H.E.R.O.のクリストファー・スティアネ<Vo>とPRETTY MAIDSのケン・ハマー<G>によるTABOOがデビュー作『TABOO』を2022年9月9日にリリースしました。
いい曲が満載です。
特徴としては…
- 「H.E.R.O.+PRETTY MAIDS」のような曲もあれば、「曲調はH.E.R.O.で音はPRETTY MAIDS」的なナンバーも
- 音の厚さやダイナミックさはPRETTY MAIDSの『KINGMAKER』(2016年15作目)や『UNDRESS YOUR MADNESS』(2019年16作目)に近い
- 映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』主題歌「See You Again」のカヴァー以外は、クリストファーとケンの共作
- 「See You Again」も素敵なアレンジ
- ミックス/マスタリングはヤコブ・ハンセン…サウンドも高品質
…といったことが挙げられます。
オリジナル曲もカヴァー曲も最高。
そんな『TABOO』の聴きどころを紹介していきます。
『TABOO』の収録曲とおすすめ曲
以下の太字の9曲がおすすめです。
■TABOO/TABOO (2022年)
- Flames
- Bleeding
- Learning To Breathe
- Demons
- Into The Sun
- Powerless
- It’s About Time
- See You Again (映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』主題歌のカヴァー)
- Sensational
- Daydream
おすすめ曲のレビュー
レビュー内に記載されている時間は、曲をフル再生した場合の表記です。
1. Flames
ミステリアスでフワフワしたサウンドにケン・ハマー<G>の重厚なギター・リフが重なりスタート。
そして00:27からクリストファー・スティアネ<Vo>の甘く低い声が入ってきます。
音域が上がる00:46からはドキドキ度がアップ。
独特かつ歌唱力のある見事なパフォーマンスです。
以降、徐々に躍動感を増しながら曲が進行。
ガッツのあるメロディアス・ハード・ロックが展開されます。
01:25でクリストファーが声を伸ばし、再びダイナミックに演奏に突入するところがまたかっこいい。
ケンのギターがヘヴィだからこそこういったアプローチが際立ちます。
02:35からのドラマティックな演奏にクリストファーがムードのあるヴォーカルを乗せ、03:11からケンのギター・ソロに入っていく構成も見事。
ケンのヘヴィなギターにフワフワ・サウンドが重なりピタッと止まるエンディングにもハッとさせられます。
PRETTY MAIDSの『KINGMAKER』(2016年15作目)や『UNDRESS YOUR MADNESS』(2019年16作目)にリズミカルな要素が加わったダイナミックかつノリのいいナンバーです。
2. Bleeding
H.E.R.O.とPRETTY MAIDSの要素がうまくブレンドされたナンバーです。
- 00:10~ ケンの重厚なギター・リフを軸に勢いよく進む。PRETTY MAIDSっぽい
- 00:20~ クリストファーの歌が入る。H.E.R.O.っぽい
その後、00:42でいったん静かになりドカンと演奏を再開します。
「Flames」でもそうでしたが、緩急のつけ方がうまいですね。
クリストファーの歌唱は、01:02からが特にエキサイティング。
突然高音域になり、しかもよ~く伸びます。
02:00からクリストファーの声にエフェクトがかかるところも面白い。
いい感じにモゴモゴしています(02:00はうがいしてるみたい…)。
そして02:56から高音パートを絡めていき、03:17から声をこれまでより長~く伸ばしてエンディングに。
圧倒されます。
3. Learning To Breathe
00:47からの「アイアイアイアイ~♪」の歌メロと01:03からのキャッチーなコーラスが印象的。
01:03のコーラスはSHINEDOWNの2018年6作目『ATTENTION ATTENTION』に収録されている「Get Up」と「Special」を思わせます。
ノスタルジックで希望を抱かせるようなメロディ・ラインがとても感動的。
02:10からケンがエモーショナルですばらしいギター・ソロを披露しますが、そのバックからもコーラスが響いてきます。
すばらしいアレンジ。
あとは03:05からですね。
- ドラムが入ってきてそのままエレクトリックな演奏かと思いきや、いったん静かに
- 03:14からスネアを叩いて演奏再開
いい感じにフェイントをつけながらの攻めが見事です。
4. Demons
「Bleeding」同様、H.E.R.O.とPRETTY MAIDSの魅力がいい感じに融合されています。
ケンのガッツある重厚なギター・リフを軸としたオープニング演奏の後に以下の流れを踏みます。
