EXODUS『PERSONA NON GRATA』

EXODUSが通算11作目『PERSONA NON GRATA』を2021年11月19日にリリースしました。

2014年の『BLOOD IN, BLOOD OUT』以来、7年ぶりのスタジオ・アルバムです。

『BLOOD IN, BLOOD OUT』同様、ヴォーカルはスティーヴ“ゼトロ”スーザ<Vo>。

強力作ですので、本記事でおすすめします。

『PERSONA NON GRATA』には下記のような特徴があります。

  • 速い曲だけでなく、重い曲、グルーヴ感重視の曲もある
  • バランス良い曲順配置はSLAYERの1990年5th『SEASONS IN THE ABYSS』を思わせる
  • 作曲は全12曲中11曲がゲイリー・ホルト<G>、1曲がリー・アルタス<G>
  • ザクザクしたリフとスリリングなソロを聴かせるギターにドキドキ
  • スティーヴ“ゼトロ”スーザ<Vo>のシャウトがキレッキレ
  • 要所要所に入ってくるかけ声がかっこいい

オープニングの「Persona Non Grata」からラストの「Antiseed」までアクセントの付け方が絶妙ですので、全曲聴くことをおすすめします。

『PERSONA NON GRATA』の収録曲

■EXODUS/PERSONA NON GRATA (2021年)

  1. Persona Non Grata
  2. R.E.M.F.
  3. Slipping Into Madness
  4. Elitist
  5. Prescribing Horror
  6. The Beatings Will Continue (Until Morale Improves)
  7. The Years Of Death And Dying
  8. Clickbait
  9. Cosa Del Pantano
  10. Lunatic-Liar-Lord
  11. The Fires Of Division
  12. Antiseed

メンバー

  • スティーヴ“ゼトロ”スーザ<Vo>
  • ゲイリー・ホルト<G>
  • リー・アルタス<G>
  • ジャック・ギブソン<B>
  • トム・ハンティング<Ds>

収録曲のレビュー

レビュー内に記載されている時間は、曲をフル再生した場合の表記です。

1. Persona Non Grata

7分半のタイトル曲。

爆発力のある始まり方がインパクト抜群、ギターとドラムが特にすごいです。

そこから突進し、スティーヴ“ゼトロ”スーザ<Vo>のヒステリックなシャウトが入り、これぞEXODUSという展開をみせます。

ゼトロのヴォーカルは狂気さも増して迫力があります。

力強いかけ声も挟み展開に飽きることがありません。

鋭いリフを刻みながらスリリングなギター・ソロ(03:42~)で攻めてくる構成も見事。

ゲイリー・ホルト<G>とリー・アルタス<G>、抜群のコンビネーションです。

EXODUSは7分台でも長さを感じさせない曲が多いですが、この「Persona Non Grata」もそう。

圧巻の7分半。

「あ、今回も(いい意味で)ヤバそうだな」と期待せずにはいられないオープニング・チューンです。

2. R.E.M.F.

鋭いリフが心地良く響いてくる疾走スラッシュ・チューン。

曲が進むにつれて、どんどんテンションが上がるゼトロのスクリームが最高です。

「ゼトロ、きてるな~」と思ったところに、01:45からハイテンションなギター・ソロに流れるのですが、この構成が絶品。

ソロが終わっても、すぐにヴォーカルに戻らず、演奏パートが続き爆走。
これもまた興奮を誘います。

3. Slipping Into Madness

2005年7th『SHOVEL HEADED KILL MACHINE』以来バンドでプレイしているリー・アルタス<G>作曲のアグレッシヴ・ナンバー。

EXODUSはかけ声のキメ方が絶妙ですが、この曲でもそう。
曲のタイトルを連呼するバックがパワフルで、ゼトロのシャウトと見事に呼応しています。

突進力のある演奏をバックにギター・ソロで攻めてくる構成(03:38~)も素晴らしいです。

終わったかと思わせてまた05:26から畳みかけるエンディングも圧巻。

4. Elitist

パワフルなドラムと鋭いギターによるオープニングにドキドキします。

骨太でザクザクした曲調をベースに進んでいき、ゼトロの独特なヴォーカルが乗るスタイル。

ここでもかっこいいかけ声が登場。
ゼトロのシャウトと絶妙に呼応しています。

ゼトロはここでは攻撃力を少し緩めたような感じ。

キャッチーな要素が強めに出ています。

02:03からのギター・ソロもスリリングでありながらメロディアス。

EXODUSの曲の中では「ノリノリ」と表現できる心地良いナンバーです。

5. Prescribing Horror

ダークなイントロに重いリフが被さって始まります。

スローなテンポで進むドラマティック・ナンバー。

ゼトロはこういった不穏なサウンドにも合います。
独特の唱法に邪悪さがにじみ出ていてかっこいいですし、曲のトーンに合わせて表現にアクセントを加えるあたりもうまいです。

