マイケル・シェンカー<G>が、MICHAEL SCHENKER GROUP名義でのオリジナル・アルバム『UNIVERSAL』を2022年5月27日にリリースしました。
マイケルの熱いパフォーマンスが光る作品です。
2021年の『IMMORTAL』からわずか1年でマイケルの新音源が聴けるのはうれしいです。
リード・ヴォーカルですが、下記以外はロニー・ロメロ<Vo>が歌っています。
- 「Calling Baa」…インストゥルメンタル
- 「A King Has Gone」…マイケル・キスク<Vo:HELLOWEEN>
- 「The Universe」…ゲイリー・バーデン<Vo>とロニー・ロメロ<Vo>の共演
- 「Wrecking Ball」…ラルフ・シーパース<Vo:PRIMAL FEAR>
ハイライト・チューンがいろいろの『UNIVERSAL』ですが、楽曲の特徴をいくつか挙げると、以下のような感じになります。
- 「Calling Baal」~「A King Has Gone」…故ロニー・ジェイムス・ディオ<Vo:RAINBOW, BLACK SABBATH, DIO, HEAVEN & HELL>に捧げた曲
- 「The Universe」…ゲイリー・バーデン(低音~中音域)とロニー・ロメロ(高音域)の歌い分けが面白い
- 「Wrecking Ball」…JUDAS PRIESTっぽい。キャッチー
- 「Long Long Road」「London Calling」…親近感のあるメロディが満載
おすすめ曲を挙げながら、各曲の特徴を紹介していきます。
『UNIVERSAL』の収録曲とおすすめ曲
本編は「Au Revoir」まで。
「Turn Off The World」と「Fighter」はボーナス・トラックです。
以下の太字の10曲がおすすめです。
■MICHAEL SCHENKER GROUP/UNIVERSAL (2022年)
- Emergency
- Under Attack
- Calling Baal
- A King Has Gone
- The Universe
- Long Long Road
- Wrecking Ball
- Yesterday Is Dead
- London Calling
- Sad Is The Song
- Au Revoir
- Turn Off The World
- Fighter
メンバー
- マイケル・シェンカー<G>
- ロニー・ロメロ<Vo>
- ゲイリー・バーデン<Vo>
- マイケル・キスク<Vo:HELLOWEEN>
- ラルフ・シーパース<Vo:PRIMAL FEAR>
- マイケル・フォス<Chorus>
- ボブ・デイズリー<B:RAINBOW, OZZY OSBOURNE, URIAH HEEP, GARY MOORE>
- バレンド・クルボワ<B:BLIND GUARDIAN>
- バリー・スパークス<B/Key>
- サイモン・フィリップス<Ds:TOTO, THE WHO, JEFF BECK>
- ボビー・ロンディネリ<Ds:RAINBOW, BLACK SABBATH, QUIET RIOT, BLUE OYSTER CULT, AXEL RUDI PELL>
- ブライアン・ティッシー<Ds:WHITESNAKE, FOREIGNER>
- ボド・ショプフ<Ds>
- トニー・カレイ<Key:RAINBOW>
- スティーヴ・マン<Key>
おすすめ曲のレビュー
レビュー内に記載されている時間は、曲をフル再生した場合の表記です。
2. Under Attack
マイケル・シェンカー<G>、ロニー・ロメロ<Vo>、バレンド・クルボワ<B>、ボド・ショプフ<Ds>、スティーヴ・マン<Key>
スティーヴ・マン<Key>の力強いドラミングに導かれてスタート。
ロニー・ロメロ<Vo>の熱唱が光るエネルギッシュなナンバーです。
01:19からのサビもキャッチーで魅力的。
特に2番以降の歌の畳みかけ(02:06~)がかっこいいですね。
そして02:37からマイケルのギター・ソロ。
魂が注入されたような魅力的なフレーズです。
ロニーの歌と重なってソロが始まるところがまたいい。
03:57からのフレーズもエネルギッシュで引き込まれます。
3. Calling Baal
トニー・カレイ<Key>
次の「A King Has Gone」への序曲。
RAINBOWの名作『RISING』(1976年2nd)でもプレイしていたトニー・カレイ<Key>が美しいキーボードを奏でます。
ヘヴィ・メタル/ハード・ロック専門誌『BURRN!』2022年6月号のインタビューでの広瀬編集長の質問で「資料によると『RISING』のオープニング「Tarot Woman」のイントロへのオマージュ」とあり、まさに「Tarot Woman」のイントロに通じるアプローチです。