- 00:23~ 静かな曲調。クリストファーはムードのある歌唱。H.E.R.O.っぽい
- 00:48~ 浮遊感を漂わせる。ここもH.E.R.O.っぽい
- 00:56~ ダイナミックな演奏に。PRETTY MAIDSっぽい
低音域~中音域~高音域をナチュラルに歌うクリストファーの歌唱と程よくシリアスな演奏が絶妙にマッチしています。
02:15から弱めに刻み続け、02:28からメロディックになるケンのギターも面白い。
特に02:28からはPRETTY MAIDSですね。
フレーズが染みてきます。
6. Powerless
00:06からのメロディアスなギターが魅力的。
その後、00:30からクリストファーが物静かに歌います。
徐々にテンションを上げていき、01:03からサビに。
サビでは00:06からの心地良いギターに歌が乗るという展開。
心地良い歌メロでいい感じにフワフワしています。
02:10からの高音域での歌唱はクリストファーならではですね。
スリムで透明性のある声質が見事に生かされたパフォーマンスです。
クリストファーが声を伸ばして、厚みのある演奏が重なる02:53からも最高。
H.E.R.O.の色が前面に出たナンバーです。
7. It’s About Time
この「It’s About Time」もH.E.R.O.の色が濃く出ています。
00:18からのリズミカルな演奏がまずかっこいい。
その後クリストファーの歌が入って、以下のように進行します。
- 00:36~ ミステリアスな雰囲気の中、ややソフトな歌唱
- 00:54~ 「It’s about time」とやや早口に曲名を歌いながらサビに。リズミカルな演奏再び。極上の歌メロ
モダンな空気を維持しながらも静と動を切り替えるアプローチが見事。
H.E.R.O.の曲をPRETTY MAIDSの『KINGMAKER』『UNDRESS YOUR MADNESS』風に解釈した感じです。
8. See You Again (映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』主題歌のカヴァー)
米国のラッパー、ウィズ・カリファが2015年にリリースした曲のカヴァー。
オリジナルには、米国のシンガーソングライター、チャーリー・プースがゲスト参加していて、歌のパートとラップのパートがありました。
このTABOOヴァージョンでは、全編クリストファーがリード・ヴォーカルをとり、ラップのパートも歌にアレンジされています。
元々ラップだったパートがナチュラルにオリジナルの歌メロに結びつくように構成されているのが見事。
02:52からのケンのギター・ソロも素敵です。
オリジナルにはギター・ソロがなかったので、このパートは◎。
最高のカヴァーです。
オリジナルも最高なので、聴き比べましょう。
オリジナルとTABOOヴァージョンを何往復もしたくなります。
9. Sensational
バラード調のカヴァーの後はオリジナルのバラードか?
…と思ったら違いました。
00:46から分厚い演奏がスタートします。
ここからのクリスファーの歌メロが最高。
哀愁に満ちた魅力的なメロディが押し寄せてきます。
02:28からのケンのギター・ソロはセンチメンタルな感じでしんみり。
そして02:51からキャッチーなコーラスが被さるという絶品の展開です。
ここはヤバい…。
この「Sensational」もH.E.R.O.色が強め。
奥行きのあるPRETTY MAIDSサウンドでH.E.R.O.を包み込んだイメージです。
10. Daydream
ラストのこちらはバラード。
クリストファーの歌は徐々に染みこんでくるような展開をみせます。
00:57からのサビでは、いい感じにジーン…。
優しさが感じられるメロディで、聴いていて穏やかな気持ちになれます。
02:28から歌メロが変化するところもいいひねり具合で、サビより若干温まったトーンが素敵です。
クリストファーの声が伸びて02:58からケンのギター・ソロに移る構成も見事。
ソロそのものも染みますね。
03:23からのクリストファーの高音+ケンのエモーショナルなフレーズも圧巻です。
総評
クリストファー・スティアネ<Vo>とケン・ハマー<G>によるTABOOのデビュー作。
傑作です。
全編が「H.E.R.O.+PRETTY MAIDS」となっていないのが面白い。
両バンドの魅力がうまく融合された「Bleeding」や「Demons」がアルバム前半に配置。
以降はH.E.R.O.の要素が表に出たナンバーが占めています。
ただ後半も「H.E.R.O.と変わらない」ではなく、「It’s About Time」「Sensational」のようにPRETTY MAIDSのダイナミズムがちゃんと加味されているのはさすが。
「See You Again」のカヴァーも見事でした。
ラップのパートを魅力的な歌メロに変えて、ギター・ソロも追加。
アレンジ・センスに脱帽です。
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