アリス・クーパーのバンド・メンバーとしても活躍するカリスマ女性ギタリスト、ニタ・ストラウスのソロ2作目『THE CALL OF THE VOID』のレビューです。
2023年7月7日にリリースされました。
2018年1stソロ『CONTROLLED CHAOS』(2018年)は全曲インストゥルメンタル(QUEEN「The Show Must Go On」のカヴァーもあり)でしたが、今回は豪華ゲストの歌入りの曲がいろいろ。
ニタのパフォーマンスと参加シンガーの個性が見事にマッチしています。
インストもスリリングなフレーズが多数で聴きごたえ満点。
「インストよし、歌ものよし」といった満足度の高いアルバムに仕上がっています。
以下の11曲がおすすめです。
- 1. Summer Storm
- 3. Digital Bullets (feat. Chris Motionless)
- 4. Through The Noise (feat. Lzzy Hale)
- 5. Consume The Fire
- 6. Dead Inside (feat. David Draiman)
- 7. Victorious (feat. Dorothy Martin)
- 8. Scorched
- 9. Momentum
- 10. The Golden Trail (feat. Anders Friden)
- 11. Winner Takes All (feat. Alice Cooper)
- 14. Surfacing (feat. Marty Friedman)
1. Summer Storm
- 00:00~ 雷雨
- 00:26~ ミステリアス
- 00:42~ 重厚でエモーショナル
- 01:02~ ドラムが入って鋭角的な演奏
- 01:13~ 衝撃音と共にダイナミックに
- 01:23~ バスドラ連打でアグレッシヴさが増す
- 01:28~ ヒステリック
- 01:36~ 心に染みるギターと共に疾走。一瞬、MAGNUS KARLSSON’S FREE FALL「Hunt The Flame」(2023年4作目『HUNT THE FLAME』収録)の00:42~
- 01:56~ ここも染みる
- 02:12~ STRATOVARIUS「Survive」(2022年16作目『SURVIVE』収録)の03:17~がよぎる
- 02:28~ ヒステリック
- 02:35~ ライド・シンバル → 疾走再開
- 03:24~ じっくりメロディック
- 04:01~ バスドラ+シンバルが心地良い
爆発力があって、スリリング満点のインストです。
緊迫感のあるパートとメロディックなパートのバランスが秀逸。
01:02からは別の曲のような構成ですが(思わず再生画面を確認してしまいました)、曲は分けられておらず、その後も濃密な展開をみせます。
MAGNUS KARLSSON’S FREE FALLやSTRATOVARIUSがちらつくのはちょっと意外。
でもうれしい。
3. Digital Bullets (feat. Chris Motionless)
ヴォーカルはMOTIONLESS IN WHITEのクリス・モーションレスです。
- 00:00~ ダークで近未来的
- 00:09~ ゴリゴリしたニタのギターを軸とした鋭角的な演奏
- 00:23~ クリス、少しモゴモゴ
- 00:36~ クリスの声がクリアになって前面に。00:49からのメロディがいい
- 01:00~ 少しゆったりしてキャッチーなサビ。01:24からクリスがかっこよく曲名を歌う → バスドラ連打+ニタのエモーショナルなギター
- 02:12~ クリス、1番にはないスクリーム
- 02:39~ クリスの曲名Voと共に00:00~の音像になり、02:45~クリスのアツいスクリーム
- 02:58~ クリスのささやき気味のVoを合図にニタのギター・ソロ。高音域のフレーズ。03:12からは高速メロディックに
爆発力を宿らせながらのピリピリした演奏の中でクリスのメロディアスなヴォーカルが舞います。
2番以降に登場するスクリームがいいですね。
テンションが上がります。
02:45からのクリスのスクリーム → いったんささやき → ニタのギター・ソロも見事なアクセントのつけ方です。
4. Through The Noise (feat. Lzzy Hale)
ヴォーカルはHALESTORMのリジー・ヘイルです。
- 00:00~ ポコポコ+ジリジリしたニターのギター
- 00:07~ 一緒に手拍子。リジー、エネルギッシュかつリズミカルに歌い始める
- 00:28~ サビ。中音域でテンション抑え気味に歌う。00:49~の曲名を繰り返しが印象的
- 01:00~ ミステリアスな音像が重なる
- 01:22~ ダイナミックさが増す。一緒に手拍子
