MACHINE HEADが10作目『OF KING AND CROWN』を2022年8月26日にリリースしました。
劇的でアグレッシヴな強力作品ですので、おすすめ曲を挙げながら聴きどころを紹介していきます。
『OF KING AND CROWN』は10分の大作「Slaughter The Martyr」で幕を開けます。
10分台の曲を1曲目に持ってくるのは2007年6作目『THE BLACKENING』以来。
さあ今回MACHINE HEADはどんな曲で攻めてくるか。
『OF KING AND CROWN』の収録曲とおすすめ曲
以下の太字の9曲がおすすめです。
■MACHINE HEAD/OF KING AND CROWN (2022年)
- Slaughter The Martyr
- Choke On The Ashes Of Your Hate
- Become The Firestorm
- Overdose
- My Hands Are Empty
- Unhallowed
- Assimilate
- Kill Thy Enemies
- No Gods, No Masters
- Bloodshot
- Rotten
- Terminus
- Arrows In Words From The Sky
メンバー
- ロブ・フリン<Vo/G>
- ヴァツワフ“ヴォッグ”キルティカ<G>
- ジャレッド・マクエイカーン<B/Vo>
- マット・アルストン<Ds>…クレジットのみ。アルバムでプレイしているのは元ANIMALS AS LEADERSのNavene Koperweis
おすすめ曲のレビュー
レビュー内に記載されている時間は、曲をフル再生した場合の表記です。
1. Slaughter The Martyr
10分の長尺ナンバーです。
大作映画のオープニング・クレジットを観ているかのよう。
00:29からのロブ・フリン<Vo/G>の少しずつトーンを上げていく唱法がこれからの展開への期待を膨らませます。
02:13からのハーモニーが加わった歌メロも美しい。
そして03:08からエレクトリックな演奏へ。
ヘヴィなリフに一瞬メロディアスかつヒステリックなフレーズを乗せてくる03:14なんかはMACHINE HEADならではですね。
03:33でのロブのスクリームも迫力満点です。
以降は、バストラ連打を軸としながらアグレッシヴなサウンドを展開。
ただし疾走はせず。
莫大なエネルギーをセーブしながら徐々に放出といった感じです。
歌メロは04:47からが魅力的。
重厚な音の中でのメロディアスなアプローチがキラリと光ります。
あとは07:17からのギター・ソロですね。
キンキンしたフレーズが緊迫感のある音像に合っています。
約10分の曲なので「Clenching The Fists Of Dissent」(2007年6作目『THE BLACKENING』収録)の前半のような突っ走りをみせるのかと思っていましたが、そうではありませんでした。
意外。
でもかっこいい。
そして濃い。
2. Choke On The Ashes Of Your Hate
スネアを叩きつけてアグレッシヴなギターが入る出だしからすごい。
圧倒されます。
突進力のあるナンバーで迫力満点。
キラー・チューンです。
00:03から早速MACHINE HEAD独特の攻め。
ヘヴィなギター・リフを刻みながらピコピコした音をちらつかせます。
以下の流れを核として突き進むのですが、これが最高にエキサイティング。
- 00:48~ ロブが「Cho~ke!」「on the ashes of your」「ha~te!」と最初と最後を伸ばしながら曲名をコール
- 00:54~ ロブがいったんパワーをセーブ。そして徐々にテンションを上げる
- 01:00~ 疾走
グルーヴ感を前面に出しつつ、バックではピコピコの01:57からの展開もMACHINE HEAD節ですね。
ギター・ソロもかっこいいです。
02:27からはヒステリック。
そして02:43から曲が疾走し、いい感じにメロディックな要素が加わります。
畳みかけて目を覚ますような終わり方(04:00~)も圧巻。
3. Become The Firestorm
「Choke On The Ashes Of Your Hate」のアグレッシヴさを継承。
さらに突進。
ギターはメロディック。
そんなスタートを切ります。
こちらも強力。
00:41からのヴォーカルはジャレッド・マクエイカーンでしょうか。
「Become the firestorm!」と力強くコールするロブとコントラストが出ていて耳に残る歌メロです。
01:42からスローになり、ピコピコなギターを絡めながらグルーヴィに展開。
厚みのある音像でズシンズシンと体に刻み込まれます。
02:49からのギターも響いてきますね。
それまでのヘヴィなアプローチとは対照的なので尚更…かと思ったら03:19から疾走。
今度はエネルギッシュに。
すごいスリリングな演奏パートです。
5. My Hands Are Empty
「Catharsis」(2018年9作目『CATHARSIS』収録)を思わせます。
- 00:00~ ダークでミステリアス。壮大
- 01:09~ ヘヴィなサウンド。シャープさもうまく盛り込ませる
この流れを繰り返しながら進んでいきます。
スピード・チューンではないのですが、ダイナミックさと音の深さを維持しているのはさすがです。
03:25から勢いが増すところもいいアクセントで、メロディックなギター・フレーズが快感。
静と動の構成がすばらしいHMナンバーです。
6. Unhallowed
