ALICE COOPERの『ROAD』のレビューです。
2023年8月25日にリリースされました。
キャリアで通算29作目。
これまで多くのアリスの作品を手掛けているボブ・エズリンによるプロデュースです。
前作『DETROIT STORIES』(2021年)はカヴァーが4曲ありましたが、今回はカヴァーは13曲目の「Magic Bus」(THE WHO)のみ。
ボブはもちろん、一緒にツアーしているバンドのメンバーも曲作りに関わっており、クオリティの高いナンバーが盛りだくさんの充実作です。
ライヴの人気曲を思わせるパートに加え、『BRUTAL PLANET』(2000年)や『DRAGONTOWN』(2001年)が蘇る場面もあり。
特に『BRUTAL PLANET』『DRAGONTOWN』に通じるアプローチを楽しめるのは予想外でうれしい驚きです。
【メンバー】
アリス・クーパー<Vo>
ニタ・ストラウス<G>
ライアン・ロキシー<G>
トミー・ヘンリクセン<G>
チャック・ガリック<B>
グレン・ソーベル<Ds>
以下の10曲がおすすめです。
1. I’m Alice
- 00:00~ 「Elected」(1973年『BILLION DOLLAR BABIES』収録)の00:00~にちょっぴり泣きのテイストが加わった感じ
- 00:15~ アリスの独特な語り
- 00:44~ キャッチーな「O~~~h」
- 00:59~ 音域が上がり「I’m Alice」…「Elected」のサビ(00:47~)に通じる
- 02:07~ フワフワ&きれいなコーラス
- 02:37~ 語り+ドンドン+指パッチン
- 03:22~ 「Elected」の02:09~に似たフレーズ
名曲「Elected」を思わせるアプローチが散りばめられています。
ライヴでは終盤に演奏されることが多い「Elected」。
そういった曲のテイストをアルバムのオープニングで味わえるというのが意外で面白いです。
2. Welcome To The Show
- 00:00~ ハードなギターが右から左へ
- 00:06~ ドラムが入り、ノリ良く進行
- 00:37~ グルーヴィになり、00:40からは文字どおりクールな「So cool」「You’re all the rage」
- 00:49~ かっこよく「Welcom to the sho~w」
- 02:10~ アリスが鼓舞
- 02:23~ 「It’s time」と渋い声を響かせて、ギター・ソロ
サビに向けてドライヴ感が増す展開がすばらしいです。
00:37~のコーラスのアレンジも見事ですね。
それまでとは違うトーンの声でドキッとさせて、ギター・ソロに流れていく02:23~も最高です。
3. All Over The World
- 00:14~ 「Lost In America」(1994年『THE LAST TEMPTATION』収録)の00:14~をちょっとスローにしたような歌メロ
- 00:19~ 涼しい風が吹き抜けるようなコーラス
- 00:45~ 歌のテンションが少し上がっていき…
- 00:51~ サビ。曲名の途中でストンと下げる唱法が印象的
- 02:20~ 体がいい感じに温まるギター・ソロ
- 02:40~ ライヴでの煽りのよう
- 03:29~ 「Lost In America」の03:16~を想起
テンポを少し落とした「Lost In America」といった感じです。
歌い出しで名曲「Lost In America」、さらにエンディング間近の03:29~でも「Lost In America」という構成がまたニクい。
この曲を書いたのはバンドの全メンバーとボブ・エズリンですが、作曲中は全員の頭の中に「Lost In America」がチラちいていたのかも。
「Lost In America」はツアーでも演奏されていますしね。
随所で聴かれるホーンセクションもいい味出してます。
4. Dead Don’t Dance
- 00:00~ スネア連打 → ヘヴィで骨太
- 00:16~ アリスの高音域Vo → ヘヴィな演奏の流れが◎
- 00:32~ リズミカルになって
- 00:39~ グルーヴィなサビ
- 00:52~ 曲名の3語を切り離しながら「Dead」「Don’t」「Dance」 → ブレイク → 演奏再開
- 01:43~ 「Dead」「Don’t」 → チャックがベース音を響かせる → クールな歌メロへ(1回のみのパート)
- 02:12~ ドンドン → 速弾きのギター
- 02:56~ 「Dead」「Don’t」「Dance」 のバックでドラム連打 → ブレイク → 演奏再開
『BRUTAL PLANET』や『DRAGONTOWN』のようなヘヴィな音像を軸に進行するナンバーです。
曲のタイトルを離しながら歌うアリスの唱法が印象的。
00:52~や02:56~のブレイクもかっこいいアレンジです。
01:43~のベースや02:12など、演奏面でも魅せてくれます。
6. White Line Frankenstein
- 00:00~ ドライで硬質なギター
- 00:09~ ドラムが入りダイナミックな演奏
- 00:18~ 気合が入る「Hey!」…アリスがゲスト参加したNITA STRAUSS「Winner Takes All」(2023年2nd『THE CALL OF THE VOID』収録)の00:05~を彷彿
- 00:42~ 高揚感が増し…
- 00:53~ 少し歪ませながら「They call me White Line Frankenstein」