マイケルはそのやり取りで「俺はその『RISING』というアルバムを知らない。だから俺にとってはまったく新しいものだ」と答えていますが、この「Calling Baal」を魅力的なナンバーとして位置付けています。
いきなり「A King Has Gone」が始まるよりも、この「Calling Baal」からつながったほうがいいですね。
ほんわかした「Tarot Woman」のイントロといった感じで、心地良く「A King Has Gone」へと流れていきます。
4. A King Has Gone
マイケル・シェンカー<G>、マイケル・キスク<Vo>、ボブ・デイズリー<B>、ボビー・ロンディネリ<Ds>、トニー・カレイ<Key>
故ロニー・ジェイムス・ディオ<Vo:RAINBOW, BLACK SABBATH, DIO, HEAVEN & HELL>に捧げた曲。
元RAINBOWのボブ・デイズリー<B>、ボビー・ロンディネリ<Ds>、トニー・カレイ<Key>が演奏陣に加わり、HELLOWEENのマイケル・キスク<Vo>が歌うという最高のシチュエーションです。
曲は、流れるようなボビーのドラムとマイケルの情緒的なギター・フレーズでスタート。
そして00:17からキスクのメロディアスなヴォーカルが入ってきます。
要所要所にハーモニーが加わり、伸びのある魅力的な歌メロが展開。
本当にいい声してますし、歌がうまい。
見事です。
01:31からは「the rainbow’s rising」、02:06からは「Heaven and hell」の歌詞が登場するのもうれしい。
02:43からはマイケルのエモーショナルなギター・ソロに移行し、03:15からはキスクの歌とマイケルのギターが交互に攻めてきます。
ここは聴き応え満点。
キスクの歌にマイケルのエネルギッシュなソロが重なり(04:19~)、再度キスクが登場して声を伸ばして曲を終えるスタイル(04:40~)がまたクール。
キスクのヴォーカルとマイケルのギターのコンビネーションが見事なナンバーですね。
楽曲を懐古的に包み込むトニーのキーボードもすばらしいです。
5. The Universe
マイケル・シェンカー<G>、ゲイリー・バーデン<Vo>、ロニー・ロメロ<Vo>、バリー・スパークス<B>、ボド・ショプフ<Ds>、スティーヴ・マン<Key>、マイケル・フォス<Chorus>
マイケルの叙情的なフレーズで始まるこの「The Universe」にはロニーだけでなく、ゲイリー・バーデン<Vo>も参加。
これはうれしい共演です。
しかもアルバム・タイトルの関連用語の曲にゲイリーが客演。
ワクワクします。
00:28はゲイリーですね。
やはりマイケルのギターとゲイリーのヴォーカルはマジックを生み出します。
最高です。
低音~中音域はゲイリー、キーが高くなるところはロニーが歌うというスタイルをとっています。
02:33からテンポを変えてシンフォニックになっていく箇所もスリリング。
劇的音像の中で以下にようなすばらしい展開をみせます。
- 02:47~ ロニーの伸びのある歌唱
- 03:16~ マイケルのエネルギッシュで熱いギター・ソロ。圧巻
6. Long Long Road
マイケル・シェンカー<G>、ロニー・ロメロ<Vo>、バレンド・クルボワ<B>、ボド・ショプフ<Ds>、スティーヴ・マン<Key>、マイケル・フォス<Chorus>
マイケルのシャープなギター・サウンドを軸に進行していくリズミカルなナンバー。
出だしのリフは少しRATTの「The Morning After」(1984年1st『OUT OF THE CELLAR』収録)っぽいです。
ロニーは、伸びのある歌を披露。
00:56からのサビのメロディはキャッチーで心地良く、一緒に「Long, long, road」と歌いたくなります。
鋭角的なギターと、それとは対照的に展開していくポップ感覚にあふれた歌メロが魅力的。
キャッチーな歌が終わり、鋭いギター・リフが刻まれる中、エモーショナルなギター・ソロと共にエンディングに向かう03:44からの構成も見事です。
7. Wrecking Ball
マイケル・シェンカー<G>、ラルフ・シーパース<Vo>、バレンド・クルボワ<B>、ボド・ショプフ<Ds>、スティーヴ・マン<Key>
リード・ヴォーカルはPRIMAL FEARのラルフ・シーパース<Vo>。
JUDAS PRIESTを思わせる曲調で、ラルフのパワフルで強靭な歌唱が光ります。
00:39でのキャッチーなサビもエキサイティング。
「Long Long Road」同様、一緒に歌いたくなります。
01:57からはマイケルのギター・ソロ。
