スウェーデンのテクニカル・デス・メタル・バンド、MESHUGGAHが9作目『IMMUTABLE』を2022年4月1日にリリースしました。
かなり刺激的な作品ですので、本記事でおすすめします。
よく褒め言葉で「変態」と言われるMESHUGGAHですが、彼らの音楽性には以下のような特徴があります。
- 変拍子
- 予測不可
- 意味不明(いい意味で)
- 訳が分からない(これもいい意味で)
- ズレてる(もちろん、これもいい意味で)
- 中毒性が高い
この『IMMUTABLE』もハマり度の高い傑作。
独特のサウンドが繰り広げられています。
1曲スキップしてしまうとテンションが途切れてしまうので、最初から最後まで通しで聴くことをおすすめします。
ということで、全曲必聴ですので、各曲の特徴を紹介していきます。
またイェンス・キッドマン<Vo>のグロウルが聴きやすいのも大きな魅力ですね。
耳に優しいグロウルです。
『IMMUTABLE』の収録曲
■MESHUGGAH/IMMUTABLE (2022年)
- Broken Cog
- The Abysmal Eye
- Light The Shortening Fuse
- Phantoms
- Ligature Marks
- God He Sees In Mirrors
- They Move Below
- Kaleidoscope
- Black Cathedral
- I Am That Thirst
- The Faultless
- Armies Of The Preposterous
- Past Tense
メンバー
- イェンス・キッドマン<Vo>
- マルテン・ハグストローム<G>
- フレドリック・トーデンダル<G>
- ディック・ロウグレン<B>
- トーマス・ハーケ<Ds>
収録曲のレビュー
レビュー内に記載されている時間は、曲をフル再生した場合の表記です。
1. Broken Cog
全身が叩きつけられるような重みのあるサウンドと独特のリズム・パターンでスタート。
いきなりフルボッコされるといった感じです。
00:33から不穏なフレーズが重なり、イェンス・キッドマン<Vo>の語り系のヴォーカルが入ってきます。
何かをため込んだような感じで「いつか爆発しそう」な雰囲気がまたいい。
03:18からさらにミステリアスに。
ヘヴィで厚みのあるサウンドに劇的さが増していきます。
04:25からイェンスのグロウルが炸裂。
このままいくかと思ったらまた語り系に戻り、次の鋭角的な「The Abysmal Eye」につながっていきます。
「The Abysmal Eye」への序章ともとれます。
2. The Abysmal Eye
鋭いギター・リフとバスドラの連打を軸として進行。
ズシンズシン響いてきて最高にエキサイティングです。
00:37から被さるミステリアスなフレーズもいいスパイスですね。
イェンスのグロウルも、アグレッシヴかつテクニカルなサウンドと見事に同化しています。
やはり耳に優しいです。
03:13からはギター・ソロ。
スリリングなフレーズが04:00まで続きます。
3. Light The Shortening Fuse
「Broken Cog」のようなノックアウト系の出だしがまず圧巻。
変則的かつ厚みのある音像に「おー!」となります。
- 00:19~ 「The Abysmal Eye」で聴かれたようなミステリアスなフレーズが重なる
- 00:38~ イェンスのグロウルが入って本編。本編も予測不可でもう何がなんだか状態。でもハマる
…といった流れです。
02:33からはドラマティックな要素が加わり、さらに深みが増していきます。
鋭角的でフェイントをかけた音像に浮遊感を加味させるアプローチが秀逸です。
4. Phantoms
ザクザクとリフが刻まれ、リズムは超変則的。
つかみどころのない曲調にイェンスのグロウルが染みこんでいきます。
01:09からの毒性のあるフレーズが印象的。
ヘヴィなリフを軸に進行していく中で何度か放たれます。
02:54でいったんトーマス・ハーケ<Ds>のドラムが止まり、03:02から攻撃再開するスタイルもいいアクセント。
そして徐々に毒性フレーズが強調されていきます。
ピタッと止まるエンディングがまた刺激的。
5. Ligature Marks
スローな曲調。
ヘヴィなリフに被さるメロディックなギター・フレーズ(00:25~)がとても印象的。
1つの音が伸びながら展開していき、派手さはないのですが、ゆっくりと体に染みこんでくる感じです。
02:59~、04:15~の旋律もそうですね。
「Phantoms」までに聴かれたギターのメロディとは異なった雰囲気が出ていて面白い。
