KREATORの15作目『HATE UBER ALLES』が2022年6月10日にリリースされました。
暴虐性に満ちたアグレッシヴ・チューンに加え、IRON MAIDEN風のアプローチを展開するナンバーやKREATOR史上初の女性シンガー参加曲も登場する意欲作。
すごいアルバムです。
おすすめ曲を挙げながら、各曲の特徴を紹介していきます。
『HATE UBER ALLES』の収録曲とおすすめ曲
以下の太字の10曲がおすすめです。
■KREATOR/HATE UBER ALLES (2022年)
- Sergio Corbucci Is Dead
- Hate Uber Alles
- Killer Of Jesus
- Crush The Tyrants
- Strongest Of The Strong
- Become Immortal
- Conquer And Destroy
- Midnight Sun
- Demonic Future
- Pride Comes Before The Fall
- Dying Planet
メンバー
- ミレ・ペトロッツァ<Vo/G>
- サミ・ウリ・シルニヨ<G>
- フレデリク・ルクレール<B>
- ヴェンター<Ds>
『HATE UBER ALLES』は、元DRAGONFORCEのフレデリク・ルクレール<B>加入後初の作品となります。
おすすめ曲のレビュー
レビュー内に記載されている時間は、曲をフル再生した場合の表記です。
1. Sergio Corbucci Is Dead
前作『GODS OF VIOLENCE』(2017年)同様、イントロでスタートです。
『GODS OF VIOLENCE』は、軍隊のマーチのような序曲「Apocalypticon」からスラッシュ・チューン「World War Now」へと流れていきましたが、この「Sergio Corbucci Is Dead」は西部劇を彷彿。
「Apocalypticon」とは対照的なのがまた面白い。
夕日のようなイメージもありますね。
物悲しく劇的な雰囲気を漂わせながら、アグレッシヴな「Hate Uber Alles」へと突入していきます。
2. Hate Uber Alles
脳天直撃系のスタートを切り、ミレ・ペトロッツァ<Vo/G>のヒステリックなシャウトが入る00:08でガッツポーズ。
本編(00:17~)に入ると、ミレは吐き捨てるような唱法で目まぐるしく突き進みます。
そして00:35からサビに移行するのですが、唐突に入る感じがまたKREATORらしい。
勇ましくパワフルですね。
サビが終わると同時に入る00:52からのギターのフレーズも刺激的です。
爆発音のようなサウンドとともにメロディックな演奏パートに突入していく01:37からの流れも最高ですし、ミレのシャウトに重なりながら始まる02:12からのギター・ソロも切れ味抜群。
ミレの伸びのある叫びが鳴り響きながら曲はエンディングを迎え、次の「Killer Of Jesus」につながっていきます。
プッツン感満載のスラッシュ・チューンです。
3. Killer Of Jesus
「Hate Uber Alles」でのミレの叫びが止まぬうちに迫力ある音が迫ってきて激走開始。
攻撃を緩めません。
01:43からテンポを落として勇壮なコーラスを登場させるアレンジも上手。
ミレのだみ声ともうまく絡み合ってます。
02:38からギター・ソロ。
エモーショナルに展開しながら、02:56から徐々にヒート・アップしていきます。
そして03:39から再び加速。
「キーン」とヒステリックなギターを被せる03:46からの畳みかけも圧巻です。
KREATORはミレの狂気じみた唱法が魅力の1つですが、ギターも同様のアプローチをみせてくれます。
4. Crush The Tyrants
「Killer Of Jesus」からさらに続きます。
こちらはヴェンター<Ds>の切迫感のあるドラムとともに始まるスローでグルーヴィなナンバー。
ヘヴィなリフがズシンズシンと響いてきます。
ミレのヴォーカルも力強いです。
01:41で「crush the tyrants」とミレが魂から歌い上げ、その後にメロディックなギターが入る展開は、思わず拳を握りたくなりますね。
02:26からのギター・ソロも熱い。
02:48からのメロディアスな旋律は特に気持ちがいいです。
曲が終わり、風のSEが入りますが、それが鳴り止まぬまま次の「Strongest Of The Strong」が始まります。
5. Strongest Of The Strong
重厚かつメロディックな00:26までの演奏がまずかっこいい。
その後、何かをためこんでいるような雰囲気を漂わせるミレのヴォーカルを軸に進行していきます。
そしてサビ(00:46~)は曲の表題どおり超パワフルで、しかもキャッチー。
さらにバックで鳴り響くメロディアスなギターが絶妙に絡み合うというドキドキの展開です。
エネルギッシュなギター・ソロの中でみせる02:51でのヒステリックなフレーズもいいスパイス。
