ミカエル・オーカーフェルト<Vo/G>率いるスウェーデンのプログレッシヴ・メタル・バンドの14作目。
『IN CAUDA VANENUM』(2019年)以来、約5年ぶりの作品で、『STILL LIFE』(1999年)以来のコンセプト・アルバムでもあります。
曲もすばらしく、ストーリーも気になったので、日本盤のCD+Blu-rayを購入。
その紹介記事になります。
- §1
- §2
- §3
- §4
- §5
- §6
- §7
- A Story Never Told
【メンバー】
ミカエル・オーカーフェルト<Vo/G>
フレドリック・オーケソン<G>
マーティン・メンデス<B>
ワルッテリ・ヴァユリュネン<Ds:元PARADISE LOST>
ヨアキム・スヴァルベリ<Key>
リリース日:2024年11月22日
レビュー
本作からグロウルが復活。
ミカエルがアルバムでグロウルをやるのは『WATERSHED』(2008年)以来となりますが、攻撃性を維持しつつも柔軟性が増して聴きやすくなりました。
しかもグロウルが結構登場し、クリーンVoも充実しているのだからたまらない。
曲もテクニカルでスリリング。
濃密です。
- JETHRO TULLのイアン・アンダーソン…語り(「§1」「§2」「§4」「§7」)とフルート(「§4」「§7」「A Story Never Told」)
- EUROPEのジョーイ・テンペスト…「§2」
- ミリアム・オーカーフェルト(ミカエルの次女)…「§1」
と参加ゲストも豪華。
今作から初参加のワルッテリもいいドラミングを披露しています。
- §1…足音 → ドアの音 → 演奏の流れ。ストーリーは異なるものの、コンセプト・アルバムということもあり、QUEENSRŸCHE「I Remember Now」(1988年『OPERATION: MINDCRIME』収録)が頭に浮かぶ。ミカエルのVoはクリーンに始まり、01:17からグロウル。エキサイティングな演奏に骨太でブルータルな声がハマる。不吉な01:18~もいい響き(おそらくイアンの声)。02:49からはクリーンVoによるミステリアスなメロディが繰り広げられる。ミリアムと思われる声が被さる04:12~もいいアレンジ
- §2…ミカエルはグロウルが結構多めだが、01:21~、02:19~のハーモニー、刺激的な演奏をバックに展開する02:59~、04:43~など、クリーンでも魅せる。イアンの語りの組み込み方が秀逸。イアンの語りのバックの声(01:35~)がジョーイ
- §3…リズミカルな曲調でグロウルはなし。00:03~が「The Devil’s Orchard」(2011年『HERITAGE』収録)の00:00~のようでうれしい。01:02~の低音にドキッとさせられ、01:17からは割と高めの音域で進行。ミカエルの声が前面に出る03:02~やソフトになる04:23~もすばらしい
- §4…00:25~の声の響き具合が心地良い。00:38からグロウルが入るが、00:47からの低い音量による暴虐的なVoがいいアクセントになっている。01:42から突然静かに(少し和風っぽい)。02:40からはイアンのフルート。そして04:07から再びグロウル。かなり燃える
- §5…弾力性があってテクニカルな曲調の中にアコースティックをうまく取り入れる。クリーンVoの中でさらに音域が下がる00:49~がいい響き。01:29からはめまぐるしい展開(ハーモニー → グロウル → 手拍子)に引き込まれる。グロウル中心のところにクリーンVoを交える02:41~、04:02~も見事
- §6…ドラマティックで躍動感がある。それまで控えめのクリーンVoが止まる → ヘヴィな演奏になってグロウル(01:56~) → クリーン(02:20~)がいい構成。02:23~のワルッテリがまた見事な叩きっぷり。02:57~の演奏パートも刺激的
- §7…遺言の最後のパートということもあり、イアンの語りに存在感がある。02:18~のピアノが美しい。04:15で演奏がピタッと止まって、ハーモニー → 演奏再開の流れをみせるが、ここから曲が終わるまで歌が一切ないというところにどこかミステリアスさを感じる
- A Story Never Told…全編クリーンVoのバラード。切ない歌メロが染みる。01:58からのハーモニーもすばらしく、イアンもフルートで参加。ギター・ソロが始まる05:00~はGHOST「Darkness At The Heart Of My Love」(2022年『IMPERA』収録)の01:07~に通じる。最後は同じく『IMPERA』の「Respite On The Spitalfields」のようにゆ~くりとフェードアウトしながら終わる
アートワーク
ブックレット・タイプではなく、正方形が折られているスタイル。
裏に遺言状(歌詞)が載っていて、あちこちに黒塗りがあります。
文字は結構小さいです。
Blu-rayの映像
トータルで53分。
インタビュー+スタジオ内の様子で進んでいきます。
チャプター「§1」~「§7」は、
- 音…スタジオ音源(フル再生ではない)
- 映像…メンバーの演奏風景(ミカエルが歌う姿はなし)
となっています(「§1」でミカエルの目力強めのカメラ目線あり)。
「ジョーイ・テンペスト」「イアン・アンダーソン」のチャプターは、彼らがアルバムに参加する経緯をミカエルが説明するというもの。
ジョーイとイアンは出演していません。
各曲のストーリー解説はありませんが、チャプター「コンセプト・アルバム」の18:12からミカエルが今作のアイディアのきっかけについて言及。
- 父親の遺言をめぐって家族が争うドキュメンタリーをテレビで見て、インタビュー音声を用いるアイディアが浮かんだ
- 前作『IN CAUDA VENENUM』でやろうと思ったが、権利関係で使えず
- 以来、ずっと気になっていたテーマであり、『THE LAST WILL AND TESTAMENT』の歌詞を書く際のスタート地点になった
ということを述べています。
それとミカエルは声が低くて響きが良く、話し方もかっこいい。
これも映像を観たくなる理由の1つです。
ストーリー
下記を参照しました。
- 日本語解説
- 歌詞対訳
- Marunouchi Muzik Magazine
- Wikipedia
まとめると以下のようになります。
- 舞台は第一次世界大戦後
- ある富豪一家の家主の遺言状が3人の前で読み上げられる
- 3人は双子とポリオの女性(彼女は一家に育てられた孤児)
- 双子が年上(20代後半)で女性の年齢は不明
- 双子は「なぜ女性がいるのだろう」と不思議に思う
- 遺言状(§1~§7)が読まれていくうちに、これまで語られることのなかった一家の秘密が明らかになっていく
- 双子は家主の実の子ではない(おそらく家主の妻と使用人の間の子)…「§4」「§5」
- 相続人は女性。彼女が家主の唯一の子で母親は侍女
- 娘が相続した後、母親から手紙が届く…「A Story Never Told」
- 手紙を読んで「実の父親は家主とは違う男性」「家主にもその事実を伝えていなかった」ということを知る
- 家主は不妊症だった
アートワークが意味するものは?
最前列右の車椅子の女性が気になります。
- 彼女が相続人?
- 「§6」に「己の道を切り開け」とあり、写真は「彼女が道を切り開いた」後の姿なのかも
- 双子とはどうなったのか
…などなど、いろいろと考えさせられるアートワークです。