ALTER BRIDGEが7thフル『PAWNS & KINGS』を2022年10月14日にリリースしました。
すばらしいアルバムです。
- ミステリアスな幕開け
- 過去の曲を思わせるアプローチがあちこちに
- GUNS N’ ROSESあるいはSLASH FEATURING MYLES KENNEDY AND THE CONSPIRATORSっぽい曲あり
- ちょっと変な曲もあり
- ラストは緊張感を保ちながらもナチュラルな締めくくり
スリリングで意外性もあり、バラエティに富んだ内容です。
マイルズ・ケネディ<Vo/G>とマーク・トレモンティ<G/Vo>の歌合戦も楽しめます。
記事内にはALTER BRIDGEの過去のナンバーがいろいろ登場。
おすすめ曲を挙げながら『PAWNS & KINGS』の聴きどころを紹介していきます。
メンバー
- マイルズ・ケネディ<Vo/G>
- マーク・トレモンティ<G/Vo>
- ブライアン・マーシャル<B>
- スコット・フィリップス<Ds>
『PAWNS & KINGS』の収録曲とおすすめ曲
以下の太字の9曲がおすすめです。
■ALTER BRIDGE/PAWNS & KINGS (2022年)
- This Is War
- Dead Among The Living
- Silver Tongue
- Sin After Sin
- Stay
- Holiday
- Fable Of The Silent Son
- Season Of Promise
- Last Man Standing
- Pawns & Kings
おすすめ曲のレビュー内に記載されている時間は、曲をフル再生した場合の表記です。
1. This Is War
ミステリアスかつ神聖な雰囲気も漂わせるオープニング・ナンバー。
- 00:00~ スコット・フィリップス<Ds>の爆発力のあるドラムと共にスタート
- 00:20~ 鋭いギター・リフが刻まれる。マーク・トレモンティ<G/Vo>のプロジェクト、TREMONTIを想起
- 00:32~ マイルズ・ケネディ<Vo>の歌がスタート。00:37で声をひっくり返す唱法がインパクトあり(←これが何回か登場)
- 00:55~ いったん静な演奏になり、マイルズはムードのある歌い方
- 01:07~ サビ。中音域でマイルズの声が伸びる。バックでのメロディックなギターも◎
- 02:29~ 鋭角的なギターが前面に
- 02:47~ 緊迫感のあるギター・ソロ
- 03:47~ サウンドに劇的さが増しエンディングへ
これまでのALTER BRIDGEとは趣が異なる幕開けです。
2. Dead Among The Living
2007年2nd『BLACKBIRD』収録の名曲「Come To Life」のような曲です。
- 00:00~ スコットのダイナミックなドラムがエキサイティング
- 0017~ ヘヴィなギターを軸に進行。00:27からのフレーズがエネルギッシュでナイス
- 00:37~ マイルズの歌。ちょっと切なさを感じさせるメロディが◎
- 01:03~ ドン!どドラムを入れてサビへ。アクセントのつけ方がうまい。哀愁ある歌メロ+美しいハーモニー
- 02:46~ ハードさを維持しながらも浮遊感を漂わせる
- 03:04~ ヘヴィでスローなリフ。03:13からはエモーショナルなギターが響く
- 03:23~ 静かな演奏+マイルズのソフトな歌→再びメイン・パートへ
「Come To Life」が好きな方はドストライクです。
静かなパートを組み込みながら展開し、クールなギターが伸びてフェードアウトする終わり方も「Come To Life」を彷彿させます。
『BLACKBIRD』では「Come To Life」から次の「Brand New Start」へつながっていましたが、この「Dead Among The Living」は「Silver Tongue」へはつながらず。
曲は独立して終わります。
3. Silver Tongue
- 00:00~ シャープなギター・リフと共にスタート
- 00:13~ スローでヘヴィに展開。マイルズは高音域を絡めながらの歌唱
- 01:19~ スコットの超クールなドラムと共に加速してサビへ
- 01:22~ サビ。マイルズの歌声が心地よく響く。バックからのハモりも魅力的な歌メロ。分厚すぎないところがまたナイス
- 02:43~ 少しトーンを変えてガッツのある歌と演奏
- 03:20~ マイルズのハイトーン。そしてそのハイトーンに重なる形で低音域での歌がスタート
00:00のギターから勢いある曲調を予想しがちですが、曲本編はスロー、サビで加速とアクセントのある展開をみせるところが面白いです。
あとは03:20~ですね。
両極端の音域での歌唱が重なるアプローチが見事です。
4. Sin After Sin
- 00:00~ ちょっとトライバルな感じのスコットのドラム
- 00:08~ 浮遊感のあるギター、ブライアン・マーシャル<B>の弾力性のあるベースが鳴り響く
- 00:58~ 低音域を軸にマイルズの歌がスタート
- 01:32~ マイルズの声にエフェクトがかかる
- 01:37~ サビ。マイルズの歌声が伸びる。魅力的な高音域の歌メロ。歌の間から何度か顔を出すメロディックなギター(01:43~)が◎
04:42で悲壮感を漂わせてサビに戻る構成もうまいです。
マイルズとマークが「Si~n After Si~n」と曲のタイトルを交互に歌う05:31も聴きどころ。
マイルズの高音Voとマークの低音Voの対照描写が見事です。
5. Stay
