英国のMAGNUMが22作目『THE MONSTER ROARS』を2022年1月14日にリリースしました。
傑作ですので、この記事でおすすめします。
下記がポイントとなります。
- これまでどおりトニー・クラーキン<G>が全曲作曲、抜群のソングライティング
- ボブ・カトレイ<Vo>の表現力豊かな歌唱は健在
- 魅力的な歌メロ、泣きのギター・フレーズが満載
- 劇的アプローチもみられ、曲によっては初期の雰囲気も
- ベースは前作『THE SERPENT RINGS』(2020年)に引き続きデニス・ワード<B>
- いい楽曲ばっかり、音質も良い
おすすめ曲を挙げながら、聴きどころを紹介していきます。
『THE MONSTER ROARS』の収録曲とおすすめ曲
以下の太字の10曲がおすすめです。
■MAGNUM/THE MONSTER ROARS (2022年)
- The Monster Roars
- Remember
- All You Believe In
- I Won’t Let You Down
- The Present Not The Past
- No Steppin’ Stones
- That Freedom Word
- Your Blood Is Violence
- Walk The Silent Hours
- The Day After The Night Before
- Come Holy Men
- Can’t Buy Yourself A Heaven
メンバー
- ボブ・カトレイ<Vo>
- トニー・クラーキン<G>
- デニス・ワード<B>
- リー・モリス<Ds>
- リック・ベントン<Key>
おすすめ曲のレビュー
レビュー内に記載されている時間は、曲をフル再生した場合の表記です。
1. The Monster Roars
切ないピアノとボブ・カトレイ<Vo>のヴォーカルでスタート。
そしてトニー・クラーキン<G>のハードなギターが被さって曲が進行していきます。
曲自体はスローですが濃密な展開。
曲本編になるとボブのヴォーカルがパワフルになっていき、中盤ではトニーの泣きのギターが早くも登場します。
程良くドラマティックに楽曲を演出するキーボードもナイス。
スローでありながらも力強さ、美しさ、劇的さが同居した抜群のオープニングです。
2. Remember
2曲目で少し加速。
ポップな感覚が前面に出ていて、ボブの表現力豊かなヴォーカルが乗ります。
02:55からキーボードを駆使したドラマティックな演奏が聴けますが、これがまた素晴らしい。
過去にトビアス・サメット<Vo:EDGUY, TOMIAS SAMMET’S AVANTASIA>が参加した「Lost On The Raod To Eternity」(2018年20作目『LOST ON THE ROAD TO ETERNITY』収録)では中盤の劇的アプローチが最高でしたが、あれに似た感動がここで味わえます。
曲が終わるのかと思いきやそのままでは終わらず、ピアノのテクニカルなフレーズが登場。
これがまたスリリングです。
3. All You Believe In
「Remember」が終わり切る前に、この「All You Believe In」が始まります。
ピアノとハードなギターが主導で進むスローで劇的なナンバー。
初期の雰囲気も感じられ、1982年の名盤3rd『CHASE THE DRAGON』の「Secred Hour」(テクニカルに移行する前の前半パート)を思わせます。
美しいピアノ、ドラマティックな曲調、ボブの厳かな歌メロ。
これだけでも十分なのですが、さらに03:28からトニーが泣きのギター・ソロで畳みかけてくるのだからもうたまらない。
「感動の嵐」という言葉がぴったりの曲です。
4. I Won’t Let You Down
先行公開されていた曲です。
曲が進むにつれて高揚感が増していくボブの歌メロが秀逸で、特に曲のタイトルを繰り返すキャッチーなサビの展開が素晴らしいです。
聴きやすく親しみのあるメロディが体に染みこんできます。
サビのバックでさりげない感じで後押ししてくるキーボードがいいアクセントになっています。
5. The Present Not The Past
ややシリアスな雰囲気が漂う曲。
静かなパートとハードなパートがありますが、ムードに応じて歌い分けるボブのヴォーカルが絶品です。
本格的なバンド演奏をバックに歌う箇所では、力強さを前面に出しながらもメロディアスなアプローチをしっかりと維持。
見事です。
背後で鳴り響くピアノと所々に被さってくるコーラスもいいアクセントになっています。
03:30からのストリングスが入ってくるところもドキッとします。
6. No Steppin’ Stones
こちらも先行公開されていました。
ホーンセクションを巧みに取り入れたポジティヴなナンバー。
リズミカルな曲調が心地良く、ゴージャスなサビがまた気分を盛り上げてくれるので、聴いていて楽しいです。
02:33のミステリアスなフレーズからトニーのソロに移行する中盤の演奏パートにもフックがあります。
7. That Freedom Word
最初のトニーのギターの泣きメロでやられます。
そして切なく美しいボブの歌が入ってきて、曲が進行していきます。
エレクトロリックなパートをバックに歌う情熱的なボブのヴォーカル
→トニーの泣きのギター
これを軸に展開していくのですが、02:45からはドラマティックさも加味したアプローチも登場します。
このあたりのアクセントのつけ方が絶妙です。
9. Walk The Silent Hours
温かい雰囲気に包まれたバラード。
「That Freedom Word」同様、出だしでノックアウトです。
切ないピアノが流れてくるのですが、ここですでにグッときます。
曲自体は、優しさあふれるボブのヴォーカル主導。
ソフトな歌唱で進み、サビではエモーショナルに。
この強弱のバランスが本当にうまいです。
メロディそのものも感動的で、後半03:20からはストリングスも登場してきて徐々に劇的になっていきます。
トニーのソングライティングのセンス、ボブの歌のうまさを再認識できる素晴らしいバラードです。
10. The Day After The Night Before
バラードの後はグルーヴ感あふれるナンバー。
哀愁味を帯びたミステリアスな曲調に爽快感のある歌メロが乗ります。
両極端ともいえるこの2要素が絶妙に絡み合った曲展開が秀逸です。
02:18からはキーボードを前面に出したインパクトのあるフレーズも登場。
バラード「Walk The Silent Hours」の後に自然とつながる曲順です。
12. Can’t Buy Yourself A Heaven
ピアノとアコースティック・ギターをベースとした演奏をバックにボブのヴォーカルが乗り、スロー・テンポで進行していきます。
ドラマティックさは抑えめ。
自然体で歌うボブ、そして歌のないところに印象的なフレーズを組み込んでくるトニーのギター・プレイに脱帽です。
等身大のMAGNUM。
そんな感じです。
メンバーが身近に感じられるラスト・ナンバーでアルバムは幕を閉じます。
総評
MAGNUMの22作目『THE MONSTER ROARS』を紹介しました。
MAGNUMの魅力の1つとして、ボブ・カトレイ<Vo>の包容力のある歌唱、トニー・クラーキン<G>の泣きのギターが挙げられますが、そういった持ち味が見事に発揮された力作です。
そしてもう1つは劇的なアプローチ。
2018年にトビアス・サメットと共演した「Lost On The Road To Eternity」(2018年20作目『LOST ON THE ROAD TO ETERNITY』収録)などにみられるようにドラマティックな演奏もピカイチのMAGNUM。
こういった感動を『THE MONSTER ROARS』で味わえるのも大きな魅力です。
前作『THE SERPENT RINGS』(2020年)に引き続きプレイしているデニス・ワード<B>のベースも骨太で見事。
サウンドにも厚みがあります。
「All You Believe In」のように、初期の傑作、1982年3rd『CHASE THE DRAGON』の雰囲気が味わえる曲があるのもうれしい。
『THE MONSTER ROARS』は、バンドの魅力を最高の音質で味わうことのできる傑作です。
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