静と動の展開を持たせて、赤ちゃんの泣き声のSE(04:21~)を入れる構成にもハッとさせられます。

ファスト・チューンでなくても、こういったヘヴィ・チューンでもかっこよくキメてくれます。

SLAYERでいえば「Dead Skin Mask」(1990年5th『SEASONS IN THE ABYSS』収録)のような曲です。

6. The Beatings Will Continue (Until Morale Improves)

インストの「Cosa Del Pantano」を除けば、アルバム収録曲の中では最短の約3分のナンバー。

スピード感満点のファスト・チューン。

スローな「Prescribing Horror」の後に疾走再開です。

ゼトロのハイテンションなシャウトが最高で、要所要所に登場するかけ声もフックがあります。

重くミステリアスな「Prescribing Horror」の後だけにインパクト抜群です。

続く「The Years Of Death and Dying」へと自然に流れていきます。

7. The Years Of Death And Dying

グルーヴ感あふれるナンバー。

1992年5th『FORCE OF HABIT』に通じるアプローチで、重厚なリフと弾けるような骨太ベース・サウンドが心地良いです。

ゼトロが歌うキャッチーなサビは独特ですし、その後ろでメロディアスに鳴り響くギターもインパクトがあります。

02:52からのギター・ソロでは、曲のテンポが加速。
アップ・テンポをベースにドキドキするようなフレーズで畳みかけてきます。

この辺のアクセントのかけ方もさすがです。

8. Clickbait

再びファスト・チューン。

「The Beatings Will Continue (Until Morale Improves)」の勢いがここで再び。

次の「Cosa Del Pantano」で一呼吸置くのですが、「その前にありったけのエネルギーを出しとけ」的な大迫力ナンバーです。

ゼトロのヴォーカル、バックのかけ声、ギター・ソロ、この3要素が見事に呼応。

攻めて攻めて攻めまくりといった感じのアグレッシヴ・チューンです。

10. Cosa Del Pantano

ブルージーで土臭い感じのアコースティック・ギターによるインスト。

激しい「Clickbait」の後だけに、ひと休み的な感じもありますが、同時に「次はどんな攻撃をしかけてくるだろうか」というワクワク感もあります。

圧巻の「Lunatic-Liar-Lord」につながっていきます。

10. Lunatic-Liar-Lord

アルバム収録曲の中でも最長となる約8分のナンバー。

「Cosa Del Pantano」の雰囲気を引き継ぎアコースティックのイントロでスタート。

そして、それをかき消しエレクトリック・パートへ。

最初は疾走し、ゼトロがヒステリックにシャウト。

02:04からはスロー・ダウンし重くヘヴィに攻めてきます。
02:43からは迫ってくるかのようなゼトロのヴォーカルが迫力満点です。

03:55から再びザクザク・リフで疾走しスリリングなギター・ソロへ。
インパクトのあるフレーズを放出しまくりで、このソロが終わる頃にはもう終盤。
あっという間です。

06:54で曲のタイトルが頼もしくコールされ、演奏がフェードアウト。
パーカッションの音が鳴り響く形で曲が終わります。

やはり8分の長尺でも全然ダレない。

EXODUS、すごいです。

11. The Fires Of Division

爆走ペースでスタートし、本編はグルーヴィ感重視で展開していきます。
そして、所々加速したりしてアクセントを持たせます。

ここでも、ゼトロのヴォーカルとバックのかけ声が見事に呼応。

01:54からのギター・ソロもインパクトがあり、飽きさせない楽曲展開です。

ヴォーカルと演奏で畳みかけてくるアプローチが本当にうまいです。

04:47から再び突っ走って力強く締めくくります。

12. Antiseed

ドラムとギターで刻む序盤の演奏(00:50~)がかっこいいです。

ブレイクを入れて、01:28からは疾走。
最後の最後まで攻めの姿勢を崩しません。

ゼトロはブルータルっぽいシャウトもみせます。

03:33からの演奏では、冒頭の刻みアプローチが登場
これがいいスパイスになっています。

そして、ゼトロのヒステリックなシャウトからギター・ソロ(04:07~)に以降するのですが、ここが絶品。
クライマックスに向けてメンバー全員がどんどん畳みかけてきます。

最後(06:09~)は力強く叩きつけるような演奏で締めくくります。

総評

速い曲だけでなく「Prescribing Horror」のような重い曲や、グルーヴィーな「The Years Of Death and Dying」もあり、様々な曲がバランス良く配置されたアルバムです。

アルバム全体にアクセントを持たせているという点では、SLAYER『SEASONS IN THE ABYSS』に通じるものがあります。

長尺の曲も全くダレず、どんどん引き込まれていきます。

演奏のテンションが高く、ゼトロのヴォーカルもキレ味抜群です。

ゼトロが復帰した2004年6th『TEMPO OF THE DAMNED』や再復帰した2014年10th『BLOOD IN, BLOOD OUT』も強力でしたが、『PERSONA NON GRATA』は2作を凌ぐクオリティ。

すさまじいエネルギーと緊張感に満ちた約60分です。

EXODUSの全キャリア、そしてスラッシュ・メタル・シーンにおいても名盤の1つとして位置付けられる作品です。

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