03:38でエンディングと思わせて(「Hate Uber Alles」の終わり方に似てます)、攻撃再開する構成もひねりが効いています(ミレの不敵な笑いがまた最高)。
6. Become Immortal
出だしがもろに「Iron Maiden」(1980年1st『IRON MAIDEN』収録)でニヤリ。
で、曲自体もIRON MAIDEN風。
要所要所に勇ましいコーラスを絡めたメタル・チューンです。
そこにミレの独自の歌が乗るので、狂気度と雄々しさが増したIRON MAIDENといった感じ。
英国風で湿り気のあるギター・ソロに移るまでの以下の流れも最高です。
- 02:07~ フレデリク・ルクレール<B>のはじけるベース
- 02:18~ 勇壮なコーラス
- 02:43~ ギター・ソロへ
7. Conquer And Destroy
引き続きIRON MAIDENっぽいギターでスタート。
このままいくかと思ったら00:36からミレのかけ声と共に疾走。
再びプッツンします。
メロディックさも維持しながら突進する演奏とミレのパワフルな歌が見事に呼応。
以下の流れも最高です。
- 01:26~ ヴェンターのドラムの連打
- 01:28~ ヒステリックで熱いギター・ソロ
- 01:39~ ミレ、熱唱再開
02:37からはホットなギター・ソロ再び。
ミレのシャウトに重なる形でスタートするアプローチがまたエキサイティングです。
あと面白いのは03:05からですね。
浮遊感のあるヴォーカルに「何、これ?」状態。
そして03:24から勇壮に。
意表をついた見事な構成です。
最後はヴェンターのドラムの連打。
引き締まります。
8. Midnight Sun
KREATOR史上初、女性シンガー参加。
ドイツの女性ポップ・シンガー、ソフィア・ポルタネットが歌っています。
ミレによると、この「Midnight Sun」はサイコホラー映画『ミッドサン』(2019年)にインスパイアされたナンバーとのことですが、ホラー要素はそんなにありません。
曲自体はシャープなリフとともにアグレッシヴに展開。
「どこにソフィアが出るのだろう」と心配してしまう激しさで、ミレのため込み&吐き捨て系のヴォーカルで進んでいきます。
ソフィアが登場するのは00:37から。
「おお!」となります。
神秘的で美しい声にちょっとエコーがかかり、浮遊感のある歌メロが展開。
そして00:53からはダイナミックなかけ声が入ってきます。
最高の流れです。
ミレとは対照的な唱法でありながら、ちゃんと曲調にハマってるのがまた面白い。
02:25からのメロディックなギター・ソロもミステリアスな音像の中で心地良く響き渡ります。
狂気度が増していく03:19からの展開にもゾクゾクです。
9. Demonic Future
「Midnight Sun」からつながる形でスタート。
ミレのかけ声と共に突進します。
大迫力。
ハイエナジーなミレのヴォーカルのバックでメロディックに鳴り続けるギターがかっこいい…と思っていたら01:15からはヒステリックな音。
攻めが多彩です。
02:10からテンポを落としますが、ここからが面白い。
- 02:20~ 鋭いリフが刻まれ、メロディアスなフレーズ
- 03:02~ 英国風の旋律
- 03:22~ 狂気度が少しずつ増していく
「Become Immortal」のようなアプローチが楽しめます。
10. Pride Comes Before The Fall
メルヘンチックでミステリアスなイントロに歪みのあるミレの歌、そこにギターが被さってスタート。
ヴェンターのバスドラ連打を軸に進んでいきますが、この「Pride Comes Before The Fall」は以下のパートが特にかっこいいです。
- 02:42~ スローダウン、メロディックなギター
- 03:02~ ドラマティックで神聖な雰囲気
- 03:20~ 突然疾走(この唐突感が最高)、エネルギッシュなギター・ソロ、音量低めのミレのシャウト(←ここではちょうどいい力加減)
ソロが終わってからドラムの連打をちょろっと入れる演出もニクいです。
ヒステリックなギター・ソロと共にエンディングに向かう04:32からの展開も絶品。
総評
KREATORの『HATE UBER ALLES』の聴きどころを紹介しました。
以下が特徴として挙げられます。
- 「Sergio Corbucci Is Dead」から「Strongest Of The Strong」までの畳みかけが絶品。再生止められない
- 「Become Immortal」と「Demonic Future」にはIRON MAIDENを思わせるアプローチも
- 「Midnight Sun」は、KREATOR史上初の女性シンガー参加曲
2012年13作目『PHANTOM ANTICHRIST』以降は、序曲~スラッシュ・ナンバーの流れを踏襲していますが、今回の西部劇風の幕開けも面白い。
「Midnight Sun」も斬新でした。
『HATE UBER ALLES』は進化し続けるKREATORを実感できる傑作です。
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