ギターのメロディがジワジワくるナンバーです。
6. God He Sees In Mirrors
出だしから変拍子炸裂しまくりです。
「何なんだこれは」状態です。
意表を突きながら暴れまくるトーマスのドラムが光ります。
そしてイェンスのグロウルも変則的な曲調とちゃんと呼応。
見事です。
02:51からのギター・ソロも面白い。
魔力のあるフレーズが畳みかけてきて圧巻です。
04:38からのギター・フレーズも浮遊感があって心地良いですし、歪んだ音をしばらく残すエンディングも素晴らしいです。
7. They Move Below
9分半のインストゥルメンタル。
以下の流れで進行します。
- 00:00~ 静かな感じ
- 02:24~ ヘヴィで変則的な演奏へ
- 02:48~ ミステリアスなギターが重なり始める。以降はメロディックなフレーズを絡めながら展開
「独特なリズム・パターンだなあ」と感心していると印象的なギター・フレーズが入ってきます。
要所要所にインパクトのある旋律を組み込ませる構成が秀逸です。
引き込まれっぱなしの9分半。
長さを感じさせないインストです。
エンディングは「God He Sees In Mirrors」同様、やや不気味な音を伸ばすスタイルです。
8. Kaleidoscope
フェイントをかけながらヘヴィなリフが刻まれていきます。
十分テクニカルなのですが「MESHUGGAHにしては意外と普通」と思ってしまうのが不思議。
01:45からのギター・ソロがまた面白い。
曲調と合ってないようなフレーズともとれるのですが「もう何でもあり」に感じてしまいます。
このあたりもMESHUGGAHの毒性ですね。
9. Black Cathedral
ノイジーでラウドなギターが鳴り続ける2分間。
ピタッと止まって次の「I Am That Thirst」が始まる流れがエキサイティングなので「I Am That Thirst」とセットで楽しみましょう。
10. I Am That Thirst
ややスローな曲調+変則的アプローチの曲。
要所要所で放たれるメロディックなギター・フレーズが素晴らしいです。
00:13~、01:08~、01:49~、02:45~の旋律なんかがそうですね。
イェンスのグロウル→メロディックなギター・フレーズの流れが光るナンバーです。
そしてバックでは変拍子炸裂。
03:45からさらにズレはじめます。
以降は「もう訳が分からなくて、ついていけない」状態ですが、これがまた快感。
11. The Faultless
爆発力のあるサウンドにミステリアスなフレーズが重なる出だしがかっこいいです。
重厚な音像とイェンスのアグレッシヴさを前面に出したパフォーマンスが見事にマッチ。
迫力満点です。
02:39からのギター・ソロも面白い。
突き刺さるようなフレーズが強烈です。
03:38からのイェンスの感情を抑え込んだような唱法も、曲の前半での攻撃的パフォーマンスと対照的でいいアクセントになっています。
メロディックなフレーズを前面に出しつつエンディングに向かう04:07からの構成もナイスです。
12. Armies Of The Preposterous
ドリル戦車が突き進むようなイメージです。
アグレッシヴな音像の中でイェンスのグロウルが炸裂。
迫力満点です。
ヘヴィでシャープなアプローチが強めの展開で進んでいきますが、03:52からメロディックなギターが前面に出始めます。
前半が攻撃的なので、ここの旋律はより一層際立ちます。
13. Past Tense
暗くて不気味、ちょっとブルージーな感じのインストゥルメンタル。
ずっとこの雰囲気で進んでいきます。
6分弱の長さですが、これまでの収録曲が濃密で刺激的であることを考慮すれば、余韻に浸るのに適度なボリュームです。
総評
MESHUGGAHの『IMMUTABLE』の聴きどころを紹介しました。
以下がポイントとして挙げられます。
- フェイントをかけまくった曲調
- へヴィで厚みのあるサウンド
- イェンス・キッドマン<Vo>の耳に優しいグロウル。ブルータルすぎず、軽すぎず
- 要所要所に印象的なメロディックなフレーズを重ねるギターが秀逸
一聴した時には「何だこれは?」状態。
複雑怪奇な曲展開なため、一度聴いただけでは全体像をつかむことは不可能。
で、その後、気になって仕方がなくなり、何度も聴いてしまう。
そんな中毒性があります。
内容が気になって何度も何度も観てしまう難解な映画と同じような感じですね。
相変わらず深い。
これまでのMESHUGGAHの作品と同様、『IMMUTABLE』も聴けば聴くほど新たな発見があります。
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