出だしがGUNS N’ ROSESの「Sweet Child O’ Mine」(1987年1st『APPETITE FOR DESTRUCTION』収録)っぽくてニッコリ。
マイルズがリード・ヴォーカルを務めるSLASH FEATURING MYLES KENNEDY AND THE CONSPIRATORSの「Fill My World」(2022年4th『4』収録)にも通じます。
「包容力のあるマイルズのヴォーカルが入ってくるんだろうなあ」とワクワクしていたら、歌い始めたのはなんとマークでした。
ということで、マークがリード・ヴォーカル。
渋い声を響かせながらクールな歌を披露します。
01:15からは2019年6th『WALK THE SKY』収録の「Godspeed」を思わせる展開で、優しくポジティヴなメロディが見事。
マイルズの高音Voも重なります。
それまでとは異なるトーンで展開する03:00~からもすばらしい。
- 03:02~ マークとマイルズが共に歌う。ここも「Godspeed」を想起
- 03:29~ マイルズの高音が伸びて静かな演奏へ。リード・ヴォーカルはマイルズ。ソフトな歌唱へとシフト
「Sin After Sin」同様、マイルズとマークの個性が見事にブレンドされたナンバーです。
6. Holiday
出だしの摩訶不思議でヘヴィなリフがもう面白い。
00:13からは少し変な感じです(もちろんいい意味で)。
不敵な笑みを浮かべられているイメージですね。
曲は、そんな挑発的なオーラを放ちながらグルーヴィに展開。
マイルズの歌もこの変な曲調に見事にハマっています。
劇的さを増して展開する中間部(02:40~)の演奏も刺激的。
03:08の演奏もまた変で面白いですね。
ちょっと変なALTER BRIDGE。
これはハマります。
8. Season Of Promise
2010年3rd『AB III』の「Words Darker Than Their Wings」に勢いが増したような始まりです。
これを軸としたサウンドにマイルズの表現力豊かなヴォーカルが乗ります。
00:53で演奏がピタッと止まり、マイルズの声だけになり、サビに流れる。
この構成がすばらしいです。
そしてサビそのものも絶品。
体全体に染みこんでくるメロディです。
2番以降では、01:33からのハモってくるマークのヴォーカルがクール。
1番ではマークは歌ってなかったので、より一層このアプローチが際立ちます。
中盤の展開も見事です。
- 02:28~ スローでエモーショナルな演奏
- 02:49~ マイルズのややソフトな歌唱
- 03:11~ マイルズの音域が上がる(03:28から声が伸びるところが特に最高)
- 03:33~ 静かな演奏になって、スコットのドラムが迫ってくる…『WALK THE SKY』収録の「Tear Us Part」を彷彿
- 04:05~ マイルズの歌に響くギター・ソロが◎
切ない感じもありノスタルジック。
とても魅力的なナンバーです。
9. Last Man Standing
2013年4th『FORTRESS』収録の「Water Rising」っぽい曲です。
「Water Rising」はマークがリード・ヴォーカルでしたが、この「Last Man Standing」ではマイルズが歌います。
低音で歌い始めるので一瞬マークが歌ってるのかと思っちゃいます。
サビでは、マイルズの高音による伸びのある歌メロが展開。
静から動へダイナミックな展開をみせるあたりもまさに「Water Rising」です。
インパクトのあるドラムをはさんで2回目のギター・ソロに入る04:44~もかっこいい。
歌の後にすぐにソロに流れないところがまたミソなのです。
10. Pawns & Kings
最後の曲。
もうすばらしいです。
- 00:00~ 切ないマイルズの歌
- 00:14~ エレクトリックな演奏。2016年5th『THE LAST HERO』収録の「Crows On A Fire」っぽい
- 00:36~ テンポの速いスネア+ピロピロしたギターが面白い。そこにマイルズの歌が乗る
- 00:56~ スコットの迫りくるドラムの連打からサビへ。ラスト・ナンバーのせいか切なさも感じられる歌メロ
2番のサビの後の展開も見事。
- 02:27~ サビの後にさらにマイルズの歌が続く。伸びのある魅力的な歌メロ
- 02:52~ スコットのドラムの連打と共にスリリングな演奏パート。キリッとしたギターがインパクト大
- 03:23~ マイルズの歌再び
- 04:04~ マークのエモーショナルなギター・ソロ。音域が上がる04:15からが特にエキサイティング
- 04:25~ マイルズがサビをソフトに歌う。「まだ終わらないぞ」と言わんばかりのバックの演奏がまた◎
- 05:25~ 音域が上がるマイルズのVo。メロディックなギターも重なる
- 05:58~ ダダン!と引き締まる演奏を4回繰り返し、ギターの音が伸びる。徐々にその音がフェードアウト
多くの展開を持つ濃密なナンバーです。
総評
7曲目の「Fable Of The Silent Son」は約8分半の大作ですが、全体的なインパクトは他の曲と比べるやや弱め。
それでも他がすばらしい曲ばかりなので、かなり満足度の高い作品です。
過去の代表曲を思わせる場面が多いのもうれしい要素。
ちょっと変わった「Holiday」、マークが歌った「Water Rising」系統の「Last Man Standing」をマイルズが歌うというアプローチもちょっとしたフェイントが感じられて面白い。
大げさすぎず自然体で締めくくるラストの「Pawns & Kings」も見事です。
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