02:10のようなダイナミックなプレイを挟みながらエネルギッシュに展開します。
勇壮さが増していくいく02:50からの展開も熱い。
さらに03:06からはマイケルのソロ2回目。
こちらはちょっとエモーショナルな感じで進みます。
レトロなキーボードで楽曲を装飾するスティーヴ・マン<Key>のパフォーマンスも見事です。
9. London Calling
マイケル・シェンカー<G>、ロニー・ロメロ<Vo>、バレンド・クルボワ<B>、ボド・ショプフ<Ds>、スティーヴ・マン<Key>、マイケル・フォス<Chorus>
「Once upon a time」とロニーが歌って始まるんですが、これがいいんですよね。
歌メロと演奏のスタートの仕方がかっこいい。
スティーヴのキーボードが心地良く響き渡る中、ロニーはメロディアスな歌を披露。
マイケルもハードなリフでしっかりと楽曲を支えます。
00:52からサビに向かうのですが、どんどん胸が高まっていきます。
そして01:07のサビでは親しみのある魅力的な歌メロが展開。
やはりここでも一緒に歌いたくなります。
マイケルのギター・ソロは2回。
02:15からと03:40からで、どちらも感情のこもったプレイを聴かせてくれます。
03:40からの2回目のギター・ソロと共に曲はエンディングを迎えます。
10. Sad Is The Song
マイケル・シェンカー<G>、ロニー・ロメロ<Vo>、バリー・スパークス<B>、サイモン・フィリップス<Ds>、スティーヴ・マン<Key>
サイモン・フィリップス<Ds>の爆発力のあるドラムが映えるナンバー。
出だしでガツンとやられます。
以降はスローに進行。
ヘヴィな曲調とロニーのミステリアスな歌唱が見事にマッチしています。
02:22からのマイケルのギター・ソロも面白い。
重く攻めながら、火花をイメージさせる02:31のようなフレーズも交えて魅了してくれます。
ロニーの高音域の熱唱からギター・ソロに移る流れがまたかっこいいです。
この興奮は03:23からも体験できます。
11. Au Revoir
マイケル・シェンカー<G>、ロニー・ロメロ<Vo>、バリー・スパークス<B/Key>、サイモン・フィリップス<Ds>、スティーヴ・マン<Key>
本編ラストは、マイケルのメロディックなギターが冴える疾走チューン。
勢いある曲調で進んでいき、00:58からのサビでは少しスロー・ダウンします。
それまでとは違いテンポで魅力的な歌メロが展開されるアプローチが見事です。
マイケルのギター・ソロは02:21から。
スロー・ダウンした中で情熱的なフレーズを放ちます。
02:27からの旋律なんかはフックがありますね。
曲は再びサビへ。
その後に鳴り響くドラマティックなサウンドがピタッと止まって終了します。
12. Turn Off The World
マイケル・シェンカー<G>、ロニー・ロメロ<Vo>、バレンド・クルボワ<B>、ブライアン・ティッシー<Ds>、スティーヴ・マン<Key>
出だしのマイケルのフレーズにまずやられます。
これはきますね。
スローでハードに曲が進行していく中、ロニーはエネルギッシュでメロディックなパフォーマンスを披露。
この「Turn Off The World」は、ロニーとマイケルの掛け合いが魅力です。
ロニーが歌えばマイケルがエモーショナルなフレーズで呼応。
交互に熱いパフォーマンスを繰り広げながら展開していきます。
02:12からのギター・ソロを含め、マイケルの情熱的なプレイが曲全体に浸透されています。
総評
MICHAEL SCHENKER GROUPの『UNIVERSAL』を紹介しました。
ロニー・ロメロ<Vo>、マイケル・キスク<Vo>、ラルフ・シーパーズ<Vo>、ゲイリー・バーデン<Vo>…それぞれのシンガーの個性を生かした楽曲群が見事な作品です。
そして各曲の特徴に合わせたマイケル・シェンカー<G>のギター・プレイですね。
楽曲そのものが訴えかけてくような説得力のあるフレーズが満載です。
RAINBOWの「Tarot Woman」を思わせる「Calling Baal」をトニー・カレイ<Key>が弾き、そのままつながる「A King Has Gone」の布陣がトニー、ボブ・デイズリー<B>、ボビー・ロンディネリ<Ds>というシチュエーションも熱い。
そして歌うのがマイケル・キスクですからね。
これは興奮します。
音域によってゲイリーとロニーが歌い分ける「The Universe」も見事でした。
「Long Long Road」「Wrecking Ball」「London Calling」など、親しみやすいメロディを備えたナンバーが多いのも『UNIVERSAL』の魅力です。
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