴォーカル。
00:34から低めの声が入ってきますが、ここでグッときます。
そして、いい感じにヒートアップしていき、サビ(00:59~)で絶品の歌メロが展開されます。
ビョーンの声が終わる前にメロディックなギターを響かせるアレンジ(01:23~)がまたいいですね。
あとは02:50からのギター・ソロ。
01:23~の拡大版といった感じです。
03:04のところで「あ、これは来るな。ヤバそう」となり、そしてその後は極上フレーズ。
聴いていて胸が熱くなります。
ポップ感覚にあふれたメロディを敷きながらも、演奏全体は程良くハードさを維持。
このバランスもさすがです。
7. Morgongava/Stormfagel
約1分半のインスト。
美しいピアノと泣きのギターが染みます。
次の「Death, I Hear You Calling」につながるわけではなく、独立した小曲となっています。
「ちょっとひと休み」といった感じ。
とっても素敵な小曲です。
8. Death, I Hear You Calling
重厚で骨太なナンバー。
始まった瞬間ガッツポーズです。
美しく癒し系の「Morgongava/Stormfagel」の後だけに余計インパクトがあります。
2003年5作目『FIGURE NUMBER FIVE』収録の「Brickwalker」になんとなく似てますね。
ビョーンの芯の太いヴォーカルがかなりかっこいいです。
最初はややブルータル。
そしてクリーンさを前面に出していきます。
表現力の高い彼ならではのパフォーマンスですね。
ビョーンのハイトーンに重なる形でスタートする02:29からの演奏パートもすばらしい。
最初はスヴェンのキーボードがミステリアスな雰囲気で、次にギターが哀愁を漂わせながら攻めてきます。
03:54の背後からさりげなく聞こえてくるハーモニーがまたいいアクセント。
それまではビョーンの歌1本のみだったので、こういったアプローチがさらに際立ちます。
11. The Everlasting Flame
再び小曲。
1分ちょっとの長さです。
「Morgongava/Stormfagel」とは雰囲気が異なり、悲壮感が漂う感じ。
これもなかなかいいですね。
「Morgongava/Stormfagel」同様、独立したナンバーで、数秒の無音状態の後に次の「Golgata」が始まります。
12. Golgata
バスティアン・トゥアスガールド<Ds>の爆発力のあるドラムにメロディックかつドラマティックな演奏が重なるスタートがかっこいい。
「Morgongava/Stormfagel」の次に「Death, I Hear You Calling」が来る構成と同様、物悲しい「The Everlasting Flame」の後だけにガツンとやられます。
ビョーンは残虐性に満ちたスクリームを展開し、00:55からはクリーンVoによる歌メロを披露。
スクリームは迫力満点、クリーンは伸びがあって見事です。
01:09からの高音域や01:12でブルータルな唱法を絡めるところもうまい。
多彩な表現に脱帽です。
02:18で速度を落としてズッシリ感のある演奏になり、02:28からは泣き+いい感じにダイナミックなギター・ソロ。
そして03:08でスタートのエキサイティングな演奏再び(曲の中ではトータルで3回目)。
この流れもすばらしいです。
13. Harvest Spine
グルーヴィで勢いのあるナンバー。
サビ前は、程良く突撃感のある演奏とビョーンのブルータルな唱法が光ります。
01:14から響かせるメロディックなギターも心地良いですね。
01:19からビョーンの歌が入ってもずっと鳴っているのがまた最高。
そしてクリーンVoのサビ(01:40~)へと流れています。
美しく安堵感を感じさせるメロディ。
絶品です。
02:09から声を伸ばして、02:16で吐き捨てるアプローチもクールですね。
04:06からややヒステリックなギター・フレーズを放ち、サビに戻る構成も見事です。
総評
SOILWORKの『OVERGIVENHETEN』聴きどころを紹介しました。
ビョーン“スピード”ストリッド<Vo>のアグレッシヴなスクリームと美しいクリーンVoの歌い分けが光るドラマティックかつメロディックなサウンドです。
THE NIGHT FLIGHT ORCHESTRAのような「Nous Somme La Guerre」「Valleys Of Gloam」があるのも興味深い。
特に「Nous Somme La Guerre」は約7分の尺なのですが、長さを感じさせない楽曲構成が見事。
しかもアルバム2曲目にこういったナンバーを配置するのは、なかなか面白い変化球攻撃です。
小曲「Morgongava/Stormfagel」と「The Everlasting Flame」もそれぞれ曲調が違っていて、いいスパイス。
次に来る「Death, I Hear You Calling」と「Golgata」のパワフルさが際立っています。
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