「My Hands Are Empty」の静の部分を踏襲してスタート。
そして00:16から「Locust」(2011年7作目『UNTO THE LOCUST』収録)っぽいリフを軸にヘヴィに展開していきます。
ガッツがあって心地良いです。
「My Hands Are Empty」は静と動の対照描写が秀逸でしたが、この「Unhallowed」では以下の流れを踏んで徐々に熱量を上げていきます。
- 00:35~ 叙情的
- 00:52~ シャープかつメロディックなギターをバックにロブがムードのある歌唱を披露
- 01:44~ 演奏もロブの歌もアグレッシヴに。「Locust」系のリフ
03:33からSEを組み込ませるアレンジもクール。
さらに03:41から「あ、来るな」と思わせてその後疾走します。
加速後は、男臭く伸びのあるロブのヴォーカルとメロディックなギターが見事。
ロブが歌い終わってからのギター・ソロ(04:43~)もダイナミックで充実してますね。
以下の流れにも引き込まれます。
- 05:15~ 「ウィーン!」なギター
- 05:19~ メロディックな旋律
- 05:25~ 叙情的パートに戻る。「Locust」系のリフ再び
8. Kill Thy Enemies
SE「Assimilate」からつながってスタート。
ゆったりとしたテンポで進む骨太重金属ナンバーです。
ロブのヴォーカルはブルータル。
ギターはヘヴィに刻みながらもちょっとメロディアスな要素を漂わせます。
00:38~が特に印象的。
ヘヴィさ8割、メロディアスさ2割といった感じで、なんともいえない快感なサウンドなのです。
歌メロが変わる02:25からもいいですね。
少し「Ten Ton Hammer」(1997年2nd『THE MORE THINGS CHANGE…』収録)っぽいのがまたうれしい。
それまでのロブの唱法とは対照的なのが面白いです。
02:53からのギター・ソロも染みてきます。
曲の前半は重さ重視でしたが、ソロはメロディアスさが前面に出ます。
03:43からのフレーズも快感です。
9. No Gods, No Masters
ミステリアスな雰囲気とゆがんだようなロブの歌が印象的。
陰鬱なナンバー…かと思ったら00:51からアグレッシヴに。
奇襲攻撃を食らったような感じです。
そして「これは来るぞ!」と思わせるシャープな攻めを展開し、01:04からドコドコ進みます。
01:17からのサビはキャッチーで壮大。
ヘヴィな音像の中でロブの雄々しく太い声が広がります。
01:30でピタッと止まって再び静かになるところも見事。
この「突然」がいいんですよね。
静と動の切り替えが秀逸です。
10. Bloodshot
始まりの「ウィーン!」「ウィーン!」なギターが最高です。
そしてロブが「Bloodshot!」「Bloodshot!」と曲のタイトルをパワフルにコール。
以下の流れを軸に曲が勢いよく進行していきます。
- ロブのアグレッシヴなヴォーカル+吐き捨て
- 「ウィーン!」「ウィーン!」なギター
- 「Bloodshot!」「Bloodshot!」と連呼
バスドラの連打を主軸としたアグレッシヴな中間部の演奏(02:12~)や、03:01からのギター・ソロもエキサイティング。
ここでもまた「ウィーン!」「ウィーン!」しています。
ドラムの叩きつけで締めくくる構成も力強さが前面に出ていて最高です。
11. Rotten
「Bloodshot」に続いてこの「Rotten」もアグレッシヴ。
最初のパワフルなドラム、ヘヴィ+ピコピコなギター、ロブのブルータルなヴォーカルがまずかっこいいです。
以降は00:44からの疾走パートやスロー・パートを巧みに混ぜながら進行していきます。
01:57からの流れもすばらしい。
- 01:57~ ロブの咆哮(SOULFLYのマックス・カヴァレラ<Vo/G>を想起)と共にヘヴィな演奏へ
- 02:24~ ロブのミステリアスかつメロディアスなヴォーカル
- 02:37~ メロディアスなギターが少しずつ前面に
- 02:41~ ダイナミックなギター・ソロ
邪悪さとキャッチーさが増す03:55からのアレンジも絶品です。
そのままフェードアウトして曲は終わります。
総評
MACHINE HEADの『OF KING AND CROWN』。
重厚でダイナミックなサウンドを維持し、小曲を随所に配置する作風からもスケールの大きさが感じとれます。
壮大なグルーヴ・メタル。
そんな作品です。
「規格外のエネルギーを全部出し切らずに徐々に放出」といったイメージの10分の大作「Slaughter The Martyr」で幕を開け、次の「Choke On The Ashes Of Your Hate」で突進。
この流れは圧巻です。
「Slaughter The Martyr」で疾走しなかっただけに、余計「Choke On The Ashes Of Your Hate」のスピード感が際立ちます。
劇的要素を含む「My Hands Are Empty」「Unhallowed」を挟み「Bloodshot」「Rotten」で加速する構成も見事。
ラストのミステリアスな「Arrows In Words From The Sky」がスローのままエンディングを迎えるので、減速感が出ますが、全体的にみればかなり満足度の高い作品です。
「Slaughter The Martyr」から「Rotten」の流れが特に充実。
激プッシュは「Choke On The Ashes Of Your Hate」です。
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