- 02:13~ リジーの音域が急に上がり、ニタのギター・ソロ。速弾き → 02:24からメロディ強調
- 02:53~ リジーの高音域の熱唱が音量低めでサビに絡まる
エッジの効いたノリの良い曲調の中に手拍子をできるパートを散りばめた構成が見事です。
リジーの歌は中音域中心に展開。
HALESTORMの曲では「Sick Individual」(2015年3rd『INTO THE WILD LIFE』収録)に近いです。
5. Consume The Fire
- 00:10~ バスドラ連打。疾走
- 00:20~ 光線銃。00:26からのドラムのドンドンがインパクトあり
- 00:41~ スローになってメロディアスに
- 01:01~ 加速。01:05から再びドンドン
- 01:38~ ちょっとメルヘンチック
- 02:07~ スローになって浸透度の高いフレーズ → 疾走+ニタのピロピロ → バスドラ連打
- 02:43~ 重厚な演奏へ
めまぐるしく展開するインストで光線銃が頭に浮かびます。
宇宙船からのビームではなく、ロボットや人間などのキャラクターが光線銃を撃ってる感じ。
00:26~、01:05~のドラムのドンドンも程よく刺激的ですし、雰囲気を変える01:38~も面白いです。
6. Dead Inside (feat. David Draiman)
ヴォーカルはDISTURBEDのデイヴィッド・ドレイマンです。
- 00:00~ メロディックな音像がフェードイン
- 00:05~ 物悲しくなる
- 00:16~ ヘヴィに進行
- 00:27~ デイヴィッドのリズミカルなVoに「ああ、デイヴィッドだなあ」「DISTURBEDっぽい」とワクワク
- 00:49~ デイヴィッド、雰囲気を変えてメロディアスに声を伸ばす
- 00:54~ サビ。DISTURBED「The Vengeful One」(2015年6作目『IMMORTALIZED』収録)のサビ(01:02~)に似てる
- 02:19~ ニタのギター・ソロ。速弾きを絡めながらエモーショナルに進行
- 02:43~ ニターのギターがキーン! → デイヴィットのアツい歌 → 演奏がドシン!ドシン!
- 03:07~ いったん静かになってデイヴィッドの低音Vo
- 03:18~ 再びハードに
DISTURBEDの歌の魅力であるリズミカルさとキャッチーさをうまく取り入れています。
サビに向けての期待感を煽る00:54からも短時間ですが見事。
そしてその後のサビが、DISTURBEDのライヴでの定番曲「The Vengeful One」を思わせる展開。
これはうれしいですね。
02:19~のニタのギター・ソロも切れ味抜群です。
7. Victorious (feat. Dorothy Martin)
ヴォーカルはDOROTHYのドロシー・マーティンです。
- 00:05~ ゴージャスなコーラス+非日常的な「Hey, hey」
- 00:17~ ややミステリアスな雰囲気の中、エネルギーをセーブしている感じのドロシーのVo
- 00:40~ ドロシーの歌声が伸びる
- 00:45~ サビ。「Vic」「torious」と区切る唱法がキマッてる
- 00:57~ ノーマルの声で「Hey, hey」
- 02:05~ ニタ、中音域のヘヴィなフレーズ → 02:17から音域が上げて速弾き
- 02:04~ ドロシーの浮遊感のあるVo+ポコポコした演奏
- 02:54~ ドラムがドンドン+ガッツある「Vic」「torious」
曲のタイトルを区切るサビの歌い方がかっこいいです。
そしてサビ前までの流れも秀逸。
「Dead Inside」同様、歌い始めと異なるモードで歌声を短時間伸ばす → サビに突入という段階的なアプローチが効いています。
8. Scorched
- 00:00~ サイレン
- 00:11~ メランコリック
- 00:41~ PRIMAL FEAR「Eye Of The Storm」(2018年12作目『APOCALYPSE』収録)の00:00~や05:29~を想起
- 01:16~ ドラムのみ → ニタの情のこもったフレーズ
- 04:19~ 「Eye Of The Storm」系のフレーズの後、さらにうっとり
- 04:47~ 包容力のあるキーボード
00:41~のフレーズを軸に展開するインストです。
魅力的な旋律にどんどん引き込まれていき、聴いていくうちに不穏なスタートを忘れてしまいます。
04:19~にも拍手。
「ニタ、そこまで泣かせにくるか」となります。
9. Momentum
- 00:00~ KALMAH「Seventh Swamphony」(2017年7作目『SEVENTH SWAMPHONY』収録)の始まりのよう
- 00:18~ 少し減速。緊迫感があってメロディック