- 01:45~ かっこよく「White Line Frankenstein!」 → ギター・ソロ…「Winner Takes All」の02:06~を想起
- 02:09~ カウベルが前面に出てグルーヴィに
アリスのバンドでギターを弾くニタのソロ曲「Winner Takes All」を思わせるパートがあるので、聴いていてワクワクします。
01:45~はコーラスの質もよく似ていますし、曲名をコールしてギター・ソロに入るところも「Winner Takes All」に通じますね。
また、曲名に「Frankenstein」が含まれるアリスの過去のナンバーでは、
- 「Teenage Frankenstein」(1986年『CONSTRICTOR』収録)
- 「Feed My Frankenstein」(1991年『HEY STOOPID』収録)
がありますが、この2曲で比べるなら、今回の「White Line Frankenstein」は「Feed My Frankenstein」に近いです。
7. Big Boots
- 00:00~ 適度にハードなギター+ドコドコ・ドラム
- 00:07~ カウベルがいい感じ。00:15からはピアノも加わる
- 00:21~ アリスのVo+ベースがグリグリ → ギター…ここも「Lost In America」の00:14~っぽい
- 00:36~ 涼風的な「ウー」
- 00:50~ ゴージャスな「Hey!」と共にサビ。曲のタイトルをガッツある歌メロに含む。バックでは00:15~のピアノ
- 02:14~ ギター・ソロ。グイグイくるかと思ったら、途切れ途切れにエモーショナル
「All Over The World」に続き、「Lost In America」に似たパートが登場します。
「All Over The World」では随所でのホーンセクションがナイスでしたが、この「Big Boots」ではピアノがいいアクセントになっています。
力強さと軽快さを同居させたサビの展開も見事。
あとは02:14~のギター・ソロですね。
エンジンがかかりそうでかからない奏法が面白いです。
8. Rules Of The Road
- 00:00~ ドラムがトトン → 骨太ベースを軸とした演奏
- 00:08~ ギターが被さり、アリスがセーブ気味のVo
- 00:53~ キャッチーで涼しく曲名を歌う
- 01:04~ 語り風のVo
- 02:09~ 手拍子+アリスの語り。「Money」の単語が耳に入ってきやすい
- 02:41~ 「You’re gonna die」にドキッ
- 02:43~ ドラムの連打 → ギター。ドライな音でエネルギッシュに展開
レトロな空気を放ちながらノリ良く展開していきます。
02:09~の語りもアリスならでは。
インパクトのある決めゼリフから演奏パートに流れていく構成もスリリングです。
『DRAGONTOWN』収録の「Disgraceland」をちょっと思わせます。
9. The Big Goodbye
- 00:00~ 刺激的なドラム → 重厚な演奏へ。「Snakebite」(『HEY STOOPID』収録)の00:08~を思わせる
- 00:20~ アリス、語り風を絡ませながらのVo
- 00:44~ かっこいいドラム → サビ。アリス、高音域寄りの歌メロ。バックのギターもメロディアス
- 01:07~ 「The big」「good」「by~~e」とかっこよく区切る。「by~~e」のところは音程がずれそうでずれない
- 02:13~ 今度は「by~~e」で音域を上げる → ギター・ソロ。泣きの要素を入れながらもエキサイティングに進行
- 02:47~ ゴージャスなコーラスが絡まる
- 03:27~ ダイナミックにドンドン!
「Rules Of The Road」に続き、この曲も『DRAGONTOWN』を思わせる音像で進行します。
ツアーの演奏曲「Snakebite」に通じるパートが出だしに登場するというのが興味深い。
ちょっとヒヤヒヤするサビの展開もツボです。
02:13~も見事な流れ。
ギター・ソロに移る前にサビのヒヤヒヤ・パートを変える攻めが効いています。
11. Baby Please Don’t Go
- 00:00~ 優しさあふれる演奏
- 00:11~ アリス、じっくり聴かせるVo
- 00:43~ トーンを変えてソフトかつ渋めに「Baby please don’t go」
- 01:52~ 美しいコーラスが重なる
- 02:13~ 厚みが増す「Baby please don’t go」
- 02:25~ 02:13とは違う「Baby please don’t go」
バラード調のナンバーです。
歌も演奏も包容力があり、聴いていて温かい気持ちになれます。
曲が進むにつれて、歌が美しくなっていくアレンジがまた素敵です。
12. 100 More Miles
- 00:00~ ミステリアス。ベースがボンボンいい感じに響く
- 00:23~ 低音で語り調
- 00:47~ アリス、音域が上がる
- 01:05~ 「ho~~~me」と伸びる、伸びる
不気味なオーラを出しながら、ファンタジックに進行していきます。
次の「Magic Bus」はカヴァーなので、この曲がアルバム本編ラスト。
アリスにぴったりの世界観です。
ハマりすぎ。
SHINEDOWN「Her Name Is Alice」に似た曲調ですね。
語りで終わるところも共通しています。
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