- 00:36~ さらに減速。00:46からエモーショナルに
- 01:43~ 爆風
- 03:56~ ヘヴィでリズミカルな演奏に混沌とした空気が立ち込める → 04:06からバスドラ連打
突進力のあるスタートを切り、その後徐々に速度を落とします。
じっくり聴かせるアプローチがうまいです。
最初のKAMLAHのようなパートは1度のみですがインパクト抜群。
IN FLAMESのアンダース・フリーデン参加曲の前にメロデス・アプローチを取り入れているのがまた面白いです。
10. The Golden Trail (feat. Anders Friden)
ということで、ヴォーカルはIN FLAMESのアンダース・フリーデンです。
- 00:00~ ミステリアス。00:04~はKAMELOT「NightSky」(2023年13作目『THE AWAKENING』収録)の00:04~のよう
- 00:25~ シャープなリフを軸とした演奏
- 00:31~ IN FLAMES「Foregone, Pt. 1」(2023年14作目『FOREGONE』収録)の00:05のようなドラム連打を絡める
- 00:49~ 「State Of Slow Decay」(『FOREGONE』収録)の00:16~ように突進
- 01:22~ クリーンVoによるサビ。「A Dialogue In B Flat Minor」(『FOREGONE』収録)の01:34~っぽい
- 01:48~ 「A Dialogue In B Flat Minor」の01:06~を想起
- 02:59~ ジリジリ、刺激的
- 03:24~ 静かになり、ゆがみのあるアンダースのVo
- 03:43~ アンダースの高音域クリーンVo+ニタのメロディアスなギター
- 04:18~ 慟哭グロウルが被さる
- 04:27~ 「Foregone, Pt. 1」的に
IN FLAMES『FOREGONE』の中でも特にかっこいい3曲をブレンドしてくれています。
すばらしい!
聴き終えた後は「ニタ、今度はIN FLAMESのアルバムで弾いて!」となります。
11. Winner Takes All (feat. Alice Cooper)
ヴォーカルはアリス・クーパーです。
- 00:00~ アリス参加だからか、ヘビのようなシュルル → アリスの独特の声によるコーラス+ゴージャスな「Hey!」
- 00:12~ デジタル・テイスト → リズミカルなアリスのVo
- 00:24~ ヘヴィさが増す
- 00:37~ サビ。アリスのメロディアスなVo+ダイナミックでキャッチーな「Winner takes all」。バックでは近未来的なキーボード
- 00:59~ 「Winner takes all」をかっこよくコール
- 02:06~ クールな「Winner takes all」 → ニタのギター・ソロ。高音域のフレーズを中心にエネルギッシュに展開。かっこいい
『BRUTAL PLANET』(2000年)や『DRAGONTOWN』(2001年)の頃を思わせる重厚でヘヴィな演奏が軸となっています。
上記2タイトルの作風にデジタル要素が加わっているので、『BRUTAL PLANET』『DRAGONTOWN』のデジタルトランスフォーメーション(DX)といった感じですね。
14. Surfacing (feat. Marty Friedman)
ラストはマーティ・フリードマンが参加したインストです。
- 00:00~ 哀愁。ブルージー
- 00:41~ エレクトリックな演奏の上に泣きの旋律。変則的なバスドラがなかなかいい
- 01:18~ ピロピロ → 突進
- 01:37~ 再び泣き。00:41の拡張版
- 02:11~ ドラムが暴れてグルーヴィに
- 02:30~ ヘヴィでズシンズシンな演奏+じっくりメロディアスなフレーズ
- 02:59~ ちょっとだけ高速進行
- 03:19~ バスドラ連打を軸としたシャープな演奏
- 03:56~ 骨太エモーショナル
- 04:22~ エキサイティングなピロピロ → 04:32~は音域を伸ばしながらの奏法
- 05:01~ ドラムがスリリング
- 05:09~ 弾きまくって…
- 05:16~ ピタッと止まって、ちょっと演歌(00:00のメロディ)
ダイナミックでシャープなインストです。
要所要所で絡めるバスドラの連打もかっこいい。
05:16~はMEGADETH「Holy Wars… The Punishment Due」(1990年4th『RUST IN PEACE』収録)の02:15~の流れを思わせますね。
ニタは、ファンがマーティに何を期待しているのかを把握している。
そんなことが分かるアプローチです。
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